死因贈与とは?遺贈との違いやメリット、注意点について

死因贈与とは?遺贈との違いやメリット、注意点について

法定相続人ではない者に相続財産を遺す方法として、死因贈与が挙げられます。死因贈与は、生きているうちに当事者の合意によって契約するため、亡くなった方の生前の希望に従って、財産を贈ることのできる可能性が高いです。

この記事では、死因贈与に条件を付けられることや遺贈との違い、死因贈与のメリット・デメリット、注意点、実施するときのポイント等について解説します。

死因贈与とは

死因贈与とは、贈与する者が亡くなったときに、財産を特定の対象者に贈る契約です。一方で、贈与する者が生きているうちに財産を贈る契約は生前贈与と呼ばれます。

死因贈与契約は口頭でも成立しますが、契約していたことを証明するのが難しいため、なるべく契約書を作成することが望ましいです。また、あくまでも法律上の契約であり、18歳未満の者が贈与者として有効に契約するためには、一般的に親権者の同意が必要となります。

贈与を受ける者が18歳未満である場合にも、基本的には親権者の同意が必要ですが、単に利益を得るだけの場合には例外的に同意が不要となります。

負担付死因贈与とは

負担付死因贈与とは、贈与する者が、贈与を受ける者に対して、何らかの負担をしてもらうことを条件として贈与を行う契約です。

 条件にする負担の自由度は高いので、例えば以下のようなものにすることができます。

  • 自分の老後の介護等を条件として、預貯金を贈与する
  • ローンの残金を支払うことを条件として、家屋と土地を贈与する
  • ペットを引き取って世話することを条件として、現金を贈与する

ただし、贈与を受ける者が条件をすべて履行した場合には、贈与契約を一方的に破棄することは基本的にできなくなります。また、条件の一部を履行しただけでも、一方的な破棄は難しくなるので注意しましょう。

【一覧】死因贈与と遺贈の違い

自身の死亡後に、特定の対象者に財産を譲る方法としては、死因贈与だけでなく遺贈もあります。

死因贈与と遺贈の大きな違いとして、契約の有無が挙げられます。死因贈与は契約なので、双方の同意が必要です。一方で、遺贈は単独行為なので、遺言者の意思だけで可能です。

なお、遺贈とは、遺言書による贈与のことです。遺贈するためには遺言書を作成する必要があり、もしも遺言書が無効となってしまうと、遺贈も無効になります。

死因贈与と遺贈の違いを表にまとめたのでご確認ください。

死因贈与 遺贈
契約の形態 贈与契約 遺言書
当事者間の合意 必要 不要
贈与者の意思の反映 可能 可能
書面の作成 不要 必要
一方的な撤回 原則可
贈与者の死後の放棄 不可
不動産等の仮登記 可能 不可
年齢 18歳以上
(18歳未満は親権者の同意が必要)
15歳以上
税金の種類 相続税 相続税

死因贈与のメリット・デメリット

死因贈与にはメリットとデメリットが存在します。それぞれについて、次項より解説します。

死因贈与のメリット

贈与者の要望が反映される

死因贈与を行うことに条件を付ける「負担付死因贈与」という形であれば、自分の要望に応じてもらう代わりに贈与する契約ができます。例えば、介護をしてもらうことや財産の管理をしてもらうこと等を条件にすることができます。

被相続人である贈与者が生きているうちに契約するため、遺言書を作成して遺贈する場合と比べて、要望に応じてもらう代わりに財産を遺せる可能性が高まります。

書面がなくても成立する

死因贈与契約は、双方の合意によって成立するため、口頭で成立させることも可能です。遺贈は、法律で定められた形式に従って遺言書を作成しなければできないことと比べると、手間がかかりません。

ただし、相続トラブルになったときに、書面を作成していなければ死因贈与契約を証明することができないため、書面は必ず作成するようにしましょう。

書面作成には、遺言書のような厳しいルールはないので、遺言書を作成するよりも簡単です。また、書面が無効となって、死因贈与も無効となってしまうリスクは低いと言えます。

贈与者の死後に一方的に破棄されることはない

死因贈与契約は契約であるため、贈与者の死後に受遺者が一方的に契約を破棄することは基本的にできません。そのため、財産を贈ることのできる可能性は高いです。

一方、遺贈の場合、遺言書を作成して遺贈する予定であったとしても、被相続人の死後に受遺者に放棄されてしまうリスクがあります。

死因贈与のデメリット

負担付死因贈与は撤回できない場合がある

贈与者の気が変わったとしても、負担付死因贈与の場合は、負担がすべて、または大部分履行されていると、基本的に贈与契約を撤回することはできません。

一方、負担付ではない死因贈与契約は、当事者の意思によって、いつでも撤回することが可能です。

不動産の死因贈与は税金が高い

 不動産を死因贈与すると、遺贈よりも税金を多く取られるおそれがあります。

死因贈与には贈与の税率が適用されます。一方で、相続人への遺贈には、基本的に相続の税率が適用されるため、相続人への死因贈与は相続人への遺贈よりも税率が高くなってしまいます。

登記を移転するときにかかる登録免許税と、不動産を取得したときにかかる不動産取得税の税率を表にまとめたのでご確認ください。

死因贈与 遺贈
登録免許税 一律2.0% 法定相続人:0.4%
法定相続人以外:2.0%
不動産取得税 一律4.0% 法定相続人:非課税
法定相続人以外:4.0%

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死因贈与に関する注意点

死因贈与契約には、主に以下のような注意点があります。

  • 死因贈与契約の効力が発生しないケースがある
  • 受贈者への遺留分侵害額請求の対象になる
  • 死因贈与は相続税の課税対象になる

これらの注意点について、次項より解説します。

死因贈与契約の効力が発生しないケースがある

死因贈与契約は、必ず効力が発生するものではありません。

契約後に異なる内容の遺言書が作成された場合、例えば、贈与契約の対象の不動産を遺贈するとの内容の遺言書が作成された場合には、作成日の新しい方が優先されるため、基本的に死因贈与契約を撤回したことになります。

また、贈与する者よりも先に、贈与を受ける予定であった者が亡くなった場合には、基本的には死因贈与契約は効力を失うと考えられます。

ただし、贈与を受ける予定であった者が先に亡くなっても、特別の事情があれば、相続人が贈与を受ける権利を相続する場合もあります。

そのため、特定の人物に贈与したいが、その相続人には贈与したくないと考えている場合には、贈与を受ける者が先に亡くなったら死因贈与契約を解除する旨の規定を入れておくと良いでしょう。

受贈者への遺留分侵害額請求の対象になる

死因贈与で受け取った財産は、遺留分の対象となるため、贈与された者が遺留分侵害額請求を受けるおそれがあります。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている、相続財産の最低限の取り分のことで、遺留分侵害額請求とは侵害された遺留分に相当する金銭を請求することです。

例えば、相続人が子供1人だけの被相続人が、全財産を第三者に死因贈与した場合、子は贈与を受けた者に対して、全財産の半分に相当する金銭を請求することができます。

このとき、贈与された財産のうち預貯金等が少なく、贈与を受けた者も十分な預貯金等を保有していないケースでは、贈与された不動産などを金銭の代わりに引き渡す等の対応が必要となるおそれがあります。

死因贈与は相続税の課税対象になる

死因贈与契約によって財産を贈られた場合には、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。

相続税は、被相続人の財産の評価額が基礎控除額を超えているとかかります。基礎控除額は、以下のような式によって計算します。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

被相続人の財産の評価額が基礎控除額を超えている場合には、10ヶ月以内に相続税申告書を提出して、相続税を納付する必要があります。しかし、贈与を受ける者が、被相続人の財産のすべてを把握するのは困難なケースが多いと考えられます。

 このため、死因贈与契約をするときには、贈与する者の財産が基礎控除額を上回っているかについて、なるべく把握することが望ましいでしょう。

死因贈与を実施する3つのポイント

 死因贈与契約を行うときに重要なこととして、主に以下のポイントがあります。

  • 死因贈与契約書は「公正証書」で作成する
  • 死因贈与の執行者を決めておく
  • 不動産を死因贈与するなら仮登記を行う

これらのポイントについて、次項より解説します。

死因贈与契約書は「公正証書」で作成する

贈与する者と贈与を受ける者との間で合意したら、公正証書で死因贈与契約書を作成しましょう。

公正証書とは、公証人が作成する公文書です。公正証書には、とても強い証拠能力が認められていることから、争いになった場合に有効性が高いです。

契約書には、決まった書式やルールはありません。そのため、遺言書のように、形式的なミスによって契約書が無効となってしまうリスクは低いと考えられます。

死因贈与の執行者を決めておく

死因贈与契約を締結するときには、執行者を決めておくようにしましょう。執行者を決めておくと、不動産の所有権移転登記を、贈与を受けた者と執行者だけで行えるため、手続きがスムーズに進む等のメリットがあります。

執行者になる者に制限はなく、贈与を受ける者を指定しておくことも可能です。ただし、不動産の所有権移転登記などを行う必要があるため、手続きに自信がなければ弁護士等の専門家に依頼しましょう。

不動産を死因贈与するなら仮登記を行う

死因贈与契約の対象である不動産は、贈与する者が亡くなったときに所有権を移転することを前提として始期付所有権移転仮登記を行うことができます。

仮登記をしておくと、対外的に所有権が移転する予定であることを示すことができるため、贈与する者が認知症になった等のトラブルに対応できる可能性が高まります。さらに、贈与する予定であった者の気が変わったとしても、仮登記されていれば撤回しにくくなります。

仮登記は、贈与する予定である者と、贈与を受ける予定である者が共同で申請します。また、贈与する予定である者の承諾があれば、贈与を受ける予定である者が単独で申請することもできます。

一方、遺贈については、遺言書がいつでも書き換え可能であること等から、仮登記することはできません。

死因贈与に関するQ&A

死因贈与は何歳からできますか?

死因贈与は契約なので、基本的に18歳からできるようになります。18歳未満でも、親権者などの同意があれば可能です。
単に利益を得るだけの死因贈与であれば、例外的に未成年者でも可能となります。

死因贈与と生前贈与の違いは何ですか?

死因贈与と生前贈与の主な違いは、贈与が行われる時期です。
死因贈与は、贈与する者が亡くなったときに行われます。一方で、生前贈与は、贈与する者が生きているうちに行われます。

他の主な違いを、表にまとめたのでご覧ください。

贈与の条件 主にかかる税金 契約後の撤回
死因贈与 付けることができる 相続税 贈与する者が亡くなってから放棄できる
生前贈与 付けることができない 贈与税 書面による契約は基本的に撤回できない

死因贈与の同意はどのようにすればよいですか?

死因贈与契約への同意は、口頭でも可能です。しかし、契約したことを証明するのが難しいため、贈与する者が亡くなった後に、相続人等とトラブルになるおそれがあります。

そのため、なるべく公正証書で死因贈与契約書を作成しましょう。

死因贈与と遺言書ではどちらが優先されますか?

死因贈与には、性質に反さなければ遺贈の規定が準用されます。そのため、遺言書と死因贈与契約は、基本的には日付の新しいものの方が有効となります。

ただし、負担付死因贈与の条件が一部でも履行されていると、遺言書によって取り消すことが認められないおそれがあるため注意しましょう。

死因贈与でお悩みの際は、弁護士にご相談ください

遺言書は書き方のルールが決められており、無効となるリスクが少なくありません。そのため、死因贈与契約を行った方が無効となるリスクは低くなります。

しかし、死因贈与契約を行うと、税負担が重くなるおそれがある等のデメリットもあります。 そこで、自身の財産を遺すために、最も良い方法を検討したい場合には弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、遺言書を作成するときにはサポートが可能であり、死因贈与契約を行うときには執行者に指定していただくことが可能です。

財産の遺し方には様々な選択肢があるため、状況に応じた最適なご提案をいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

 

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。