遺産分割協議のやり直しはできる?時効や手順、注意点について

遺産分割協議のやり直しはできる?時効や手順、注意点について

遺産分割協議が成立した後で、相続人が「やはり納得できない」と思い、やり直したいと考えるケースがあります。

例えば、遺産分割協議書に記載されていなかった高額な相続財産が発見された場合や、他の相続人の脅迫的な言動によって遺産分割協議書に無理やり署名押印させられてしまった場合等には、協議を最初からやり直したいと考える方は少なくないでしょう。

この記事では、遺産分割協議のやり直しができるケースや、やり直すときの手順、注意するべき点等について解説します。

遺産分割協議のやり直しができるケースは?

遺産分割協議が成立すると、基本的にやり直しはできません

最高裁判所の判例によれば、遺産分割協議で成立した内容に従わない相続人がいたとしても、それを理由に協議の結果を無効にすることはできません。

遺産分割協議は有効であることを前提に、合意した内容に従うように要求することになります。

しかし、以下のような場合については、遺産分割協議のやり直しが認められています。

  1. 相続人全員が合意している場合
  2. 新たな財産が見つかった場合
  3. 遺産分割協議が無効だった場合
  4. 脅迫・詐欺によって遺産分割が行われていた場合

これらの場合について、次項より解説します。

相続人全員が合意している場合

相続人全員が合意している場合には、遺産分割協議をやり直すことができます。

このとき、1人でもやり直しに反対していれば、遺産分割協議をやり直すことはできません。

たとえ、遺産分割協議に参加した結果として相続財産を取得しなかった相続人がいても、その相続人の同意も必要となります。

遺産分割協議をやり直したときには、新たな遺産分割協議書を作成して、相続人全員の署名と、実印による押印が必要となります

新たな財産が見つかった場合

遺産分割協議を行った後で新たな財産が見つかった場合には、通常であれば発見された財産についてのみ、どのように分配するか再協議を行うことになります。

相続人全員の合意があれば、すべての財産について再協議を行うことも可能です

新たな財産が発見された場合に備えて、遺産分割協議書に、新たな財産が見つかったときの対応方法を明記しておくと安心です。

あらかじめ、後で見つかった相続財産は、相続人の1人にすべて相続させると決めておく方法も有効です。

相続財産調査について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

遺産分割協議が無効だった場合

遺産分割協議が無効となるのは、主に次のような場合です。

  • 相続人のうち、遺産分割協議に参加していなかった者が1人でもいる場合
  • 意思能力を欠いた相続人本人が協議に参加していた場合
  • 未成年者の相続人本人が協議に参加していた場合
    未成年者は単独で遺産分割協議に参加することはできないため、親が法定代理人として協議を行うことになります。また、親と子がともに相続人の場合には、親が子の法定代理人として協議に参加することは利益相反となるため、未成年の子のために特別代理人を選任する必要があります。
  • 遺産分割の内容が公序良俗に反する場合

これらの場合に遺産分割協議が無効になると、無効な協議によって作成された遺産分割協議書では、相続登記等の手続きができなくなるため注意しましょう。

脅迫・詐欺によって遺産分割が行われていた場合

脅迫や詐欺によって遺産分割が行われた場合や、錯誤(勘違い)によって遺産分割に合意していた場合等には、取り消すことができます

これらのうち、詐欺に該当するのは以下のようなケースです。

  • 相続財産が一部の相続人によって故意に隠されていたケース
  • 相続財産が一部の相続人によって使い込まれていたケース
  • 多額の生前贈与を受けたことを黙っていた相続人がいたケース
  • 相続財産の価額が偽りであったケース

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遺産分割協議のやり直しに時効はある?

遺産分割そのものに時効はありません。しかし、詐欺や脅迫、錯誤を理由として遺産分割協議のやり直しを求める場合には、時効が適用されます。

協議のやり直しを求めるときの時効は、次のように定められており、どちらか早い方が適用されます。

  • 「だまされた」「勘違いしていた」と気づいたときから5年
  • 遺産分割協議書を作成してから20年

時効になってしまうと、協議のやり直しを請求できなくなります。詐欺や脅迫等があった場合には、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

遺産分割協議のやり直しの手順

遺産分割協議をやり直すときには、以下のような手順で行います。

  1. 相続人全員を集めて話し合う
  2. 必要書類を用意して遺産分割協議書を再作成する
  3. 税金を算出する

これらの手順について、次項より解説します。

①相続人全員を集めて話し合う

遺産分割協議をやり直す場合には、相続人全員によって再び話し合わなければなりません。

このとき、最初に遺産分割協議を行った相続人のうちの誰かが亡くなっているケースがあります。

相続人が亡くなっているケースでは、亡くなった相続人の地位をその相続人が引き継ぐことになります。

そのため、亡くなった相続人の相続人全員を遺産分割協議に加える必要があります。

②必要書類を用意して遺産分割協議書を再作成する

遺産分割協議をやり直すときにも、遺産分割協議書を作成します。そのための必要書類は次のようなものです。

  1. 遺産分割協議書
  2. 被相続人の住民票の除票
  3. 相続人の住民票
  4. 相続人の印鑑証明書

やり直しによるものであっても、遺産分割協議書は正確に記載しましょう。

遺産分割協議書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

③税金を算出する

相続人全員の合意によって遺産分割協議をやり直した場合には、贈与税や譲渡所得税等の新たな税金が発生するおそれがあります。

再協議の結果として、不動産を当初の相続人から他の相続人に移した場合には、不動産取得税や登録免許税がかかるおそれがあります。

ただし、無効や取り消しとなる理由があった場合には、遺産分割協議をやり直しても、通常の遺産分割協議と同じように扱われるため贈与税等はかからないことが多いです。

また、全員の合意による再協議であっても、無効や取り消しによる再協議であっても、相続税を申告していた場合には相続税の修正申告や更正の請求が必要となります。

遺産分割協議をやり直す際の注意点

遺産分割協議をやり直すときには、以下のような点に注意しなければなりません。

  1. 遺産分割協議をやり直すと「二重課税」のリスクがある
  2. 不動産の相続人を変更した場合は登記費用・不動産取得税がかかる
  3. 第三者へ権利が移転されている場合はやり直しができない
  4. 遺産分割調停・審判により遺産分割した場合はやり直しができない

これらの注意点について、次項より解説します。

遺産分割協議をやり直すと「二重課税」のリスクがある

遺産分割協議をやり直して、当初の相続人とは異なる相続人に不動産等の財産を相続させると、税法上、無償の場合は「贈与」、多少の対価が支払われた場合は「譲渡所得」として扱われるおそれがあります。

そのため、当初の協議の結果として相続税を納めていたとしても、それとは別に「贈与税」や「譲渡所得税」等が課税されるリスクがあるので注意しましょう。

不動産の相続人を変更した場合は登記費用・不動産取得税がかかる

遺産分割協議のやり直しによって不動産の所有者を変更する場合には、相続登記をやり直す必要があります。

相続登記では、登録免許税という税金を支払います。相続登記をやり直すと、登録免許税は返還されないため二重に支払うことになります。

不動産の相続人が当初と異なる相続人になったときには、相続登記の抹消登記を行い、改めて相続登記を行わなければなりません。相続登記の登録免許税は、基本的には不動産の評価額の0.4%であり、抹消登記の登録免許税は1000円です。

他にも、登記手続きを専門家に依頼するときの依頼料等が必要となるため、多額の費用がかかることに注意しましょう。

第三者へ権利が移転されている場合はやり直しができない

当初の遺産分割協議によって不動産等を相続した者が、協議をやり直すよりも前に、第三者に不動産等を移転していた場合には、基本的には第三者の権利を侵害することはできません。

そのため、第三者に返還等を求めることはできません。

遺産分割調停・審判により遺産分割した場合はやり直しができない

遺産分割協議が調停や審判によって行われていた場合には、基本的に遺産分割協議をやり直すことができません。

なぜなら、調停や審判は裁判所が関与する公的な手続きであるため、その効力を簡単に無効にするべきではないからです。

ただし、相続人が全員参加していなかった等の無効となる事由があった場合には、遺産分割協議をやり直す必要があります。

遺産分割協議の無効に関する判例

【東京地方裁判所 令和元年10月16日判決】

 この事例は、「著明な作曲家・歌手であった被相続人の相続財産の総額は約1億4000万円である」という、被告が依頼した税理士等の説明を基に遺産分割協議を行ったところ、相続財産のうち、被告が相続した著作権の評価額が不当に低額であったなどとして、原告らが遺産分割協議は無効であったことの確認を求めた事例です

裁判所は、税理士らが著作権の評価額をおよそ4800万円としたり、およそ4600万円としたりしたことについて、評価方法によっては約1億円とも算定され得ることから、相続財産の総額について錯誤があったと認めました。

そして、原告らが遺産分割協議の合意した動機は黙示的に示されており、原告らに重過失はなかったとして、遺産分割協議は無効であったことを確認しました。

遺産分割協議のやり直しに関するQ&A

遺産分割協議のやり直しの際に相続人の一人が死亡している場合はどうなりますか?

相続人の一人が死亡していても、遺産分割協議のやり直しは可能です

この際、死亡した相続人にとっての相続人全員が遺産分割協議に参加する必要があります。

遺産分割協議書は作り直す、税金等の費用がかかることは、相続人全員が生きているケースと同様です。

遺産分割協議後に相続人が死亡した場合はやり直した方が良いですか?

遺産分割協議が成立した後で、相続人の誰かが死亡したとしても、遺産分割協議をやり直す必要はありません

なぜなら、各相続人に分配される相続財産は確定しているので、その後で相続人のうち誰かが死亡しても、その相続人の相続人が亡くなった相続人の地位を引き継ぐため、遺産分割協議の効力に影響しないからです。

相続手続きについては、基本的に亡くなった相続人の書類をそのまま用いることができます。亡くなった相続人に関する書類が揃っていないケース等では、亡くなった相続人の相続人全員に協力してもらい、遺産分割協議が真正に行われたことを証明する文書を作成する方法等によって代用します。

遺産分割協議のやり直しをして相続分が変わった場合、贈与税はかかりますか?

遺産分協議をやり直したために相続分が変わり、当初とは違う相続人が相続することとなる財産には、贈与税(または所得税)がかかることがあります。贈与税とは、個人からの贈与によって財産を取得したときにかかる税金です。財産を受け取った者に納める義務があります。

相続人間の合意によってやり直しする場合は、1回目の遺産分割協議は有効に成立しており、やり直しによる変更は相続人間での贈与または譲渡と考えられるためです。

ただし、年間で110万円以下の贈与を受けても非課税とされています。

一方、無効や取り消しによってやり直すときには、贈与税はかかりません。この場合、当初の遺産分割協議は無効となり、再度の遺産分割協議は、税法上1回目と扱われるからです。

遺産分割協議をやり直す際は弁護士にご相談ください

遺産分割協議をやり直すときには、手間がかかるだけでなく、かなりの税金や費用がかかることを覚悟しなければなりません。そのため、状況によっては、再び遺産分割協議を行うよりも良い解決方法があると考えられます。

そこで、遺産分割協議をやり直したいと考えたときには、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、より良い解決方法を検討してアドバイスすることができます。もちろん、相手方と争いになったときには、ご依頼いただくことも可能です。

なお、遺産分割協議が無効になってしまう等のトラブルを防止するためには、当初の遺産分割協議の時点でご相談いただくことが望ましいので、遺産分割協議を行うときには前もって弁護士への相談をおすすめします。

 

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。