主婦の逸失利益について

主婦の逸失利益について

交通事故の被害に遭ったのが、家事を担う主婦であった場合、賠償はどうなるでしょうか。主婦業はお給料が無いから請求できないと思っていませんか?

専業主婦・兼業主婦、形は様々ですが、家事は労働として認められているので、ケガをして家事が十分にできないというのは立派な損害です。
しかし、保険会社が家事労働の損失を正しく見積もってくれるとは限りません。

本稿では、計算が難しい主婦業の逸失利益について分かりやすく解説していきます。

主婦の逸失利益は認められるのか

逸失利益とは、事故による後遺障害や死亡が原因で、将来にわたり得られなくなった金銭などの利益のことです。
会社員ならば、後遺障害で労働能力が低下し、給料に影響すれば、その減額分は逸失利益にあたります。

では、給料が発生しない主婦業はどうでしょうか。
家事労働は主婦にとっての「仕事」として認められているので、事故が原因で家事労働に影響があれば、会社員と同じく逸失利益を請求することができます

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主婦・主夫の逸失利益の計算方法

主婦・主夫

家事労働には収入という形が無いので、いくら請求すればいいのか分からないのではないでしょうか。
もちろん、請求額の根拠が、なんとなく、では交渉が出来ません。計算方法についてパターン別に確認してみましょう。

専業主婦の場合

逸失利益の計算は、原因が後遺障害なのか、死亡なのかで計算式が異なります。

【後遺障害逸失利益】

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失機関に対するライプニッツ係数

【死亡逸失利益】

基礎収入×(1-生活費控除率)×症状固定時から67歳までの年数に対するライプニッツ係数

収入が無い専業主婦にも関わらず、計算式には基礎収入という項目があります。
これは前述のように家事労働は労働として認められているので、公的データを使って金銭に換算が可能であるからです。

では実際にどのようなデータを使うのか次項で解説していきます。

専業主婦(主夫)の場合の基礎収入はどうなる?

専業主婦の家事労働を金銭に換算するには、賃金センサスという厚生労働省が発表している企業規模や性別、学歴、年齢別等で集計された平均年収の統計データを使います。

この統計表から全年齢女子平均年収を専業主婦の基礎収入として使用します

専業主夫の場合にも全年齢女子のデータを使います。
これは性別が変わっても、家事労働の重度が変わるわけではないので、経済的評価を一律にするためです。

兼業主婦の場合

仕事と家事の両方を担っている兼業主婦では計算はどうなるでしょうか。
計算式自体は後遺障害、死亡いずれの場合も前述の専業主婦と同じです。

しかし、実収入をもつ兼業主婦の場合には基礎収入に、①家事労働を適用するのか②仕事の実収入を適用するのか、という選択が発生します。

実務上は①、②の高い方を採用するので、専業主婦と同額以上となります。
つまり、パート収入があったために、逸失利益が専業主婦よりも低い、といった現象は発生しません。

基礎収入には家事労働分が加算されないの?

兼業主婦は仕事をして、家事も行っているので、それぞれの基礎収入を合算したいという見方もあるでしょう。

しかし、原則として兼業主婦の収入に家事労働分を加算することはありません
兼業主婦と専業主婦ではその家事労働の密度に差があり、各収入を単純に合算するのは評価として不適切であるからです。

また、判例においても、兼業主婦の逸失利益の評価を実収入と家事の二重で行うことは不適当とされました。

高齢主婦の場合

高齢主婦であっても、計算式は原則として専業主婦の場合と同じです。
しかし、家族がいない場合は、自分自身に対しての労働となる為、経済的評価を受けられない可能性があります

また、計算式では労働能力喪失期間を67歳までと区切っているため、67歳超、もしくはそれに近い年齢の主婦では調整が必要となります。

この場合、簡易生命表という統計表を使って労働能力喪失期間の調整を行います。
具体的には平均余命の2分の1の期間、もしくは67歳までの期間どちらか長い方を計算に適用することになります。

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労働能力喪失率

労働能力喪失率は、後遺障害の等級によって5~100%と、それぞれ数値が設定されています。

具体的な各等級に対応する喪失率は下表の通りです。
後遺障害の等級は、症状固定と診断された後、後遺障害等級の認定申請を行うことで確定します。

従事する職業内容等によって評価が増減することがありますが、交渉段階では下表の数値を適用させることが多いでしょう。

open_in_new労働能力喪失率の表を見る

労働能力喪失期間とライプニッツ係数

労働能力の喪失期間とは、症状固定と診断された日、もしくは死亡日から67歳までの期間を指します。67歳は就労可能とされる見込年齢である為、個別事情を強く反映させる必要があれば調整されることがあります。

ライプニッツ係数は、将来に得るはずだった金銭を先んじて一括で受領する為、本来よりも余分に受け取れる利息を調整するためのものです。

この調整をする理由としては、一般的に金銭は運用等によって利息を得ることになるので、受取時期が早まるという事は、運用できる期間が長くなり、そのぶん利息を多く受け取れるという観点があるからです。

生活費控除について

被害者が死亡した場合、死亡によって不要となった被害者の生活費については一種の利益としての評価を行うこととされています。
その為、不要となった生活費分を逸失利益から差し引くという調整を行うのですが、生活費を具体的に算出することは困難です。

そこで、生活費控除率という数値を使って計算を行います。
控除率については死亡した被害者の家庭内での立場によって割合が決まっており、具体的な数値については下表の通りです。

一家の支柱の場合かつ被扶養者1人の場合 40%
一家の支柱の場合かつ被扶養者2人以上の場合 30%
女性(主婦、独身、幼児等を含む)の場合 30%
男性(独身、幼児等を含む)の場合 50%

主婦の逸失利益に関する解決事例・判例

主婦(夫)としての適切な後遺障害逸失利益と後遺障害等級14級が認定された事例

専業主夫が被害者であったこの事故では、家族である妻子が被害者と住民票が別であったため、主婦業の実態が争われました。

保険会社は、主夫としての損害を認めない姿勢でしたが、実際には同居しているという資料を懸命に収集し、粘り強く交渉した結果、被害者が専業主夫であると認められました

また、後遺障害についても、保険会社の治療打ち切り連絡に対し、弁護士が治療延長を交渉した結果、頸椎捻挫としては長期となる約8カ月の通院が実現し、後遺障害等級14級を獲得することとなりました。
等級が獲得できたことで後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料の請求も可能となりました。

被害者が主夫であること、そして、治療延長交渉によって等級獲得となり、被害者の賠償額は最終的に約120万円の増額となりました。

後遺障害等級12級と専業主婦の逸失利益が認められた事例

右肩痛の症状について後遺障害等級12級を認定された専業主婦が被害者であるこの事故では、休業損害1か月、労働能力喪失期間5年として、保険会社から提示されていました。

しかしそれぞれの期間が短く、不相当であるとして、弁護士は被害者から治療経過の聞き取りを行い、医療記録の精査を行いました。
そこで、治療中の固定処置やその後の右肩痛から長期間にわたり腕を上げることが困難で、家事労働への支障が出ていることが判明しました。

更に、後遺障害の症状の原因についても検討し、後遺障害の今後の残存についても提示期間の5年は短すぎるとして保険会社へ根拠ある主張を行いました。

その結果、休業損害は5か月分が認められ、逸失利益の期間についても14年となり、約650万円の増額に至りました

主婦の逸失利益についてご不明点があれば弁護士にご相談ください

主婦業と一口で言っても、主婦業に携わる人の事情はそれぞれです。事情が違えば、失われた利益も一律とはいかないでしょう。

勿論、原則的な計算式はありますが、誰でも適正額が導けるといった単純なものではありません。
そして保険会社は多数の交通事故に対応しているプロですので、あいまいな意見ではすぐに反論されてしまいます。

家事労働は日常生活の営みに直結する労働です。日常を取り戻すには少しでも早くケガを癒すことが先決です。

主婦の逸失利益について不明点があれば一人で悩まず、弁護士へご相談ください。
交通事故の経験豊富な弁護士であれば、保険会社との交渉にも強い味方となり、あなたの不安を解消することができるでしょう。

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。