弁護士依頼前
約180万円
一口に交通事故といっても様々なパターンがあり、請求できる賠償も違います。
例えば、ぶつかった衝撃で自動車や家の外壁などは壊れたものの、幸いにも怪我人は出ずに済むこともあります。しかし、このような事故では慰謝料を請求することはできません。
では、このように物に対する損害(物的損害)だけが発生した事故では、どのような賠償が請求できるのでしょうか?
今回は物損事故について、その特徴や請求できる賠償、損害賠償を請求するうえでの注意点などを解説していきます。
弁護士依頼前
約180万円
弁護士依頼後
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約20万円の増加
目次
物損事故とは、物だけが被害を受けた交通事故をいいます。
つまり、自動車や建物などは壊れてしまったものの、人が亡くなったり怪我をしたりすることはなかった交通事故が物損事故にあたります。
これに対して、人の生命や身体にも被害が及んだ交通事故を人身事故といいます。
それぞれどのような特徴があり、どういった点が異なるのでしょうか?次項で詳しく説明します。
下表は、物損事故と人身事故それぞれの主な特徴をまとめたものです。
ご覧いただけばわかるかと思いますが、物損事故は自賠責保険に保険金を請求することができず、慰謝料も請求できません。
また、人身事故に比べ物損事故は、刑事上の責任も軽くなります。
物損事故 | 人身事故 | |
---|---|---|
自賠責保険 | 適用されない | 上限額までは適用される |
慰謝料の請求 | 基本的に請求できない | 請求できる |
損害賠償請求できる相手 | 基本的に事故を起こした運転者にしか請求できない | 運転者だけでなく、運行供用者(自動車の所有者など)にも請求できる |
免許の点数 | 減点なし | 減点あり |
刑事処分 | 刑事罰を受けない | 刑事罰を受ける可能性がある |
損害賠償請求の時効 | 基本的に事故から3年 | 基本的に事故から5年 |
損害の証拠の証明責任 | 被害者側が証明する | 加害者側が証明する |
物損事故では、次のような損害の賠償を請求することができます。
以下、詳しく説明していきます。
交通事故で自動車等が壊れてしまい、修理しなければならなくなった場合には、修理費や買い替え費用を賠償してもらうことができます。
一般的に、損害の程度がそこまでひどくなく修理できる見込みがあれば修理費を、損害の程度がひどく修理できない場合(全損した場合)には、買い替え費用に相当する金額を請求することになります。
なお、修理費を請求する場合、壊れた部分の修理にかかった費用の全額を賠償してもらえるとは限りません。必要かつ相当だと考えられる金額だけが支払われます。
例えば、塗装の一部が剥げてしまった場合に全体を塗り直したとしても、基本的に、剥げてしまった部分の修理費用しか支払ってもらえません。
また、破損したパーツが交換せずに元に直る場合には、原則交換は認められません。
「車が全損した場合」とは、
を指します。
このような場合には、一般的に、自動車の時価とされる金額を賠償金として受け取ることができます。
なお、ケースによっては、時価に加えて、新車を購入するための買替費用等の一部も支払ってもらえます。
修理しても自動車の見た目や欠陥した機能が直らず、事故前と比べて自動車の価値が下がってしまった場合には、その欠陥に相当する金額を賠償してもらえる可能性があります。
また、修理で自動車の見た目や機能が直ったとしても、事故に遭い修理したという事実は消えず、事故車の価値は下がる場合には、この価値の下落分が評価損として認められるケースもあります。
評価損は、自動車購入からの期間、事故時の車の価値、損傷した車の部分や損傷(修理費)の大きさなどにより評価しますが、非常に争いになりやすく保険会社もなかなか認めない項目の一つです。
代車を使う必要性と相当性が認められる場合には、代車使用料を賠償してもらえます。
具体的には、次のような事情がある場合に代車使用料が認められます。
【必要性】
【相当性】
必要性や相当性が認められない場合には、公共交通機関やタクシーを利用した程度の金額の賠償しか認められない可能性があるので、注意が必要です。
また、修理費で争いがある場合に、自動車が修理されないため代車を借りる期間が長期にわたることがありますが、不合理に長期になった場合には、被害者が代車費用を負担しなければならないことがあるため、注意が必要です。
トラックやタクシー、バス等、仕事で使っている車で事故に遭い、修理や買い替えのために仕事ができず、本来懐に入るはずの利益が得られなくなったという損害(営業損害)が発生した場合に請求できるのが休車損害です。
休車損害として請求可能な金額としては、「平均売上額-必要経費」とされているのが一般的です。
なお、下記のようなケースでは、休車損害が認められる可能性は低いです。
その他、下記のような損害の賠償も請求できます。
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まず、慰謝料とは精神的・肉体的な苦痛に対する賠償のことです。
この点、物損事故の場合には肉体的な苦痛は発生しませんし、精神的な苦痛も、修理費などの財産的な損害の賠償によって慰められると考えられています。
また、迷惑料として、被害者にお詫びの意味を込めて金銭を請求することができないかという質問をいただくこともあります。
しかし、損害賠償の一部である慰謝料と違い、迷惑料は法的に認められた権利ではありません。
そのため、物損事故では基本的に慰謝料や迷惑料を請求できません。
実際に物損事故で慰謝料が認められた裁判例をご紹介します。
なお、法律上ペットは「物」として扱われることを前提としています。
名古屋高等裁判所 平成20年9月30日判決
信号待ち中に被害者の運転する車がトラックに追突され、後部座席に乗せていたペットのラブラドールレトリバーに、後ろ脚麻痺や排尿障害の後遺症が残った交通事故に関する裁判例です。
裁判所は、次のような理由を挙げ、被害者夫婦の慰謝料として合計40万円を認めました。
かすり傷でも怪我をしたり、少しでも痛みが出たりした場合には、物損事故から人身事故に切り替えましょう。
物損事故のままだと、治療費や慰謝料といった人の生命・身体に関する損害の賠償を請求できないうえに、実況見分調書が作成されないので事故態様の点で揉めやすいというデメリットがあります。
人身事故で請求できる損害賠償の内容等を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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なお、人身事故に切り替えるためには、
といった手順を踏む必要があります。
物損の損害賠償で争いになった場合、被害者自身が損害の内容・程度を証明しなければなりません。
一般的に、事故現場の状況を記録したもの(ドライブレコーダーの映像、事故現場を撮影した写真・動画、目撃者の証言など)は、損害について証明する特に有力な証拠となります。
また、車の修理代の見積書など、事故の態様を推測できるものも証拠となることがあります。
物損事故では、実況見分調書が作成されないため、正確な過失割合(発生した事故に関する当事者の責任の割合)を見定めるのが難しい可能性があります。
実況見分調書とは、当事者の立会いの下で行われた、警察が事故現場や事故の詳しい状況の調査結果を記録した書類です。
事故の状況を証明する重要な証拠になるので、正確な過失割合を見定める際にとても役立ちます。
過失割合によって損害賠償金が大きく増減しますので、正確な過失割合を知ることは非常に重要です。
過失割合についての詳しい説明は、下記の記事をご確認ください。
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物損事故が発生してから示談までは、次のような流れで進んでいきます。
①物損事故の発生
事故が発生したら、加害者の連絡先を確認し、事故現場の写真を撮る等して事故の状況を証明できる証拠を残しておきます。
②警察や自分の加入している保険会社へ連絡する
警察に事故の報告をすることは義務なので、保険会社への連絡と併せて忘れずに行いましょう。
③損害額の確定後、示談交渉を開始する
車の修理等が終わり、修理代や代車使用料といった損害の金額が確定したら、示談交渉を始めます。
④示談が成立する
交渉で損害賠償の金額や過失割合等に合意できたら、示談を成立させます。
⑤示談金(損害賠償金)が支払われる
示談成立から1~2週間程度で示談金が支払われます。
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弁護士に相談してアドバイスをもらったり、依頼して代わりに交渉してもらったりすることをおすすめします。
物損事故では、損害の内容・程度や過失割合について相手がごねる場合が多いです。相手方と主張が食い違い、なかなか示談できそうにないときは、交渉を保険会社任せにせず、事故の状況の証拠となる資料等を自分で集めて証明しなければなりません。
しかし、何が証拠となるのか、どのように証明すれば良いのか、よくわからない方も多いかと思います。
そこで、弁護士に相談・依頼してアドバイスをもらったり、交渉ではなく裁判で問題の解決を図ったりすることを検討されると良いでしょう。
対象になります。
事故に遭った時に身に着けていた服や腕時計、カバン、眼鏡をはじめ、持っていたパソコンやスマートフォンといった精密機械、荷台に積まれていた荷物なども損害賠償の対象に含まれます。
損害賠償として請求できる金額は、基本的に時価に相当する金額とされています。
限定生産品やプレミア品等、付加価値がある物についてどのように考えるかは、保険会社によって異なるため確認されることをおすすめします。
また、“事故により壊れた事実”を証明するために必要になることがあるので、壊れた物の写真を撮影したうえで、実物もしっかりと保管しておきましょう。
治療費や葬儀費用のほか、慰謝料などを請求できます。
ペットは法律上「物」として扱われますが、家族の一員としてかけがえのない存在となっているケースも多いです。
そのため、裁判例でも、交通事故によって家族同然のペットの命が奪われた、または重い障害を負ったような場合には、ペットに関する損害の多くを認める判断をしているものがあります。
ただし、あくまでも「物損」として扱われるため、治療費がペットの時価を大きく上回るようなときには、時価に相当する金額や社会通念上相当と考えられる金額しか賠償してもらえない可能性があります。
物損事故では、被害者の方が満足のいく修理をしてもらえない場合が多く、トラブルになることが多々あります。
これは、法的にやむを得ないところもありますが、なかなか頭で納得できても気持ちで納得しきれないところがあるでしょう。
交通事故で被害を回復するためには、物損事故と人身事故の違いや賠償請求方法を熟知する必要があります。
また、人身事故においては、多くの場合物損について先行で示談することも少なくありませんが、物損の結果は人身の示談の際にも影響を及ぼす場合があります。
そのため、物損だということで遠慮せず、まずは交通事故事案に精通し、専門知識を備えている弁護士に相談し、今後の方針を立てられると良いでしょう。
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