肉離れは労災になる?仕事中・通勤時の認定条件や手続きなど

肉離れは労災になる?仕事中・通勤時の認定条件や手続きなど

肉離れとは、筋肉が急激に縮むことにより損傷し、筋肉の一部が断裂した状態を指します。
ふくらはぎや太ももなど足に発症することが多く、重症になると歩くことが困難となる非常に厄介な症状です。

一般的にはスポーツ中になることが多い肉離れですが、もし仕事中に肉離れとなった場合は労災として認定されるのでしょうか?

そこで、本記事では労災による肉離れについて着目し、詳しく解説していきます。

労災(=労働災害)とは?

労働者(従業員、社員、アルバイト)が労務に従事したことによって被った負傷、疾病、死亡などをいいます。

肉離れの原因と症状

肉離れの原因は、主に以下とされています。

  • 筋肉の柔軟性不足(運動前のフォーミングアップ不足)
  • 筋肉疲労の蓄積
  • 水分不足
  • 身体の冷え など

また、肉離れの症状は下表のとおり軽症~重症までの3段階に分類され、“筋繊維の損傷具合”によって重症度が異なります。

1度(軽症) 筋繊維の微細損傷
  • 筋肉や筋膜自体に大きな断裂などなく伸ばされた状態
  • 患部を押すと痛みがあるが、自力で歩行することができる
  • 治療期間の目安:1~2週程度
2度(中等症) 筋繊維の部分断裂
  • 筋肉や筋膜が部分的に断裂し、皮下出血が起きている状態
  • 患部を押すと痛みがあり、自力で歩行することはできるものの困難であることが多い
  • 治療期間の目安:4週~2ヶ月程度
3度(重症) 筋繊維の完全断裂
  • 筋肉や筋膜が深く断裂し、外見上でも患部がへこんで見える状態
  • 痛みも非常に強く自力で歩行することができない
  • 場合によっては手術を要することもある
  • 治療期間の目安:3~6ヶ月程度

職場で肉離れになった場合は労災になるのか?

職場で肉離れになった場合は、肉離れとなった原因が業務によるものであれば労災として認められる可能性があります。

つまり、肉離れとなった原因が業務にあるのか否かという点がポイントとなります。

また、業務とは関係なく職場内を移動していたときに肉離れとなった場合でも、「移動する」という行為がなければ次の作業に取り組めないと考えられるため、労災として認められる可能性があります。

では、通勤途中で肉離れになった場合は労災となるのでしょうか?

この場合は、通勤災害の認定要件を満たしていれば労災として認められる可能性があります。(通勤災害の認定要件については、次項にて解説いたします)。

労災と認められる条件は?

労災と認められるためには、業務遂行性業務起因性の要件を満たす必要があります。

労災事故が発生した際に被災労働者が事業主の支配下にあることを業務遂行性といい、労災事故発生の原因が業務にあるといえることを業務起因性といいます。

これらの要件を満たさない限り、労災として認定されることはありません。

また、通勤災害においては、以下の認定要件を満たす必要があります。

通勤災害の認定要件

  • 住居と就業場所との往復であること
  • 就業場所から他の就業場所への移動であること
  • 単身赴任先と家族の住む住居間の移動であること

そもそも労災保険を使うメリットは?

労災保険を使うことにより、被災労働者は様々なメリットを得ることができます。 労災保険には、具体的に以下のようなメリットがあります。

過失割合の影響を受けないこと

  • 労災保険は過失割合に関わりなく給付を受けることができます。
  • 被災労働者側にも過失がある場合、通常は過失割合分相殺されますが、労災保険では相殺されません。

治療費の自己負担がないこと

  • 労災保険を使用しない場合、治療費は自己負担となります。
  • 治療費の自己負担がないことにより、家計の圧迫等を防ぐことができます。

補償が手厚いこと

  • 休業に対する補償である「休業補償給付」や後遺障害が残ってしまったことに対する補償である「障害(補償)給付」などの様々な補償を受けることができます。

肉離れによる労災の申請手続き

仕事中や通勤中に生じた肉離れについて労災に申請手続きを行う場合は、以下のような流れとなります。

<労災申請手続きの流れ>

  • 会社に労働災害の発生を報告する
    労働災害発生後、まずは会社に事故が起きたことを報告しましょう。
  • 労災の請求書を労働基準監督署に提出する
    つぎに、労災保険給付の請求書を作成し、労働基準監督署に提出してください。 労災保険給付の請求書は、会社を通じて提出することもご自身で直接労働基準監督署に提出することもできます。
  • 労働基準監督署にて調査が行われる
    労災保険給付の請求書を提出した後は、労働基準監督署にて労災に該当するかどうかの調査が行われます。
  • 労災給付決定
    労働基準監督署にて、発生した労働災害が労災として認められると労災保険の給付を受けることができます。 また、労災に該当せずその結果に不服がある場合は、管轄労働局に対して審査請求を求めることも可能です。

補償給付内容

肉離れが労災として認められると、どのような内容の労災保険給付を受け取ることができるのでしょうか?

肉離れで受け取ることができる労災保険給付は、主に下表のとおりです。

休業補償給付 業務災害または通勤災害による傷病のため、労働できず賃金を受け取れないことに対する給付
療養補償給付 業務災害または通勤災害による傷病の療養に必要な費用の給付
障害補償給付 業務災害または通勤災害による傷病が完治せずに後遺障害が残ってしまった場合に給付される年金や一時金

肉離れは、軽症でも完治するまでに約1~2週間程度かかります。

休業補償給付は休業4日目から保険給付が行われるため、休業した日数分の給付を受けられるわけではありません。

肉離れの労災に関するよくある質問

仕事中の肉離れは健康保険を使用して治療してはいけない?

仕事中に肉離れが発症した場合は、労災として認められる可能性があります。

健康保険を使用してしまうと労災の申請ができなくなるため、健康保険の使用は控えましょう。

やむを得ず健康保険を使用した場合は、一旦被災労働者にて治療費を立替えることになります。
そのため、病院から渡された領収書などは原本を大切に保管し、後ほど労災保険に切り替える手続きを行ってください。

そうすることにより、被災労働者にて立替えた治療費は病院から返却されます。

病院によりますが、返却の際は立替えた治療費の領収書を持参するように言われる場合がありますので、捨てないように注意してください。

職場で肉離れになったのに労災保険を使えないと言われたらどうすればいい?

労災保険の申請手続きは、被災労働者自身で行うことができます。

そのため、会社から「労災保険を使えない」などと言われてしまった場合は、ご自身で申請手続きを行いましょう。

また、職場で発生した怪我にも関わらず労災保険が使えない場合、会社が労災隠しを行おうとしているおそれがあります。 労災隠しは、れっきとした犯罪行為であり、許されることではありません。

しかし、肉離れなどの軽度の怪我はその軽度さから労災隠しに合う可能性が非常に高い傾向にあります。
会社の労災隠しが疑われる場合は、管轄する労働基準監督署に相談されることをおすすめします。

労災隠しについて、以下のページにて更に詳しく解説しております。ぜひ併せてご覧ください。

仕事中に肉離れを発症したが休むことができず、その後悪化した場合は会社へ損害賠償請求はできる?

仕事中に発症した肉離れによる痛みを会社に申告したにも関わらず、人手不足等の理由ですぐに病院を受診することができず悪化したような場合は、会社に対して損害賠償請求できます。

なぜなら、会社が安全配慮義務違反を行ったと認められる可能性が高いからです。

会社は被災労働者から労災事故発生の報告を受けた後、被災労働者の業務を中断し病院を受診することを認める義務を負います。

この場合はその義務を会社が怠ったと認められる可能性が高いため、被災労働者は会社に対して損害賠償請求することができるでしょう。

肉離れに関する労災でお困りのことがあれば弁護士にご相談ください

肉離れは軽度の怪我とみられることが多いため、会社から「労災申請するまでもない」と思われてしまいがちです。その結果、労災保険の申請について会社と揉めてしまうおそれがあります。

どのような怪我であっても、認定要件を満たしていれば労災と認められる可能性があります。
そのため、決して諦めずに労災の申請手続きを行うことが大切です。

しかし、ご自身だけでは会社との交渉や労災の申請手続きが困難な場合もあるでしょう。 そのような場合は、ぜひ一度弁護士へご相談ください。

弁護士であれば、被災労働者に代わり会社との交渉や労災の申請手続きについてアドバイスを行うことができます。

正式な依頼ではなく、まずは相談から受け付けることも可能ですので、お気軽にご相談ください。

弁護士

監修 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格 : 弁護士 (東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2023年1月4日時点)、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、バンコクの12拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

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