いじめを許さない

いじめを告発することはできる?名誉毀損を回避する方法などを解説

いじめを告発することはできる?名誉毀損を回避する方法などを解説

いじめ_高校生
監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

いじめの告発とは、いじめを受けている状況を、学校や警察などの関係機関に報告し、適切な対応や解決を求めることを指します。

ただ、より多くの人に知ってほしいとの思いから、ネット上で告発しようと考える方もいらっしゃいます。

しかし、いじめ被害について加害者等の名前をSNSで告発すると、名誉毀損罪に問われる可能性もあり注意が必要です。

この記事では、SNSでいじめを告発したいけど、名誉毀損にならないか不安という方に向けて、いじめのネット告発は名誉毀損になるのか、いじめを告発する方法などについて解説していきます。

いじめを告発することはできる?

いじめの告発は、学校・教育委員会・警察・弁護士など、状況に応じた適切な機関に対して行うことができます。

こうした機関にいじめに遭っていることを告発することで、いじめの事実確認のための調査が行われ、加害者等への指導・処分、再発防止などを求めることができます。

ただし、警察への告発は、いじめの被害が犯罪行為に該当する場合に限られます。そのため、どのような機関に告発するかは、いじめの状況や程度に応じて適切な対応を検討しましょう。

なお、どこに告発するべきか分からない場合には、弁護士にご相談ください。

過去のいじめについても告発できる?

「〇年前にいじめに遭った」ことを告発することはできますが、過去のいじめによって加害者等に損害賠償請求や刑事告訴をしたい場合には、時効によって難しいケースもあります。

損害賠償請求の時効

下表の期間内であれば、過去のいじめ被害でも加害者側や学校側に損害賠償請求が可能です。

いじめによって
被害者が怪我をした、または亡くなった場合
①被害者(または法定代理人)が損害および加害者の存在を知ったときから5年 ②いじめのときから20年
怪我や死亡が生じていないいじめの場合 ①被害者(または法定代理人)が損害および加害者の存在を知ったときから3年 ②いじめのときから20年

刑事告訴の時効

いじめの刑事告訴の時効には、その犯罪の公訴時効(※)が適用されます。
(※)検察官が起訴することができる期間の制限

例えば、傷害罪で告訴する場合の公訴時効は10年、恐喝罪で告訴する場合の公訴時効は7年となります。

いじめのネット告発は名誉毀損になることも

いじめ被害に遭ったことを、SNSなどのネットを使って告発しようとお考えになる場合もあるでしょう。

しかし、SNSなどネットを使った告発は、名誉毀損罪で加害者等から訴えられてしまう可能性もあります。

名誉毀損罪とは?

公然と事実を提示して、人の名誉を傷つける(社会的評価を低下させる)行為を指します。

名誉毀損罪に問われた場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます(刑法第230条)。

多くの人に知れ渡る方法で、「〇〇(加害者)によっていじめ被害を受けた」という事実を提示する行為は、人の名誉や社会的評価を下げる十分な理由になり得るため、SNSなどネットでの告発は名誉毀損罪が適用される可能性があります。

そのため、たとえいじめが事実であっても、適切な方法で告発することが大切です。

名誉毀損以外のリスクにも注意

不適切ないじめの告発は、名誉毀損罪以外にも「虚偽告訴罪」や「恐喝罪」、「脅迫罪」などの罪に問われるリスクもあります。

虚偽告訴罪
(刑法第172条)
他人に刑事罰を与えさせる目的で、虚偽の事実を公的機関に申し立てること 3ヶ月以上10年以下の拘禁刑
恐喝罪
(刑法第249条)
他人を脅して金品を取ったり、財産上の利益を得たりする行為 10年以下の拘禁刑
脅迫罪
(刑法第222条)
人の生命・身体・自由・名誉・財産などに害を加えることを告げて、相手を脅す行為 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

具体例

  • 実際に何もしていないのに、Aをいじめ加害者にでっち上げて警察に虚偽の被害届を提出した
    ➡虚偽告訴罪
  • 「謝罪や和解金の支払いをしなければ、いじめの事実をSNSで拡散するぞ」などと復讐を示唆して相手を脅した
    ➡恐喝罪
  • 「いじめの動画をネットに拡散してほしくなかったら言うことを聞け」と危害を加えることをちらつかせて脅した
    ➡脅迫罪

名誉毀損を回避していじめを告発するには?

いじめの告発をする際は、感情的になりすぎず、法的に正当な手段を使って行うことが重要です。

名誉毀損を回避していじめを告発する方法には、以下のようなものがあります。

  • 学校や教育委員会に相談する
  • いじめの相談窓口を利用する
  • 警察に相談する

では、それぞれについて詳しく解説していきます。

学校や教育委員会に相談する

まずは、学校の担任の先生やスクールカウンセラーに相談してみましょう。

学校には、生徒が安心して過ごせるようにする安全配慮義務があり、いじめを防止したり、起きた問題に対応する責任があります。

学校がしっかり対応してくれることで、いじめが解決する可能性もあります。

もし学校が十分に対応してくれない場合でも、「学校に相談した」という事実を記録に残しておくことが大切です。これは、後で教育委員会や第三者に相談する際の重要な証拠になります。

学校が対応してくれないときは、教育委員会に相談することもできます。

教育委員会は、学校に対して調査や指導を行う立場にあり、学校に働きかけてくれる可能性があります。

いじめの相談窓口を利用する

外部によるいじめ相談窓口を活用することも有効です。

電話だけでなく、メールやSNSを使って相談できるところもありますので、ご自身に合った相談先を選んで相談してみましょう。

24時間子供SOSダイヤル
(文部科学省)
0120-0-78310
(なやみ言おう)
24時間受付
子供の人権110番
(法務省)
0120-007-110 月曜日から金曜日まで
8時30分~17時15分
インターネット人権相談受付窓口
(法務省)
メール相談 24時間受付
LINEじんけん相談
(法務局)
LINEで相談 月曜日から金曜日まで
8時30分~17時15分まで
チャイルドライン
(チャイルドライン支援センター)
0120-99-7777 午後4時~午後9時
※チャット相談可

警察に相談する

暴行や脅迫、恐喝など犯罪行為を伴ういじめ被害に遭った場合は、警察に相談しましょう。

犯罪行為に該当する悪質ないじめは、警察に被害届告訴状を提出することで、加害者の刑事責任を問うことができる可能性があります。

被害届と告訴状の違い

  • 被害届
    被害があった事実を警察に知らせる届出です。被害届が提出された後、警察が事件性ありと判断した場合には、捜査が始まります。
  • 告訴状
    加害者を処罰するために警察に捜査を求める届出です。告訴状が受理されると、警察による捜査が開始されます。
    警察は、告訴を受理すると、書類または証拠物を検察官に送付しなければならない義務が生じます(刑事訴訟法第242条)。

被害届より告訴状の提出の方が積極的な捜査が期待できるため、加害者等の処罰を強く求める場合は、告訴状の提出を検討しましょう。

犯罪行為を伴ういじめについては、以下のページで詳しく解説しています。 さらに詳しくいじめは犯罪にならないの?法律で裁けない?

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いじめの告発における証拠の重要性

いじめを告発する際には、第三者から見ていじめがあったとわかる証拠を集めることが重要です。

証拠は、加害者側や学校側にいじめを認めてもらうだけでなく、損害賠償請求や刑事告訴の際にも重要な役割を持ちます。

いじめの証拠の具体例

  • いじめ現場を撮影した写真・動画
  • いじめ現場を録音した音声データ
  • 壊されたり、汚されたりした物
  • 医師の診断書、ケガの写真
  • 誹謗中傷されたSNSやLINEのスクリーンショット
  • 被害者本人の日記
  • 第三者の証言 など

証拠がない、どのように集めたらいいか分からないなどのお悩みは、弁護士にご相談ください。

いじめの証拠については、以下のページで詳しく解説しています。 さらに詳しくいじめの解決は証拠がないと難しい?5つの対処法を解説

いじめの告発を弁護士に相談するメリット

いじめの告発については、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • いじめの告発について法的なアドバイスができる
  • 証拠収集のアドバイスやサポートができる
  • 学校側や加害者側とのやり取りや交渉を任せられる
  • 民事訴訟や刑事告訴に対応できる

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

いじめ問題を弁護士に相談するメリットについては、以下のページで詳しく解説しています。 さらに詳しくいじめ被害は弁護士に相談すべき?メリットや費用などを解説

いじめの告発について法的なアドバイスができる

いじめを告発したいと思っても、「名誉毀損にならないか不安…」と悩む方は少なくありません。

たとえ事実であっても、SNSなどで加害者の名前を公表すれば、名誉毀損罪に問われる可能性があります。

弁護士は、こうしたリスクを避けながら、正当な方法でいじめを告発するための法的アドバイスが可能です。

どこに相談すべきか、どのような証拠が必要か、どのように伝えるべきかなど、状況に応じた具体的な対応策を提案できます。

感情的になりやすい問題だからこそ、冷静かつ適切な対応を弁護士と一緒に考えていきましょう。

証拠収集のアドバイスやサポートができる

いじめを告発するにあたって、いじめを裏付ける証拠は重要な鍵となります。

しかし、証拠を収集する際には、加害者等に「証拠を集めていること」がバレないようにしなければなりません。

もし、加害者等に証拠収集が知られてしまうと、証拠が消されるだけでなく、いじめ被害が深刻化するおそれもあります。

弁護士であれば、どのようなものが証拠となるかだけでなく、証拠の集め方のアドバイスやサポートが可能です。

学校側や加害者側とのやり取りや交渉を任せられる

弁護士は、相談者の代理人として学校側や加害者側とのやり取りや交渉を任せることができます。

子供をいじめてきた相手や、いじめに気付かなかった学校を相手に直接やり取りをすることは、精神的負担が大きくなるだけでなく、感情的になって話が進まない場合もあり、おすすめできません。

その点、弁護士であれば法的観点から冷静に交渉することができ、スムーズな解決が期待できます。
また、いじめの告発をしても学校側が適切に対応してくれない場合もあります。

こうした際にも弁護士が学校側に交渉することで、学校側が対応してくれる可能性が高まります。

民事訴訟や刑事告訴に対応できる

いじめを告発し、いじめの有無が明らかになった場合には、加害者側や学校側に対して以下の法的措置を検討できます。

  • 民事訴訟(損害賠償請求)
    加害者側や、学校側に対していじめ(不法行為)に基づく損害賠償を請求できます。
    ただし、適切な損害賠償金の算定には、法律の知識を要します。弁護士であれば、法的知識や過去の判例などを基に、適切な損害賠償を請求できるでしょう。
  • 刑事告訴
    いじめの内容によっては刑事告訴が可能です。とはいえ、捜査してもらうためには複雑な手続きが必要です。
    弁護士は、刑事告訴が可能かどうかの判断や、複雑な手続きを任せることができ、相談者の負担を軽減できます。

いじめの損害賠償請求については、以下のページで詳しく解説しています。 さらに詳しくいじめで損害賠償請求できる?誰に何を請求できるのか・相場など

いじめの告発についてお悩みの場合は弁護士法人ALGにご相談ください

「いじめを告発したいけど、声を上げたらもっとひどくなるかも」といじめの告発で不安を抱えている方は少なくありません。

しかし、誰であってもいじめに耐える必要はありません。いじめの告発については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。

私たちは、いじめ問題に真剣に向き合い、解決に向けて尽力いたします。

告発することで名誉毀損に問われないか不安な場合も、弁護士が法的観点からサポートしていきます。

いじめの告発は、法的に適切な方法で冷静に行うことが重要です。

いじめ問題でお悩みの方は、法的な観点からの対応を検討するためにも、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

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