コラム
更新日: 2024年11月27日
タイに進出するための様々な契約書の作成
監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長タイに進出するための様々な契約書の作成
タイの契約法は、契約の両当事者の権利と義務を生み出す約束を扱います。
契約が有効であるためには、例えば、当事者が必須条件、特定履行、保証、譲渡、不可抗力、契約上の救済手段に関してだけでなく、契約の有効性を条件として、例えば、契約の主題事項の違法性、契約の誘引における詐欺、法的能力の欠如に関しても合意しなければなりません。
契約は、申し込みが承諾された時点で発生します。但し、契約の発生時期に関する問題と契約が適法に執行可能か否かに関する問題は、法律上は別の問題です。
更に、今日、契約法は、国際モデル法の影響を受けて、電子データを扱っています。契約書を作成する際には、すべての電子取引を考慮に入れなければなりません。
タイ法に基づく契約書の作成方法を理解するには、先ず、タイにおいてか否かを問わず、すべての契約書や合意書がタイの「商法・民法(CCC)」に基づくことを理解すると共に、契約書の主題事項に関する特定法を理解する必要があります。
契約書における不備のリスク
契約書には、不備や記載漏れが引き起こす可能性のあるリスクが存在します。例えば、
- トラブルが発生する可能性がある。
- 契約内容が無効になる。
- 契約の解除や変更が困難になる。
- 契約内容を履行しない相手方に対して、法的措置を取ることができない。
- 損害賠償金を受け取ることができない。
弁護士によるリーガルチェック(法的確認)の重要性
タイにおいてか否かを問わず、すべての契約書や合意書はタイの「商法・民法」(CCC)に基づきます。
また、契約書の主題事項に関する特定法もあります。それ故、法律や法務に関する知識と経験を有する現地の弁護士または国際弁護士に契約書や合意書を確認してもらうべきです。
タイに進出するために作成すべき主な契約書
タイに進出する際、様々なビジネスにおいて以下の契約書が提案または交換されることがよくあります。
- 合弁事業契約書
- 法人買収契約書
- ライセンス契約書
- 販売店契約書
- 守秘義務契約書
- 紛争解決契約書
- 雇用契約書
合弁事業契約書
「JV契約」とも呼ばれる合弁事業契約は、2人以上の当事者による契約上のコンソーシアムです。
合弁事業契約は通常、特定目的(例:新市場への参入、リスクとコストの分担)を達成するために両当事者のリソースを結合することを目指します。
当事者は、比例配分される利益を得ることや分担したリスクを引き受けることにより、恩恵を受けます。
合弁事業契約には、以下の2種類があります。
タイプ1:契約上の合弁事業
タイプ2:別個の法人
契約上の合弁事業は契約書により形成されます。一方、別個の法人は株式会社またはLLC(有限責任会社)により形成されます。
換言すれば、契約上の合弁事業は契約書だけで存在します、対照的に、別個の法人は、株式会社または有限責任会社(LLC)を作るために当事者が統合した際に形成されます。
紛争が生じた際に自社の権利を保護するために、一般的に、合弁事業契約は書面で作成すべきです。
もっとも、ある司法管轄域では、口頭での契約も法的拘束力を有することに留意することが重要です。
合弁事業契約は協調的なものであり、特定プロジェクトに関して企業(規模を問わず)を統合するために起草される場合があります。
そうすることで、より効率的かつ効果的に目標とする成果を出すことができます。契約により、すべての当事者が自らの権利、責任、制限を確実に理解することができます。
以下のステップは、合弁事業契約がうまく機能する方法についての概要を示したものです。
ステップ1:契約パートナー候補とビジネスチャンスを協議する。
ステップ2:法的助言を受けるために弁護士を雇う。
ステップ3:合弁事業の的確な種類を選択する。
ステップ4:合弁事業契約書の初版を起草する。
ステップ5:税金を正確にかつ速やかに支払う。
ステップ6:法令順守を維持するために継続的な助言を求める。
ステップ7:必要に応じて、合弁事業契約の修正版を締結する。
合弁事業契約はパートナーシップ契約と似ていますが、依然としていくつかの相違点があります。合弁事業契約は、特定期間の単一活動に関する誓約においてよく使用されます。
他方、パートナーシップ契約は、継続的で長期的な関係性を示すものです。但し、契約の性質次第では、合弁事業契約も長期的で継続的な契約である場合もあります。
法人買収契約書
買収契約は、ある企業が別の企業を買収する際に使用されます。買収契約書には、取引内容、当事者の表明と保証、条件、誓約、契約終了、補償に関する条項が含まれます。
買収契約には2種類あります。法人買収契約は、買主が相手方企業の株式の過半数を取得することにより所有権を得る際に使用されます。買収側企業は相手方企業(当該企業の債務と負債を含む)の支配権を掌握します。
資産買収契約では、買主は相手方企業の資産の全部または一部を購入します。相手方企業のオーナーは依然として当該企業の所有権を保持しますが、もはや実務には携わりません。
各々の買収は異なりますが、契約書に常に含めるべきいくつかの重要な規定があります。例えば、
- 取引内容-買収対象企業、取引構造、支払日程。
- 表明および保証-買収対象事業の性質と品質に関する事実に基づく表明と保証(買収の潜在的リスクを含む)。買主と売主は各々、対象事業の売買に関して異なる表明と保証を行うことを望みます。
- 条件-取引を完了する当事者の義務を定める前に、行うべきすべてのことを記載します。
- 誓約-取引完了前後に果たすべき当事者の約束。
- 契約解除-いずれかの当事者が取引完了前に取引を終了できる方法と時期、取引離脱の結果。
- 補償-誓約・保証・表明に関する違反があった場合、または、合併もしくは買収の可能性に関する訴訟が発生した場合において、各当事者が負うリスクと責任の特定量を定めます。
もちろん、各規定は、各特定当事者と取引の詳細に注意深く合わせて調整する必要があります。
自社が買収当事者である場合、買収契約が適切かつ特別に自社の権利を保護し、自社の責任とリスクをできるだけ制限し、契約違反の場合に自社が補償請求できることを確実にする必要があります。
買収取引には多くの種類がありますが、取引は一般的に、2種類の主な買収契約-法人買収契約と資産買収契約-のいずれかに関係します。
状況次第では、企業は買収よりも合併を求める場合もあります。
- 法人買収契約-「株式買収契約」とも呼ばれるこの種の契約は、買主が相手方企業の株式の少なくとも過半数を購入することにより所有権を取得する買収を対象とします。買収側企業は過半数オーナーになると、相手方企業(当該企業の債務と負債を含む)の支配権を掌握します。
- 資産買収契約-この種の契約では、買主は相手方企業の資産の全部または一部を購入します。当該資産には、金融勘定、有形資産(設備を含む)、不動産、在庫、無形資産(営業秘密、特許、著作権、商標等)が含まれる場合があります。相手方企業のオーナーは依然として当該企業の所有権を保持しますが、もはや実務には携わりません。この契約は、企業が個人事業または法人格を有しないパートナーシップ(共同経営会社)を買収する際に有益である場合があります。
ライセンス契約書
ライセンス契約は、いずれかの当事者(ライセンサー:許諾者)が相手方(ライセンシー:被許諾者)に対して、ライセンサーの保護対象物を生産・使用・販売および/または表示する権利を付与する種類の契約です。
保護対象物には物的な資産が含まれる場合がありますが、ほとんどの場合、著作物、営業秘密、商標、ブランド名、特許等の知的財産です。
ライセンス契約はライセンシーに対して資産の所有権を付与せず、資産の使用権だけを付与します。
以下は、ライセンス契約に含めるべき条件です。
- 独占性-契約が独占的ライセンスまたは非独占的ライセンスのどちらを提供するのかを定めます。独占権のあるライセンスでは、ライセンサーはライセンシーに対して、ライセンス対象資産を使用するための唯一の許可を付与しますが、非独占的ライセンス契約では、複数のライセンシーが存在する場合があります。
- 期間-ライセンスの有効期間、更新条件、必要な場合にいずれかの当事者が契約を早期解除できる方法を定めます。
- 場所-商品をライセンスできる地理的な場所を具体的に定めます。商品または商品が販売される地域によっては、適用法が変更になる可能性があります。両当事者の将来の手間を省くために事前にライセンス対象場所を計画します。
- 支払い-ライセンサーが支払いを受ける方法と時期を定めます。ライセンス報酬はロイヤルティの支払いという形態をよく取ります。報酬は通常、売上高の割合(パーセンテージ)または販売した1単位当たりの固定ロイヤリティ料率です。
- 合弁事業-非独占的ライセンスの場合、契約では、ライセンシーとライセンサーの再ライセンスする権利または合弁事業を形成する権利も定めるべきです。例えば、販売店は商品の販売促進に役立つマーケティング会社の起用を望む場合があります。ライセンス契約では、このような第三者との提携に関して、ライセンサーはライセンシーに対して許可または拒否しなければなりません。
- 秘密保持条項-ライセンサーがライセンシーと秘密情報(営業秘密等)を共有する場合、当該秘密情報を保護するための秘密保持条項を定めます。この条項には秘密保持違反が発生した場合の結果も定めるべきです。
- 補償条項-補償条項では、契約期間中における財産の損害に対する免責や責任放棄等を定めます。当事者は、契約履行業務の結果として相手方が被った手数料、法的費用、その他のコストを支払うことに同意します。
- 紛争解決-両当事者は契約を締結する前に、紛争が生じた場合における紛争処理方法を知っておく必要があります。契約には、完全合意を無効にする可能性のある契約違反の概要も定めるべきです。仲裁、調停、裁判所の介入が最も一般的な紛争解決手段です。
販売店契約書
販売店契約は、販売チャネルのパートナー間の契約であり、両当事者の責任を定めます。契約は通常、メーカーまたはベンダーと販売店との間で締結されますが、2つの販売店または1つの販売店とその他の販売チャネルの法人が関わる場合もあります。
販売店契約の典型的な条項:
販売店契約の基本条項には、契約期間(契約が有効な期間)、供給条件、契約対象の販売地域(米国内の地域および/または国際市場)に関する条項が含まれます。
メーカーまたはベンダーは、販売店契約が独占的か非独占的かを決定しなければなりません。
独占的契約では、特定の販売店が特定の地理的地域または複数地域において商品を販売する権利を有する唯一の販売店になります。非独占的契約では、メーカーまたはベンダーは、時には同一市場で競合する他の販売店にも商品を供給することができます。
更に、メーカーまたはベンダーは、締結すべき契約の種類を検討する際、流通戦略を決定しなければなりません。選択的戦略では、販売チャネルパートナーのターゲット市場を対象とする販売小売店の小グループが必要です。
集中的戦略は、広範な流通経路を通じて、できるだけ多くの見込み購入者に対して商品を展開することを目指します。後者の戦略は通常、商業市場向けに設計された商品とは対照的に、消費者志向の商品によく当てはまります。
販売取引は国際的な範囲に及ぶ場合があります。アロー・エレクトロニクス(Arrow Electronics)、アヴネット(Avnet)、イングラム・マイクロ(Ingram Micro)、テック・データ(Tech Data)等の最大規模の電子機器・IT販売店は、広範な地理的範囲の多くの国々において子会社を運営しています。
守秘義務契約書
守秘義務契約(NDA)は、秘密的関係を構築する法的拘束力のある契約です。
NDAに署名する当事者は、自らが取得する可能性のある秘密情報を他者が利用できないようにすることに同意します。NDAは「秘密保持契約」と呼ばれる場合もあります。
NDAは、他の企業と交渉を開始する企業にとっては一般的な契約です。
NDAにより、契約当事者は、秘密情報が競合の手に渡ってしまうことを恐れることなく、秘密情報を共有することができます。この場合、「相互守秘義務契約」と呼ぶ場合があります。
NDAは、資金供与を求める企業と投資家候補の協議の前に使用される場合もあります。その場合、NDAは当該企業の営業秘密や事業計画を競合が取得するのを防止します。
但し、多くの投資家はNDAへの署名を嫌がります。NDAは投資家による様々な企業との将来の取引を妨げる可能性があるだけでなく、契約を執行し、不正行為を証明することが非常に困難な場合もあります。
投資のチャンスを断った後でさえNDAにより法的負担を負うので、ほとんどの投資家はNDAに署名しないでしょう。
上述の保護対象の秘密情報には、マーケティング戦略、販売計画、見込み客、製造工程、プロプライエタリ・ソフトウェア(所有権を主張できるソフトウェア)が含まれる場合があります。
いずれかの当事者がNDAに違反した場合、相手方は、更なる情報開示を防止するための訴訟を提起し、違反当事者に対して損害賠償金を求めることができます。
紛争解決契約書
「仲裁契約」としても知られる紛争解決契約は、紛争が将来発生した場合に当該紛争を解決するためのプロセスの概要を定めた法的文書です。
この契約は、紛争が発生する前に紛争処理方法の枠組みの概要を定めることにより、多額の費用がかかる訴訟を回避するのに役立ちます。
紛争解決契約は、契約条件について当事者の意見の不一致が生じた場合に役立ちます。他の人々や企業と契約を締結した事業主が意見の不一致の処理方法の概要を定めた文書を持っていることは重要です。
紛争解決条項では、紛争のすべての局面および紛争解決方法の詳細を定めるべきです。
例えば、「第一審においては、ADR(裁判外紛争解決手続き)を試みるべきである」と規定します。紛争解決条項では、合意した解決策の実施方法、発生費用の分担方法も定めるべきです。
更に、当該条項には、選択した司法管轄域に関する規定を含めるべきです。この規定は両当事者のために紛争解決に向けた明確な道筋を示すことができます。
最後に、両当事者を確実に保護するために、プライバシーと秘密保持に関する条項もしっかりと定めなければなりません。
雇用契約書
タイ法では、契約は口頭または書面で成立します。しかし、理想的には、契約は書面化すべきです。基本的に、タイの労働保護法は2つのレベルの違反を定めています。1つは「重大な不正行為」、もう1つは「義務の履行不能または不履行」です。
契約違反の影響と結果を調べることは、労働法に関するすべての関係法令を調べることを意味します。主な法律は「労働保護法B.E.2541(1998)」と、商法・民法(CCC)の中の法的拘束力ある規定です。
この種の違反に関する解雇手続きは、各企業が定めた社内規程によります。但し、最初の警告書を発した後に従業員が継続的に不正行為を繰り返した場合や不正行為を是正しない場合、雇用主は一般的に、警告書の送達後の相当期間内に雇用契約を解除する権利を有します。
労働保護法によれば、1回の警告書で十分ですが、多くの人々は3回の警告書が必要であると確信しています。もっとも、3回の警告書が必要であると定めた企業の社内規則も時々あります。
しかし、違反にもかかわらず、および、警告書が発せられたにもかかわらず、従業員に対しては解雇後、解雇手当を支払わなければなりません。
労働保護法の第118条によれば、たとえ従業員が義務の不履行後に解雇された場合でも、解雇手当を支払わなければなりません。但し、この規定は軽微な違反に適用され、重大な違反には適用されません。
解雇手当に関する規則の例外には、特別プロジェクトに従事する一定期間後に従業員が解雇される場合が含まれます。例えば、ファッションショーや住宅建設です。但し、プロジェクトは一時的なものでなければなりません。
業務がその性質上、特別なまたは一時的なプロジェクトでない場合、従業員の労働期間に応じて、雇用主は解雇手当を支払う必要があります。技術的進歩により従業員が余剰になった場合、特別解雇手当を支払わなければなりません。
労働保護法は手当金額を定めていませんが、第118条で定めた通常の解雇手当に加えて支払わなければなりません。雇用主が従業員に対して、解雇の少なくとも60日前までに解雇通知を行わない場合にも、特別解雇手当を支払う必要があります。
西洋の考え方からすれば、義務を履行しない従業員に対して金銭を与えることは奇妙に見えます。イギリスの雇用法では、従業員の不履行に対して報酬を支払う義務はありません。
西洋的な見地からは、不正行為に基づく解雇に関してタイ法で定める解雇手当の水準は非常に低いです。
解雇手当は、不正行為に基づく解雇の結果として従業員が被る結果的な損失や損害(例:ホースレス化、家族の喪失、パートナーの喪失、自尊心の喪失、自信の喪失、健康の喪失)に関して当該従業員を補償するものではありません。
秘密保持条項違反が懸念される場合、業務上で得た情報であるか否かを問わず、単に従業員が当該情報を知っているということだけでなく、当該情報が本当に秘密だったことを証明しなければなりません。
紛争と労働争議を回避するために、雇用契約で定めた条件が従業員の社内での仕事と地位を正確にかつ確実に反映するよう、毎年、当該条件を見直すべきです。
詳細な就業規則と雇用条件を従業員に対して提供すると共に、詳細な苦情処理手続きと懲戒手続きを文書化して従業員に対して提供すべきです。
従業員の各レベルや各ランク毎に、雇用レベルに関する雇用主の期待を記載した雇用契約書の標準書式を両当事者の便宜のために起草すべきです。外国人従業員との雇用契約書は紛争を回避するために分かり易い英語で起草すべきです。
法律の概念として地域によっては共感されないかもしれない「推定解雇」(雇用主による労働条件等の改悪による表面上の自主退職)には、例えば、従業員が「機能していない職位」で働かされる場合が含まれます。
本質的に、推定解雇は、従業員の労働生活が非常に困難になるので従業員が仕事を嫌いになり始めたり、あまり意味のない仕事をする別の職位に異動させられたりする場合が該当します。
そのような状況に置かれた従業員はしばしば、退職する以外に選択肢がないと感じます。推定解雇は、従業員に退職を強要するために使用すべき手法ではありません。
推定解雇はコモンロー上の用語であり、タイでは厳格には適用されません。
西洋ではこの手法を使う企業もあり、西洋ではこの用語は広く認められています。タイの人々はこの用語を理解しません。通常のタイ法では、強要による退職は法律上の退職ではなく、違法な解雇です。
タイに進出する企業が契約書を作成する際に取るべきステップ
第1ステップは、当事者による何ら瑕疵の無い同意です。
この同意は、契約を無効にする可能性を防ぐために必須の条件です。換言すれば、法律行為の本質的要素に関して、当事者が行う意図の宣言に誤りがあってはなりません(CCC 第154条以降)。
第2ステップは、法的能力です。
先ず、単独で契約できるために法律が要求する最低年齢については誰もが考えます。タイ法では、20歳になると法的責任能力者となり、単独で契約を締結することができます。タイ法では20歳で法的責任能力が生じます。一般的に、未成年者と契約する場合、その法定代理人の同意を得なければなりません。
但し、年齢が唯一の要素ではありません。例えば、保護下にある成人もその後見人の同意なしに契約することはできません(CCC 第153条19項および21項)。
第3ステップは、契約目的が法律により禁止されていないことです。
契約目的はタイの公序良俗に反してはなりません。実行不可能な場合や法律で禁止されている場合も、契約目的にすることはできません。当事者が契約する理由および目的が契約の主題事項である理由を示す条項が必要です(CCC 第150条および151条)。
例えば、麻薬の売買は、麻薬の販売が禁止されているので無効です。従って、たとえ売主が買主に麻薬を渡して、買主が代金を支払わない場合でも、売主は裁判所に対して支払請求を行うことはできません。
但し、契約のある条件が上記に違反する場合でも、契約の残りの部分は依然として執行可能です(CCC第173条、174条)。
契約目的が上記に違反しない場合でも、不当な条件も検討対象となるでしょう。
ある地域では、当事者が非常に弱い状況にある場合、たとえ当該当事者が契約内容を十分に理解していても、法律はその弱者を保護します。契約の不当すぎる部分は無効であり、使用できません(不当条件法B.E. 2540)。
第4ステップは、必須の書式の使用です。
ある特定の契約に関する法律は当事者に対して、厳格な書式条件を順守するよう義務付けています(CCC 第152条)。口頭契約、書面契約、行政機関での登録契約等がそれに該当します。売買契約書は、契約の必須書式を理解するのに良い例です。
契約書の中には様々な必須の書式があります。建設契約には特別な書式はありません。口頭契約は執行可能です。土地の購入またはリース契約は書面が必須であり、当事者と2名の証人が適法に署名した上で登録しなければなりません。
但し、この土地プロジェクトを具体化することができる融資契約は書面で行い、借主が署名することのみを条件とします。貸主と証人の署名は不要です(CCC 第538条、589条および653条)。
2001年以降、「電子取引法B.E.2554」が電子メールでのバーチャル署名を許可するために適用されています(第26条パート2)。しかし、法律行為のある部分は家族・相続契約には含まれません(特定民事商取引に関する布告2556)ので、電子メールで作成された遺言状や遺言書は無効です。
上記のいずれかの条件が順守されない場合、契約は無効であると宣言され、当事者と第三者にとっては存在しなかったものとみなされます。
その結果、善意の状況か否かを問わず、そのような状況下の第三者に何らかの影響を及ぼします。
時には、契約の無効は当事者自身だけに影響を与えます。他の場合では、当事者の意志にもよりますが、契約が存続する可能性があります。それ故、その結果はとても大きなものになる場合があります。
第5ステップは、よくある間違いの防止です。
タイでは契約書を作成する際にいくつかの間違いがありますが、契約の悪い状態に影響を与える最もよくある間違いは以下の通りです。例えば、
- 不明確な契約条件および当事者による不明確な解釈
- 企業の取締役の場合における利益相反
- 証拠なしに修正された契約条件
契約書の作成、契約の実行と終了は「契約の一生」における3つのステップです。
民間の契約であれ、行政の契約であれ、各ステップを重要なものとして真剣に検討し、深く理解しなければなりません。
契約書を作成する際に重要な点
契約書を作成する際には、以下の4つの重要点に注意を払わなければなりません。
相手方が提示した契約書を使用する場合
契約書には不利または有利な条件が含まれている可能性がありますので、両当事者は自社にとって利益になる契約内容を検討するために、契約書に署名する前に利益相反を確認しなければなりません。
標準の見本または書式を使用する場合
- 契約書の標準見本や標準書式は、状況次第では必ずしも適切ではない場合があります。
- それらを使用する場合、会社の状況に従って、契約内容を修正してください。
- 契約書の標準見本や標準書式に違法な条項が含まれているか否かを確認することも必要です。
契約書において使用する言語
使用する言語は両当事者が理解できる言語にします。両当事者の国籍が異なる場合、契約書の言語としては英語を選択すべきです。
[参考]タイのにおける電子署名の有効性
2001年以降、「電子取引法B.E.2554」が電子メールでのバーチャル署名を許可するために適用されています(第26条パート2)。
しかし、法律行為のある部分は家族・相続契約には含まれません(特定民事商取引に関する布告2556)ので、電子メールで作成された遺言状や遺言書は無効です。
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