いじめを許さない

いじめ防止対策推進法とは?被害者を守る法律と弁護士ができること

いじめ防止対策推進法とは?被害者を守る法律と弁護士ができること

起訴と不起訴、それぞれの違いや生活への影響について
監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

いじめ防止対策推進法は、2013年(平成25年)に施行されました。

これは、スマートフォンの普及によるいじめ態様の変化や、SNSやネット上のいじめが深刻化するなかで、子供をいじめから守るために学校や教育委員会などの責務を定めた法律です。

この記事では、いじめ防止対策推進法について、具体的にどのような法律なのか、被害者がとれる対応などを解説していきます。ぜひご参考ください。

いじめ防止対策推進法とは

いじめ防止対策推進法とは、児童・生徒の間で起きているいじめ問題に対し、社会全体で向き合って、適切に対処していくための基本的な理念や体制を定めた法律です。

2013年6月に文部科学省から制定され、同年9月に施行されました。その後、2017年に改正され現在に至っています。

いじめは、被害を受けた児童・生徒が教育を受ける権利を著しく侵害する行為です。

また、いじめが、被害児童・生徒の心身を傷つけ、健全な成長と人格形成に重大な悪影響を与えることは明らかです。

いじめ防止対策推進法 改正のポイント

  • 学校・教職員の義務
  • 「いじめ」の定義
  • いじめ重大事態への対応

具体的に、どのように改正されたのか以下で詳しく見ていきましょう。

いじめ防止対策推進法に基づく学校の義務

学校におけるいじめを防止するため、学校と教職員には以下の義務が定められています。

学校の義務

  • いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めること(いじめ防止対策推進法第13条)
  • 学校いじめ対策組織の設置(同法第22条)
  • すべての教育活動を通じた道徳教育および体験活動等の充実を図ること(同法第15条第1項)
  • いじめ防止の重要性に関する理解を深めるための啓発、その他必要な措置を講ずること(同条第2項)
  • いじめを早期に発見するための定期的な調査、その他必要な措置を講ずること(同法第16条第1項)
  • 児童・生徒・保護者向けの相談体制を整備すること(同条第3項)
  • 家庭や地域社会などと連携して、いじめを受けた児童・生徒の権利利益が擁護されるように配慮すること(同条第4項)
  • 教職員に対し、いじめ防止等の対策に関する研修の実施など、いじめ防止対策に関する資質の向上に必要な措置を計画的に行うこと(同法第18条第2項)
  • インターネットを通じて行われるいじめを防止し、効果的に対処できるように、児童・生徒・保護者に対して必要な啓発活動を行うこと(同法第19条第1項)
  • 教職員からいじめに関する通報を受けた際、いじめの事実の有無の確認などの措置を講じ、その結果を学校の設置者に報告すること(同法第23条第2項)
  • いじめの事実が確認された際には、いじめをやめさせ、再発を防止するための対応を行うため、被害児童生徒またはその保護者への支援や加害児童生徒への指導またはその保護者への助言を行うこと(同条第3項~第6項)

教職員の義務

  • 児童・生徒からいじめに関する相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、在籍する学校への通報その他の適切な措置をとること(同法第23条第1項)
  • いじめの加害児童・生徒に対して、適切に懲戒を加えること(ただし体罰は認められない。同法第25条、学校教育法第11条)

いじめ防止対策推進法における「いじめ」の定義とは

いじめ防止対策推進法第2条第1項において、「いじめ」は以下の要件を満たす行為であると定義されています。

  • 学校に在籍する児童または生徒に対する行為であること
  • 当該児童等が在籍する学校に在籍しているなど、当該児童等と一定の人間関係にある他の児童がおこなう行為であること
  • 児童等に対して、心理的または物理的な影響を与える行為であること(インターネットを通じて行われるものを含む)
  • 対象となった児童等が心身の苦痛を感じていること

つまり、被害を受けた児童・生徒が心身の苦痛を感じるものは、幅広くいじめに該当します。

いじめ防止対策推進法における「重大事態」とは

いじめ防止対策推進法はいじめのうち深刻なものをいじめ重大事態と位置付け、同法第28条第1項では、次のように定義しています。

  • いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めたとき
  • いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき

いじめ重大事態に該当する具体例

  • 児童等が自殺を図った場合(軽傷で済んだ場合も含む)
  • 児童等が心身に重大な被害を負った場合
  • 児童等の金品等に重大な被害が生じた場合
  • いじめによって転校を余儀なくされた場合 など

いじめ防止対策推進法に加害者への罰則規定はある?

いじめ防止対策推進法では、「いじめ」の定義や学校側の責務を定めていますが、いじめ行為そのものを処罰する規定(罰則)はありません。

ただし、例えば、暴行や脅迫を伴ういじめを受けた場合には、いじめが犯罪行為となる可能性もあり得ます。

刑法上の犯罪に該当すれば、処罰の対象となることもあるでしょう。

なお、犯罪行為を伴ういじめでなかったとしても、被害を受けた児童・生徒が精神的苦痛を負った場合には、加害者やその保護者、学校側に対して損害賠償を請求できます。

いじめ防止対策推進法に基づいて被害者がとれる対応は?

自分の子供がいじめられていると知った場合には、いじめ防止対策推進法に基づいて以下のような対応をとることを検討しましょう。

  1. 学校に対する請求
  2. 加害者やその親への請求
  3. 加害者に対する刑事責任の追及

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

学校に対する請求

いじめを受けた児童・生徒やその保護者は、学校側に対して次のような請求ができます。

①事実確認

いじめが発覚した場合、まずは学校に対してしっかりとした事実確認を求めましょう。

学校は、いじめが発生した場合、事実確認をすることが義務付けられていますので、徹底的な確認を求めましょう(いじめ防止対策推進法第23条第2項)。

②加害者側への対応

学校は加害者等に対する指導、その保護者に対する助言などの適切な措置をとることも義務付けられています(同法第26条)。

被害児童・生徒の保護者として、学校に対する調査だけでなく加害者への対応も求めましょう。

③学校に対する損害賠償請求

学校側がいじめの事実を知りながら放置したり、学校として必要な責任を怠ったりする場合には、いじめによって生じた損害の賠償を求めることができます。

ただし、学校側への損害賠償請求は、公立学校と私立学校で請求先が異なるため注意が必要です。

  • 公立学校 ➡学校の設置者(国・都道府県・地方自治体など)
    ※教師(公務員)の個人責任が否定されているため、教師に対する損害賠償請求はできません
  • 私立学校 ➡学校法人、教師 など

加害者やその親への請求

学校でいじめの被害に遭った場合、加害者等やその保護者に損害賠償を請求できる可能性があります。

なぜなら、いじめは、民法上の不法行為(民法第709条)に基づく権利侵害行為に該当する可能性があるからです。

損害賠償請求の対象となるもの

  • 慰謝料
    慰謝料とは、精神的苦痛に対する補償です。
    加害者等によるいじめにより精神的苦痛を被った場合には、その賠償として加害者やその保護者に慰謝料を請求できます。
  • 治療費
    暴力によるいじめで怪我を負った場合や、精神に不調をきたし通院の必要がある場合には、治療費を加害者側や学校側に損害賠償請求できます。
  • 壊された物・汚された物の損害費用
    いじめによって物を壊されたり、汚されたりした場合も、その損害分を請求できます。壊された物や汚された物はそのまま保存するか、それが難しければ様々な角度から写真や動画を撮影しておきましょう。

加害者に対する刑事責任の追及

いじめの内容や程度によっては犯罪行為に該当し、加害者等に刑事責任を追及できるケースがあります。

犯罪行為に該当するいじめの一例

  • 暴力(怪我を負わなかった場合も含む)➡暴行罪、傷害罪
  • 金品のカツアゲ➡恐喝罪、強盗罪
  • 万引きの強要➡強要罪
  • 持ち物を摂取する➡窃盗罪
  • 性的行為の強要➡強制わいせつ罪、強制性交等罪、不同意性交等罪
  • ネットでの誹謗中傷➡名誉棄損罪、侮辱罪

加害者の刑事責任を追及したい場合は、警察に被害届を提出し、捜査を求めることになります。

ただし、学校でのいじめは加害児童・生徒が未成年であることが考えられ、基本的に少年法によって手続きが進められます。

いじめ問題を弁護士に相談するメリット

いじめ問題を迅速に解決、法的措置を検討する場合は、弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。

弁護士への相談・依頼で受けられるメリットには、以下のようなものがあります。

  • 慰謝料や治療費など適切な損害賠償額を漏れなく請求できる
  • 損害賠償請求に必要な証拠のアドバイスをもらえる
  • 損害賠償請求の手続き・交渉を任せられる
  • 加害者側や学校側への対応を任せられる
  • 民事訴訟や刑事告訴などの対応を任せられる
  • いじめ再発防止策を提案できる

いじめ問題を迅速に解決するには、弁護士によるきめ細やかなサポートが重要です。

おひとりで悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

いじめ防止対策推進法やいじめ問題への対応は弁護士法人ALGまでご相談ください

大切なお子様がいじめ被害を受けていると知ったとき、加害者側や学校側に対して責任を取ってほしいと思われるのは当然のお気持ちです。

しかし、「いじめ問題をどのように対応するべきか」は慎重な判断が必要です。おひとりで悩まず、まずは私たち弁護士法人ALGにご相談ください。

弁護士であれば今後の対応や証拠のアドバイスだけでなく、加害者側や学校側との交渉や損害賠償請求、刑事告訴まで任せることが可能です。

私たちは、ご相談者様のお悩みを丁寧にヒアリングし、迅速な解決に向けて尽力いたします。

いじめ問題でお悩みの場合は、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。

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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員

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