私が医療事件に本格的に取り組み始めたのは、平成21年、今から6年前になります。
初めて医療訴訟を提起する前には、専門書を何冊も読み込んだ上で臨みました。専門書といっても、医学書ではなく、医療訴訟の訴状の書き方や審理の進め方に関するものです。それは、一般的な民事訴訟とは異なる医療訴訟特有の訴状の論理構成や尋問・鑑定等の手法があったからです。
しかし、いざ始めてみると、それ程構える必要はなかったような気がします。要するに、我々弁護士の仕事は、判断権者である裁判所にどれだけ説得的な論述を展開し、裁判官を「なるほど」と納得させるかにかかっているのです。その点で、医療事件は、殆どの裁判官が医学的知識のないズブの素人というところに特徴があります。他の事件は、法律の専門家である裁判官が元から相当の知識経験を有しています。それゆえ、医療訴訟は、素人に対して、一からわかるように説明する作業が要求されるのです。
これは、初歩的な知識から書面化せねばならないという大変さがある反面、何の知識、偏見もない白紙状態の人間に対する説得であるがゆえ、立証活動さえ成功すれば、勝訴に導きやすいという側面もあるのです。もっとも、患者側の弁護士は、医学的知識をその都度、勉強して自分のものにしてからでないと、医療機関相手に戦えるものではありません。この基礎ごしらえに相当な時間を費やすこととなります。
しかし、それこそ、患者側弁護士は、その疾患に関しては、本当に医学書の隅から隅まで勉強して詳しくなりますから、臨床の場に多くの時間を割かざるを得ない相手方医師より、知識的に勝るという現象も起きてくるのです。もちろん、それは対象となる疾患限定の話ですが、こと医療訴訟においては、ほぼ一つの疾患に範囲を限った紛争ですから、それで十分なのです。
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