ニューズレター


2018.Apr vol.76

勤務成績不良を理由として雇止めする際に注意すべき点~札幌高裁平成29年9月14日判決(棄却(確定))~


2018.4.vol.76掲載

Ⅰ 事案の概要

1 本件は、いわゆる契約社員であったXが、勤務先であるY社に対し、Y社の雇止め(以下「本件雇止め」といいます。)が無効・違法であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、また、不法行為に基づき損害賠償等の支払いを求めた事案です。

2 Xは、Y社から期間の定めを6か月とする嘱託社員として雇用され、その後、2回更新されました。最後に更新された嘱託社員契約(以下「本件労働契約」といいます。)につき、労働条件通知書には「期間の定めあり」と記載され、「契約の更新はしない」に丸印がつけられており、雇用契約書には、契約期間を「6か月とし同日をもって雇用期間満了とする。」等の記載がありました。当時の営業所長も、「雇用期間が満了した後、当然には更新はしない。」ものと理解していました。

また、Y社は、Xが加入していた労働組合に対して「嘱託者の契約は原則更新する。ただし…会社に大きな損害を与えた者についてはその限りではない。」と説明をしていました。実際、平成27年5月、勤務成績が悪くY社による指導後も改善が見られなかった乗務員が雇止めとなる事態も発生していました。

本件労働契約期間中、Xの勤務方法は、地下鉄の駅のタクシー乗り場に駐車して客を待ち、客を目的地まで運んだあとは同じ駅に戻るというものであり、「流し(=時刻により客が多い場所を考えつつ、客を探しながらタクシーを走行させること)」をせず、また、Y社からの無線による配車指示についてはキャンセルボタンを押すことでこれに応じないことが多いというものでした。そのため、Xの走行距離及び売り上げは、Y社の定める目標及び営業所の平均にも届いたことがなく、売り上げが平均の半分に満たないことも多くありました。そのため、Y社はXに対し、複数回にわたって勤務成績が良くないことを説明し、無線による配車指示に応じ、「流し」をして勤務成績を増加させるよう、勤務方法の改善を指導しましたが、Xの勤務方法は全く変わりませんでした。そこでY社は、Xに対し、本件労働契約が終了する旨を伝えました(本件雇止め)。

なお、Y社は同時期に、ほぼすべての組合及び非組合員から同意の下、財務状況の改善のために新賃金体系導入を図りました。本件雇止めがされる直前、Xは、新賃金体系の提案を受諾した組合の方針に反発し、少数労働組合Cを結成して、副委員長に就任していました。

以上の経緯を踏まえ、Xは、①契約更新への期待が生じており、雇止め法理が適用され、本件雇止めに客観的合理性、社会通念上の相当性がなく本件雇止めは無効である、また、②本件雇止めは労働組合CからXを排除する目的でなされた不当労働行為であるため無効であると主張しました。

Ⅱ  判決のポイント

1. 争点①(雇止め法理の適用の有無)

本判決は、本件労働契約が期間の定めのある労働契約であることを前提に、契約書における「契約の更新はしない」等の記載、更新回数が2回に過ぎないこと、勤務成績不良者は契約を更新されないことがありうる旨の説明や、そうした前例の存在、現にXの勤務成績が不良であった等の事実をもって、本件労働契約につき、更新の期待は認められないと判断し、その結果、雇止め法理の適用を否定し、雇止めは有効であると判断しました。

2. 争点②(本件雇止めが不当労働行為(労働組合法7条1号)に該当するか)

Xが所属する少数組合の反対にかかわらず、Y社が実施した新賃金体系の導入が既に実現していることから、Xの所属組合を攻撃する必要性がないとして、本件雇止めが労働組合CからXを排除する目的の不当労働行為には当たらないと判断しました。

Ⅲ 本事例から見る実務における留意事項

1. 成績不良を理由とする雇止めに関して

一般的な雇止めの事例では、雇止め法理の適用を認めたうえで、勤務成績等をもとに雇止めの客観的合理性及び社会的相当性を検討されることが多く、本件の第一審判決もそれに倣っていました。

本判決のように、契約更新の打消しを行っていた事例であっても、労働契約法19条2号の該当性を慎重に判断して、雇止め法理の適用がないとする事例は珍しいです。

一般的な判断枠組みに即して検討すると、一審判決が認定しているとおり、Xの勤務成績が極めて悪かったこと、Xの勤務方法が一般的な又は勤務成績の良いY社乗務員と異なっていたこと、Xの勤務成績及び勤務方法について改善可能性がなかったこと、Xの更新回数が2回にとどまっていたことなどが認定され、本件雇止めの客観的合理性・社会通念上の相当性が判断されるはずです。

経営者としては、雇止めをする際には、本件のように期待可能性を打ち消しておくことで雇止め法理の適用を回避することを検討することも重要ですが、そのような判断がなされない場合に備えて、雇止めが無効とならないように勤務成績の不良に関する客観的な状況やそれに対する改善指導の積み重ねなども行ったうえで、慎重に準備をしておくべきでしょう。

2. 不当労働行為の該当性に関して

組合からの排除や組合の弱体化を目的として組合員に対する不利益取扱いを行うことは、不当労働行為(労組法7条1号等)として禁止されており、労働組合の組合員ないしは指導者であることを理由とする雇止め等の人事上の不利益措置であって法的効果を伴うものは無効となります(医療法人新光会上告事件―最判昭和43年4月9日民集22巻4号845頁)。

そして、不利益取扱い(労組法7条1号)が成立するためには、不当労働行為意思(=反組合的な意図ないしは動機)が要件の1つとして必要となります。不利益取扱いを行った背景として、業務上の必要性(本件では新賃金体系の導入)と不当労働行為意思(本件では少数組合の排除)の存在が競合して認められる場合、そのいずれかが決定的動機であったかによって不当労働行為の成否が決せられます(東京高判平成9年1月31日判タ951号186頁)。

本判決は、X所属の組合が極めて小規模であり同組合の反対が、新賃金体系導入には影響しなかったことをもって、組合をつぶす必要性がないから不当労働行為は認められないと判断しています。影響の大小のみにより、いずれが決定的動機であったかを決定づけることはできないと考えられますので、少数組合との協議の経過やそれに対する会社側の真摯な対応などは重ねておくべきと考えられます。

経営者としては、雇止めをする際には、組合活動が経営に与える影響の有無だけでなく、雇止めをする者以外の他の組合員や、他組合員における雇止めの事実の有無等を検討し、主たる動機が反組合的意図ないし動機であると推認されないように配慮して行わなければなりません。

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