譲渡制限株式は、その譲渡に制限を設けられるため、会社の経営を安定させる目的で活用する企業も多いでしょう。
しかし、譲渡を制限できても禁止することはできません。
株式の譲渡は、株主の資本回収の機会を得る為の権利であり、法律で保護すべきとされているためです。
譲渡承認が一定程度発生することを踏まえれば、会社は譲渡承認の正確な手続きを知っておくべきでしょう。
本稿では、取締役会がどのように譲渡制限株式の譲渡承認を行うのか、具体的な手続きの流れと重要なポイントについて解説していきます。
目次
株式譲渡制限会社における取締役会とは?
株式譲渡制限会社とは、定款においてすべての株式の譲渡に制限を設けている会社のことです。
これは、会社の経営に望ましくない第三者が外部から参入することを防ぐ目的で設けられるのが一般的です。
株式譲渡制限会社では株式譲渡を行う場合、原則として会社の承認を得る必要があり、取締役会が設置されているのであれば、原則として取締役会がその承認の可否を決定します(会社法139条1項かっこ書)。
株主から譲渡承認請求がなされると、取締役会は譲受人の属性や、譲渡が会社経営に与える影響などを総合的に考慮し、譲渡を承認するか否かを決定し通知しなければなりません。
なお取締役会を設置していない会社では、原則として株主総会で譲渡承認の判断を行うことになります(同法139条1項本文)。
取締役会と株主総会の違い
取締役会と株主総会は、いずれも会社における重要な意思決定機関ですが、その役割、構成、決議要件には異なる点があります。
まず役割の違いですが、取締役会非設置会社では、株主総会が会社の組織や運営などに関する一切の決定を行います(会社法295条1項)。
それに対し、取締役会設置会社の場合、株主総会は定款で定められた事項(取締役や監査役の選任・解任など)と会社法で定められた事項(定款変更など)といった基礎的な事項の決議に留まり(同条2項)、取締役会が経営方針や具体的な業務執行の決定を行います(同法362条2項)。
構成の違いとしては、株主総会が会社の所有者である株主全員で構成されるのに対し、取締役会は3名以上の取締役で構成される合議体です(同法331条5項)。
決議要件も両者で差異があり、株主総会では重大な議案ほど、出席株主の議決権割合が高く設定されますが(同法309条参照)、取締役会では、原則として取締役の過半数の出席と、出席取締役の過半数の賛成で決議されます(同法369条1項)。
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株式譲渡制限会社の取締役会で譲渡承認する流れ
株式譲渡制限会社の取締役会で譲渡を承認する場合には、以下のような流れで手続きする必要があります。
- 譲渡承認請求
- 取締役会の承認決議
- 譲渡承認通知
- 株式譲渡契約の締結
- 株主名簿の書き換え・証明書の交付
手続きに不備などがあれば、株式の譲渡人や譲受人が権利を正しく行使できないなどの問題が生じるおそれがあります。
①譲渡承認請求
株式譲渡制限会社における株式譲渡の第一歩は、会社に対する譲渡承認請求から始まります。
この請求は、株式を譲渡しようとする株主(譲渡人)、または株式を譲り受けようとする者(譲受人)のいずれかが、会社に対して行います(会社法136条又は137条)。
請求の方法は、会社法上に厳格な定めはありませんが、誤認を防ぐためにも書面で通知することが一般的といえます。
請求書面には、以下の事項を明らかにするよう会社法で定められています(同法138条柱書及び同条1号又は同条2号)。
- 譲渡する株式の種類と数
- 譲受人の氏名(または名称)
- 会社が譲渡を承認しない場合、買取請求を行うときはその旨
そのほかにどのような情報を記載するかは、会社の規則等によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
②取締役会の承認決議
会社が株式譲渡の承認請求を受けた後、取締役会設置会社であれば、原則として取締役会において承認するか否かの決議を行います。
取締役会で承認決議を行うには、取締役の過半数が出席し、かつ出席した取締役の過半数の賛成を得る必要があります(同法369条1項)。
ただし、定款でより厳しい要件が定められている場合は、定款の内容に従わなければなりません(同項かっこ書)。
取締役会で承認決議を行う際には、会社法だけでなく、自社の定款についても十分に確認した上で、取締役会を開催するようにしましょう。
③譲渡承認通知
取締役会で株式譲渡の承認・不承認決議を行った後、会社は速やかに、株式譲渡承認・不承認通知を行う必要があります(会社法139条2項)。
この通知は、譲渡承認請求を行った株主(または譲受人)に対して、会社が株式の譲渡を承認又は不承認とした旨を正式に伝えるものです。
通知の方法は、法律による定めはありませんが、後々のトラブルを避けるため、書面で行うことをおすすめします。
譲渡承認・不承認通知を送付する際は、その期限に注意が必要です。
会社法では、譲渡承認・不承認通知は会社が譲渡承認請求を受けてから2週間以内に行わない場合には譲渡承認請求を承認する旨の決定をしたものとみなすと定められています(同法145条柱書及び同条1号)。
もし、定款でこれを下回る期間を定めていればその期間内に対応しなければ譲渡承認を承認する旨の決定をしたものとみなされるので(同号かっこ書)、事前に確認しておきましょう。
④株式譲渡契約の締結
会社から株式譲渡の承認通知が送付された後は、株式の譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結する段階に入ります。
契約書には、両者の権利義務を明確に記載しておくことが大切です。
主に以下の内容を記載することが一般的です。
- 株式を発行する株式会社の情報
- 譲渡日
- 株主の氏名、住所
- 譲渡する株式の種類や株数、譲渡価格
- 代金の支払い方法
- 株主名簿の書き換え
- 表明保証
- 賠償責任に関する条項
- 契約解除に関する条項 など
これらの項目は、後々の紛争を避けるため、両者間で十分に協議し、合意しておく必要があります。
また、記載すべき条項は個別事案によって異なってくるため、契約書を作成する際には弁護士へ相談することをおすすめします。
⑤株主名簿の書き換え・証明書の交付
株式譲渡契約の締結完了後は、会社に対して株主名簿の書き換えを請求する手続きを行います(会社法133条1項)。
株主名簿の書き換えは、会社やその他の第三者に対する対抗要件であり(同法130条1項)、株主としての権利を行使するための重要な手続きといえます。
譲渡承認株式の譲渡承認請求が承認されている場合など(同法134条各号)では、原則として、この請求は譲渡人と譲受人が共同で行いますが(同法133条2項)、株券発行会社の株券を提示する場合や名義書換の確定判決を得ている場合などは、譲受人単独で請求することができます(会社法施行規則22条1項各号又は同条2項)。
株主名簿の書き換え請求を受けた会社は、株主名簿を書き換え、譲渡人の氏名を削除し、新たに譲受人の氏名、住所、取得株式数などを記載します。
株主名簿の書き換え完了後、譲受人は会社に対して株主名簿記載事項証明書の交付を請求することができます(同法122条1項)。
株主名簿の書き換えと証明書の交付をもって、株式譲渡の手続きは完了となります。
株式譲渡制限会社の取締役会における譲渡承認のポイント
株式譲渡制限会社における譲渡承認は、会社の経営に影響を及ぼす可能性があるため慎重な判断が求められます。
取締役会は、まず自社の定款を確認し、譲渡承認に関する特別な定めがないかを精査しましょう。
また、譲渡承認にあたって考慮すべき事項(例えば、譲受人の事業内容、経営能力、会社の競合関係など)を洗い出し、譲渡承認によるリスクを検討する必要があります。
そのほか、会社法の定めを厳守することも不可欠なポイントです。
譲渡承認請求から承認・不承認の通知までの期間の制限(会社法145条のみなし承認)や、不承認とする場合の買取請求対応など、会社法で定められたルールを遵守しなければなりません。
違反があった場合、みなし承認などのリスクや、会社の信用問題につながるおそれがあります。
また、譲渡を希望する株主に対して、適切な情報開示を求めることも大切です。
より正確な判断を下すため、譲受人の詳細情報や、譲渡に至った経緯などの情報についての事実上の開示を求めることも一つの手段です。
株式譲渡制限会社に関するあらゆる疑問は弁護士にご相談ください
株式譲渡制限会社における株式譲渡の手続きは、会社法や定款の定めに則って行われる必要があります。
手続きには複雑なポイントも多く、取締役会設置の有無による差異や譲渡承認の判断、株主名簿の管理など、専門的な知識が求められる場面も多々あります。
もし、手続きに不安を感じたり、法的問題が生じる場合には、早めに弁護士にご相談ください。
弁護士ALGでは、譲渡制限株式を含む会社法に精通した弁護士が適切なアドバイスや法的サポートを提供しております。
株式譲渡制限会社に関連したお悩みがあれば、ぜひ当事務所へお問い合わせください。
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