ニューズレター


2019.Mar vol.87

正規社員との労働条件相違及び労基法20条違反について(日本郵政事件)
~東京地裁平成29年9月14日判決~


2019.3.vol.87掲載

Ⅰ 事案の概要

本件は、被告である日本郵政との間で期間の定めのある労働契約を締結した原告らが、期間の定めのない労働契約を締結している被告の正規社員と同一内容の業務に従事していながら、手当等の労働条件において正規社員と差異があることが、労働契約法(以下「労契法」という。)20条に違反するとして、各種手当の請求等を行いました。

1 原告ら(非正規社員)について

契約社員は、それぞれ有期労働契約で、スペシャリスト契約社員、エキスパート契約社員、月給制契約社員、時給制契約社員(契約期間6か月以内)、アルバイトという区分が設けられていました。原告らは、有期労働契約の時給制契約社員でした。

2 被告会社における正規・非正規社員の差異について

原告らが、正規社員と比較して不合理な相違がある労働条件として主張した手当は、外務業務手当、年末年始勤務手当、早出勤務等手当、病気休暇、夏期冬期休暇等でした。

(1) 外務業務手当について
 正規社員には、外務事務に従事した日数に応じて外務業務手当が支給されていました。他方、契約社員には、外務事務に従事した時間に応じて外務加算額(1時間当たり130円又は80円)が支給されていました。

(2) 年末年始勤務手当について
正規社員には、12月29日から1月3日に勤務した場合には、手当(年末:4000円、年始:5000円)が支給されていましたが、契約社員には支給されていませんでした。

(3) 早出勤務等手当について
正規社員には、正規勤務時間として始業時刻が午前7時以前となる勤務又は終業時刻が午後9時以後となる勤務に4時間以上従事した場合、早出勤務等手当として、350円から850円が支給されていました。他方、契約社員には、上記勤務時間となる勤務に1時間以上従事した場合、勤務1回につき、200円、300円、500円の早朝・夜間割増賃金が支給されていました。

(4) 病気休暇について
正規社員には傷病につき有給の病気休暇が設けられていましたが、契約社員には無給の病気休暇のみが設けられていました。

(5) 夏期冬期休暇について
正規社員には在籍期間に応じて1~3日の夏季休暇及び同内容の冬期休暇が付与されていましたが、契約社員には付与されていませんでした。

Ⅱ  判決のポイント

1 労契法20条違反の判断枠組み(不合理と認められるか否かの判断)について

「労契法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について、①職務の内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して、『不合理と認められるものであってはならない』と規定している。そして、不合理性判断には、①及び②が無期契約労働者と同一であることをもって、労働条件の相違が直ちに不合理と認められるものではなく、両当事者に係る①から③までの各事情を総合的に考慮した上で、不合理と認められるか否かを判断すべきである。」と判断しました。

2 各労働条件の相違の不都合性について

(1) 外務業務手当について
「正規社員と契約社員との間には、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があり、正規社員には長期雇用を前提とした賃金制度を設け、短期雇用を前提とする契約社員にはこれと異なる賃金体系を設けたとしても、企業の人事上の施策として一定の合理性が認められる。」、「外務業務手当は、・・・職種統合による賃金額の激変を緩和するため正規社員の基本給の一部を手当化したものであり、同手当の支給の有無は、正規社員と契約社員の賃金体系の違いに由来するものである。また、時給制契約社員については、時給制契約社員の賃金体系において、外務加算額という形で別途反映されていることが認められること等を総合考慮すれば、正規社員と時給制契約社員の外務業務手当に関する相違は、不合理であるとは認められない。」と判断しました。

(2) 年末年始勤務手当について
「年末年始期間における労働の対価として一律額を基本給とは別枠で支払うという年末年始勤務手当の性格等に照らせば、長期雇用を前提とした正規社員に対してのみ、年末年始という最繁忙時期の勤務の労働に対する対価として特別の手当を支払い、同じ年末年始の期間に労働に従事した時給制契約社員に対し、当該手当を全く支払わないことに合理的な理由があるということはできない。」、「もっとも、年末年始勤務手当は、正規社員に対する・・・長期雇用への動機付けという意味もあることから、手当の額が、正規社員と同額でなければ不合理であるとまではいえない。」と判断しました。

(3) 早出勤務等手当について
「正規社員に対しては勤務シフトに基づいて早朝・夜間の勤務を求め、時給制契約社員に対しては募集や採用の段階で勤務時間帯を特定して採用し、特定した時間の勤務を求めるという点で、両者の間には職務の内容等に違いがある。」、「このことから、正規社員に対しては、正規社員間の公平を図るため、早朝勤務等手当を支給するのに対し、時給制契約社員に対して支給しないという相違には、相応の合理性があるといえる。」、「また、時給制契約社員については、早朝・夜間割増賃金が支給されている上、時給を高く設定することによって、早出勤務等について賃金体系に別途反映されていることから、早出勤務等手当における正規社員と時給制契約社員との間の相違は、不合理であると認めることはできない。」と判断しました。

(4) 病気休暇について
「病気休暇が労働者の健康保持のための制度であることに照らせば、時給制契約社員に対しては、契約更新を重ねて全体としての勤務期間がどれだけ長期間になった場合であっても、有給の病気休暇が全く付与されないことは、前判示に係る職務の内容等の違い等に関する諸事情を考慮しても、合理的理由があるということはできない。」
「したがって、病気休暇に関する正規社員と時給制契約社員との間の相違は、不合理なものである」と判断しました。

(5) 夏期冬期休暇について
「夏期は古くから祖先を祀るお盆の行事」として、冬期は「年末から正月3が日にかけて」、「帰省するなどの国民的な習慣や意識などを背景」にした、「いわば国民的意識や慣習が背景にある休暇である。」。そのため、「正規社員に対して付与していながら、時給制契約社員に対して全く付与しないことは、合理的な理由があるということはできない。」と判断しました。

Ⅲ 本事例からみる実務における留意事項

本判決は、賃金以外の労働条件についても、労契法20条違反を認め、各種手当の不支給について、損害賠償を認めたという点に意義があります(なお、控訴審においては、病気休暇の不存在についても賃金相当額の損害が認められました)。

本判決は、各種手当の差異における不合理性判断について、正規社員にのみ支給を限定しているという形式面のみならず、当該手当の性質や目的といった実質面も加味して総合的に判断しています。すなわち、本判決は、年末年始手当については「最繁忙時期の勤務の労働に対する対価」、病気休暇については「労働者の健康保持のための制度」、夏期冬期休暇については「国民的意識や慣習が背景にある休暇」であるとして、当該手当の性質及び支給目的に着目しています。他方、手当の目的が正規社員間の処遇公平化を図ることにあったり(早出出勤等手当)、契約社員には既に同種の手当が支給されていたりする場合(外務業務手当)には、不合理性は認められないとしています。

非正規社員を雇用し、正規社員との間で手当についての差異を設けている会社は少なくありません。しかし、法改正により、正規社員と非正規社員の処遇の相違について説明義務が課されることになることからすれば、本判決のように、各種手当の差異についての合理的説明ができなければ、不支給部分が損害賠償として認められてしまう可能性は高まっていくことになるでしょう。会社における各種手当付与の見直しや創設を考えている場合には、労働問題に精通している弁護士に相談し、今後の紛争を未然に防ぐ必要があります。

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