少数株主が非上場株式を保有する場合、上場株式とは異なる特有のリスクが生じます。
具体的には、非上場株式は取引市場での売買が難しいため、換金がしづらいといった流動性の低さがあります。
加えて、会社の経営に対する影響力が限られることや、相続時には高額な相続税が課されるおそれもあります。
対策として、リスクの内容や回避方法についてしっかり理解しておくべきでしょう。
本稿では、少数株主が非上場株式を保有する際に直面するリスクや株式の売却方法、非上場株式の評価額等について、幅広く解説します。
目次
少数株主が非上場株式を抱えるリスク
少数株主が非上場株式を保有する際、最も大きなリスクはその流動性の低さといえるでしょう。単に上場株式のような取引市場がないというだけでなく、多くの非上場株式に設けられている譲渡制限も流動性の低さの原因です。
譲渡制限株式を売却する際には会社の承認を得る必要があるため、少数株主が売りたいときに自由に現金化することは難しいという側面があります。
また、非上場会社は上場会社に比べて情報開示が少なく、経営状況を把握しにくいため買い手がつきにくいといった点も、流動性の低さの一因となっています。
さらに、少数株主は、その議決権数の少なさから、経営に影響を与えることが難しく、支配株主が配当を実施しないことも多く、配当にも期待できないケースが少なくありません。
これらのデメリットに加え、会社の業績が良い場合などには、相続時に株式評価額に応じた高額な相続税が発生するおそれもあります。
譲渡制限株式に関する詳細については、以下のページをご確認ください。
さらに詳しく譲渡制限株式とは?少数株主が非上場株式を売却する方法
上場株式とは違い、非上場株式は一般の取引市場で株式を売却することができません。
そのため、少数株主が非上場株式を売却する際は、以下の手順を踏むとよいでしょう。
- 発行会社の情報を集める
- 買い手を探す
- 譲渡承認請求の手続き
各手続きの詳細について、以降で解説していきます。
発行会社の情報を集める
発行会社に関する情報収集は、非上場株式を売却するうえで非常に重要なプロセスです。
まずは発行会社の基礎情報として、登記簿謄本の全部事項証明書等を取得し、定款譲渡制限の有無等を確認しましょう。
そのほか、株主総会への出席や、株主名簿、株主総会議事録、会計帳簿や計算書類等の閲覧請求(会社法125条、318条、433条、442条)などによって株主名簿や株主総会議事録、決算書等を確認し、以下のような情報を集めるとよいでしょう。
- 自身の保有する株式数、および保有株式の割合(株主名簿)
- 保有株式の譲渡制限の有無(定款、登記の全部事項証明書)
- 株券発行の有無(登記の全部事項証明書)
- 会社の資産(計算書類等)
- 会社の利益(計算書類等)
- 会社の財務状況(計算書類等)
- 主な取引先(会計帳簿)
- 株主構成(株主名簿、株主総会議事録)
買い手を探す
非上場株式の買い手を探す場合、主に発行会社への譲渡と第三者への譲渡という2つの選択肢があります。
それぞれの選択肢の詳細と、第三者への譲渡が不承認になった場合について確認していきます。
発行会社に譲渡する場合
少数株主の株式売却手段の1つとして、発行会社への譲渡があります。
発行会社は、会社にとって好ましくない人物が株主になることを避けるため、株式を自社で買い戻すべきと判断して、株主からの譲渡を受け入れる可能性は十分に考えられるでしょう。
少数株主としては、この状況を利用して価格交渉による売却を目指すべきです。
ただし、発行会社側はできる限り低い価格で買い取りたい意向があるため、額面(発行時の価格)やそれに近い価格での買取を提案してくるケースも少なくありません。
第三者に譲渡する場合
発行会社が株式の買い取りに応じない場合、少数株主は自力で買い手を探すことになります。
この場合、譲渡先として考えられるのは、同業他社や投資ファンド、個人投資家などの第三者が一般的です。
買い手が見つかれば、少数株主は会社に対して譲渡承認請求を行います(会社法136条)。
会社は、譲渡先の情報や譲渡の目的などを踏まえて譲渡を承認するか否かを決定します(139条)。
譲渡が承認されれば、少数株主は第三者との間で売買契約を締結し、株式を売却することができます。
譲渡が不承認となった場合
譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しなかった場合、少数株主は会社もしくは会社が指定する買取人に株式を公正な価格で買い取るよう請求することができます(会社法138条2号ハ、140条1項)。
この制度により、少数株主は、株式を現金化する機会を得られます。ただし、株式の価格については、原則として、当事者間の協議によって決定するため(144条1項)、価格交渉が難航する可能性もあります。
状況に応じて、裁判所に価格決定の申立てを行うことも検討しなければなりません。
譲渡制限株式の買取請求について詳しく知りたい方は、以下のページをご参考下さい。
譲渡承認請求の手続き
会社に対する譲渡承認請求の手続きは会社法で詳細に定められており、厳密に行う必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。
- 譲渡承認請求
- 承認・不承認の決定
- 譲渡制限株式の株式買取請求
- 買取通知
譲渡承認請求は、誰に譲渡制限株式を譲渡したいか等の情報を会社に伝え、譲渡の承認を得るための手続きです。
会社は株主からの承認請求内容を踏まえて、株主総会や取締役会などで譲渡の可否を検討し、承認または不承認の決定を行います(会社法139条1項)。
会社が譲渡を承認した場合、株主は譲受人へ譲渡制限株式を譲渡することができます。
会社が譲渡を承認しない場合は、譲渡等不承認時の株式買取請求(138条2号ハ)を行う必要があります。
買取請求に対して会社もしくは指定買取人は、請求株主に買取りに関する通知を行わなければなりません(141条1項、142条2項)。
譲渡制限株式の譲渡に関する手続きの詳細は、以下のページよりご確認ください。
さらに詳しく譲渡制限株式の譲渡手続きの流れは?お問い合わせ
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非上場株式の評価額はどのように決まるのか?
譲渡承認請求手続における株式の評価額については、会社法で厳密な計算方法などは定められていません。
つまり、非上場株式の売買価格は、原則として譲渡承認請求者(売り手)と会社または指定買取人(買い手)との間で協議して決定されることになります。
しかし、上場株式のように市場価格が存在しないため、価格交渉は容易ではありません。
適切な評価額を主張するためには、以下のような客観的な指標を用いて交渉することが大切です。
| マーケットアプローチ | 類似業種の上場企業の株価を参考に評価する方法です。市場の動向を反映できますが、同種同規模の類似企業の選定が難しい場合や会社の特性を反映さにくい場合があります。 |
|---|---|
| インカムアプローチ | 将来の収益予測を基に評価する方法です。会社の成長性を考慮できますが、将来予測の不確実性や客観性の問題が伴います。 |
| コストアプローチ | 会社の純資産を基に評価する方法です。会社の財務データを使用するため客観性の高い方法ですが、将来の収益性や成長性を反映することができません。 |
ただし、これらの評価方法はあくまで参考であり、メリット・デメリットもあります。
最終的な価格決定には当事者の交渉力や会社の特別な事情に左右されることもあります。
譲渡制限株式の価格については、以下のページで詳しく解説しています。
価格交渉が不成立となった場合
非上場株式の売買価格について、譲渡承認請求者と会社または指定買取人との間で協議を行っても合意に至らない場合、裁判所へ買取価格決定を申し立てる方法があります(会社法144条2項)。
裁判所への売買価格決定の申立て期限は、会社または指定買取人から買取の通知があった日から20日以内です。
この期間を過ぎると申立ての権利は失われてしまい、コストアプローチによる算定方法である一株当たり純資産額に相当する金額が売買価格とされることになります(同条5項)。
裁判所では、譲渡承認請求時における会社の資産状態や経営状況、その他一切の事情を総合的に考慮した上で、公正な売買価格を決定します(同条3項)。
株式買取価格決定申立については、以下のページをご参考下さい。
反対株主の株式買取請求権の行使について
組織再編(合併、会社分割、事業譲渡など)や株式併合、定款変更といった会社の重要な意思決定が行われる際、その決定に反対する株主は、会社に対して自身の保有する株式を買い取るよう請求することができます(会社法806条、469条、182条の4など)。
買取価格については会社との協議で決定することになりますが、合意に至らなければ、裁判所に申し立てることも可能です(807条2項、470条2項、182条の5第2項)。
ただし、株式買取請求権の行使には、株主総会決議に反対した上で、一定期間内に買取請求を行う必要があるなど、一定の要件や期間制限がありますので注意しましょう。
反対株主の買取請求の詳細は、以下のページよりご確認ください。
さらに詳しく反対株主の買取請求とは?少数株主・非上場株式についての問題は弁護士法人ALGにご相談ください
非上場株式は取引市場がなく、また、多くの非上場株式には譲渡制限が付されているため、売却することは困難といえます。
会社法では少数株主の権利を守るための株式買取請求権などが設けられていますが、その手続きは決して容易ではありません。
手続きを誤れば大事な権利を失ってしまうおそれもあり、慎重に対応することが必要です。
少数株主としての権利を守るためには、法律の専門家である弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士法人ALGには会社法に精通した弁護士が多数在籍しており、非上場株式を保有する少数株主の課題についても積極的に対応しております。
少しでもお困りごとがあれば、まずはお気軽にお問い合せください。
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