コラム
更新日: 2024年12月4日
債権回収
監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長タイにおける債権回収方法
債務者が債務不履行になったことが確かな場合、債権者は先ず、丁重にかつ友好的に支払期限を過ぎた負債を仮に口頭で回収するために債務者と連絡を取る場合があります。
何故なら、債務者が負債を支払うつもりがないのではなく単に支払期日を忘れている場合があるからです。この場合、口頭回収により、債権者は債務者から支払いを受けられる可能性があります。
債権者が訴訟に頼らなければならない場合もありますが、この方法は多額の費用がかかり、訴訟手続きにも時間がかかります。
しかし、他方、訴訟手続きは、債権者が債務者からの債権回収に全力を尽くしていることを債務者に対して示すので、訴訟手続き期間中、債務者は怖くなり、結局、負債を完済するかもしれません。
更に、訴訟手続き中、債権者と債務者は裁判所で和解できる可能性もあります。
交渉
訴因に関する詳細な交渉の結果、債権者が債務者から返済を受けられなかった場合において、債権者が債務者に対して返済を要求する請求書や督促状をまだ送付していない場合、債権者は、債権回収督促状を作成する前に先ず、債務者からの返済を要求する支払督促状を作成することができます。
訴因に関する詳細な交渉の結果、債権者が債務者から返済を受けられなかった場合、債権者は債権回収督促状を書面で作成すべきです。書面で回収を求めることは、債権者が債務者からの債権回収に真剣であることを債務者に対して示します。
この督促状は、債権者が債権回収しようと試みた事実を裁判所において示す証拠としても使用できます。
更に、裁判所での訴訟の場合、督促状は、省令第186号および法人所得税の優遇措置に関する歳入局ガイドラインに従った会計上の不良債権の処理(損金処理)に関する調査のための証拠としても使用できます。結果的に債権者が負債の返済を受けない場合も同様です。
債権回収督促状を作成する際、債権者は負債に関してできるだけ詳細に記載すべきです。具体的には、債務者名、負債金額、支払期間、負債の失効、利息、違約金等です。
債務者が負債を返済しなければならない最終期日、債務者が負債を返済しなかった場合における債権者が取る次の措置も含めるべきです。
更に、債権者は2回以上、負債回収督促状を書面で作成する場合があります。
債務者が当該督促状を受け取ることを確実にするために、債権者は各督促状において債権者が債務者に対して取る措置のレベルを引き上げる旨を記載します。
例えば、2回目の督促状では罰金を請求し始めることを記載し、最終の督促状では裁判所に訴訟を提起する前に別の措置を取ることを記載します。また、督促状を送る度に、前回送付した債権回収督促状について言及し、その写しを添付した上で送付します。
注記:
債権回収督促状を送付する際、債権者は書留郵便で債務者に送付すべきです。
「書留郵便」は、督促状が指定期間内に正確に債務者に配達されたことを債権者に対して保証します。
更に「確認郵便」は、督促状が債務者に配達され、債務者がそれを受け取ったことを示す重要な証拠になります。
訴訟
融資、契約違反、商品代金不払い、養育費請求、不倫、離婚、虐待、明け渡し等に関する民事訴訟では、裁判所に対して証明する最も重要な証拠は、それら法律行為に関する文書です。 具体的には以下の通りです。
融資:
融資契約や融資の証拠が裁判での勝敗を決めます。融資契約や融資の証拠が存在しない場合、調査のために証人を法廷に連れてきても、裁判では負けます。
契約違反:
契約書および契約書の付属文書が裁判での勝敗を決めます。契約書以外の文書を法廷に持ち込んでも、ほとんど意味がありません。
民事訴訟は文書の証拠と重要証人が主な証拠になるので、訴訟によっては証拠の数が時には膨大になることがあります。例えば、売買契約違反の場合は大量の文書、建設訴訟では複雑で詳細な契約書等です。
通常、民事訴訟では、原告か被告かを問わず、70%超が調停交渉で終結します。両当事者が合意に達した場合、「和解合意書」を作成しなければなりません。
和解合意書は原告と被告がどのように合意したのかを示す文書です。例えば、
- 被告は、自分が融資金の負債を負ったことを認め、当該融資金の返済猶予を求めた。
- 被告は、自分が原告の夫と不倫したことを認め、二度と原告の夫に関わらないことに同意した。
両当事者は法廷において和解合意書を締結し、裁判所は当該合意書が適法か否かを判断します。和解合意書が適法であると裁判所が判断した場合、裁判所は和解合意書を認証します。
当該和解合意書は判決と同じ法的法力を有し、両当事者にそれを順守させます。当事者が和解合意書を順守しない場合、当該当事者は差し押さえや法の執行を受けます(訴訟の執行)。
仲裁
仲裁手続きは裁判所による決定に基づかない紛争解決です。当事者は紛争を仲裁する仲裁人を選任し、仲裁人が下す仲裁判断に従うことに合意します。
仲裁手続きは複雑ではないので、当事者は紛争対象事項に専門知識を有する人々の中から仲裁人として行動する人を選ぶことができます。その結果、迅速で費用対効果の高い紛争解決を行うことができます。
要するに、仲裁手続きは、裁判所の判事に似た選ばれた中立的な人が決定する裁判外紛争解決手続き(ADR)の1つです。
仲裁手続きは訴訟手続きに比べて費用も時間も少なくて済み、より柔軟性の高い手続きです。仲裁手続きを開始するためには両当事者の合意が必要です。
この点に関して、仲裁人は特定分野の紛争に関する専門家でなければならず、公平性を維持すると共に、いずれかの当事者の影響下にあってはなりません。
仲裁人に関して疑義が生じた場合、当事者は直ちに異議を申し立てて、当該仲裁人を変更することができます。仲裁人が下した仲裁判断に両当事者が合意した場合、仲裁手続きは完了したものとみなされます。
仲裁判断が下された後、いずれかの当事者が当該仲裁判断を順守しない場合、相手方は当該仲裁判断を執行するよう、裁判所に対して要求書を提出することができます。
それ故、両当事者が仲裁に付すことを望む紛争が発生した場合、先ずやるべことは、「両当事者は仲裁による紛争解決に合意する」ことを相手方と合意し、その後、仲裁人を任命することです。
訴訟 | 仲裁 | |
---|---|---|
海外での執行 | タイにおいてのみ執行可能。 | タイにおいてのみ執行可能。 |
当事者の同意 | 相手方の同意なしでも訴訟を進めることができる。 | 相手方の同意がない場合、仲裁を進めることはできない。 |
上訴の可能性 | 当事者は第1審裁判所の判決日から1カ月以内に、第1審裁判所に対して上訴しなければならない。 | 仲裁判断に対する異議は、当該仲裁判断の取り消しを求めて、管轄裁判所に対して申し立てることにより行うことができる。 |
費用 | 資金額が300,000バーツを超える場合、当該資金額の2%に相当する訴訟費用(但し、200,000バーツ以下)を支払わなければならない。 |
|
タイにおける保存手続きと強制執行
「司法執行」と「一時保護」は担保法に関係しています。「司法執行」は、法に従って不法行為者に責任を負わせる法の運用です。
「一時保護」は、人や財産に対して発生する可能性のある損害を一時的に防止する法の運用です。原告と被告の両方が一時保護を要求することができます。
訴訟が提起された際、被告が原告に対して反訴請求しない場合、被告は裁判所が訴訟を却下することだけを期待します。それ故、被告の優先順位は、自分が裁判所に支払った訴訟費用を回収することだけです。
原告が敗訴した場合にのみ、裁判所は被告に代わって、原告に対して訴訟費用を支払うよう命じます。それ故、被告による一時保護の要求は訴訟費用だけの問題です。
しかし、原告による一時保護の要求は、原告が勝訴した場合に原告が判決に従って訴訟成果を得ることを期待する原告を保護するためのものです。それ故、原告による法的保護の要求に関する規定は、緊急時において法的保護を要求できる方法を定めるものです。
仮差し押さえ
紛争対象の権利に関する原告の民事訴訟は何年もかかり、判決が出るまで何年も要します。訴訟期間中、被告が隠した財産を悪用したり、原告に損害を与えたりする可能性があります。
裁判所が判決を下すまで待たなければならず、その結果、原告が不当な困難に苦しむ場合において、民事訴訟法の第254条に基づき、裁判所の判決前に暫定的な保護を求める必要があると原告が判断した場合には、訴訟期間中における不当な損害から原告の利益を保護するために、第1審裁判所、上訴裁判所、最高裁判所を問わず、原告は判決が出る前に裁判所に申し立てる権利を有します。
但し、困難に苦しむ不当な時間を要件とします。例えば、最近、ライフ・プリビリッジ・クラブの会員である計102名の医療被害者が民間病院を相手取り訴訟を起こしました。
生涯医療を提供する契約の違反を民事裁判所に訴えましたが、被害者は引き続き当該病院で治療を受けることを余儀なくされています。
当初の契約によれば、被害者は生涯にわたり治療費が無料という条件で既に病院に対して支払いを行っているので追加で医療費を支払う必要はありません。
しかし後日、病院は契約を解除しました。その後、裁判所は原告の申し立てを聞き、裁判所が命令等を下すまでの裁判期間中、原告が無料で医療サービスを受けられるようにする仮差し止め命令を出しました。
それまで原告は通常の医療費を払わなければなりませんでした。ライフ・プリビリッジ・クラブの会員契約に従って、まるで生涯医療サービス契約が最初から無かったかのように。
上記事例から、裁判期間中の利益の一時保護の申し立てが、裁判期間中の不当な損害に苦しむことなく、原告にとって大きな利益になることは明らかです。
法は保護を求める人々の保護を保証しますが、一時保護を求めるには、法に従って、法が要求する根拠を示さなければなりません。
強制執行
それ故、判決や命令の執行は、裁判所の判決や命令を順守する手段です。
判決に基づく敗訴者が判決や命令を順守しない場合、判決や命令を有効に執行するためには、判決や命令自体が自らを執行することはできないので、「執行官」という法がその権限と職責を定めた役人が判決や命令を執行しなければなりません。
執行官は現在、執行局に所属する役人です。この規則に違反した場合、裁判所は既に行われた執行手続きの取り消しを命ずることができます。
民事訴訟法の第1条(14)項の規定によれば、執行官の一般的な権限と職責は、以下の2つを根拠にしています。
- 民事訴訟法の第254条では、判決前に紛争対象財産や被告の財産の全部もしくは一部を差し押さえるまたは凍結する命令を裁判所が出すよう、または、被告が契約違反や訴訟対象行為を反復もしくは継続することを裁判所が一時的に抑えるよう、裁判所に対して判決前にいつでも要求できる原告の権利を保護する方法を定めています。
裁判所は、裁判所命令を直ちに実施する執行官を任命するための一時執行許可書を発行します。 - 民事訴訟法は、裁判所が敗訴者(判決債務者)に有利な判決 を下した場合における、判決や命令の執行に関する権限と職責を定めています。特定金額の支払い、財産の引き渡し等の訴訟に基づく債務の執行です。
判決債務者が強制執行および強制執行に基づく期間の満了を知っている場合、執行官は、判決債務者の全資産から負債の返済を強制する措置を取らなければなりません。
勝訴者(判決債権者)は、債権回収のために競売で売却する判決債務者の財産の差し押さえもしくは凍結を手配する執行官、または、判決債務の支払いが財産の引き渡しである場合は判決債務者の当該財産の使用禁止もしくは当該財産の明け渡しを手配する執行官を任命する「執行許可書」を発行するよう、裁判所に対して要求することを好みます。
裁判所は、執行条件が裁判所または執行官に明らかな限りにおいてのみ、執行条件を記して執行を命じる執行許可書を発行することができます。
タイにおける債権の消滅時効
法の規定では、金銭返還請求権の消滅時効期間は一律ではありません。例えば、融資全般に関して、法は具体的に請求権の時効期間を定めていないので、融資の請求権の一般的な時効期間は債権者が請求権を行使できる日から10年間です。
法定期間は5年間、融資の利息も5年間有効です。たとえ時効期間が満了した場合でも、債権者は裁判所に提訴して、債務者が負債を返済するよう要求することができますが、債務者は時効期間満了を理由として、満期になった負債の支払い義務を拒否する権利を有します。
債務者が訴訟において時効を主張しない場合、裁判所は時効を理由として、債務者を助けるために訴訟を却下することができません。何故なら、法によれば、この私法は公共の秩序に関する法ではないからです。
それ故、以下の通り、債権者は負債が失効する前に提訴すべきであり、債務者は上記の権利を得るために時効期間満了を主張しなければなりません。
- 資金の分割返済を定めていない融資契約や一般与信契約に関しては、請求権の時効期間は、債権者が請求権を行使できる日から10年間、または、債務者が債務不履行になった日から10年間です。(民事訴訟法の第193/30条)
- 資金の分割返済を定めた融資契約や一般与信契約に関しては、融資金の元本の時効期間は、債権者が請求権を行使できる日から5年間です。(民事訴訟法の第193/33条(2)項)
- 融資金の利息に関しては、債権者の請求権の時効期間は、債権者が請求権を行使できる日から5年間です。(民事訴訟法の第193/33条(1)項)
- 債務者が死亡した場合、債権者の請求権の時効期間は、債権者が債務者の死亡を知った日から1年間です。(民事訴訟法の第193/23条)
タイにおける債権回収に際しての留意事項
証拠の確保
支払期限を過ぎた債権の回収は難しい場合がありますが、時間を要する裁判所に紛争を提起する前に回収を試みる価値はあります。
但し、回収には費用がかかり、回収プロセスもあります。曖昧さを回避し、債権者が債務者から返済を受ける権利を失うことを回避するために回収を行います。
それ故、債権者はすべてのことを明確に書面化すべきです。負債の根拠から債権回収プロセスまで(負債の完済時期を含む)すべて書面にします。
- 負債の根拠
例えば、借金の場合は融資契約書、物品の販売と引き渡しの場合は物品販売・引き渡し契約書、雇用やサービスの場合は役務契約書、建物の賃貸借の場合は商用建物/地域リース契約書や居住用建物リース契約書を作成します、 - 債権回収プロセス
例えば、最初の督促の場合は支払督促状、債務不履行に陥った債権の回収の場合は債権回収督促状や延滞家賃支払督促状を作成します。 - 債権再構築交渉(もしあれば)
例えば、元の負債とは異なる新たな負債の支払条件に関する合意の場合は承諾書や約束手形を作成します。 - 負債が完済された場合、債権者が負債全額の返済を受けたことを記した債務者に対する証拠として、例えば、領収書や賃貸料領収証明書を作成します。
法廷における外国文書の参考資料
民事訴訟法の第46条3項では、「文書の原本が外国語で作成されている場合、裁判所は原本を提出した当事者に対して、原本の全部または重要な部分のみの翻訳を作成して原本に添付し、宣誓供述書と共に提出するよう命じるものとする。」と定めています。
それ故、民事訴訟において当事者は文書全体を翻訳する必要はないかもしれませんが、裁判所は当事者に対して、文書の重要な部分のみを翻訳するよう命じる裁量権を有します。
当事者はタイ語での証明付き翻訳文を常に原本に添付しなければなりません。
相手方の資産の調査
調査期間
法によれば、勝訴後10年以内に、債権者は債務者の資産を調査し、判決を執行しなければなりません。これは、この期間が満了すると、たとえ債務者が資金や資産を持っていても債権者は差し押さえや凍結が一切できないことを意味します。
それ故、判決後は、債権者は調査と判決執行手続きの両方を可及的速やかに実施すべきです。
法が10年という期間を定めている理由は、10年は十分長い期間であり、債務者が借金を負い、その状態が決して終わらない場合、債務者は自活しようとせず、結果、債務者はいつまでも社会にとって負担になるからであり、もし働いてお金を稼げば調査され、すべての訴訟判決が執行されてしまうからです。
訴訟前の資産の調査方法
通常、資産調査プロセスは判決後に開始します。弁護士が様々な場所(土地管理局、陸運局、港湾局、銀行等)で債務者の資産を調査します。それ故、債務者が判決を執行するための資産を持っているか否かが、債権者にとって非常に大きなリスクです。
このため、弁護士を雇って訴訟を起こす場合、厳しく管理すべき資産を債務者が持っていることを債権者に保証するための「訴訟前調査」というものがあります。
訴訟前調査は、官公庁に対して提示できる判決を弁護士がまだ持っていないので、まさに探偵の一種であると考えられます。
例えば、ソーシャルメディアを徹底調査して家や車を見つけたり、写真を収集したり、家の中の貴重品の場合はバッグや靴を見つけたり、顧客を装って店を訪れ、顧客の銀行口座番号や故郷の町の情報を得たりします。
私が聞いた範囲ではその他多くの調査方法があります。それ故、訴訟前調査は各弁護士にとって本当に独特な仕事であると断言できます。これは、様々な調査機関の知人が暴露すべき情報をこっそり入手するような事例とはみなされません。そのような事例は違法です。
調査費用
資産調査は、弁護士事務所が執行に関連して行う探偵調査のようなものです。たぶん、1つ1つ調査しなければならないと考える弁護士がいます。
調査は執行とは別と考える弁護士もいます。債務者の資産を見つけることができるか否かの保証がないので、時間と旅費の無駄であると考える弁護士もいます。弁護士として雇われたことに対する満足度にもよりますが、標準的な報酬というものはありません。
通常、提訴する前に探偵を雇うと、もっと費用がかかります。判決後の資産調査は人脈と個人的な能力を信頼することにより行われます。
不払いリスクを回避する方法 ~ 契約書に署名する際の留意事項
取引先に関する信用調査
基本的なガイドラインに従って、オープンクレジット(無担保与信)を申請する法人を検証する必要があります。法人がどのくらいの期間、営業してきたのかを判断するために、事業開発局から予備情報を入手することができます。
会社の所在地はどこか?代表取締役は誰か?会社は適法に財務諸表を提出しているか?会社の財務諸表の内容は?会社の株主は誰か?対象会社に特徴はあるか?等です。
法人に対して信用を供与するか否かを判断するために、上記の情報を検討する必要があるでしょう。
検討が必要な場合、所定期間内にどのくらい信用を供与すべきでしょうか?
- 会社が最近設立された場合、ずっと前に設立された会社よりも信用度は低いです。
- 会社が法に従って財務諸表を提出していない場合、当該会社の財務状況が信用できないか、または、社内に何らかの問題を抱えている可能性があると合理的に確信できます。
- 会社の所在地が賃貸施設だけの場合、事務所の場所が明確でない場合、または、所在地が証明書に記載された会社の住所と一致しない場合、当該会社の資産を後日調査することが難しいので、信用を供与できる可能性が低い会社です。
- たとえ有名な会社でも、与信の申請のために子会社や関連会社の名前を使用しているように思われる会社もあります。当社は信用を供与する法人として親会社の名前を使用しません。何故なら、当社に財務上の問題が発生したり、負債を返済できない場合、当社は親会社と行動を共にできないというのが当社の意向だからです。
債務者が有限責任会社の中小企業である場合、当該会社はあまり安定していないか、またはあまり信頼できないように見えるかもしれません。
当該会社は「ペーパーカンパニー」であるリスクがあります。将来の負債に関しては、保証状に署名する必要があります。商法・民法(CCC)の第681条2項に従って、与信商品の購入や与信申請を行うことができます。
将来の負債に関する保証状を作成する際、以下の事項を明記しなければなりません。
- 負債の目的:例えば、顧客が先ず事業で物品やサービスを利用できるよう、信用を供与するため。
- 負債の性質:例えば、負債の目的である物品やサービスの種類や価値は何か?その詳細は?
- 保証最高額:いくらまで保証するのかも示さなければなりません。
- 負債の保証期間:換言すれば、物品やサービスの発注予定期間および期限内における保証額も記載しなければなりません。
会社の取締役が信用の供与または信用商品の購入に関して負債の保証状を既に作成している場合において、当該負債が満期になり、会社が物品の支払いに関して債務不履行となり、判決を執行するために債権者が差し押さえるべきその他の資産を持っていない場合、債権者は当該負債の保証人である取締役に対して、判決を執行するためにその資産を差し押さえることもできます。
取引内容の適切な設定
信用状は、国際取引において最も古く、最も標準的な支払形式の1つです。
数千マイルも離れた場所にある馴染みのない会社と取引する外国の輸出者は、支払保証なしに物品を製造して出荷するために資金を投資することを不安に感じることがよくあります。
信用状が無い場合、通常、輸出者は多額の保証金やその他の支払保証を求めます。信用状を使うことで、買主はこれらの望ましくない選択肢を回避することができます。
同様に、海外の供給者と取引する輸入者は、注文書の要件を満たさない可能性がある物品や到着遅延の可能性がある物品のために前払いしたくありません。
通常、買主は予想通りに物品を受領するまで支払いを延期したいと考えます。
何らかの形で売主による契約履行が悪化した場合、信用状は買主が保証金を失うことを防止します。信用状が無ければ、仕様通りに物品が製造されていない場合に買主は保証金を取り戻すために自力で対処しなければなりません。
特定取引における買主と売主の両方にとって、信用状は両当事者の利益を保護する合理的な妥協策です。信用状は、特定の文書要件に従って物品を製造し出荷した際に輸出者が代金を受け取ることを保証すると共に、輸入者の利益も保護します。
大半の他の金融業者が引き受けない無担保信用状を「セキュア・プラットフォーム・ファンディング(Secure Platform Funding)」が引き受けることを覚えておいてください。
重要:通常、「荷為替信用状(DLC)」は物品の買主と売主の間の支払保証の1形式です。荷為替信用状は収益を生み出すことはできず、「銀行保証(BG)」のように譲渡できません。従って、第三者はDLCを現金化できません。
顧客に対して事前に負債を支払うための小切手を発行するよう依頼する方法は、保証人よりも良い方法ですが、負債を完済するための小切手を発行するよう顧客に依頼することはより難しいかもしれません。
何故なら、事前に負債を完済するための小切手を発行しない賢明または経験豊富な顧客もいるからです。顧客が小切手の全額を支払わない場合、当該顧客は刑務所に収監される可能性が高いからです。
但し、交渉力と状況次第では、顧客は小切手を発行しなければならない場合もあります。
但し、事前に負債を支払うための小切手の発行には注意しなければなりません。物品の購入を保証するための小切手の発行と混同してはなりません。
担保の取得
事業担保契約は、融資の担保として経済的価値のある資産を、債権者に対してその占有を引き渡すことなく、起業家が使用できるようにする法的文書です。
事業担保として使用できる資産は本質的に経済的価値のある資産です。
- 事業:担保提供者が事業運営のために使用する様々な資産です。例:土地、建物、自動車
- 請求権:金銭で支払われたか、他の資産として負債の返済を受けたかを問わず、負債の返済を受ける権利です。
- 資産:担保提供者が事業運営のために使用する動産です。例:物品の生産に使用される機械、在庫、原材料
- 不動産:担保提供者が不動産事業(土地、建物等)に直接従事している場合、住宅地を運営したり、空き地を割り当てる者は、土地や建物を担保として使用できます。
- 知的財産権:著作権、特許、商標、営業秘密等です。
- 事業担保契約は書面で作成して、登録だけしなければなりません。
但し、担保提供者は自然人でも法人でもなれます。担保提供者は担保として資産を使用する権利を有しますが、資産の在庫リストを作成して、担保受領者がそれを監査できるようにしなければなりません。
担保受領者は、商業銀行、証券金融会社または生命保険会社でなければなりません。
企業は商務省事業開発局事業担保登録所で担保契約を登録する責任があり、他の債権者より優先して担保から負債の返済を受ける権利を有します。
紛争解決の取り決め
債務者に関しては、判決に従って、裁判所が判決債権者に対して引き渡し管理者になるよう命じた場合にのみ、保証状が送付されます。
当該保証状が送付されない場合、執行官は、判決債務者または差し押さえ時に見つかった対象資産の占有者に対して保証状を提示する義務を負います(民事訴訟法の第281条に従って)。
保証状が判決債務者に対して送付された時点から、または、保証状がその発行日から送付されない場合、執行官は、判決債権者の代理人として、負債の返済または判決債務者が購入した資産を受ける権限、判決債務者の資産を差し押さえるまたは凍結するための受領書を発行する権限、当該資産を競売にかける権限、当該資産の処分または当該資産から得た収益金を処分する権限、保証状執行裁判所が定めた一般執行手続きを実行する権限を有します(民事訴訟法の第278条に従って)。
仲裁
債務不履行と契約違反は、契約違反行為として同じです。契約の不順守の場合、例えば、債務者が指定の暦日に負債を返済しない場合に債務不履行となり、債務者は直ちに債務不履行者になります。
債務不履行は契約違反の一種と言えます。
それ故、債務不履行はより狭義な意味での契約違反です。不履行のすべての場合が債務不履行とみなされるわけではありません。
債務不履行が負債の不払いや契約違反として使用されない場合、補償はありません。契約違反と債務不履行の区分は以下の通りです。
条 | 項目 | 契約違反 | 債務不履行 |
---|---|---|---|
1 | 契約の種類 | 補償のある契約と無い契約がある。 補償を約束する場合と約束しない場合がある。 |
約束は、補償に関して違いはない。 補償のある契約と無い契約がある。 |
2 | 代名詞 | 当事者 債権、債務 |
当事者 債権、債務 |
3 | 意味 | 当事者が契約を順守しないこと。必要な負債の支払いを行ったか否かは問わない。 | 指定の暦日または債権者が債務者に対して警告した日までに債務者が負債を返済しないこと。 |
4 | 違い | 契約違反は、より広い意味を持つ。 すべての不履行が契約違反とみなされる。 |
債務不履行とは特定の日までに支払わないことを意味するので、狭義の不履行である。すべての不履行が債務不履行というわけではない。 |
最後に、誰でも債務不履行と契約違反が何かを知っています。不履行と債務不履行の両方に起因する紛争を防止し解決する別の方法は「調停契約」を締結することです。
これに基づき、タイ仲裁センターが調停を通じて紛争を平和的に解決します。
タイにおける債権回収のために弁護士を起用するメリット
債権回収の専門家や弁護士のサービスの利用
多額の負債の場合、債権者は、債権者または債権者の従業員ではない第三者を起用して指名することを検討する場合があります。裁判所に訴訟を提起する前に、法律事務所、弁護士事務所、債権回収サービス業者等が債権回収を行います。
その場合、債権者は、回収を行う弁護士が債権回収法に従って債権回収事業を適法に登録している請負人であることを確認しなければなりません。そうすることで、債務者はより怖がるようになり、結局は負債を返済するかもしれません。
訴訟手続き
債務者から負債全額の返済を受けていない場合、債権者は訴訟に頼らざるを得ないかもしれませんが、訴訟には多額の費用と時間がかかります。
他方、訴訟は債権者が債務者からの債権回収に全力を尽くしていることを債務者に対して示します。訴訟手続き中、債務者は怖くなり、結局、負債を完済するかもしれません。
更に、訴訟手続き中、債権者と債務者は裁判で和解できる可能性もあります。
重要:債権者は、契約条項や関連する法的手続きに関して弁護士に相談すべきです。
何故なら、それらの条項や手続きの1つが既に履行されている場合、債権者が自分の権利の一部を失ったり、自分の権利を最大限に行使できなくなる可能性があるからです。
タイの法令に精通した経験豊富な法律事務所「ALG」に債権回収を委任
タイにおいて債権回収について法的措置や訴訟を進めたい場合、法律事務所である当社「ALG」を選択することができます。
当社は、御社の債権回収のお役に立つために、債権回収に関して経験豊富なタイの弁護士により、当該法的措置や訴訟を行います。
お問い合わせ
執筆弁護士