養育費の相場はいくら?子どもの人数別の平均や増額・減額するケース
離婚時に子供を引き取った方の親は、子供が成人するまで責任を持って育てていくことになります。
一方、引き取らなかった方の親は、一緒に生活しなくなるからといって、子供に対する責任がなくなるわけではありません。
夫婦は離婚により縁が切れたとしても、子供にとっての親であることに変わりないため、双方が収入等に応じて子供の養育費を分担していくことになります。
本記事では、養育費の概要や、金額の相場、相手から養育費が支払われない場合の対処法、相場より増額・減額されるのはどのようなケースか、といったことについて解説していきます。
目次
養育費とは
養育費とは、未成年の子供を監護し、養育するのに必要となる費用のことです。
離婚後も子供と一緒に生活し、世話をしている方の親(監護親)は、離れて暮らす方の親(非監護親)に対して、毎月一定の金額の養育費を請求することができます。
養育費には具体的に、以下のような費目が含まれます。
子供の生活費 | 食費、被服費、住居費 |
---|---|
教育費 | 学校の授業料、学用品費、通学費、制服代、通学用品費、給食費、修学旅行代、PTA会費など |
医療費 | 診察料、薬代など |
お小遣い | 常識の範囲内で必要となる金額 |
娯楽費 | おもちゃ代、スマートフォン通信料など |
交通費 | 電車代、バス代など |
いつからいつまで受け取れる?
養育費は原則として、“養育費を請求した時点から子供が成人するまで”の期間の分を受け取ることができます。
通常は、離婚の話し合いの際に養育費の請求も併せてすることが多いので、“離婚成立時から”となることが多いです。
また、子供が離婚時に大学生であったり、高校生で大学進学の予定があったりすれば、“大学卒業時まで”とすることもあります。
なお、2022年4月1日から、成人年齢が18歳に引き下げられるため、いつまで養育費を払うか争いにならないように養育費の支払い終期を“成人に達するまで”とはせず、明確な時期を定めておくべきでしょう。
養育費の決め方
養育費の金額や支払い期日といった条件は、支払う側と受け取る側が話し合って合意さえできれば、自由に設定することができます。
話し合いで決める場合は、最低限以下の項目は決めるようにしましょう。
- 養育費の月額
- 支払い期日(月末払い等)
- 支払い方法(振込先の口座を指定する)
- 支払い期間(特に、いつまで支払うか明確にする)
- 特別に考慮すべき事情
条件が定まったら、その内容を公正証書に残しておくようにしましょう。
公正証書は、公証人が法律に基づいて作成する文書で、公証役場にて作成を依頼することができます。
公文書として扱われるため、後になって認識の相違等でトラブルになるようなことを防げます。
離婚の公正証書について、詳しくは以下のページを参照してください。
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当事者同士の話し合いで決められないようであれば、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てることができます。
調停でも結論が出なければ、審判により裁判所が結論を示します。
ただ、通常は離婚時にまとめて取り決める事柄なので、「離婚調停」で養育費のことも一緒に話し合うことがほとんどです。
ただし、離婚調停が不成立となった場合には、離婚裁判を申し立て、離婚裁判の中で、離婚後の養育費の金額を判断してもらうことになります。
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養育費の平均は?子供の人数ごとの相場
養育費の金額は双方が納得できれば好きに決められますが、一般的にはどの程度の額に落ち着くことが多いのか気になるところかと思います。
家庭裁判所の実務では、養育費算定表を使用してその家庭に合った相場を算出します。
この章では、算定表の概要を説明したうえで、いくつかのモデルケースをもとに実際に算定表から相場を算出していきます。
養育費算定表とは
養育費算定表は、もともと複雑で手間のかかった養育費の計算を、誰でも簡単に行えるようにすることを目的として、裁判官らの研究によって作成されたものです。
平成15年に発表されてから、調停や審判、裁判において広く利用されるようになり、令和元年には社会実態に合わせて改定も行われています。
算定表は子供の人数と年齢に応じて9種類あり、その中から自分の家族構成に合った表を選びます。
そして、支払う側である“義務者”と、受け取る側である“権利者”それぞれの職業および収入を当てはめて相場を算出します。
以下の裁判所のウェブサイトに、婚姻費用の算定表と一緒に掲載されているので、ぜひ確認してみてください。
算定表の金額以上にもらえる可能性は?
算定表から算出される養育費は、あくまでもその世帯収入の家庭が一般的に必要になると考えられる金額が設定されているにすぎないので、支払う側が納得するのであれば、相場より増額することは可能です。
養育費算定表では、私立学校の学費や塾代、入院費等は想定されていないため、こういった費用が必要になる場合は、相手に主張しましょう。
子供1人の養育費の相場
ここからは、様々な家族構成・世帯収入の家庭を例にして、算定表をもとに養育費の相場を算出してみます。
なお、すべての例で妻が子供を養育しているものとします。
まずは、子供1人の家庭の相場を比べてみましょう。
夫婦それぞれの収入の差が小さいほど、養育費の金額は少なくなる傾向にあります。
また、夫婦の収入に左右はされますが、子供の年齢が15歳以上の方が、養育費は高くなるように設定されています。
子供の年齢 | 14歳以下 | 14歳以下 | 15歳以上 | 15歳以上 |
---|---|---|---|---|
夫の収入 | 400万円(会社員) | 350万円(会社員) | 300万円(自営業) | 200万円(自営業) |
妻の収入 | 0円(専業主婦) | 300万円(会社員) | 0円(専業主婦) | 150万円(パート) |
養育費の相場 | 4万~6万円 | 2万~4万円 | 6万~8万円 | 2万~4万円 |
子供2人の養育費の相場
続いて、子供が2人いる家庭の相場です。
養育費算定表では、第1子と第2子の年齢に応じて、全部で3種類の表が用意されています。
子供の年齢 | 2人とも14歳以下 | 1人目15歳以上2人目14歳以下 | 2人とも15歳以上 |
---|---|---|---|
夫の収入 | 400万円(会社員) | 400万円(会社員) | 500万円(会社員) |
妻の収入 | 0円(専業主婦) | 250万円(パート) | 500万円(会社員) |
養育費の相場 | 6万~8万円 | 4万~6万円 | 4万~6万円 |
子供の年齢 | 2人とも14歳以下 | 1人目15歳以上2人目14歳以下 | 2人とも15歳以上 |
---|---|---|---|
夫の収入 | 200万円(自営業) | 350万円(自営業) | 350万円(自営業) |
妻の収入 | 0円(専業主婦) | 150万円(パート) | 300万円(会社員) |
養育費の相場 | 4万~6万円 | 6万~8万円 | 6万~8万円 |
子供3人の養育費の相場
最後に、子供が3人いる家庭の相場を見てみましょう。
子供3人となるとやはり養育費もかかるので、全体的に相場は高額になる傾向にあります。
子供の年齢 | 3人とも14歳以下 | 1人目15歳以上2人目、3人目が14歳以下 | 1人目、2人目が15歳以上 3人目14歳以下 |
3人とも15歳以上 |
---|---|---|---|---|
夫の収入 | 400万円(会社員) | 350万円(会社員) | 400万円(会社員) | 500万円(会社員) |
妻の収入 | 0円(専業主婦) | 250万円(パート) | 300万円(会社員) | 0円(専業主婦) |
養育費の相場 | 8万~10万円 | 4万~6万円 | 4万~6万円 | 12万~14万円 |
子供の年齢 | 3人とも14歳以下 | 1人目15歳以上2人目、3人目が14歳以下 | 1人目、2人目が15歳以上 3人目14歳以下 |
3人とも15歳以上 |
---|---|---|---|---|
夫の収入 | 200万円(自営業) | 350万円(自営業) | 350万円(自営業) | 600万円(自営業) |
妻の収入 | 0円(専業主婦) | 150万円(パート) | 300万円(会社員) | 0円(専業主婦) |
養育費の相場 | 6万~8万円 | 8万~10万円 | 6万~8万円 | 18万~20万円 |
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離婚後の養育費を払わないと言われた場合
非監護親である相手から、「収入が少ないので養育費は払わない」と言われたり、支払いを約束しても実際には払ってもらえなかったりということは、残念ながら実際によく起こっている問題です。
しかし、未成熟の子供の扶養義務は親である限り絶対に果たさなければならないと法律で定められており、養育費の支払いは免れられることではありません。
調停や審判、裁判で養育費の条件を決めた場合、“強制執行”を裁判所に申し立てることで、相手の財産を差し押さえることができます。
話し合いで決めた場合も、公正証書に強制執行について明記しておけば、差し押さえが可能になります。
ただし、相手に収入や資産が何もなければ、養育費を減額するといった措置を取らざるを得ないでしょう。
養育費を払わないと言われた際の対応については、以下のページでも解説していますので併せてご覧ください。
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養育費の増減について
一度養育費の取り決めをしたとしても、取り決めの際に当事者間で予想できなかった事情変更が起こり、そのままの条件では当事者の一方にとって不公平となる場合は、変更が認められる可能性があります。
以下で、養育費が増額変更されるケースと、減額変更されるケースを見てみましょう。
増額されるケース
養育費の増額変更が認められるケースには、以下のようなものがあります。
- 子供が怪我や病気をして、医療費がかかるようになった。
- 受け取る側が病気で働けなくなった。
- 受け取る側がリストラに遭うなどして収入が激減した。
- 支払う側の収入が、転職や昇進等によって大幅に増加した。
これらの事情変更がなくても、支払う側が同意するのであれば増額変更は可能です。
同意しないようであれば、家庭裁判所に「養育費増額調停」を申し立てる必要があります。
そして、もし調停も不成立となってしまったら、審判に移行して裁判官に判断してもらうことになります。
減額されるケース
一方、養育費の減額変更が認められるケースとしては、以下のものが挙げられます。
- 支払う側が病気で働けなくなった。
- 支払う側がリストラに遭うなどして収入が激減した。
- 受け取る側が就職したり、正職員になったりして収入が増加した。
減額の場合も、変更の手続きは増額の場合と同様です。
まずは当事者間で話し合いを行ったうえで、合意に至らなければ、支払う側が「養育費減額調停」を申し立ててくるでしょう。
調停でも話し合いが決裂してしまったときは、審判に移行することになります。
支払う側の自己判断で養育費を減額することはできないので、もし勝手に減額されてしまった場合は、強制執行も視野に入れる必要が出てきます。
養育費の減額については、以下のページでも取り上げていますので、ぜひご一読ください。
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再婚した場合の養育費について
離婚してから他の人と再婚した場合も、実は養育費を減額する事情変更になり得ます。
再婚により減額が認められるケースを以下に挙げました。
- 支払う側が再婚して、再婚相手との間に子供ができた。
- 支払う側が再婚して、再婚相手の連れ子と養子縁組を結んだ。
- 支払う側の再婚相手に収入がほとんどない。
- 受け取る側が再婚して、再婚相手と子供が養子縁組を結んだ。
ただし、受け取る側が再婚しても、再婚相手と子供が養子縁組をしていない場合は、再婚相手には法律上の扶養義務が生じないため、支払う側がそれまで通りの額の養育費を払うことになります。
再婚後の養育費についてより詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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離婚後の養育費に関するよくある質問
養育費の請求にも時効がありますか?
養育費の請求権には時効が存在します。
養育費は通常毎月一定の額を支払うことになっており、このような性質の債権を“定期給付債権”と呼びます。
定期給付債権の時効は法律で5年と決まっているので、ひと月分の養育費の請求権は、5年が経過すると時効となって消滅してしまいます。
ただし、調停・審判・裁判で養育費の取り決めをした場合、取り決め時より過去の未払い分に関しての時効は10年となります。
これは、確定判決やそれと同一の効果があるものによって確定した権利の時効が適用されるためです。
なお、時効の中断という措置をとると、時効の進行を止めることができるので、上述の期間を延ばすことができます。
養育費をなしにするかわりに面会交流をなしにすることはできますか?
面会交流とは、非監護親と子供が離婚後も定期的に会ったり、電話やメールをしたりして交流することです。
養育費も面会交流も、離婚時に決めるべき子供に関する条件ではありますが、これらの法的性質は全く異なるものなので、取り引きに利用すべきではありません。
面会交流は非監護親の権利であると同時に、子供の権利でもあります。
離婚後も両方の親から愛されているという実感を得ることは、子供の成長にとって大きな意味を持つことなので、子供の利益を第一に考えて取り決めるようにしましょう。
面会交流については、以下のページで詳しく取り上げていますので併せてご覧ください。
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親権があっても自分(権利者)のほうが元配偶者(義務者)より稼いでいた場合は養育費を受け取ることはできませんか?
子供の親権を得て監護親、つまり養育費を受け取る権利者になったとしても、義務者である相手の収入が著しく低ければ、養育費を受け取れない可能性はあります。
養育費算定表では、例えば14歳以下の子供が1人いるケースで、給与所得者である義務者の収入が125万円程度しかなく、同じく給与所得者である権利者の収入が100万円以上ある場合、相場を0~1万円に設定しています。
離婚慰謝料を多く払うから養育費の支払いをなしにしてほしいと言われた場合はなにかデメリットはありますか?
離婚慰謝料は、配偶者の浮気やDV等によって精神的に傷ついた場合に、償いの意味を持って支払われる金銭です。これは夫婦間でやり取りされるものであり、子供を育てるために支払われる養育費とは性質が異なります。
慰謝料の相場は、離婚原因や精神的苦痛の度合いによって変わってきますが、大体50万~300万円です。一方、例えば毎月6万円の養育費を受け取ることになっていた場合、5年経てば360万円は受け取れます。
離婚後は一切相手の世話になりたくないという思いがあるのかもしれませんが、長期的に見てどちらが得かということもよく考えるべきでしょう。
離婚後の養育費はお子様を育てていくのに大切なものです。焦らずまずは弁護士にご相談ください
養育費は子供を健やかに育てていくにあたって必要となるものです。
算定表を使って相場を簡単に調べることはできますが、特別な事情がある場合は、別途検討しなければなりません。
また、子供が4人以上いる等して、そもそも算定表に当てはめることができない家庭もあるでしょう。
養育費の金額で揉めている場合は、ぜひ弁護士に相談してください。弁護士は家庭のあらゆる事情を考慮したうえで、適切な額を算出し、法的根拠をもって相手を説得します。
また、養育費が支払われなくて困っている場合や、養育費が足らず増額してもらいたいと考えている場合も、弁護士であれば豊富なノウハウから効果的な対策を立てて対処することができます。
あなたと子供の幸せな未来のために、あなたの一番の味方として弁護士がサポートをしていきます。
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保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)