孫へ遺産相続できるのか?相続方法や税金などの注意点を解説

孫へ遺産相続できるのか?相続方法や税金などの注意点を解説

自分の財産について、「孫に相続させたい」「孫に相続させる方法はあるのか」等と考えている人は多いです。しかし、残念ながら、基本的に孫には相続権はありません。

ただし、例外的に孫が財産を相続できる場合や、相続できるようにする方法があります。一方で、孫が相続できたとしても、相続税が余分にかかってしまう等の注意点もあります。

そこでこの記事では、孫に財産を相続させたいと考えておられる方に向けて、その方法や、相続以外で孫に財産を与える方法、孫に遺産相続させる場合に注意する点等について解説していきます。

孫へ遺産を相続させることはできるのか?

孫は、基本的に法定相続人ではないため、一般的なケースでは相続人にはなりえません。

法定相続人とは、相続財産を相続できると民法で定められている人のことです。配偶者は常に法定相続人となりますが、他の法定相続人は、より順位の高い人がなります。

法定相続人の相続順位は表のとおりです。

第一順位 子(すでに亡くなっている場合は孫)
第二順位 親(すでに亡くなっている場合は祖父母)
第三順位 兄弟姉妹(すでに亡くなっている場合は甥・姪)

孫が法定相続人になるのは、被相続人よりも先に子が亡くなっている場合です。子が生きている場合には、孫は法定相続人になりません。

しかし、孫と養子縁組すれば、法律上の子になるので法定相続人にすることができます。養子縁組しないのであれば、生前に財産を贈与する方法等も考えられます。

孫へ遺産相続させる方法は3つ

遺言書の作成

遺言書を作成することによって、法定相続人でない孫に対して、相続財産を遺贈することができます。

ただし、孫への遺贈は相続税の2割加算の対象となります。これは、相続する可能性の低かった人等の相続税の金額を、通常の計算による金額よりも2割加算するためです。

遺言では、相続する割合の指定や、特定の財産だけ相続させる指定、割合を指定しながら特定の財産を相続させる指定等が可能です。

ただし、遺言書を作成するときには、細かい決まりを守らなければ無効となるおそれがあります。また、兄弟姉妹以外の法定相続人は、最低限の取り分として遺留分があるため、遺留分を侵害するとトラブルになるおそれがあります。

相続財産を確実に孫へ残したい場合には、弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

孫との養子縁組

被相続人が孫と養子縁組することにより、法律上の親子関係が成立するため、孫は法定相続人として相続することができます。

養子縁組をした孫は、孫の親である被相続人の子と同じ扱いになります。

養子になった孫が相続する割合は実子と同じであり、被相続人に配偶者がいれば子供全員で1/2を相続します。配偶者がいなければ、子供全員で相続財産をすべて相続します。

孫を養子にすると、相続税の節税になる可能性があります。なぜなら、養子縁組によって子供が増えると、相続税の基礎控除額が増えるため相続税の金額が下がるからです。

ただし、相続税対策のためだけに孫を養子にすると、養子縁組の効果を否認されることがあります。例えば、被相続人が亡くなる直前に養子縁組した場合や、養子がまったく相続しない場合等では否認されるおそれがあります。

なお、孫を養子にすると、相続税が課税される機会が1回になることから、相続税が2割加算されます

孫との養子縁組について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

代襲相続

代襲相続が発生すると、とくに手続きを行わなくても孫が相続できます。代襲相続とは、被相続人の子供が死亡した等の理由によって相続権を失ってしまった場合に、その子供(被相続人の孫)が代わりに相続することです。孫が代襲相続するのは、次のような理由で被相続人の子供が相続権を失ったときです。

  • 死亡
  • 相続欠格事由への該当
  • 相続人廃除

孫が相続する場合であっても、代襲相続する場合については相続税の2割加算の対象外とされています。代襲相続をおこなう孫の相続分は、相続権を失ってしまった被相続人の子供の相続分を引き継ぎ、代襲相続する孫の人数で等分します。

遺産相続以外で孫へ財産を譲る方法

遺産相続以外に孫へ財産を遺す方法として、以下のものが挙げられます。

  1. 死亡保険金の受取人を孫にする
  2. 生前贈与をする
  3. 教育資金の一括贈与を利用する
  4. 結婚・子育て資金の一括贈与を利用する
  5. 住宅取得資金等の贈与を利用する

これらの方法について、次項より解説します。

税について詳しく調べたい方は、以下の 国税庁のサイトでご確認ください。

死亡保険の受取人を孫にする

生命保険契約において、被相続人が死亡したときの死亡保険金の受取人を孫にすることによって、財産を遺すことができます

このとき、孫が代襲相続人である場合等、法定相続人であるならば相続税の非課税枠が適用されるため、納める相続税の金額を抑えることができます。

死亡保険金の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」によって計算できます。

生前贈与をする

生前贈与とは、生きているうちに、自分の財産を誰かに贈ることです。

生前贈与を受けた人には基本的に贈与税がかかりますが、1月から12月までの1年間に110万円までであれば、生前贈与を受けても非課税となります。

贈与税の非課税枠の範囲内で生前贈与すると、1年の金額は大きくないものの、何年も続ければ多くの金額を生前贈与できます。110万円以内の生前贈与を繰り返す贈与方法を「暦年贈与」といいます。

ただし、事前の総額を決めてから毎年のように110万円以内の贈与を繰り返す等の贈与方法は、暦年贈与だと認められないおそれがあります。この場合、総額を1年で贈与したのと同じだけの贈与税がかかります。

また、代襲相続が発生した場合や孫を養子にした場合等には、相続が発生する前の3年以内の生前贈与に相続税がかかります。なお、2024年1月以降は生前贈与加算の期間が7年に延長されるので、暦年贈与の開始時期が遅くなると、節税効果も低くなってしまうので注意が必要です。

非課税枠を増やすこともできる

孫に財産を贈る場合には、相続時精算課税制度を選択できる可能性があります

相続時精算課税制度とは、生前贈与にかかる贈与税を最大2500万円まで非課税にして、相続のときに相続税の課税対象とする制度です。

この制度が利用できるのは、贈与する年の1月1日に60歳以上であった父母または祖父母であり、贈与対象が同じ年の1月1日に18歳以上であった子または孫である場合です。

贈与した金額が2500万円を超えた場合には、超過額に対して20%の贈与税がかかります。また、2024年1月1日以降では、毎年110万円の基礎控除も適用されます。

最終的には相続税がかかるため、課税されるタイミングを先送りするだけですが、教育費等のためにすぐにお金が必要な場合には有効です。また、贈与時の価額によって課税されるため、値上がりする可能性が高い財産を贈与すると節税になる可能性があります。

教育資金の一括贈与を利用する

教育資金の一括贈与の特例とは、教育資金として使うために、最大で1500万円までの贈与を非課税で行うことができる制度です

この制度を使うためには、主に以下のような要件があります。

  • 贈与を受ける人が30歳未満
  • 贈与する人は贈与を受ける人の両親や祖父母等である
  • 贈与を受ける人の前年の合計所得金額が1000万円以下

なお、習い事のための費用等、学校以外に使う教育資金は、最大で500万円とされています。

また、贈与をした人が亡くなったときや、贈与を受けた人が30歳になったときに残額があると、その残額が相続税や贈与税の課税対象となるケースがあります。

この制度は、2026年3月31日まで設けられています。

結婚・子育て資金の一括贈与を利用する

結婚・子育て資金の一括贈与の特例とは、結婚や子育てのために使う資金を、最大で1000万円まで非課税で贈与することができる制度です。

この制度を使うためには、主に以下のような要件があります。

  • 贈与を受ける人が18歳以上50歳未満
  • 贈与する人は贈与を受ける人の両親や祖父母等である
  • 贈与を受ける人の前年の合計所得金額が1000万円以下

なお、贈与された資金のうち、結婚資金として利用できる金額は最大300万円です。ここで、結婚資金とは、結婚式の挙式費用や披露宴のための費用だけでなく、新居のための家賃や敷金、および転居のための費用も含まれます。

ただし、贈与をした人が亡くなったときや、贈与を受けた人が50歳になったときに残額があると、その残額が相続税や贈与税の課税対象となるケースがあるため注意しましょう。

この制度は、2025年3月31日まで設けられています。

住宅取得資金等の贈与を利用する

住宅取得資金等の贈与とは、子供や孫等に対して、住宅の新築や増改築にかかる資金を贈与すると一定額が非課税になる制度のことです。

この制度が適用されるためには、主に以下のような要件があります。

  • 贈与を受ける人が、贈与する人の子供や孫、ひ孫等である
  • 贈与を受ける人が、贈与が行われた年の1月1日において18歳以上
  • 贈与を受ける人の合計所得金額が1000万円以下または2000万円以下(宅地の面積による)
  • 贈与が行われた年の翌年の3月15日までに、家屋を新築・取得・増改築する
  • 贈与が行われた年の翌年の3月15日までに、その家屋に居住するか、居住することが確実な状態にする

なお、この制度は2026年12月末までのものです。

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孫に遺産相続させる場合に注意すること

孫を養子にすれば、相続税の基礎控除が増額されます。また、遺言書を作成することによって、被相続人の希望どおりに孫へ財産を遺すことができます。

しかし、養子縁組や遺贈にはデメリットもあるため注意しなければなりません。

孫に財産を遺すデメリットについては次項より解説します。

他の相続人の遺留分

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に用意されている、相続財産の最低限の取り分です。遺言や生前贈与によって孫に財産を取得させるときには、遺留分について考慮しなければ、法定相続人からの遺留分侵害額請求により親族間でトラブルになるおそれがあります。

また、遺留分の侵害がなかったとしても、相続分が減ることや遺言書の内容について納得できない親族がいるかもしれません。親族関係の悪化を防ぐために、生前に周囲に対して説明しておくことが望ましいでしょう。

孫にかかる税負担

孫を養子にした場合や、遺言によって相続財産を孫に遺贈した場合には、相続税の金額が2割加算されます

また、孫が死亡保険金を受け取るときには、孫が法定相続人になっている場合を除いて、相続税の非課税枠が適用されません。

さらに、孫が法定相続人になっていなければ、不動産登記を行うときに支払う登録免許税が割高になります。加えて、生前贈与や遺贈等によって不動産を取得したときに、不動産取得税を支払う必要が生じてしまいます。

これらの税負担について考慮して、相続方法を考えるようにしましょう。

孫への相続を考えたときは弁護士にご相談ください。最適な方法をアドバイスいたします

孫に財産を遺す方法はいくつかあります。しかし、遺贈や生前贈与であれ、養子縁組であれ、トラブルを引き起こしてしまうリスクがあります

特に、遺贈や生前贈与については、他の相続人の遺留分について考慮が必要です。また、孫の税金の負担についても考慮しなければなりません。

そこで、孫に財産を遺したい場合には弁護士にご相談ください。弁護士であれば、財産を遺す方法として、より妥当なものをアドバイスできるだけでなく、遺言書の作成等についてもサポートが可能です。

贈与の特例については、たびたび制度が変更されているため、最新の情報を確認するためにもぜひご相談ください。

 

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。