いじめを許さない

いじめは犯罪にならないの?法律で裁けない?
被害者がとれる対処法

いじめは犯罪にならないの?法律で裁けない?
被害者がとれる対処法

書類送検されたら前科がつく?前科と書類送検の関係
監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

いじめは、その態様により犯罪に該当する可能性があります。そのため、犯罪行為を伴ういじめを受けた被害者は、加害者等に対して刑事告訴など法的な責任を追及できる場合もあります。

しかし、犯罪行為を伴うようないじめを受けた被害児童・生徒やその保護者の精神的負担は大変大きいものであるため、刑事告訴をお考えの場合は弁護士にご相談ください。

この記事では、犯罪行為に該当するいじめと罪名や、どのような法的責任を追及できるのかなどについて解説していきます。ぜひ参考にしてください。

いじめは犯罪になる?

いじめは、その態様により刑法上の犯罪に該当する可能性があります。

いじめ防止対策推進法では、「いじめ」の定義が明確化されています。

いじめ防止対策推進法
第2条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

つまり、「いじり」や「遊びの一環」だとしても、受けた被害者が心身の苦痛を感じるものは、幅広くいじめに該当します。

いじめが犯罪にならないと言われる理由は?

いじめ防止対策推進法によれば、殴る・蹴るといった物理的な影響を与える行為だけでなく、無視や仲間はずれ、陰口・悪口といった心理的な影響を与える行為もすべて「いじめ」に該当するとされています。

しかし、この法律には、「いじめ」を処罰する規定(罰則)はなく、刑法にもいじめ罪という犯罪はありません。

そのため、すべての「いじめ」が犯罪として処罰されるわけではなく、いじめによって被害者の心身や金品に重大な被害が出たときに限定されています。

こうした理由から「いじめは犯罪にならない」といわれるようになったのでしょう。

犯罪行為に該当するいじめと罪名

犯罪行為に該当するいじめと罪名には、以下のようなものがあります。

  • 殴る・蹴るなどの暴力行為:暴行罪・傷害罪
  • 物を隠す・壊す・落書きをする:器物損壊罪
  • 物を盗む・奪い取る:窃盗罪
  • 脅して言うことを聞かせる:脅迫罪、恐喝罪、強要罪
  • 侮辱・誹謗中傷する:侮辱罪、名誉棄損罪
  • 不同意わいせつ罪

いじめがこれらの行為に該当し、犯罪と判断されれば、加害者は刑罰(懲役や罰金)を受けることになる場合があります。

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

殴る・蹴るなどの暴力行為|暴行罪・傷害罪

暴力行為を伴ういじめを受けた場合は、暴行罪傷害罪が成立する可能性があります。

暴行罪と傷害罪は、被害者側に傷害が発生したかどうかによって以下のように異なります。

  • 暴行罪(刑法第208条)
    殴る、蹴る、叩く、髪を引っ張るなどの暴力行為を行ったものの、被害者が怪我を負わなかった場合
    ➡ 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

  • 傷害罪(刑法第204条)
    暴力などによって他人に怪我をさせた場合
    ➡ 15年以下の懲役または50万円以下の罰金

物を隠す・壊す・落書きをする|器物損壊罪

物を隠す、教科書やノートに落書きをしたり破いたりするいじめを受けた場合は、器物損壊罪が成立する可能性があります。

  • 器物損壊罪(刑法第261条)
    他人の物を損壊・傷害した場合
    ➡ 3年以下の懲役または30万円いかの罰金もしくは科料

物を盗む・奪い取る|窃盗罪

例えば、教科書を盗まれたり、所持品を盗まれたりするいじめを受けた場合は、窃盗罪が成立する可能性があります。

窃盗罪は、「いじめてやろう」という気持ちだけでなく、加害者自身が使うために盗んだ場合も該当します。

  • 窃盗罪(刑法第235条)
    他人の財物を窃盗した場合
    ➡ 10年以下の懲役または50万円以下の罰金

脅して言うことを聞かせる|脅迫罪・恐喝罪・強要罪

加害者等から脅されるいじめを受けた場合は、脅迫罪恐喝罪強要罪が成立する可能性があります。

  • 脅迫罪(刑法第222条)
    生命、身体、自由、名誉又は財産を傷つけると告知して人を脅迫した場合
    ➡ 2年以下の懲役または30万円以下の罰金

  • 恐喝罪(刑法第249条)
    人を脅迫して金銭を巻き上げたり、お金を払わせた場合
    ➡ 10年以下の懲役

  • 強要罪(刑法第223条)
    生命、身体、自由、名誉もしくは財産を傷つける旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人が嫌がることを強要した場合
    ➡ 3年以下の懲役

侮辱・誹謗中傷する|侮辱罪・名誉棄損罪

不特定または多数の人が認識できる状況で、他人の名誉を毀損した場合は、名誉棄損罪侮辱罪に該当する可能性があります。

インターネット上やSNS上でのいじめもこれらに該当します。

  • 名誉棄損罪(刑法第230条)
    公然と事実を提示して、他人の名誉を毀損した場合(事実が真実であるか否かを問わない)
    ➡ 3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金

  • 侮辱罪(刑法第231条)
    事実を適示しなくても、公然と他人を侮辱した場合
    ➡ 1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

不同意わいせつ罪

同意なく体に触れる、服を脱がせる、無理やりわいせつな行為をしたりさせたりする行為は不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。

  • 不同意わいせつ罪(刑法第176条)
    同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせまたはその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした場合
    ➡ 6ヶ月以上10年以下の拘禁刑

犯罪に該当するいじめを受けたら法的な責任を追及できる

犯罪行為を伴ういじめを受けた場合は、加害者等やその保護者、学校などに対して、以下のような法的責任を追及できます。

  • 刑事責任の追及
  • 損害賠償の請求

大切な子供が犯罪行為に該当するような重大ないじめ被害にあった場合は、これらの法的措置を検討してください。

また、「どのような法的措置が適切なのか」といったお悩みもあると思いますので、まずは弁護士にご相談ください。

刑事責任の追及

法律に触れるいじめを受けた場合には、犯罪として警察に訴えることで刑事責任を追及できる場合があります。

具体的には、被害届の提出告訴状の提出などの方法があります。

被害届の提出:被害があった事実を警察に知らせる届出

被害届の提出後、警察が事件性ありと判断した場合に捜査が始まります。捜査の内容は事件の態様によってさまざまですが、関係者への事情聴取や事件現場での証拠収集、被疑者への取り調べなどが行われることが多いでしょう。

告訴状の提出:加害者を処罰するために警察に捜査を求める届出

告訴状が受理されると、警察による捜査が開始されます。警察は、告訴を受理すると、書類または証拠物を検察官に送付しなければならない義務が発生します(刑事訴訟法第242条)。そのため、被害届とは異なり、積極的な捜査が行われることが期待できます。

なお、学校を直接刑事告訴することはできません。

損害賠償の請求

いじめは、民法上の不法行為(民法第709条)に該当する可能性があるため、加害者側や学校側に慰謝料や治療費などの損害賠償を請求できる場合があります。

加害者側に損害賠償請求する場合
いじめの損害賠償責任は加害者本人が負うのが基本ですが、加害者本人に責任能力があるかどうかによって請求相手が異なります。

  • 責任能力があると判断される場合 ➡ 加害者本人に請求します

  • 責任能力がないと判断される場合 ➡ 加害者の保護者に対して監督義務者の責任に基づく損害賠償を請求できます

学校に損害賠償請求する場合
学校は、児童・生徒が心身ともに安心かつ健全な学校生活を送れるよう、安全配慮義務を追っています。そのため、教師がいじめに加担した場合や、いじめを知りながら放置した場合には、学校の設置者に安全配慮義務違反として損害賠償の請求が可能です。

いじめの加害者が子供でも逮捕することはできるのか?

犯罪行為を伴ういじめ被害に遭った場合は、刑事告訴することで加害者等に刑事責任を追及できます。

ただし、加害者等が具体的にどのような処分を受けるかは、加害者等の年齢によって異なります。

加害者等が14歳未満の場合

加害者等が14歳未満の場合は逮捕されることはありません(刑法第41条)。しかし、加害者等の行為が重大な罪にかかる刑罰法令に触れるものと判断される場合には、少年審判を受ける可能性もあります。

加害者等が14歳以上16歳未満の場合

加害者等が14歳以上の場合、刑事責任能力があるものとして扱われ、警察に逮捕される可能性があります。通常は、事件が家庭裁判所に送られ、少年法に基づいて家庭裁判所が少年審判を行い、処分を決定します。

加害者等が16歳以上18歳未満の場合

加害者等が16歳以上18歳未満の場合は、基本的に加害者等が14歳以上16歳未満の場合と同様の処分が行われます。ただし、家庭裁判所の少年審判により「刑事処分が相当」と判断された場合には、事件が検察庁に送致されることもあります。

加害者等が18歳・19歳の場合

犯罪行為をした18歳・19歳は特定少年という概念が導入されます。民法上は成人であるものの、刑事事件については引き続き少年法が適用され、基本的には家庭裁判所が処分決定をします。

犯罪行為に該当するいじめを受けたときの対処法

犯罪行為を伴ういじめを受けた場合は、以下の対処法を検討しましょう。

  • 学校に連絡する
  • 警察に通報・相談する
  • いじめの相談窓口に相談する
  • いじめ問題に詳しい弁護士に相談する

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

学校に連絡する

いじめは学校内で発生した問題でもあるため、まずは学校に相談しましょう。学校には、いじめ防止対策推進法によって以下のことが義務付けられています。

  • いじめの早期発見のために定期的に調査を行う
  • いじめの相談を受けることができる体制を整備する
  • 通報を受けた場合は直ちに調査を行う

警察に通報・相談する

犯罪行為に該当するいじめを受けた場合は、なるべく早く警察に通報・相談しましょう。

また、警察内の機関のひとつである少年相談窓口に相談することも有効です。

少年相談窓口とは?
少年相談窓口では、20歳未満の子供やその保護者がいじめや犯罪被害などについて、公認心理士等の資格を持つ専門職員と心理面の相談ができます。
また、いじめへの対応に関する助言や、家庭裁判所などの関係機関への取り次ぎをしてもらうことが可能です。

少年相談窓口は各都道府県の警察に窓口があり、少年相談窓口サイトに電話番号が掲載されています。

「いきなり警察に相談するのは気が引ける」という場合に活用してみてはいかがでしょうか。

いじめの相談窓口に相談する

いじめの対応に悩んだときには、次のような相談窓口に相談してみるのもよいでしょう。

いじめ問題に詳しい弁護士に相談する

犯罪行為に該当するようないじめ・悪質ないじめを受けた場合は、弁護士へ相談しましょう。

いじめ問題を弁護士に相談するメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 民事訴訟や刑事告訴などの対応を任せられる
  • 加害者側や学校側への対応を任せられる
  • 慰謝料や治療費など適切な損害賠償額を漏れなく請求できる
  • 損害賠償請求に必要な証拠のアドバイスをもらえる
  • いじめ再発防止策を提案できる

このほかにも、個別事情に応じて適切なサポートが可能です。いじめの問題はおひとりで悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

いじめの被害を受けた場合はお早めに弁護士法人ALGにご相談ください

いじめ被害は、被害者の心身に大きな影響を与える行為であり、許されるものではありません。

また、いじめが犯罪行為を伴うような重大な被害である場合、被害者や保護者の方の精神的ショックは大きなものとなるでしょう。

大切なお子様がいじめ被害に遭われている場合は、ご家族だけで悩まず弁護士を頼ってください。

弁護士であれば、加害者側や学校側との交渉だけでなく、刑事告訴や損害賠償請求などの対応を任せることが可能です。

私たち弁護士法人ALGは、いじめや学校問題に詳しい弁護士が多数在籍しております。

ご相談者様の思いを優先し早期解決に向けて尽力いたしますので、まずは一度お話をお聞かせください。

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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員

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