新株予約権の買取請求とは?権利を行使されるケースや注意点など

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

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会社経営において、新株予約権は資金調達やインセンティブの付与など多様な目的で活用されています。

その一方で、種類株式の変更に伴い、発行済みの新株予約権の取り扱いが問題となるなど、慎重に取り扱うべきケースも少なくありません。

本稿では、新株予約権の買取請求権の概要や、実際に行使される主なケース、手続き上の注意点などについてわかりやすく解説します。

新株予約権の買取請求権とは

新株予約権の買取請求権とは、会社が新株予約権に関連する重要な変更を行う場合に、新株予約権者が会社に対して自らが保有する新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求できる権利です。

この権利は、法改正によって会社法118条に規定されました。

具体的には、会社が新株予約権の目的となる株式の内容を発行時とは異なるものに変更したり、新株予約権の目的となる株式に譲渡制限や全部取得条項を付与したりするといったケースが該当します。

このような場合、権利内容が新株予約権者にとって不利益となる可能性があるため、その投下資本の回収のために買取請求権が設けられました。

この制度の確立によって、新株予約権者は変更を受け入れるか、買取をしてもらうかを選択することができるようになりました。

新株予約権とは

新株予約権とは、新たに発行される会社の株式を一定の条件や金額で取得できる権利をいいます。

たとえば役員や従業員のストックオプションとして付与されるケースや、投資家向けに新株予約権付社債の形で発行される場合などがあります。

新株予約権は、購入時の株価にかかわらず事前に決められた価格で株式を購入できるため、会社の成長による株価上昇のメリットを享受できる点に特徴があります。

ただし、新株予約権の買取請求権を行使した場合は、その予約権は会社に買い取られるため、予約権をもとに株式を取得することはできなくなります。

つまり、買取請求権の行使と新株予約権の行使は両立できません。

反対株主の買取請求権との違い

反対株主の買取請求権と新株予約権の買取請求権には、いくつか明確な違いがあります。

反対株主の買取請求権は、合併や株式交換などの大きな組織再編時に、その議案に反対した株主が会社に自分の株式の買い取りを請求できる権利です。

これに対し、新株予約権者は株主ではなく、議決権を有しないため、特定の議案に反対することは要件とされていません。

新株予約権者は会社法118条などで定められた新株予約権に関連する条件変更などの事由が発生した際に、一定の手続きを経ることで買取りを請求できます。

つまり、議決権の有無と反対意思表示の要否という点で、両者は根本的に異なる制度といえますので、混同しないよう注意しましょう。

反対株主の買取請求についての詳細は、以下のページで解説しています。

さらに詳しく反対株主の買取請求とは?権利が認められるケースや流れ、価格など

新株予約権の買取請求権が行使されるケース

新株予約権の買取請求権は主に、会社の組織や株式の性質が大きく変更され、新株予約権者の権利に影響を及ぼすと考えられる場合に行使されます。

具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 譲渡制限株式とする定款の変更
  • 全部取得条項付種類株式とする定款の変更

譲渡制限株式化する場合

株式を譲渡制限株式とする定款変更を行うことは、、新株予約権者にとって不利益が生じる可能性があります。

譲渡制限株式は、株式を譲渡する際に会社の承認が必要となるため、自由に第三者へ売却することができません。

つまり、譲渡制限を設ける定款変更を行うと、株式の流動性が大きく制限され、すぐに譲渡益を得られない、換金性が低下するといった不利益を被ることになります。

そのため、会社法では新株予約権者がこうした不利益を強いられる場合には、会社に対して新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求できる権利を認めています。

これにより、新株予約権者は不利な条件変更を受けたとしても、適正な補償を受け取る制度活用が可能となり、権利が保護される仕組みとなっています。

譲渡制限株式について詳しく知りたい方は、以下のページをご参考下さい。

さらに詳しく譲渡制限株式とは?目的やメリット・デメリット、譲渡の流れなど

全部取得条項付種類株式化する場合

株式を全部取得条項付種類株式とする定款変更を行う場合、新株予約権者にとって不利益が生じる可能性があるため、買取請求権が認められています。

全部取得条項付種類株式とは、株主総会の特別決議で承認を得ることによって、会社がその株式すべてを強制的に取得できる条件が付された株式です。

このような株式に変更されると、新株予約権を行使して株主になっても譲渡益を得る機会のないまま、会社に株式を取得されてしまうリスクが生じます。

そのため、会社法では全部取得条項付種類株式とする定款変更を行う場合にも、新株予約権者に買取請求権を認め、不利な変更が行われた際には、補償を受け取れるよう保護しています。

株式交換・株式移転・会社合併・会社分割などの組織再編する場合

株式交換・株式移転・会社合併・会社分割などの組織再編が行われる場合には、新株予約権の条件や内容が大きく変わる可能性が考えられます。

組織再編によって不利益を被る可能性がある場合には、新株予約権者の権利保護のため、買取請求権を行使することが認められています。

例えば、吸収合併や株式交換などで会社が消滅し、存続会社や親会社に新株予約権の内容が引き継がれない場合などは、新株予約権者の権利保護のため、買取請求権が発生します。

ただし、吸収合併の存続会社や、吸収分割の承継会社、株式交換における完全親会社の新株予約権者については、原則として買取請求権は認められていません。

なお、消滅会社となる場合には、その効力発生日の20日前までに買取請求権を行使することができる新株予約権者に対して、吸収合併の旨および吸収合併存続会社の商号・住所を通知する必要があります。

新株予約権付社債の買取請求の注意点

新株予約権付社債とは、一定の期間内にあらかじめ定められた条件で株式を取得できる新株予約権が付与された社債を指します。

新株予約権付社債においては、新株予約権と社債部分を分けて譲渡することができません。そのため、会社法上も新株予約権のみを対象に買取請求を行うことは認められていません。

買取請求をする際は、必ず新株予約権付社債全体について請求を行う必要があります。

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新株予約権の買取請求における公正な価格

新株予約権の買取請求における公正な価格は、会社と新株予約権者の双方にとって納得できる金額でなければなりません。

実務的には、新株予約権の発行後に組織再編や譲渡制限などの事由が生じた場合の取り扱いについて、発行時点であらかじめ条件や算定基準を定めておくことをおすすめします。

事前に基準を定め、双方で認識しておけば、後々のトラブルや価格紛争を防ぐことに繋がります。

特に、発行時に公正な価格を算定し、基準を明確にしておけば、買取請求が生じたとしてもスムーズに対応することができます。

ただし、算定基準は明確な根拠を用いなければ、その価格について納得を得ることは難しいでしょう。

新株予約権の買取請求や発行などの手続きは弁護士法人ALGにご相談ください

新株予約権の発行や買取請求は、法的な手続きや専門知識が必要となる複雑な問題です。

新株予約権の発行にあたっては、会社法に定められた手続きに則って行う必要があり、発行後のトラブルを避けるためには、事前準備や慎重な検討が不可欠です。

また、買取請求が発生した場合には、公正な価格を算定した上で適切な買取手続きを行う必要があります。

これらは法的知識を要するため、社内だけで対応するのは難しい場面も多いでしょう。
新株予約権の買取請求や発行手続きなどに不安があれば弁護士へご相談ください。

弁護士法人ALGは、会社法に精通した弁護士が多数在籍しており、新株予約権に関する様々な問題についても積極的に取り組んでおります。

新株予約権に関するお悩みは、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。

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弁護士法人 ALG&Associates執行役員弁護士 家永 勲
保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。 東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。