株式の譲渡制限を廃止すると、会社は公開会社となり、株式の売買が自由になります。
これは、資金調達の柔軟性を高めることや将来の上場を検討する会社にとって、重要な経営判断といえます。ただし、経営権が分散してしまうリスクや社内体制の見直しといった課題も伴うため、譲渡制限の廃止は慎重に検討する必要があります。
本稿では、譲渡制限を廃止する際のメリット・デメリット、必要な手続きや注意点などを、わかりやすく解説します。
目次
株式の譲渡制限を廃止するとどうなる?
株式の譲渡制限を廃止すると、会社は「公開会社」となり、株主は会社の承認なしに自由に株式を売買できるようになります。
これにより、資金調達の選択肢が広がる一方、外部の望ましくない第三者が株主となるリスクも生じます。
公開会社と非公開会社の大きな違いは、すべての株式に譲渡制限が設けられているか否かですが、それだけではありません。
公開会社は、会社法上、取締役会や監査役の設置が義務付けられるなど、その機関設計にも非公開会社との違いがあります。
取締役の任期なども異なるため、長期的な目線での経営方針が馴染まない可能性も考えられるでしょう。
会社は、株式の譲渡制限を廃止することによるメリット・デメリットを踏まえて、廃止の判断をする必要があります。
株式譲渡制限を廃止するメリット・デメリット
メリット
株式の譲渡制限を廃止して公開会社となれば、株式が自由に売買できるなど流動性が生まれ、株式価値の上昇につながります。
そうなれば、非公開会社のときよりも投資家にとって魅力的な投資先となり得るでしょう。資金調達が円滑に進みやすくなり、成長資金の確保が容易になれば、会社にとって大きなメリットといえます。
また、公開会社はその機関設計が非公開会社とは異なり、取締役会や監査役の設置などを要します。
社内体制を会社法に基づいて整備することによって、コーポレートガバナンスが強化できれば、取引先や金融機関からの信用も高まることが期待できます。
そのほか、株式が流通することによって、会社の社会的な認知度が向上しやすくなる点もメリットの一つでしょう。
デメリット
公開会社となることで株式の売買が自由になるメリットがある一方、経営面のリスクや事務負担なども生じる点は理解しておくべきでしょう。
まず、株式の譲渡に制限がなくなるため、外部の第三者による買い占めや、意図しない株主の参入によって経営権が分散するおそれがあります。
経営権が分散されれば、会社の経営判断に支障をきたすなど、事業の成長にも影響を及ぼすかもしれません。
取締役会や監査役の設置義務も生じるため、組織体制の変更や運営コストの増加は避けられないでしょう。公開会社化は多くのメリットを有する一方で、リスクやコストも伴うことを覚えておきましょう。
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株式の譲渡制限の廃止手続き
株式の譲渡制限を廃止するには、株主総会で特別決議を行い、定款から譲渡制限に関する条項を削除しなければなりません。
また、公開会社としての要件を満たすため、取締役会や監査役の設置、役員の再選任、定款の追加変更などの手続きも必要となります。変更後は、法務局への登記申請も必ず行いましょう。株式の譲渡制限の廃止手続きの流れは、以下のとおりです。
- 株主総会の特別決議
- 取締役会・監査役の設置
- 定款の変更
- 登記申請
株主総会の特別決議
株式の譲渡制限を廃止するには、定款の変更が必要であり、定款を変更するには株主総会で特別決議を行う必要があります。
特別決議とは、原則として議決権の過半数となる株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成によって成立します。
定款変更は会社の根幹ともいえる重要規定に関わる決議であるため、普通決議よりも厳格な要件である特別決議が課されています。
この決議を経てからでなければ、譲渡制限条項を削除することはできません。
特別決議によって定款変更が認められれば、会社は公開会社として体制移行することが可能になります。
取締役会・監査役の設置
株式の譲渡制限を廃止して公開会社となると、会社法の定めにしたがい、取締役会と監査役の設置が義務付けられます。
また、廃止に伴い、現在の取締役や監査役の任期は満了として、退任扱いになるとされています。そのため、新たな公開会社の取締役や監査役については、改めて株主総会で選任しなければなりません。
具体的には、取締役を3名以上、監査役を1名以上選任し、取締役会および監査役制度を整備する必要があります。
公開会社におけるこれらの機関設計は、会社法に定められた体制であるため、会社が法の定めを下回るような形で自由に設計することはできません。
定款の変更
株式の譲渡制限の廃止に伴って行う定款の変更には、以下の表に記載した内容が挙げられます。
ただし、非公開会社の段階から取締役会を設置しているなどがあれば、一部の変更が不要になるケースもあります。
会社の事情によって変更すべきポイントは異なりますので、チェックリストとしてご活用ください。
| 定款の内容 | 公開会社の条件 |
|---|---|
| 株式の譲渡制限 | 廃止 |
| 発行可能株式総数 | 発行済株式数の4倍まで |
| 株主総会の招集通知期間 | 株主総会開催日の2週間以上前 |
| 属人的株式 | 廃止 |
| 役員選任権付種類株式 | 廃止 |
| 取締役の任期 | 選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結まで |
| 取締役会 |
必須(取締役3名以上) |
| 監査役の任期 | 選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結まで |
| 監査役 | 必須。監査役の権限を会計に関するものに限定は不可 |
登記申請
株式の譲渡制限を廃止し、定款変更を行ったあとは、効力発生日から2週間以内に法務局へ変更登記を申請する必要があります。これにより、譲渡制限を廃止し、会社が公開会社となったことが正式に証明できます。
登記申請には、以下のような書類を添付することが一般的です。事案によって追加書類が必要になるケースがあるため、事前に法務局へ確認しておくとよいでしょう。
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
定款変更を決議した内容を記録したもの - 株主リスト
議決権を有する株主の氏名・住所・議決権数などを記載 - 委任状
代理人による申請の場合
これらの書類のほか、登録免許税として1件につき原則3万円の収入印紙が必要となります。
株式の譲渡制限の廃止に関しては弁護士法人ALGにご相談ください
株式の譲渡制限を廃止することは、会社の成長戦略において重要な選択肢の一つです。
しかし、会社法に基づく手続きや経営リスクを伴うため、専門的な知識と経験が求められます。株式の譲渡制限の廃止については、専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人ALGでは、譲渡制限の廃止に関するご相談を全国対応しております。
企業法務に精通した弁護士が、譲渡制限の廃止にあたり、貴社の状況に応じてアドバイスを提供するとともに、株主総会の特別決議から登記申請まで一貫してサポートをいたします。
株式の譲渡制限の廃止に少しでもご懸念があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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- 弁護士法人 ALG&Associates執行役員弁護士 家永 勲
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東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。 東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。