遺産分割協議書の書き方|記載内容や文例、注意点などを解説

遺産分割協議書の書き方|記載内容や文例、注意点などを解説

相続人全員が話し合って相続財産の分配方法を決めたら、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書は、弁護士等の専門家のほか、相続人が自分で作ることも可能です。
ただし、自分で遺産分割協議書を作成する場合には、相続トラブルを完全に解決して相続手続きに使えるように注意しなければなりません。

この記事では、遺産分割協議書の書き方や、自分で遺産分割協議書を作成するときの注意点等について解説します。

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議による合意内容をまとめた書類です。作成する義務はなく、特定の書式があるわけでありませんが、作成しておくことによって相続トラブルを防ぐことができます。また、相続手続きにおいて添付書類として用いることができます。
ただし、相続手続きで添付書類として用いるために、誰がどの財産を相続したのかについて正確に記載する必要があります。

遺産分割協議書が必要となるケース

遺産分割協議書は、相続人が複数いる場合には、トラブルを避けるために作成するのが望ましいです。しかし、遺言書があれば作成しなくても良いケースもあります。
遺産分割協議書が必要となるケースとして、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 有効な遺言書が作成されていないケース
  • 遺言書の指定と異なる遺産分割協議を行ったケース
  • 相続人が2人以上であるケース
  • 相続財産に不動産等が含まれているケース

いつまでに作成すべきなのか

遺産分割協議書の作成期限は、法律上は設けられていません。しかし、相続税の申告が必要な人については遅くとも10ヶ月以内、可能であれば6ヶ月以内に作成するのが望ましいでしょう。
なぜなら、相続税の申告が遅れると、以下のような悪影響が生じてしまうからです。

  • 無申告加算税や延滞税等がかかり、税額が増えてしまう
  • 課税価額を下げるための「小規模宅地の特例」が使えなくなる
  • 税額を控除する「配偶者控除」等が使えなくなる

なお、遺産分割協議書を作成できなくても、一旦、期限内に法定相続分によって相続税を申告して、3年以内に更正することも可能です。しかし、更正手続きの手間がかかることがデメリットだといえます。

遺産分割協議書の提出先

遺産分割協議書の提出先を、以下の表にまとめたのでご覧ください。
なお、基本的にコピーを提出することはできないので、提出時には原本還付の手続きを併せて行う必要があります。

相続手続き 提出先
不動産の相続登記 不動産の所在地を管轄する法務局
車の名義変更 運輸支局
預金の名義変更や解約払い戻し 被相続人の口座がある銀行等の金融機関
上場株式の名義変更、売却 被相続人が取引していた証券会社
非上場株式の名義変更 株式を発行した会社

遺産分割協議書の書き方の決まりはある?

遺産分割協議書の書き方に決まりはありません。しかし、相続財産を正確に記載しなければ、遺産分割協議書を添付書類にして相続手続きを行うことができなくなるおそれがあります。
どのような相続財産を誰に分配したのかについて、正確に記載しましょう。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、手書きで作成することもできますが、パソコン等によっても作成することができます。ただし、相続人全員の署名は手書きで行うようにしましょう。
遺産分割協議書の記載内容として、主に以下のようなものが挙げられます。

  1. 被相続人の住所や氏名、死亡日
  2. 相続財産の詳細と、誰がどの財産を相続するのかの明記
  3. 相続人全員の署名と実印の押印、全員分の印鑑証明書の添付
遺産分割協議書のサンプル

預金や現金の書き方

預貯金は、金融機関の名称や支店名、口座番号等を記載して、誰が相続するのかを明記します。ここで、預金額を記載すると、その後、利息がつく等によって金額が変動したときに支障があるため、預金額は記載しないのが一般的です。
なお、遺産分割の対象となるのは被相続人の死亡時の預金残高であるため、金融機関から残高証明書を発行してもらい、遺産分割協議書に添付すると良いでしょう。

また、被相続人が保有していた現金についても、遺産分割協議書に忘れずに記載しましょう。特に、いわゆるタンス預金が高額である場合等では争いになるリスクがあるため注意しましょう。

遺産分割協議書 現預金記載例

不動産の書き方

遺産分割協議書に、不動産の遺産分割について記載するときには、不動産の表示は登記事項証明書に記載されているとおりに記載します。相続登記の際、法務局に、添付書類として遺産分割協議書を提出する必要があるからです。

マンションの一室を相続した場合には、敷地権についても忘れずに明記しましょう。
なお、金融機関等の第三者に不動産の情報を知られたくない場合には、不動産に限定した遺産分割協議書を別に作成することもできます。不動産に限定した遺産分割協議書でも相続登記は可能です。

遺産分割協議書 不動産記載例

車の書き方

遺産分割協議書に、自動車の遺産分割について記載するときには、自動車登録番号や車体番号等を記載します。

遺産分割協議書 車記載例

有価証券や株式の書き方

遺産分割協議書に、株式の遺産分割について記載するときには、証券会社の名前や口座番号、株式を発行している会社名、株式の種類、株式数等を記載します。

遺産分割協議書 有価証券記載例

債務や負債の書き方

相続財産に借金等が含まれている場合には、遺産分割協議書に記載することができます。そして、遺産分割協議によって、相続人間で借金等の負担割合を決めた場合、当事者間では有効です。

しかし、借金等は相続によって当然に法定相続分によって分割されるため、相続人間で法定相続分と異なる負担割合で合意したとしても、債権者との関係では、その効力を主張することはできません。そのため、遺産分割協議書の記載にかかわらず、債権者は法定相続分の割合で各相続人に請求を行うことが可能です。

この場合、遺産分割協議によって借金等の債務を負担しない相続人が債権者に債務の弁済をした場合には、債務を相続した相続人に対して求償請求を行うことにより、債権者に支払った金銭等を取り戻すことができます。

遺産分割協議書 負債記載例

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遺産分割協議書を書く際の注意点

遺産分割協議書を作成するときには、以下のような点に注意しなければなりません。

  1. 記入漏れがないよう慎重に作成する
  2. ページが複数になる場合や枚数を多く作成する場合は契印・割印が必要
  3. 新たな財産が見つかった場合について記載しておく
  4. 借金についての記載は相続人間のみ有効

これらの注意点について、次項より解説します。

記入漏れがないよう慎重に作成する

遺産分割協議書に記載漏れや誤りがある場合等では、適切な遺産分割ができない可能性があるので慎重に作成しましょう。
もしも遺産分割協議書を作り直す場合には、相続人全員による新たな遺産分割協議の合意が必要となります。

さらに、自己都合によって、遺産分割協議をやり直しても相続税は返還されません。相続財産の移動がある場合には、当初の相続人から新たな相続人への贈与と捉えられ、新たに贈与税を課税されるおそれがあります。このように、労力的にも金銭的にも相続人の負担が重くなってしまいます。

リスクを減らすために、前もって弁護士等の専門家に依頼しておくことをおすすめします。

ページが複数になる場合や枚数を多く作成する場合は契印・割印が必要

遺産分割協議書に複数のページがある場合や、人数分の遺産分割協議書を作成した場合には、契印割印をしなければなりません。

法律上は、契印や割印が有効となる要件ではないものの、改ざんされていないことを証明するために用いられます。
契印は、ページとページの間に押印します。製本テープ等によってまとめた場合には、テープ等と表紙にまたがるように押印します。

また、割印は、全員分の遺産分割協議書にまたがるように押印します。

相続人が多いと、全員へ周知するのに手間取ったり、遺産分割協議書の部数が多いとうまく押印できずミスをしやすい作業ですので、実際の押印の方法については、事前に以下の図をご覧になって間違いのないようご注意ください。

遺産分割協議書 ダミー
遺産分割協議書 ダミー
遺産分割協議書 ダミー

新たな財産が見つかった場合について記載しておく

遺産分割協議書を作成するときには、作成時に記載漏れしていた新たな相続財産が発見された場合について明記しておくようにしましょう。
例えば、「新たな相続財産が見つかった場合には長男Aが全て相続する」等の文言を記載すると良いでしょう。

このような文言がないと、新たに発見された相続財産の相続権を主張する争いが発生するおそれがあり、その場合には改めて遺産分割協議を行わなければならなくなってしまいます。

借金についての記載は相続人間のみ有効

借金等の負債も相続財産であり、遺産分割の対象とすることが可能です。遺産分割によって借金等を相続した相続人は、返済義務を相続することになります。
ただし、負債について遺産分割協議で取り決めた内容は相続人間のみで有効となり、債権者には効力が及びません。相続人は、法定相続分に従い、各相続人に請求することができます。このため、法定相続分の負債について返済を求められた相続人は、支払わなければなりません。

遺産分割協議書の作成後に多額の借金が判明した場合、相続放棄をしたいと思うかもしれません。
しかし、遺産分割協議を成立させることは基本的に相続財産の処分として扱われます。相続財産を処分してしまうと、相続開始から3ヶ月以内であっても相続放棄はできなくなってしまいます。借金等の調査は慎重に行いましょう。

遺産分割協議書の書き方に関するよくある質問

遺産分割協議書は自分で作成できますか?

遺産分割協議書の作成は、特定の資格等がなくてもできます。また、書式は指定されておらず、パソコン等を使用して作成することもできますので、自分で作成することは可能です。ただし、十分な知識がないと、以下のようなリスクを伴います。

  • 遺産分割協議書に相続財産の記載漏れがあると、記載されていない相続財産の分配について新たに争いが発生するリスクがある
  • 遺産分割協議書の内容に不備があると、相続登記や相続税の申告手続きがスムーズに進まなくなる可能性がある
  • 分割方法について相続人間でもめてしまい、遺産分割協議が長期化してしまうおそれがある

相続財産の全てを一人の人が相続した場合の書き方を教えてください

相続財産の全てを1人で相続した場合であっても、他の相続人の全員が相続放棄した場合等を除けば遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割協議書には、「全ての財産を相続する」等の書き方ではなく、不動産や預貯金等を特定できるように明記するのが望ましいでしょう。これは、他の相続人からの、「そんなに高額な財産があるとは知らなかった」等の主張による遺産分割協議の無効化を防ぐためです。

なお、書面には「借金等も全て1人で相続する」旨を明記しましょう。債権者に対する効力はありませんが、相続人間では効力があります。
また、相続財産をまったく受け取らない相続人についても、署名押印と印鑑証明書の添付が必要です。

相続放棄した際にも遺産分割協議書は必要ですか?必要な場合の書き方を教えてください

自分が相続放棄した場合には、最初から相続人ではなかったものとして扱われるため、遺産分割協議に参加しないので、遺産分割協議書の作成に参加する必要もなくなります。
また、相続人になる予定だった全員が相続放棄した場合や、相続放棄によって相続人が1人だけになった場合についても、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

ただし、家庭裁判所で手続きを行う相続放棄ではなく、他の相続人等に対して「相続財産を受け取らない」旨を伝えただけであれば、相続財産を受け取らない人も遺産分割協議に参加して、遺産分割協議書に署名押印する必要があります。
このケースでは、遺産分割協議書の内容は、「誰がどの相続財産を受け取るか」について記載すれば良いでしょう。相続財産を受け取らない相続人は、最後の署名と実印での押印、そして印鑑証明書の添付を忘れないようにしましょう。

遺産分割協議書の作成は弁護士にお任せください

遺産分割協議書は、相続人間のトラブルを防止するとともに、相続手続きをスムーズに進められるものでなければなりません。
遺産分割協議書を自分で作成するのが不安な方は、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、相続財産調査の結果等と照らし合わせて、記載漏れやミス等について確認することができます。
また、遺産分割協議の前提となる相続財産調査等についても、併せてご相談いただけます。

 

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。