労働中のはさまれ・巻き込まれ事故とは?労災保険給付や損害賠償請求について

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労働中のはさまれ・巻き込まれ事故とは?労災保険給付や損害賠償請求について

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故は、毎年14000人近く発生していて、比較的発生件数の多い労働災害のひとつです。

はさまれ・巻き込まれ事故による労働災害では、労災保険からの保険給付が受けられる以外に、事故原因によっては会社に対して損害賠償請求ができることもあるので、適正な補償を受けるためにも、本ページで理解を深めていきましょう。

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故とは?

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故とは、作業中に物にはさまれたり、巻き込まれたりして負傷することを指します。

製造業・建設業・運送業の作業現場で発生することが多い事故で、プレス機械やロール機などの機械にはさまれたり巻き込まれたりした状態で、つぶされる・ねじられるといった外力がかかるため、重症化しやすく、死亡につながるリスクの高い労働災害のひとつといえます。

厚生労働省が公表した「労働災害発生状況」によると、はさまれ・巻き込まれ事故による死傷者は毎年14000人近く発生していて、これは全体の約10%を占める割合です。

また、毎年100人強の死亡者が発生していることから、事故の発生件数も死亡者数も多いことが統計から読み取れます。

はさまれ・巻き込まれ事故が多い部位

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故では、に傷害を負うケースが圧倒的に多いといわれています。

はさまれ・巻き込まれ事故の約60%が手指・腕の負傷で、その多くの割合を占める「指」は、傷害を負ったことが原因で壊死し切断に至るケースも少なくありません。

「手」に次いで多い「足」は、安全靴の普及によって減少傾向にありますが、比較して「手」は、確実な保護具がなく、とっさに手を出してしまったり、無意識に手を置いてしまったりすることも、傷害を負う部位のなかで「手」が多い原因と考えられます。

はさまれ・巻き込まれ事故の事例

はさまれ・巻き込まれ事故

はさまれ・巻き込まれ事故による労働災害の事例を、一部ご紹介します。

【はさまれ事故】

  • 治具の制作中に、添えていた手がバイスとH鋼フランジ部にはさまれた
  • 介護施設で配膳作業中に、足首が配膳車の車輪にはさまれた
  • 金型の交換作業中に、プレス機械とフォークリフトに載せた金型の間に腹部をはさまれた
  • 積み荷作業中、トラック荷台のウイングルーフとあおりに頚部をはさまれた

【巻き込まれ事故】

  • ロール機の清掃中に、惰性で回転中のローラーに手が巻き込まれて手指を切断した
  • チョッパーの運転を停止しないまま詰まりを直そうとして、手がスクリューフィーダに巻き込まれた
  • 製材工場のローラーコンベアのシャフトに、首に巻いていたマフラーが巻き込まれた
  • 屈んで作業していたところ、後退してきたドラグ・ショベルのクローラー部に肩から巻き込まれた

はさまれ・巻き込まれ事故の労災保険給付について

労働中にはさまれ・巻き込まれ事故に遭った場合、労災申請して労災認定されることで、労災保険給付が受けられます。

怪我を負った場合は治療費に対する療養補償給付が、休業で減収が生じた場合は休業補償給付が、労災保険より補填されます。

後遺症が残った場合は?

はさまれ・巻き込まれ事故では後遺症が残るケースも少なくありません。

症状固定後も残存した後遺症が、後遺障害と認定されれば、労災保険より等級に応じて「障害補償年金」または「障害補償一時金」が受けられます。

労災保険給付だけでは不十分?

労災保険では休業に対する補償は60%相当までしか補填されず、慰謝料に関しては補償の対象外です。

そのため、労災保険給付で補填されない部分は、労災申請と並行して、会社側の責任を追及し、損害賠償請求ができるかを検討する必要があります。

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故に対する損害賠償請求

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故は、被災者本人だけでなく、使用者(会社)にも責任があることが多くあります。

たとえば、次のような安全配慮義務違反不法行為責任が立証できれば、会社に対して慰謝料などの損害賠償請求が可能になります。

  • 機械や器具の防護措置・安全装置の欠陥や不履行があった
  • 安全のための教育・周知徹底が不十分だった
  • 作業環境に欠陥があった など

はさまれ・巻き込まれ事故の裁判例

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故において、会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が認められた裁判例をご紹介します。

【札幌地方裁判所 令和3年11月18日判決】

<事案の概要>
被告の従業員であった原告が、工場内の糊付機の清掃業務中に、ローラーに左手を巻き込まれ負傷した事故において、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めた事案です。

<裁判所の判断>
清掃作業の際に労働者の体の一部がローラーに巻き込まれる事故の発生は予見可能であり、危険箇所に覆いを設ける等の措置をとらないまま、ローラーの運転を止めない状態で清掃作業を行わせていたものであるから、注意義務および安全配慮義務に違反したと認められるとして、原告の過失割合を3割としたうえで、休業損害・後遺障害逸失利益・慰謝料などの損害賠償金の支払いを命じました。

労働者が行うべき防止策

労働者ご自身が行うべき、はさまれ・巻き込まれ事故の防止策をいくつかご紹介します。

労働災害の多くは会社側に責任が認められることが多いとはいえ、被災者本人が防止策を怠っていた場合、被害者側の落ち度によって損害賠償金が減額されてしまいます。

労災事故に遭わないことが最善ですが、万が一のときに備えて、以下に挙げる防止策をご参考になさってください。

  • 機械に巻き込まれないよう、作業服や帽子を正しく着用する
  • 回転中の加工物や機械の可動部には、絶対手を近づけない
  • 巻き込まれる危険のある回転機械では、手袋を使用しない
  • 機械や器具を正しく使用し、決められた作業手順に従う
  • トラブルが発生した場合は必ず上長に報告する
  • 整理・整頓・清潔・清掃の4Sを徹底する など

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故に遭われた場合は弁護士にご相談ください

労働中のはさまれ・巻き込まれ事故は、重症化しやすい労働災害のひとつで、労災保険から受けられる補償は、最大で数千万円になることがあります。

とはいえ、労災保険給付を受けるためには、請求できる労災保険の内容を把握し、それぞれ指定された請求書を作成して労働基準監督署に提出するといった手続きが必要です。

弁護士であれば、こうした労災申請のほかに、後遺障害等級認定や損害賠償請求についてもサポートが可能です。

労災に遭われた方の不安や負担が軽減されるように、弁護士が力添えいたしますので、まずはお気軽に、弁護士法人ALGまでご相談ください。

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監修 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 : 弁護士 (東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2023年1月4日時点)、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、バンコクの12拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

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