ニューズレター


2013.Jul Vol.11

研修会において目標を達成できなかった従業員にコスプレを強要した事例~カネボウ化粧品販売事件(大分地裁 平成25年2月20日判決)~


2013.7.vol.11掲載

Ⅰ.事案の概要

原告Xは、化粧品会社Yにおいて美容部員(ビューティー・カウンセラー)として勤務していた60代の女性であって、化粧品会社Yにおいて定期的に開催され、出席も義務付けられていた研修会に参加したところ、販売目標を達成できなかった(以下、「未達」といいます。)ものはあらかじめ用意されていた箱の中の衣装を着用するようYの社員であるXの上司ら(Y1、Y2、Y3)により強要されました。

その内容は、ウサギの耳の形をしたカチューシャと、易者のコスチューム(以下、「本件コスチューム」といいます。)を着用するものでした。

Xは本件コスチュームを本人の意思に反して着用し、研修会の時間である午前9時20分頃から午後6時まで及びその後の会場清掃の間も、着用し続けました。

その約半月後、再び開催された研修会において、上記の研修会における本件コスチュームを着用した原告の様子が上映されました。

その後まもなく、Xは「身体表現性障害」を発症し、1か月の療養を強いられました。

Ⅱ.裁判所の判断

裁判所は上記事実に基づいて、以下のように判断し、Yらに22万円の損害賠償責任を負わせました。

「以上によると、被告Y1、被告Y2及び被告Y3の行為は、単に原告に対して勤務時間中の本件コスチュームの着用を求めたことにとどまらず、原告のみではなくその他未達であった3名と共にではあるものの、本件研修会の出席が原告に義務付けられており、その際に原告の本件コスチューム着用が予定されていながら、それについての原告の意思を確認することもなされず、原告が本件コスチュームを着用することについて予想したり、覚悟したりする機会のない状況の下、同被告らが、職務上の立場に基づき、本件研修会開催日の終日にわたって原告に本件コスチュームの着用を求めたものであり、これを前提にすると、たとえ任意であったことを前提としても原告がその場でこれを拒否することは非常に困難であったというべきで、さらに、これが被告会社の業務内容や研修会の趣旨と全く関係なく、そのような内容であるにもかかわらず、別の研修会において、原告の了解なく、本件コスチュームを着用したスライドを投影したという事情を伴うものであるから、本件研修会が1日であったこと、原告が本件コスチュームの着用を明示的に拒否していないことなどを考慮しても、目的が正当なものであったとしても、もはや社会通念上正当な職務行為であるとはいえず、原告に心理的負荷を過度に追わせる行為であるといわざるを得ず、違法性を有し、これを行った同被告らには当該行為によって原告の損害が発生することについて過失があったものであり、同被告らの行為は、不法行為に該当するというべきである。」

Ⅲ.本判決に見る会社におけるパワハラ対応の在り方について

本件において、被告らは、本件研修会のコスチューム着用は、レクリエーションや盛り上げ策を目的としており、原告個人を人格的に攻撃するものではなく、現に原告においても本件研修会において特段不満を述べていないと主張して、本件研修会において特段不満を述べていないと主張しました。

しかしながら、裁判所は、被告ら主張の目的そのものには妥当性が認められるものの、その採用された手段が目的と必ずしも合致しているものとはいえず、本件コスチュームを着用させる手段では納得していない者については、被告らの述べる目的が果たせないことは容易に認められる、としました。

また、仮に原告個人を攻撃するものではなかったとしても、以上のような事実の下では、それによって原告に対する当該行為の手段の相当性が認められるものではなく、違法性が覆されるものではなく、また、同被告らの過失が否定されるものでもないから、損害の範囲において斟酌されるべきに留まるとされています。

さらに、裁判所は、本件研修会中の原告の一場面の様子をもって原告が精神的苦痛を感じていなかったとみることは相当とはいえず、原告において本件コスチュームの着用によって精神的苦痛を感じていた、としました。

今回のように、一般社員が、研修会といった多数の人間が集まる場において、突然罰ゲームというような形で、全く行事と無関係にいきなりコスプレをしろと上司に言われた状況を考えれば、通常は、着たくないと思っていても、会場の空気が圧力となって、特に空気を読もうとする日本人的な考え方からすれば、明示的に拒否できず、心理的負荷を過度に負わせるものと考えられます。

レクリエーション目的等により、会社を盛り上げようとすることはありえますが、当該目的を達成したいとする手段は、ときに手法の考案者の度が過ぎてしまうことで、ブレーキが利かなくこともあるため、本判決を参考に会社における行事であっても、罰ゲームを課される側の立場に立って、適切な手法か否かを判断することは重要と考えられます。

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