飛び出しによる交通事故は過失割合にどう影響する?ケース別に解説

飛び出しによる交通事故は過失割合にどう影響する?ケース別に解説

交通事故には、自動車同士の接触だけでなく、歩行者や自転車の急な飛び出しが原因となるケースも多くあります。急な飛び出しは、飛び出した側が悪いと思われるかもしれませんが、ドライバーにも周囲の状況に応じ、減速や停止をしなければならない注意義務が課せられているため、過失割合が多く付く場合もあります。

過失割合は、慰謝料や示談金に大きく影響するため、適切な過失割合で示談することが大切です。

この記事では、飛び出しが原因の過失割合について、修正要素やケース別の過失割合など詳しく解説していきます。

過失割合5対5から過失0対10に修正した事例
  • 症状:頸部痛、腰部痛

弁護士依頼前

5対5
(相手方の主張)

弁護士介入

弁護士依頼後

0対10

有利になるよう修正

飛び出しによる交通事故の過失割合はどのように決まるのか?

飛び出しが原因の事故の過失割合は基本的に、歩行者:ドライバー=20:80となります。ただし、ここから、事故発生現場の状況や事故状況、飛び出し歩行者の年齢などの諸事情を踏まえて、過失割合が修正されます。

過失割合は、警察が決めるものと思われる方もいらっしゃると思いますが、実際には被害者側と加害者側の保険会社が類似事故の基本過失割合や修正要素をもとに、話し合いによって決めることがほとんどです。

交通事故では、歩行者や自転車は車やバイクに比べ、身を守るものが少なく、事故に遭った場合に大きな怪我に発展しやすいことから、一般的に「交通弱者」として扱われます。

そのため、ドライバーの過失割合が大きくなるケースが多くあります。

飛び出し事故ではなぜ車が悪いとされるのか?

ドライバーが細心の注意を払って道路を走行中、飛び出し事故に遭った場合、「自分は被害者だ」「急に飛び出してきたのに過失が多く付くのは納得がいかない」と思われることでしょう。

しかし、交通事故では、歩行者や自転車は事故に遭うと大きな被害を受けやすく、交通弱者として扱われるため、ドライバーなど交通強者により強い注意義務が課せられているのです。そのため、基本的に自動車の過失割合が大きくなる傾向にあります。

ただし、歩行者や自転車など交通弱者でも、交通ルールを守っていない飛び出しであれば、過失割合が加算修正される場合もあります。

飛び出し事故の過失割合に影響する修正要素

飛び出し事故の過失割合に影響する修正要素には、以下のようなものがあります。

  • 幼児・児童・高齢者・身体障害者の飛び出し
  • 横断歩道上
  • 夜間や天候などの視界不良時 など

これらは、なぜ過失割合が修正されるのでしょうか、また、どのくらい修正されるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。

幼児、児童、高齢者、身体障害者の飛び出し

歩行者が児童・高齢者・幼児・身体障害者の場合、歩行者の中でも特に保護する要請が高いことから、過失割合は5%~10%もしくは、10%~20%減算されます。それぞれ定義を見ていきましょう。

幼児:6歳未満

児童:6歳以上13歳未満
5~6歳以上は事理弁識能力があるとされ、歩行者の過失割合が加算される場合があります。

高齢者:おおむね65歳以上

身体障害者

  • 身体障害者用の車いすを通行させている者
  • つえを携え、または盲導犬を連れている目が見えない者
  • つえを携えている耳が聞こえない者
  • 走路の通行に著しい支障がある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、または平衡機能障害のある者でつえを携えている者

横断歩道上

横断歩道上で起きた事故については、基本的に過失割合は0(歩行者):100(自動車)となります。しかし、歩行者の飛び出しによる交通事故の場合、歩行者側にも過失割合が加算される可能性があります。

歩行者は横断歩道を横断する前に左右を確認すれば、走行してくる車を比較的簡単に確認することができ、事故を回避できるからです。
また、横断歩道上の事故では、信号の有無も過失割合に影響します。

具体的には以下のような場合に歩行者側に過失が付くケースがあります。

  • 自動車の直前での横断
  • 渋滞車列の間や駐停車車両の陰からの横断
  • 夜間暗い場所における横断
  • 自動車の高速走行が予定されている幹線道路の横断
  • 歩行者が赤信号で開始した横断

夜間や天候などの視界不良時

夜間や濃霧の発生、大雨、トンネル内などはドライバーの視界が悪く、十分な注意を払っていても歩行者の発見が遅れる可能性があります。

道路交通法では、歩行者にも一定の注意義務を課しているため、歩行者の過失が加算される場合もあります。

【ケース別】歩行者による飛び出し事故の過失割合

飛び出し事故の基本過失割合は20(歩行者):80(自動車)ですが、さまざまな事故状況によって、過失割合が修正されることがあります。
ここからは、事故のケース別に飛び出し事故の過失割合を詳しく見ていきましょう。

信号機のある横断歩道上

信号機のある横断歩道上の飛び出し

信号機がある横断歩道上の事故では、歩行者側と自動車側の信号機の色によって、基本過失割合が定められます。

また、道路を走行する自動車が直進なのか、右左折なのかによっても過失割合は変動します。
詳しくは、以下の表をご参考ください。

飛び出し事故の発生状況 過失割合
歩行者側の信号 自動車側の信号と動き 自動車 歩行者
青信号で横断開始 赤信号で進入、直進 100 0
青信号で進入、右左折 100 0
青信号で横断開始、途中で青点滅 赤信号で進入、直進 100 0
青信号で進入、右左折 100 0
青信号で横断開始、途中で赤信号
(安全地帯なし)
青信号で進入、直進 80 20
赤信号で進入、右左折 100 0
青点滅で横断開始 赤信号で進入、直進 90 10
黄信号で進入、右左折 80 20
青信号で進入、右左折 70 30
青点滅で横断開始、途中で赤信号 青信号で進入、直進 70 30
青信号で進入、右左折 70 30
赤信号で横断開始 赤信号で進入、直進 80 20
黄信号で進入、直進 50 50
青信号で進入、直進 30 70
赤信号で進入、右左折 80 20
黄信号で進入、右左折 70 30
青信号で進入、右左折 50 50
赤信号で横断開始、途中で青信号 赤信号で進入、直進 90 10
赤信号で進入、右左折 90 10

信号機のない横断歩道上

信号機のない横断歩道上の飛び出し

信号機のない横断歩道上の事故では、基本過失割合は0(歩行者):100(自動車)となります。

しかし、明らかな飛び出しがあった事故では、基本過失割合が修正され、歩行者側に5%~15%の過失が加算される可能性もあります。

信号機のある横断歩道付近

横断道路「付近」とは、片側2車線以上の道路で交通量が多く、車が早い速度で走行しているような場所では横断歩道の端から約10m以内の場所、それ以外では5m以内の場所と考えられています。

横断歩道付近の事故では、衝突した場所が横断歩道の手前なのか、通過後なのかによって過失割合が変動します。以下で詳しく見ていきましょう。

横断歩道手前の場合

横断歩道手前の飛び出し

信号機のある横断歩道手前の事故の基本過失割合は以下の表のとおりです。

飛び出し事故の発生状況 過失割合
自動車側の信号 歩行者側の信号 自動車 歩行者
赤信号で衝突 赤信号で横断開始 70 30
点滅で横断開始 80 20
青信号で横断開始 90 10
黄信号で衝突 赤信号で横断開始 50 50
青信号で衝突 赤信号で横断開始 30 70

歩行者に車の直前で飛び出しがあると、上記の基本過失割合から、歩行者側に5%~10%ほど過失が加算されます。また、事故の状況によっては、さらに修正がなされる場合もあります。

横断歩道通過後の場合

横断歩道通過後の飛び出し

信号機のある横断歩道通過後の事故の基本過失割合は以下の表のとおりです。

飛び出し事故の発生状況 過失割合
自動車側の信号 歩行者側の信号 自動車 歩行者
赤信号で進入、直進 赤信号で横断開始 75 25
黄信号で横断開始 85 15
青信号で横断開始 95 5
黄信号で進入、直進 赤信号で横断開始 50 50
青信号で進入、直進 赤信号で横断開始 30 70
赤信号で進入、右左折 赤信号で横断開始 75 25
黄信号で進入、右左折 赤信号で横断開始 60 40
点滅で横断開始 70 30
青信号で進入、右左折 赤信号で横断開始 30 70
点滅で横断開始 60 40
青信号で横断開始 90 10

この場合も、歩行者に車の直前で飛び出しがあった場合は、上記の基本過失割合から、歩行者側に5%~10%ほど過失が加算されます。また、事故状況により修正される場合もあります。

信号機も横断歩道もない交差点

信号機も横断歩道もない交差点で事故が発生した場合は、交差する道路の幅や車の進行方向などから過失割合が決まります。

信号機も横断歩道もない交差点(幹線道路)

歩行者Aが幅の広い道路または幹線道路を横断し、車Bが直進して衝突した場合はA:B=20:80となります。

信号機も横断歩道もない交差点(狭路)

歩行者Aが優先関係のない道路を横断し、車Bが直進または右左折して衝突した場合はA:B=15:85となります。

信号機も横断歩道もない交差点(広狭の優先なし)

歩行者Aが幅の狭い道路を横断し、車Bが直進または右左折して衝突した場合はA:B=10:90となります。

交差点以外の道路

歩道のある道路

当然ながら、歩道や歩行者用通路での事故の場合は歩行者が優先され、自動車側に100%の過失が付きます。

しかし、歩行者が歩道を通行できる状態であるのに、車道を通行し衝突した場合は、歩行者の車道通行が許されていたかどうかや通行していた位置によって過失割合が変動し、歩行者が車道へ飛び出してきた場合も歩行者に過失が認められます。

詳しくは以下の表をご参考ください。

対向または同一方向の歩行者 歩行者の過失割合 自動車の過失割合
歩道上での事故 0 100
歩行者用道路での事故 0 100
車道上での事故
(歩行者が車道通行を許される場合)
10 90
歩行者が道路側端を通行していた場合
(歩行者が車道通行を許されていない場合)
20 80
歩行者が道路側端以外を通行していた場合
(歩行者が車道通行を許されていない場合)
30 70

歩道のない道路

歩道と道路の区別がついていない道路では、歩行者は右端通行をするよう道路交通法で定められています。しかし、道路工事などで右端通行が困難な場合や、その他の事情がある場合は左端通行を許可しています。

そのため、歩行者がどのように道路を通行していたかによって過失割合が変動します。

状況 過失割合(歩行者:自動車)
歩行者が右端を通行していた場合
(事情により左端通行が許可されている場合を含む)
0:100
歩行者が左端を通行していた場合 5:95
歩行者が幅員8m以上の道路の中央を通行していた場合 20:80
上記以外の場合 10:90

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料金について、こちらもご確認ください。
  • ※諸経費20,000円( 税込22,000円 )がかかります。
  • ※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
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  • ※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。
  • ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

自転車の飛び出し事故の過失割合

自転車は歩行者同様、事故に遭うと大きな怪我につながる可能性も高く、交通弱者となります。

しかし、自転車は道路交通法によって「軽車両」と分類されるため、過失割合は歩行者と同等ではありません。
例えば、交差点に信号機がない場合の衝突事故では、自転車:自動車=20:80となります。

自転車の飛び出しが原因の事故の場合、過失割合は歩行者の場合より加算修正される可能性が高いでしょう。

飛び出しによる交通事故の過失割合に納得いかない場合の対処法

飛び出しによる交通事故では、過失割合に納得いかない場合も多くあるでしょう。そのような場合、対処法として以下の2つが考えられます。

  • 適切な過失割合を主張して相手方と交渉する
  • 過失割合について弁護士に相談して交渉してもらう

ご自身で相手方保険会社を相手に適切な過失割合を交渉する場合は、主張を裏付ける証拠の準備や過去の類似事故の過失割合に関する法的知識などが必要となります。

もちろん交渉が上手くいけば過失割合を変更できる可能性はありますが、相手方保険会社は交渉のプロであることから、言いくるめられてしまうおそれもあり精神的負担が大きくなってしまいます。

そのため、過失割合に納得できない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

過失割合に納得いかない場合の対処法については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。

飛び出し事故の過失割合を弁護士に依頼するメリット

飛び出し事故の過失割合を弁護士に依頼するメリットには、以下のようなものがあります。

  • 適切な過失割合を主張できる
    弁護士は過去の類似事故や裁判例から基本過失割合を出し、さらに事故の具体的状況から修正要素を考慮して、適切な過失割合を相手方保険会社に主張します。過失割合を裏付ける様々な証拠を基に主張・立証していくことでこちらの主張が通りやすくなるでしょう。
  • 保険会社との交渉を一任できる
    相手方保険会社との交渉は、平日の日中にしか連絡が取れなかったり、返信が遅かったり、少なからず負担がかかってしまうものです。弁護士に依頼すれば保険会社とのやり取りを一任することができ、怪我の治療や仕事、家事・育児に専念できます。

飛び出しによる交通事故の過失割合でお困りの場合は弁護士法人ALGにご相談ください

飛び出し事故は歩行者や自転車が飛び出してきたことから起こる事故ですが、交通強者である自動車やバイクの過失割合が大きくなってしまいます。ドライバーの方が過失割合に納得できないことは当然の気持ちでしょう。

過失割合について少しでもお悩みの場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。

交通事故に強い弁護士であれば、個別の事故の状況から、過失割合を修正する要素を見出し、適切な過失割合を相手方保険会社と交渉していきます。
弁護士が交渉することで、適切な過失割合で合意できる可能性が高まります。

飛び出し事故による過失割合でお困りの方は、おひとりで悩まず、まずは一度私たちにご相談ください。

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。