ニューズレター


2017.Apr 労務特別号 Vol.5

債権の消滅時効について


2017.6.特別号掲載

1. はじめに

どのようなビジネス活動においても、自己の物品やサービスの対価について、必ず債権回収を行う必要があります。このとき、注意しておかなければならないのが消滅時効です。
消滅時効とは、権利が一定期間行使されない場合に、権利の消滅を主張することができる制度です。自己の有する債権について消滅時効が成立すると、債務が消滅し、債権回収ができなくなります。思わぬ消滅時効により債権を回収し損ねることがないよう、「消滅時効」に関する法規制について確認していきましょう。

2. 債権の種類ごとの時効期間

消滅時効の期間は、債権の種類によって様々です。

消滅時効の大原則は民法に定められており、権利を行使することができるときから起算して10年間権利を行使しないときは消滅するとされています。

但し、ビジネス活動によって生じた債権については、商法により5年間の商事消滅時効が適用されます。BtoB のみでなく BtoC の取引であっても、商事消滅時効の規定が適用されますので、営業活動によって生じた債権の消滅時効期間は原則として5年と考えていた方がよいでしょう。

さらに、5年以下の消滅時効が定められている債権もあり、これらは特に注意が必要です。様々な法律にて規定がされており、以下のような債権があります。

債権の消滅時効期間
消滅時効期間債権具体例
6ヶ月 小切手債権
1年 運送料債権
旅館・飲食店・娯楽場等における宿泊費・飲食費・入場料等
演芸者の報酬債権等
2年 生産者・卸売商人・小売商品の代金債権 売掛代金
自己の技能を用いて物を製作する際の報酬債権建具屋の報酬
自己の仕事場で他人のためにする仕事の報酬債権理容師の報酬
学芸または技能教育の対価となる債権等塾の授業料
3年 工事業者の報酬債権
不法行為に基づく損害賠償請求権等
5年 商事債権
定期給付債権
家賃
消滅時効期間6ヶ月 消滅時効期間1年 消滅時効期間2年 消滅時効期間2年 消滅時効期間2年 消滅時効期間2年 消滅時効期間3年 消滅時効期間5年

なお、これらの債権についても、法的手続を行い、判決、和解、調停等によって確定すれば、その後の時効期間は10年となります。

3. 時効期間をリセットする方法

時効期間を確認したら、時効期間をリセットする方法についても確認しましょう。時効期間をリセットすることを時効の中断といいます。時効の中断が生じると、そこから再度時効期間が満了するまで時効は成立しません。

時効の進行を中断する方法には、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認があります。

①請求とは、具体的には、訴えの提起、支払督促、調停の申立て等の法的な手続きをいいます。裁判外で口頭や書面により支払いを催告する場合、一度だけ6ヶ月間に限り時効の完成を遅延させることができますが、時効の中断をすることはできません。「払って下さい」と言い続けていても、債務者が時効完成までのらくらとしていれば、時効が成立してしまう可能性があるため、適切な時期に法的手続を行う必要があります。

②差押え、仮差押え又は仮処分は、裁判所に申し立てを行う法的手続になります。

③承認とは、債務者が債務の存在を認める行為をいいます。債務の存在を認める内容の書面を取り交わすことのみならず、債務の一部を支払うことや、債権者の請求に対し返済の猶予や減額を申し出ることも、ここにいう承認にあたります。後に債務者が時効を援用した場合に対抗できるよう、債務者がこれらの債務承認行為を行った場合は、必ず客観的な記録に残すようにしておくべきでしょう。

4. 時効期間が満了してしまったら・・・

消滅時効が成立すると、債務は消滅し、それ以降は支払いを求めることができなくなります。

但し、債権は時効期間の満了により直ちに消滅するわけではなく、債務者が消滅時効の効力を主張(これを「時効の援用」といいます。)してはじめて消滅するため、時効援用がされるまでは支払いを求めることが可能です。

また、時効期間の満了後であっても、債務者が時効を援用する前に債務の承認をした場合には、それ以降は時効の援用ができなくなると判断をした判例などもあります。

このように、時効期間が経過したと思われる場合でも、なんらかの手段を講じることができる場合があります。一見、消滅時効が認められるような状況であったとしても、本当に請求が認められないのか、弁護士に一度相談してみるとよいでしょう。

5. 今国会においては、民法(債権法部分)の改正も決議される予定です。

債権回収に関連して、法定利息や時効の定めも改正予定であり、主な改正のポイントは以下の通りです。

民法改正案のポイント
①法定利率年5%から3%に引き下げ、3年ごとに見直す変動制を導入
②定型約款相手方の利益を一方的に害する条項が無効とされる。(消費者のみではない。)
③消滅時効原則として、「権利を行使できると知ってから5年」に統一
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