スマートフォンの普及により、SNSの利用率が増加しています。
その中でも、LINEは特に利用者が多く、10代の中高生にとっては、日常的なコミュニケーションに欠かせないツールとなっています。
その一方で、LINEを使ったいじめが増加しており、保護者の間でも不安の声が上がっています。
この記事では、LINEいじめの特徴や具体的な事例、LINEいじめに遭った場合の対処法などについて解説します。
目次
LINEいじめとは、児童や生徒がLINEを利用して行う、他者を傷つけるような嫌がらせや、仲間外れなどを指します。
LINEは、小学生から高校生までの多くの児童・生徒が利用しており、日常生活に欠かせないコミュニケーションツールとなっています。
しかし、広く普及しているLINEだからこそ、使い方によってはいじめに発展するおそれもあります。
ここからは、LINEなどネットいじめの実態や、LINEいじめの特徴を解説していきます。
文部科学省のいじめ調査によれば、「パソコンや携帯電話で、誹謗・中傷や嫌なことをされる。」と回答する児童・生徒の数は年々増加傾向にあります。
令和5年度における、小・中・高等学校および特別支援学校での、いじめの認知件数は73万2568件であり、そのうちSNSなどを使ったネットいじめの件数は、2万4678件に上りました。
また、「パソコンや携帯電話による誹謗中傷」を選択した児童・生徒の割合は、小学生で1.8%、中学生で9.2%、高校生で15.5%、特別支援学校8.2%となっており、特に高校生においてネットいじめの割合が高いことが示されています。
高校生はスマートフォンの普及率が高く、SNSを日常的に利用していることが、ネットいじめの増加に影響を与えていると考えられます。
LINEを使ったいじめは近年発生頻度が高く、大きな問題のひとつです。
LINEいじめの特徴には、以下のようなものがあります。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
LINEのやりとりは、基本的に当事者間でしか把握できない閉ざされたコミュニケーションであり、外部からは内容を把握できないという特徴があります。
グループLINEによって一部の児童・生徒がいじめ被害を受けている場合、直接関わっていない児童・生徒が教師などに報告するケースもあります。
しかし、「報告したら自分もいじめられるのではないか」「トラブルに関わりたくない」といった気持ちから、保護者や教師に伝えられず、いじめが見過ごされるケースも少なくありません。
このように、いじめの発見が遅れがちになる点も、LINEいじめの特徴のひとつです。
LINEのやりとりは、基本的に文字だけのコミュニケーションとなるため、自分の意図とは異なる意味で受け取られてしまうリスクがあります。
例えば、「友達じゃない」という言葉は、口頭の会話であれば親しみを込めた表現として使われることがありますが、文字だけで伝えると否定的な意味に誤解される可能性があります。
また、絵文字を併用することで自分の感情や意図を補足することができますが、絵文字の使い方によっては、意図しない印象を与えてしまい、誤解を招くこともあります。
このように、小さな誤解がきっかけとなって、いじめに発展する可能性がある点が、LINEいじめの特徴です。
LINEは、メッセージの取り消しやトークルームの削除など、やりとりの証拠を消すことが可能です。そのため、いじめの証拠が残らない可能性もあります。
また、小人数のグループLINEであっても、加害者がグループ作成者であればトークルームを削除できる場合があります。
このように、いじめの事実を証明するためのトーク履歴が簡単に消されてしまうことも、LINEいじめの特徴のひとつです。
LINEいじめの具体例やよくあるパターンは、以下のようなものがあります。
なかには、冷やかしやからかい、「いじり」の感覚で、特定の児童・生徒を仲間はずれにしたり、悪口を書き込んだり、加害者等に「いじめ」の意識はない場合もあるでしょう。
また、それが集団によるものであれば、加害者の人数が増えることで、さらに「いじめ」の意識が薄れる傾向があります。
しかし、被害者が精神的苦痛を感じている場合、それは広く「いじめ」に該当します。LINEいじめが被害者の自殺へとつながる危険性もあるため、決して見過ごすことはできません。
福岡県の中学生の間で起きたLINEいじめの事例をご紹介します。
事案の概要
被害者は、同級生からLINEグループ内で被害者の加工写真や容姿をからかうメッセージを投稿されるなどのいじめを受けました。
被害者は、精神的苦痛を感じてスクールカウンセラーに相談しましたが、次第に「人の目が怖い」と訴えるようになり、心療内科を受診したのち不登校となりました。
学校の対応
担任教師らは、関係生徒に事情を聞いたものの、LINEの投稿内容自体は確認せず、学年集会での一般的な指導にとどまりました。
第三者委員会の判断
学校が設けた第三者委員会は、「いじめによる人間関係に対する不安と、教員の行きすぎた風紀指導によって極度の畏怖感情が生じ、心理的安全性が害された」として、いじめ重大事態に該当すると判断し、学校に対していじめ対応マニュアルの整備や教職員研修の充実など、再発防止を提言しました。
新潟県の高校生の間で起きたLINEいじめの事例をご紹介します。
事案の概要
被害者は、同級生から不快なあだ名を付けられる、本人の写真を加工した合成画像がLINEグループ内で投稿されるなど、日常的にいじめを受けていました。
複数回にわたり担任に相談していましたが、十分な対応がなされず、最終的に自殺に至ってしまいました。
学校の対応
被害者がいじめを訴えた際、担任は加害生徒への聞き取りを行わず、一般的な注意にとどまりました。また、学校側は加害生徒の否定を受けて、いじめの事実を深く追求することはしませんでした。
第三者委員会の判断
第三者委員会は、いじめの兆候を見逃し、適切な調査や指導を怠ったと、学校の対応に重大な不備があったと認定しました。
委員会は、学校が生徒の安全配慮義務を果たしていなかったと結論付け、再発防止のための具体的な対策を求めました。
CONTACT
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。 ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
LINEいじめの被害に遭った場合は、ひとりで悩まず、以下のような対処法を検討しましょう。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
加害者側や学校側にLINEによるいじめの事実を認識してもらうためには、明確な証拠の提示が不可欠です。
LINEのトーク画面は有力な証拠となり得ますので、いじめの内容が含まれるトーク画面は、スクリーンショットなどの方法で保存しておくことをおすすめします。
このとき、不快な発言のみを切り取るのではなく、前後のやりとりも含めて保存することで、状況の全体像がより明確となり、証拠としての信頼性が高まります。
ただし、LINEのメッセージは加害者に削除される可能性もあるため、気づいた時点で速やかに保存しておくことが重要です。
いじめの証拠については、次のページで詳しく解説しています。
LINEによるいじめに気づいた場合は、速やかに学校にいじめの事実を伝え、適切な対応を求めることが重要です。
学校には、児童・生徒が安全に学校生活を送ることができるよう配慮する義務(安全配慮義務)があります。
また、いじめの通報があった場合には、学校内での調査や被害者への支援などを行う義務が、いじめ防止対策推進法第23条により定められています。
そのため、学校は、生徒間のLINEのやりとりがどのように行われているかを把握し、必要に応じて適切な指導や改善策を講じる責任があります。
学校へ報告する際には、同じいじめが再び起こらないよう、LINEやSNSの適切な利用について全校生徒に指導を行うなど、再発防止対策の実施を求めることも有効です。
LINEによるいじめについて、どのような対応をすべきか迷った場合は、弁護士への相談をおすすめします。
「いじめ被害で弁護士に相談するのは大袈裟かな?」「学校との関係が悪化しないかな?」といった不安を抱かれる方もいるかもしれません。
しかし、弁護士は、問題解決のための適切な方法を熟知しており、学校との対立を避けながら、できる限り、話し合いによる円満な解決を目指します。
また、LINEによるいじめでは、トーク履歴などの証拠が残るケースが多くあります。弁護士はこれらの証拠をもとに、加害者側や学校側への対応方針を検討することが可能です。
このように、弁護士が証拠を分析することで、裁判に至る前に問題を円満に解決できる可能性があります。
いじめ問題を弁護士に依頼するメリットについては、次のページで詳しく解説しています。
いじめの加害者等は、被害者に対する民事責任を負うほか、刑事責任を負う場合があります。
法的責任の追及は、被害者の心身に大きな負担となりますので、弁護士のサポートを受けながら行うことをおすすめします。
いじめ行為は、民法上の不法行為に該当するため、加害者や学校には損害賠償責任が生じます(民法第709条)。
賠償の対象には、被害者が受けた精神的苦痛に対する「慰謝料」のほか、怪我の治療費や転校・転居に伴う費用などが含まれることがあります。
加害者が責任能力を持たない場合の保護者の責任
原則として、いじめによる損害は加害者本人が賠償責任を負います。
ただし、加害者が概ね10歳〜12歳未満で責任能力が認められない場合には、保護者が監督義務者として損害賠償責任を負う可能性があります(民法第712条・714条)。
いじめの損害賠償については、次のページで詳しく解説しています。
いじめ被害が犯罪行為に該当する場合は、刑事告訴を通じて加害者等の刑事責任を追及できる場合もあります。
刑事告訴とは?
いじめ被害者が警察などの捜査機関に対して犯罪行為を申告し、加害者の処罰を求める意志を示す手続きです。
告訴状が受理されると、警察は捜査を開始し、書類または証拠物を検察官に送付する義務が生じるため、積極的な捜査が期待されます。
LINEによるいじめでは、以下のような行為が犯罪に該当する可能性があります。
LINEによるいじめは当事者間にしか見えず、周りの大人が気づく前にエスカレートしてしまうおそれがあります。
「これっていじめなのかな?」と少しでも不安を感じたら、どうか迷わず私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、ご相談者様の状況に寄り添いながら、最適な対応方法を一緒に考え、安心して前に進めるようサポートいたします。
明るい未来を取り戻すためにも、まずは一度私たちにお話をお聞かせください。
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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)
愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士82名、スタッフ171名(司法書士1名を含む)を擁し(※2021年6月末現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。
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