労働中の飛来・落下災害とは?労災保険の給付や損害賠償請求について
労働中の飛来・落下災害では、鋭く尖った物が予期せず飛んできたり、重量物が落ちてきて直撃したりして、重篤な怪我を負うケースや死に至るケースも残念ながら少なくありません。
飛来・落下災害は毎年6000件近く発生していて、このうち死亡事故は40件前後(全体の約5%)という厚生労働省の統計からも、飛来・落下災害が比較的身近に起こり得る労働災害であることがわかります。
本ページでは、労働中の飛来・落下災害に注目して、過去の事例や原因の紹介を交えながら、労災保険給付や損害賠償請求について詳しく解説していきます。
目次
労働中の飛来・落下災害とは?
労働中の飛来・落下災害とは、仕事中に飛来物や落下物があたって怪我をしたという事故のことです。
重量物を取り扱ったり、加工・処理作業を行ったりする建設業・製造業・運送業などの現場で起こりやすいです。
飛来災害と落下災害の違い
飛来災害 | 飛来は、横方向から「飛んでくること」を意味します。 加工・処理中の物体やその欠片が自分に向って飛んできたり、近くの作業員に飛んでいったりして災害が発生するケースがあります。 |
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落下災害 | 落下は、「上から落ちてくること」を意味します。 取扱中の物を落として発生することが多く、手に持っていた工器具を自分の足に落としたり、吊り上げられた積み荷が落ちてきたりするケースがあります。 |
飛来・落下災害は重篤な災害につながりやすい
飛来・落下災害は、人に向かって物があたるという事故態様から、後遺障害が残る、あるいは死亡に至るような重篤な怪我を負うことが珍しくないため、労災保険からの補償額が最大で数千万円になるケースもあります。
飛来・落下災害の事例
労働中に起きた飛来・落下災害の事例を、いくつかご紹介します。
- 可搬式グラインダーで試運転中、「と石」が破裂し近くの作業員の顔面に直撃し負傷
- テーブル傾斜丸のこ盤で作業中、切り落とした木片が飛来して作業員にあたり死亡
- 金属を施盤加工中、飛んできた金属片が目に刺さり失明
など、飛来災害では飛来物が目にあたって失明するといったケースもみられます。
- 天井クレーンで鋼製角パイプ材を移動中、つり荷が落下して作業員が下敷きになって死亡
- 荷下ろし中、トラックのテールゲートから荷が落下し、作業員が下敷きになって死亡
- かかり木のかかった木を伐倒作業中、かかり木が落下して作業員を直撃し死亡
など、落下災害では死亡に至るケースも多くみられます。
飛来・落下災害が起こる原因
なぜ労働中に飛来・落下災害が起こるのでしょうか。
考えられる飛来・転落災害の原因は次のとおりです。
- 落下対策が不十分だった
- 作業手順に不備があった
- 作業状況の確認が不十分だった
- 保護具や服装に不具合があった
- 運搬機械や装置等に不具合があった など
飛来・落下災害で受け取れる労災保険給付
労働中に飛来・落下災害が起きた場合は、労働災害のうち業務災害に該当する可能性が高いです。
そのため、労働基準監督署に労災申請をして、労災認定がされれば、労災保険から保険給付が受けられます。
業務災害の労災認定要件》
労働中の飛来・落下災害が、「会社の指揮命令下で起きた事故であること(業務遂行性)」と、「事故で負った怪我と業務との間に因果関係があること(業務起因性)」という、2つの要件を満たせば、労働災害が認定されます。
飛来・落下災害で受け取れる労災保険給付
飛来・落下災害で労災認定されると受け取れる可能性のある労災保険給付は次のとおりです。
療養や休業が生じた場合 | 後遺障害が残った場合 | 被災者が亡くなった場合 |
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後遺障害が残った場合の補償
労働中の飛来・落下災害では、次のような重篤な後遺障害が残ってしまう場合があります。
- 飛来物が目にあたって失明してしまった
- 落下してきた重量物にはさまれた指が壊死して切断に至り、欠けたままになった
- 脊髄損傷によって、神経系統の機能障害が残った
- 頭部損傷が原因で、高次脳機能障害が残った など
このような障害が残ってしまった場合は、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、労働基準監督署に請求書を提出し、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
残存した障害について等級認定されれば、労災保険より次のような給付が受けられます。
障害等級1級~7級に該当する場合 | 障害等級8級~14級に該当する場合 |
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飛来・落下災害による損害賠償請求について
労働中に飛来・落下災害に遭った場合は、労災保険給付に加えて、安全配慮義務違反や使用者責任を根拠に、会社へ損害賠償請求が可能なケースがあります。
安全配慮義務違反と使用者責任
安全配慮義務違反 | 会社は従業員の健康と安全に配慮する義務を負っていて、この義務を怠ったために労災が起きたことを立証できれば、損害賠償請求が認められます。 |
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使用者責任 | ほかの従業員の過失によって労災が起きた場合、その従業員を雇用する会社も賠償責任を負うため、過失のある従業員と会社に対して、損害賠償請求ができます。 |
慰謝料や、一部の損害は労災保険の補填だけでは不十分な場合があるので、会社や過失のある従業員に対して損害賠償請求ができるかどうか確認してみましょう。
飛来・落下災害によって損害賠償請求ができた裁判例
労働中の飛来・落下災害において、会社の使用者責任に基づく損害賠償請求が認められた裁判例をご紹介します。
【横浜地方裁判所 平成19年6月28日判決】
<事案の概要>
草刈作業に従事していた原告が、ほかの作業員の刈払機が飛散させた石様の異物が左眼にあたって失明した労働災害事故において、派遣先の下請会社および元請会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めた事案です。
<裁判所の判断>
被告らは安全配慮義務および注意義務を十分に尽くしていたと主張するものの、教育やミーティングなどの機会に事故の危険性や安全確保のために注意すべき点の周知徹底を怠ったとして、安全配慮義務違反または使用者責任に基づき、装具費、慰謝料、休業損害、逸失利益などの賠償責任を負うべきと判断しました。
労働中の飛来・落下災害による損害賠償請求などは弁護士にお任せください!
労働中の飛来・落下災害は、その衝撃の大きさによっては死に至るケースも少なくありません。
死に至らなくても、さまざまな重篤な後遺障害が残ってしまうことも多いので、労災保険からの保険給付は高額になる傾向にあります。
適正な補償を受けるためにも、労災申請の手続きが重要となるので、なるべく早めに弁護士に相談することをおすすめします。
請求できる保険内容が適切か、後遺障害等級認定が受けられるかどうかなど、被災者の方の負担が軽くなるように弁護士がサポートいたします。
飛来・落下災害による労災申請や損害賠償請求をお考えの方は、まずは弁護士法人ALGへご相談ください。
監修 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
保有資格 : 弁護士 (福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2023年1月4日時点)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。
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