会社を設立する、あるいは事業を拡大するといった場合、株式会社の形態には公開会社と非公開会社という2つの選択肢があることをご存知でしょうか。
公開会社とは、その発行する株式の全部または一部に譲渡制限を設けない会社であり、株主は、会社の承諾を得ることなく自由に株式を売買等で譲渡、取得することができます。
一方、非公開会社は、定款によって全ての株式に譲渡制限を設けており、株主が株式を譲渡するには会社の承認が必要となります。
公開会社と非公開会社のいずれを選択するのかは事業戦略を考える上で非常に重要となるため、その違いは正確に理解しておくべきでしょう。
本稿では、公開会社と非公開会社の違いや、それぞれの定義・特徴、さらにメリット・デメリットまで幅広く解説していきます。
目次
公開会社と非公開会社の違い
公開会社と非公開会社の最も大きな違いは、全ての株式の譲渡に制限があるか否かです。公開会社は、株主が株式の譲渡を会社の承諾を得ることなく自由に行える会社であるため、幅広い株主をターゲットとすることができます。
一方、非公開会社はすべての株式に譲渡制限が設けられているため、株式を譲渡したり取得することは不自由といえるでしょう。譲渡制限株式とは、株式を譲渡する際に、会社の承認を得なければならない株式のことです。
譲渡制限を設けることで、会社に好ましくない第三者の介入を防げるといったメリットがあり、経営においては大きな利点といえるでしょう。経営の安定を図ることを最優先にするのであれば、非公開会社は有利な選択肢といえます。
どのような利点を重視するかによって選ぶべき会社形態は異なりますので、公開会社と非公開会社の主な違いを以下の表で確認しておきましょう。
| 公開会社 | 非公開会社 | |
|---|---|---|
| 取締役会 | 設置が必要(3名以上) | 設置は任意(取締役1名でよい) |
| 監査役 | 設置が必要 | 取締役会を置く場合は会計参与か監査役が必須(取締役会を置かない場合は監査役は任意) |
| 監査役の権限 | 業務監査と会計監査 | 会計監査のみを行う監査役の設置が可能 |
| 取締役・監査役の任期 | 取締役は2年が最大 監査役は4年が最大 |
取締役・監査役ともに10年まで伸長可能 |
| 発行可能株式総数 | 発行済株式の4倍まで | 発行済株式の何倍でもOK |
| 属人的株式 | 設定不可 | 設定可能 |
| 役員選任種類株式 | 設定不可 | 設定可能 |
| 株券の発行時期 (株券発行会社の場合) |
遅滞なく発行する | 株主から請求があるまで発行しなくてもよい |
| 株主総会の招集通知 | 原則2週間前 | 原則1週間前 |
| 募集株式発行の決議 | 取締役会 | 株主総会 |
| 株主提案権 | 6ヶ月以上株式を保有している株主のみ | 株式の保有期間による制限なし |
| 株主代表訴訟提訴権 | 6ヶ月以上株式を保有している株主のみ | 株式の保有期間による制限なし |
譲渡制限株式の詳細については、以下のページで解説しています。
さらに詳しく譲渡制限株式とは?目的やメリット・デメリット、譲渡の流れなど公開会社とは
会社法では、定款でその発行する株式の全部または一部に譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定めを設けない株式会社を「公開会社」と定義しています。
つまり、株主が株式を譲渡する際に会社の承認を得る必要がない会社が公開会社に該当します。
公開会社としてよくイメージされるのは上場会社ですが、公開会社と上場会社は厳密な意味では異なります。上場会社とは、証券取引所の審査を経て、株式を証券取引所で売買できる会社を指します。
公開会社の中には上場会社が多いものの、非上場会社であっても定款に株式の譲渡制限がない場合は公開会社に該当します。つまり、株式の譲渡が自由な会社が必ずしも上場しているとは限りません。
上場するためには、公開会社であることが前提条件となりますが、公開会社であることと上場していることはイコールではありません。非上場でも株式の譲渡制限を設けていない会社であれば公開会社として扱われます。
非公開会社とは
非公開会社とは、発行するすべての株式について、譲渡制限が設けられている株式会社のことです。会社法では、株式の譲渡に会社の承認が必要となる旨が定款に定められている会社を指し、一般的に「株式譲渡制限会社」とも呼ばれます。
非公開会社では株主構成の変化が少ないため、経営陣の意向を反映した長期的な経営判断を行いやすいといった点に特徴があります。そのため、非公開会社には比較的小規模な企業や中小企業が多くなっています。
そのほか、見知らぬ第三者に経営権が渡るリスクを回避するため、事業規模にかかわらず、あえて非公開会社を選択する会社もあります。
非公開会社は外部からの干渉を避け、長期的な視点で独自の経営戦略を実行したい場合や、情報公開を最小限に抑えたい場合などに選択されることが多いでしょう。
株式譲渡制限会社について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧下さい。
さらに詳しく株式譲渡制限会社とは?公開会社との違いやメリット・デメリットなど公開会社のメリット・デメリット
公開会社のメリット・デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。それぞれについて解説していきます。
メリット
公開会社は、株式の譲渡に制限を設けていないため、幅広い投資家から資金を集めやすく、非公開会社に比べると資金調達の面で有利といえます。
そのため、公開会社であれば、大規模な事業展開や新規プロジェクトへの投資に必要な資金を株式の発行によって迅速に調達できる可能性があります。
また、市場で株式が取引されることで、社会的な評価を得られやすいことになり、会社の信用力やブランドイメージを高めることができます。ただし、上場会社を除き、公開会社としてのメリットは限定的であるのが現状です。
非上場の公開会社は、株式の自由売買によって株主構成が不安定になるなどのリスクがあるにもかかわらず、証券取引所での売買が不可能であるため、会社のブランド力等を高める効果は薄いといえます。
そのため、会社設立の際には経営の安定性や意思決定の迅速性を重視し、非公開会社を選択するケースがほとんどです。公開会社としてのメリットを享受できるのは、主に上場企業に限られるといえるでしょう。
デメリット
公開会社は、株式の譲渡が自由であるため、敵対的な買収リスクに晒される可能性があります。特定の投資家や企業に株式を買い占められ、経営権が奪われてしまうおそれがあるため、常に警戒が必要です。
買収防衛策を講じることになれば、本来の事業活動以外に割くコストが多分に生じてしまうなどの点も懸念事項の1つでしょう。
また、公開会社は株主に対する情報公開の義務が課せられているため、様々な手続きや対応が必要となり、事業規模によっては運営・維持をする負担が大きいといえます。
さらに、株価の変動は様々な影響を受け変動するものですが、株価を気にしすぎるあまり短期的な利益を追求し、長期的な視点での経営が難しくなるおそれもあります。
そのほか、株主からの意見や要求に応える必要もあり、非公開会社に比べて経営の自由度が制限されることも考慮すべきでしょう。
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非公開会社のメリット・デメリット
非公開会社にも公開会社と同様にメリット・デメリットがあります。それぞれを踏まえたうえで、非公開会社を選択するのか否かを判断することが大切です。以降で非公開会社のメリット・デメリットを確認していきましょう。
メリット
非公開会社は株式の譲渡が制限されているため、株主構成が安定しやすく、経営の安定性が高いというメリットがあります。譲渡制限によって外部からの干渉を受けにくい体制のため、経営陣の意向を反映した意思決定が可能です。
また、株価の変動を気にする必要がないため短期的な利益にとらわれず、長期的な視点で事業戦略を策定し、実行することができるのは非公開会社の大きな強みでしょう。
また、情報公開の義務が公開会社ほど厳しくないため、競合他社への秘密保持にも繋がります。特に、独自の技術やノウハウを持つ中小企業にとっては、この点は大きなメリットとなるでしょう。
密接な関係をもつ株主や従業員など、限られた関係者間でのみ情報を共有できるため、自社の競争力を高めやすい体制ともいえます。
譲渡制限株式のメリット・デメリットについては、以下のページで詳しく解説しています。
さらに詳しく譲渡制限株式のメリット・デメリットをわかりやすく解説!デメリット
非公開会社は、株式の譲渡が制限されているため、公開会社に比べて資金調達が困難になるというデメリットがあります。株式市場からの資金調達ができないため、主に銀行融資やベンチャーキャピタルからの出資などに頼ることになります。
しかし、これらの資金調達手段は、公開会社に比べて規模が小さく、条件も厳しくなる傾向があります。そのため、大規模な事業拡大や新規事業を検討する際には、資金調達の面がネックとなる可能性があります。
また、株式の譲渡が制限されるため、株式の流動性が低いという点もデメリットの1つでしょう。株主が株式を売却して資金を回収したい場合でも、自由に売買することができず、買い手を探すのが難しい場合があります。
その他、株主からの株式買取請求が行われた場合、その株式数によっては会社の資金源に大きな影響を及ぼす可能性も考えられます。
公開会社・非公開会社の調べ方は?
ある会社が公開会社か非公開会社かを調べるには、法務局で取得できる登記簿謄本(登記事項証明書)を確認する方法が確実です。登記簿謄本には、その会社が公開会社であるか、株式の譲渡制限に関する規定があるかどうかが記載されています。
株式の譲渡制限に関する記載があれば非公開会社、記載がなければ公開会社と判断できます。登記簿謄本は、誰でも法務局の窓口で申請・取得することができ、オンラインでの請求も可能です。
また、会社の定款を確認することでも、株式の譲渡制限に関する規定の有無を確認できます。ただし、定款は、会社の本店に備え置かれているものであり、閲覧請求をすることができるのは、株主や債権者の関係者に限られます。
登記簿謄本の確認が、最も一般的で確実な方法といえるでしょう。
定款の閲覧請求については、以下のページをご参考下さい。
さらに詳しく定款の閲覧請求権とは?閲覧方法や請求があった場合の注意点など公開会社と非公開会社間の移行について
公開会社から非公開会社へ移行するには、まず定款を変更し、株式の譲渡制限を新たに設ける必要があります。この定款変更には、株主総会の特別決議が必要です。さらに、既存の株主から株式買取請求が行われる場合もあります。
株式の買い取り価格は、基本的に株主との協議によって決定されますが、合意に至らない場合は裁判所へ申立てが必要となる場合もあります。
一方、非公開会社から公開会社へ移行するには、定款から株式の譲渡制限に関する規定を削除する必要があります。こちらも株主総会の特別決議が必要です。
さらに、取締役会と監査役の設置が必須となるため、要件を満たしていない場合には、取締役や監査役の選任を行うなどの対応が必要となります。そして、株式を証券取引所に上場させるためには、さらに証券取引所の審査基準を満たす必要があります。
これらの手続きは、会社法に則って慎重に進める必要があり、非常に複雑であるため弁護士などの専門家へ相談し、サポートを受けることをお勧めします。
株式譲渡制限の廃止について詳しく知りたい方は、以下のページをご確認ください。
さらに詳しく株式の譲渡制限を廃止するには?手続きやメリット・デメリットなど非公開会社の手続きに関しては弁護士法人ALGにご相談ください。
多くの会社は、設立時に非公開会社を選択することが一般的であるといわれています。しかし、非公開会社であれば問題がないというわけではなく、メリットがあればデメリットもあります。場合によっては、公開会社へ移行したいと検討することもあるでしょう。
非公開会社であれ、公開会社であれ事業を行う上で、法務に関する様々な問題を避けることはできません。弁護士法人ALGは、中小企業・ベンチャー企業法務に精通した弁護士が多数在籍しており、非公開会社の相談にも積極的に取り組んでおります。
株式譲渡制限の設定、株主総会の運営、契約書の作成・審査などの日常的な法務のみならず、株主からの株式買取請求に関する交渉など個別案件にも対応しています。
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