離婚する理由や原因は?法的に認められる自事由について弁護士が解説
どんなに仲の良さそうな夫婦でも、一度くらいは「離婚」を考えたことがあるものでしょう。
離婚の理由は夫婦の数だけさまざまです。離婚をお考えの方の中には、こんな理由で離婚できるのだろうかとお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
離婚できる理由には、法律で認められているものもありますし、そうでないものもあります。
しかし、法律で認められていない理由だからといって、離婚ができないわけではありません。
この記事では、他の夫婦がどのような理由で離婚に至っているのか、法律で認められる離婚事由には何があるのかといったお悩みに沿って解説していきます。
目次
離婚を決めた理由とは?離婚原因ランキング
離婚の際に役所へ提出する離婚届には、離婚理由を記載する欄はありません。
そのため、離婚したすべての夫婦がどのような理由で離婚に至ったかを調査することは出来ないのが実情です。
しかし、離婚の際に家庭裁判所で調停の手続きを利用した人は、離婚を希望する理由を申請書に記載します。
令和5年度の司法統計によると、離婚調停を申し立てた理由のランキングは、以下のようになっています。
順位 | 男性側 | 女性側 |
---|---|---|
第1位 | 性格が合わない | 性格が合わない |
第2位 | その他 | 暴力を振るう |
第3位 | 精神的に虐待する | 生活費を渡さない |
第4位 | 異性関係 | 精神的に虐待する |
第5位 | 暴力を振るう 浪費する |
異性関係 |
第6位 | 性的不調和 同居に応じない |
その他 |
第7位 | 家庭を捨てて省みない 家族親族と折り合いが悪い |
酒を飲みすぎる |
第8位 | 生活費を渡さない | 不詳 |
第9位 | 不詳 | 性的不調和 |
第10位 | 酒を飲みすぎる | 浪費する |
このように、男女で差はあるものの、男女ともに離婚を考える理由の第1位は性格の不一致であることが分かります。
理由によっては離婚できない可能性がある
夫婦の話し合いで離婚を決める協議離婚では、離婚の理由は何でも構いません。
しかし、離婚裁判へと進んだ場合、離婚が認められるために法定離婚事由が重要となります。
法定離婚事由にはどのようなものがあるでしょうか。詳しく見ていきましょう。
裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」とは
相手が話しあいによる離婚に応じてくれない場合でも、以下の法定離婚事由に該当する離婚理由があれば、裁判により離婚が認められる可能性があります。
民法第770条では、裁判で離婚が認められ得る「法定離婚事由」について、以下のように定めています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
離婚理由が上記の5つのどれかに該当していれば、たとえ配偶者が離婚に納得していなくても、離婚が認められる可能性があるという趣旨の規定です。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
離婚裁判の流れや費用などについては、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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不貞行為
不貞行為とは、自由意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことで、不倫や浮気などを指します。
不倫や浮気の定義は人それぞれですが、ここでいう不貞行為とは、単にデートやキスをしていただけでなく肉体関係を結ぶことを意味します。
不貞行為を理由に裁判で離婚が認められるには、配偶者と不貞相手に肉体関係があったことが客観的に見て分かる証拠が必要です。
不貞行為が認められる可能性のある有効な証拠には、以下のようなものがあります。
- ラブホテルに出入りする写真・動画
- 性行為中の動画・写真
- 肉体関係を持ったことが分かるメールやLINEのやり取り など
以下のページでより詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
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悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務を放棄することを指します。
簡単に言うと、家庭をかえりみずほったらかしにするということです。
悪意の遺棄が認められる例と認められない例を見ていきましょう。
【悪意の遺棄として認められる例】
- 理由なく同居を拒否し、生活費を渡さない
- 収入があるのに配偶者に生活費を一切渡さない
- 生活費は渡しているが不倫相手と同居している など
【悪意の遺棄として認められない例】
- 仕事で出張や転勤の必要があり別居する
- 病気で働けないため、生活費を渡せない など
3年以上の生死不明
何らかの理由で、配偶者の居場所が分からなくなり、生死不明の状態が3年以上続いていることを証明できれば、離婚が認められる場合があります。
なぜ配偶者が3年以上生死不明となったか、という理由は問われません。
ただし、単に連絡が取れないというだけでは、生死不明とは認められないでしょう。
警察に捜索願を提出したり、住民票をたどったり、配偶者の友人や職場の人に聞き取りをしたりと、あらゆる手段を尽くしても行方が分からなかった場合に限ります。
回復の見込みがない強度の精神病
配偶者が強度の精神病にかかり、夫婦の協力・扶助義務が果たせない状況にあることを証明できれば、離婚が認められる可能性があります。
しかし、単に配偶者が精神病であると診断されただけでは離婚請求は認められません。
重度の精神病にかかり、苦しんでいる配偶者を支えてきたけれど、回復の見込みがなく離婚に至ったという事実と証拠が必要です。
また、離婚によって精神病を患っている配偶者の生活が困窮するようであれば、裁判所は離婚を認めない場合があります。
そのため、離婚後も配偶者が生活を続けられる今後の見込みが立っている必要があります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、法定離婚事由の他4つに当てはまらないあらゆるケースを想定して定められているものです。
抽象的な規定なので、幅広い離婚理由が考えられますが、離婚の理由によって夫婦関係が回復不能なほど破綻していると認められれば裁判で離婚が認められる可能性があります。
次項より、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる代表的な離婚理由について、ひとつひとつ解説していきます。
性格の不一致
性格の不一致により既に愛情がなくなっており、第三者から見ても夫婦生活の維持が困難である場合に離婚が認められる可能性があります。
DVやモラハラ
配偶者から日常的にモラハラやDVが繰り返されることによって夫婦関係の円満な継続が難しいことが明白であれば離婚が認められる可能性があります。
性の不一致・セックスレス
健康でありながらセックスを長年拒否している、配偶者の性的異常、性交不能などによって、夫婦に性生活がないことは夫婦関係を悪化させる一因になります。
親族との不仲
夫婦関係は悪くないものの、配偶者の親族と不仲であり、配偶者が不仲のことに無関心で円満な夫婦関係の実現に努力する態度が見られない場合などに離婚が認められる可能性があります。
浪費・借金などお金問題
ギャンブルなどにより浪費や借金を繰り返して生活費の確保ができない状態が続けば、離婚が認められる可能性があります。
アルコール依存・薬物中毒
アルコール依存・薬物中毒などで夫婦関係が破綻している場合に離婚が認められる可能性があります。
過度な宗教活動
配偶者が過度な宗教活動に専念した結果、夫婦関係が破綻している場合に離婚が認められる可能性があります。
犯罪行為・服役
配偶者が殺人などの重大な犯罪によって長期間服役する場合や、軽犯罪でも常習的に行うことで懲役が続いてしまい、家庭に重大な支障をきたしてしまうような場合は、離婚が認められる可能性があります。
慰謝料が請求できる離婚理由
法定離婚事由のような離婚に至る主な原因を作った配偶者のことを有責配偶者と呼び、もう一方の配偶者は有責配偶者に対し、慰謝料を請求することができます。
そもそも慰謝料とは、精神的苦痛に対する金銭による補償です。
有責配偶者がもう一方の配偶者に精神的苦痛を与えた償いとして支払われるものです。
離婚原因が不貞行為の場合は、被害者は配偶者と不貞相手から精神的苦痛を与えられたことになるため、配偶者のみならず不貞相手にも請求することが可能です。
しかし、慰謝料を請求するには、その事情があったことを証明する十分な証拠を提示しなければなりません。
「離婚慰謝料の基礎知識」と「有責配偶者の離婚」については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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離婚理由の上手な伝え方とタイミング
離婚理由を配偶者に切り出すときには、以下の点に注意しましょう。
- あくまでも冷静に
離婚を切り出すときは冷静さを徹底してください。
感情的になってしまえば、夫婦喧嘩となり話し合いが進まなくなってしまいます。 - 離婚したい理由を明確に
なぜ離婚したいかという理由を明確にし、具体的に配偶者に伝えましょう。
「ただ一緒にいるのが嫌になった」など理由が曖昧だと、離婚に対する本気度が伝わりません。 - 相手を批判しない
特に配偶者の悪いところは批判したくなるものですが、批判してしまえば話し合いが拗れてしまいます。
批判せず相手の主張も聞くようにしましょう。
子供に説明する際に気をつけること
親の離婚は子供に大きなショックや不安を与えます。
親の都合で子供に必要以上の精神的な負担をかけることは、極力避けなければなりません。
子供の年齢にもよりますが、離婚を決めたらその理由を子供に正直に伝えましょう。
子供は親が思っている以上に、身の回りの状況を理解しています。
ここで親が誠実に対応しなければ、子供の中で親の離婚という重大な出来事はいつまでも消化しきれず、わだかまりとして残ってしまいます。
子供に説明する際には、絶対に離婚を子供のせいにしてはいけません。
配偶者の悪口を言うのも控え、冷静に離婚の事実と今後の意向を伝えましょう。
また、親権を決める場面等で、子供に無理に決断を迫ることもしないでください。
何より、離婚をしたとしても子供への愛情は変わらないことを、しっかりと伝えてあげてください。
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離婚理由に関するQ&A
一方的に離婚を言い渡され、離婚理由もわからない状況です。離婚請求を拒否できますか?
相手が一方的に離婚を求めてきたとしても、あなたに何も非がなければ、離婚請求を拒否することができます。
法定離婚事由がない限り、裁判で離婚請求が認められることはありません。
そのため、相手は協議離婚や調停離婚を企んでいるのでしょうが、この場合、あなたが合意しなければ離婚は成立しません。
ただ、まれに配偶者が離婚届に勝手にあなたの分のサインをして提出してしまうケースがあります。
役所はサインの筆跡をチェックすることはないので、あらかじめ役所に不受理申出書を提出しておくとよいでしょう。
子供ができないことは離婚理由として認められますか?
不妊は夫婦にとって深刻な問題となり得ますが、不妊であること自体を理由として、裁判で離婚が認められることはありません。
しかし、一方が妊活に協力的でないために言い争いが絶えなかったり、そもそも一方が子供を望んでいるにもかかわらずセックスレスであったりするような状況であれば、離婚が認められる可能性はあります。
もちろん、不妊が原因で不貞行為をしたり、一方が不妊であることを責め立てるような言動を続けていたりすれば、そのことが法定離婚事由に該当するでしょう。
配偶者に精神病以外の重大な病気がある場合、離婚請求は認められますか?
「回復の見込みがない強度の精神病」は法定離婚事由として認められていますが、末期がんや難病といった重大な病気を理由に、離婚を認めてもらうことはできません。
重度の精神病以外であれば、夫婦としての精神的な交流をすることが可能なケースがほとんどであり、病気を理由に夫婦の実体が壊れるとは考え難いためです。
また、夫婦には扶助の義務があるため、病気だからといって離婚により配偶者を見捨てるということに司法として抵抗があるのかもしれません。
離婚が認められるとすれば、病気に関連してその他にも夫婦関係が破綻するような事情が発生しており、離婚がやむを得ないと判断される場合のみでしょう。
浮気をして配偶者に冷めてしまったため離婚をしたいのですが、嘘の理由を伝えてもいいでしょうか?
自分が浮気をしており離婚をしたいけれど、配偶者に本当の理由を打ち明けずに嘘の離婚理由を言う方は少なくありません。
まず、本当のことを言わなければならない義務があるのかといわれれば、そのような義務までは課されていません。
ただし、浮気のような自分の有責行為を隠すための嘘は、相手に発覚すれば有責行為として慰謝料を請求されることになりますし、嘘をつくという悪質な行為を理由に、さらに慰謝料が上乗せされるおそれがあるので注意が必要です。
性格の不一致を理由に離婚できますか?
不倫やDVなど決定的な理由はないが、配偶者と性格が合わず離婚したいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
話し合いで双方が納得して合意すれば離婚の理由はなんでもかまいません。
性格の不一致が原因の場合は、夫婦の話し合いである協議離婚や離婚調停で離婚成立を目指すと良いでしょう。
どうしても合意が得られない場合は裁判を起こすことになりますが、単なる「性格の不一致」だけでは離婚は認められませんので、まずは別居をしましょう。
別居期間が3~5年と長く、その間配偶者と連絡を取っていないような場合では、裁判で婚姻関係が破綻しているとみなされ、離婚が成立する可能性があります。
性格の不一致による離婚については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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一度は生涯を共にすることを誓い結婚をした夫婦であっても、様々な理由から「離婚したい」と思うこともあるでしょう。
協議離婚は夫婦が離婚に同意できれば、理由はどのようなものでも構いません。しかし、話し合いが難航すれば、調停や裁判の手続きへと移行することになります。
裁判では、今回解説した「法定離婚事由」に該当した離婚理由でなければ、基本的に離婚が認められることはなく、また証拠も必要となります。
離婚についてお悩みの場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは夫婦問題、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しており、ご相談者様のお悩みを丁寧にヒアリングし、1番良い形で解決できるよう尽力いたします。
離婚に関して悩んでいることがあるようでしたら、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)