労働災害の激突・衝突事故とは?損害賠償請求を行う際の検証内容など

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労働災害の激突・衝突事故とは?損害賠償請求を行う際の検証内容など

労働中に人と物とが激突・衝突する事故は、毎年1万件以上発生しています。

機械にぶつかったり、クレーンに衝突されたりなど、さまざまな業種・現場において発生する危険性のある事故で、衝撃が大きいほど重篤な後遺障害が残る可能性が高く、最悪の場合死に至るケースもあります。

そこで今回は、激突・衝突による労働災害の被害に遭われた方が適正な補償を受けるために知っておきたい労災保険の手続きや損害賠償請求について、本ページで理解を深めていきましょう。

労働中の激突・衝突事故とは

労働中の激突・衝突事故とは

労働中の激突・衝突事故とは、人が物に激突・衝突したり、人が物に激突・衝突されたりして負傷する事故を指します。

第三者の過失によって生じる可能性も高く、このような場合には過失のある相手方に対して損害賠償請求できることがあります。

【労働中に起こり得る激突・衝突事故の一例】
  • 不整地運搬車で後退中、橋に衝突した
  • ダンプが暴走し、山の斜面に激突した
  • ガラス窓に手を強くぶつけた
  • 天井に頭をぶつけた
  • 出会い頭に人とぶつかった
  • 伐倒木に激突された
  • 支えていた金型が倒れて下敷きになった
  • 後退してきたフォークリフトにひかれた など

フォークリフトによる労災は、以下ページもご参考になさってください。


激突・衝突による労災事故の発生状況

厚生労働省の統計※1によると、令和4年に発生した労働災害のうち、激突・衝突による事故の発生状況は次のとおりです。

発生件数に大きな差がないものの、激突された事故による死亡者が圧倒的に多いことがわかります。

事故の型 休業4日以上の死傷者数 死亡者数
令和4年の労働災害全体 132355件 774件
激突
(激突・衝突した事故)
7047件 6件
激突され
(激突・衝突された事故)
5694件 59件

※1・・厚生労働省の令和4年における労働災害発生状況より

激突・衝突事故が多い業種

労働中の激突・衝突による事故は、さまざまな業種で起り得る事故です。

なかでも運搬機械や動力機械を扱うことが多い製造業、建設業、運送業などの現場で発生する可能性が高く、このうち死亡者数が最も多いのが建設業です。

【令和4年 業種・事故の型別の死傷者数※2】

順位 業種 激突 激突され 合計
1 製造業 1338件 1070件 2408件
2 陸上貨物運送事業 1230件 892件 2122件
3 建設業 684件 800件 1484件

※2・・厚生労働省の令和4年における労働災害発生状況より

【令和4年 業種・事故の型別の死亡者数※3】

順位 業種 激突 激突され 合計
1 建設業 0件 27件 27件
2 林業 0件 16件 16件
3 製造業 1件 6件 7件

※3・・厚生労働省の令和4年における労働災害発生状況より

労働中に激突・衝突事故がおきた場合の労災保険の手続き

労働中に激突や衝突の事故が起きた場合は、労働基準監督署に請求書を提出することで、必要な調査が行われ、労災認定されれば労災保険給付を受けることができます。

基本的に会社を通して手続きが行われますが、被災者ご自身で直接手続きすることも可能です。

労災保険の内容

労働中の激突・衝突事故では、怪我の治療費に対する療養補償給付や、休業した場合の減収に対する休業補償給付が受給できます。

また、後遺症が残ってしまった場合に、後遺障害と認定されれば「障害補償年金」や「障害補償一時金」が受け取れます。

激突・衝突事故による労働災害に対する損害賠償請求

労働中の激突・衝突による事故では、会社側にも責任(過失)が認められるケースが多く、この場合は使用者(会社)に対して、慰謝料や労災保険からの補填で不足する部分の休業損害などの損害賠償請求が可能です。

ほかの従業員のミスで怪我をした場合は?

ほかの従業員の運転ミスや操作ミスによって事故が起きた場合、過失のある従業員はもちろん、その従業員を雇用する会社に対しても使用者責任を根拠に損害賠償請求が可能です。

損害賠償請求を行う際の検証内容

労働中の激突・衝突事故において、会社に対して損害賠償請求を行う場合、被災者側で会社の過失を検証し、追及しなければなりません。

具体的に、どのようなことを検証・追及すればよいのか、ポイントをご紹介します。

  • 機械を操作する者や周囲で業務に従事する者へ、十分な安全教育がなされていたか
  • 接触するおそれのある箇所への立入禁止などの防止措置・周知徹底がなされていたか
  • 機械や器具の防護措置・安全装置に欠陥や不履行がなかったか
  • 運転・操作を、必要な免許・資格を有する者に行わせていたか
  • 安全確保のため、監視員や作業主任者を選任し、必要な職務を行わせていたか など

激突・衝突事故の労働災害で損害賠償請求ができた事例

労働中の激突・衝突事故において、使用者責任に基づく損害賠償請求が認められた裁判例をご紹介します。

札幌地方裁判所 令和2年6月10日判決

<事案の概要>
岸壁に係留されていた被告所有の船舶の係留索が破断する事故において、破断面が原告(港湾業務に従事)の顔面に衝突し、傷害を負うとともに後遺障害が残存したとして、被告の使用者責任を主張し、損害賠償を求めた事案です。

<裁判所の判断>
被告の被用者である作業員・組合員には、係留索が破断しないよう措置をとる注意義務があり、これを怠ったとして不法行為が成立するとしたうえで、その使用者である被告は使用者責任を負うとして、後遺障害逸失利益や入通院・後遺障害慰謝料などの支払いを命じました。

労災の激突・衝突事故に遭われた場合はなるべく早めに弁護士にご相談ください

労働中の激突・衝突による事故は、「ほかの人が開けたドアがぶつかって打撲した」というように、比較的軽度の負傷で済むケースから、「クレーンに激突されて頭部外傷を負って重い後遺症が残った」など重篤な災害となるケースまで、さまざまです。

後遺症が残った場合、その補償額は高額になりますが、対応を誤ると受け取れる給付金や賠償金が減ってしまうことがあるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士による、適切な治療の受け方や後遺障害等級認定に向けたアドバイス・サポートが可能になります。

ご自身がどのような補償が受けられるのか、損害賠償請求が可能なのか、不安や疑問を抱えていらっしゃる方は、一度弁護士法人ALGにご相談ください。

弁護士

監修 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 : 弁護士 (福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2023年1月4日時点)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

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