労働中の感電災害とは?よくある症状から後遺障害、損害賠償請求まで

労働中の感電災害とは?よくある症状から後遺障害、損害賠償請求まで

厚生労働省の統計によると、感電災害は毎年100件前後発生していて、このうち10件ほどが死亡災害です。

つまり、感電災害における死亡災害は約10%を占める割合で発生していることになるので、ほかの労働災害と比較して、発生件数は少ないものの死亡に至る危険性の高い災害であることがわかります。

そこで今回は、労働災害のなかでも比較的致死率が高い労働中の感電災害について、よくある症状から後遺障害までを詳しく解説していきます。

感電災害が起きたときに受けられる労災保険の給付や、損害賠償請求についてもあわせて、本ページで理解を深めていきましょう。

労働中の感電災害とは?

感電災害とは、労働中に人体が電気に触れることで電流が体内に流れて障害を受けることを指します。

たとえば建設業や製造業の現場において、作業員が誤って電圧の高い電気機器の充電部に接触したり、電圧の異なる電線を掴んで短絡(ショート)したり、漏電している箇所に触れたりして、感電し死傷に至るケースが多くみられます。

このような電気が原因となる労働災害は、感電のほかにも、火傷電気ショックによる墜落といった災害につながることもあります。

感電災害の種類

労働中に電気が原因となって起こる労働災害には、いくつかの種類があります。

軽度の火傷ですむケースもあれば、電気ショックによって墜落し重篤な障害が残ったり死に至ったりするケースもあります。

人身災害
  • 感電
  • 火傷
  • 電気ショックによる転倒や墜落・転落 など
設備災害
  • モータ内部のコイル焼損
  • 漏電火災
  • 短絡(ショート)
  • 波及事故 など

感電災害と関連する「労災による火傷」については、以下ページもご参考になさってください。

感電が人に与える影響

電流値 人体への影響
1mA 最小感知電流といって、ピリピリ感じる。人に危険はない。
5mA 生理的に悪影響を及ばさない最大の許容電流値。
危険性の始まりである。
10〜20mA 不随意電流と言って、離脱の限界である。
持続して筋肉の収縮が起こり、握った電線を離せなくなる。
50mA 痛み、気絶、疲労、人体構造損傷の可能性、心臓の律動異常の発生、呼吸系統への影響が出る。
心室細動電流の発生共いわれ、心肺停止の可能性がある。
100mA〜3A 心室細動の発生、心肺停止が現れ、極めて危険である。
6A以上 心筋は持続的に収縮し続ける。呼吸麻痺による窒息、火傷。

電気が原因となる労働災害は、人体に流れた電流の大きさや通過時間、通電経路によって、人体に与える影響の大きさが変わります。

電流が大きければ短時間でも死に至る可能性がありますし、電流が小さくても脳や心臓を通れば後遺障害が残ることもあり得ます。

労働中に起こり得る感電災害の事例

感電災害事例

実際、どのような場面で感電災害が発生しているのか、いくつか事例をご紹介します。

  • 変電施設で停電の確認作業中に、活線に触れて感電した作業員が亡くなった
  • 荷積み中にクレーンのブームが高圧電線に接触し、コンテナを支えていた作業員が感電して亡くなった
  • 工場の屋上で高圧受電設備の点検中に、作業員が感電して地上に墜落し亡くなった
  • ベルトコンベアを高圧水で洗浄中に、作業員が送水ポンプの駆動モーターの漏電により感電し亡くなった
  • アーク溶接する作業中に溶接棒を接触させたところ、鋼製矢板を保持していた作業員が感電し亡くなった

労働中の感電災害で受け取れる労災保険給付

労働中の感電災害で怪我をして治療を受けたり、休業を余儀なくされたりした場合、労災保険から補償が受けられます。

対象の補償内容ごとに請求書を作成し、労働基準監督署へ提出すると調査が行われ、労災と認定されると次のような保険給付が受けられます。

療養や休業をした場合 療養補償給付
休業補償給付
傷病補償年金
後遺障害が残った場合 障害補償給付
介護補償給付
被災者が死亡した場合 遺族補償給付
葬祭料

感電災害による後遺障害

感電災害によって後遺症が残った場合、後遺障害と認定されることで “障害補償給付”や “後遺障害慰謝料”などが請求できるようになります。

以下、感電災害で認定される可能性のある後遺障害と、その補償内容の具体例をみていきましょう。

感電により両眼を失明した場合

  • 後遺障害等級:第1級の1(両眼が失明したもの)
  • 労災保険給付:障害補償年金(給付基礎日額の313日分)
  • 損害賠償請求:後遺障害慰謝料(相場2800万円)

感電により片手のすべての手指に壊死が生じて切断に至った場合

  • 後遺障害等級:第6級の7(1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの)
  • 労災保険給付:障害補償年金(給付基礎日額の156日分)
  • 損害賠償請求:後遺障害慰謝料(相場1180万円)

感電によって身体に神経痛が残った場合

  • 後遺障害等級:第12級の12(局部にがん固な神経症状を残すもの)
  • 労災保険給付:障害補償一時金(給付基礎日額の156日分)
  • 損害賠償請求:後遺障害慰謝料(相場290万円)

感電によって肘下に火傷の跡が残った場合

  • 後遺障害等級:第14級の3(上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの)
  • 労災保険給付:障害補償一時金(給付基礎日額の56日分)
  • 損害賠償請求:後遺障害慰謝料(相場110万円)

労働中の感電は使用者に対して損害賠償請求ができる

労働中の感電によって負傷した場合、使用者に対して損害賠償請求ができることがあります。

労災保険による補償の対象外である慰謝料や、一部しか補填されない休業損害などは、使用者に対して損害賠償請求することで実損害の補填を求めることができますが、そのためには「感電災害が起きた責任が使用者側にもあること」を法的根拠に基づいて立証しなければなりません。

このとき根拠となり得るのが安全配慮義務違反使用者責任です。

安全配慮義務違反 会社が、従業員の健康や安全に配慮する義務を怠ること。
使用者責任 従業員の不法行為によって損害を与えた場合に、雇用する会社も賠償責任を負うこと。

安全配慮義務違反に該当するケース

感電災害を含めた労働災害は、使用者が安全配慮義務違反を犯している場合が多くあります。
こうした使用者の安全配慮義務違反が立証できれば、損害賠償請求が認められます。

以下、安全配慮義務違反となる感電災害の具体例を一部ご紹介します。

  • 感電の防止対策が不十分だったために、特別高圧で充電された箇所に接触した従業員が感電した
  • 労働者に対する安全教育が行われておらず、電気に関する知識や技能が不十分なまま作業にあたった従業員が感電した
  • 雨の中でアーク溶接作業をしていた作業員が感電した
  • 作業服や溶接用手袋が発汗により濡れて、人体の接触抵抗が著しく低下する作業環境下で従業員が感電した

感電による労働災害の損害賠償請求などは弁護士にご相談ください!

感電災害は発生件数こそ少ないものの、労働災害の中でも重症化しやすく、死亡にもつながりやすい災害といえます。

労災保険給付を受けるためには、請求書を用意して労災認定を受ける必要がありますが、怪我を抱えて手続きを行ったり、補償内容が適切かを判断したりするのは精神的な負担も大きくなります。

また、後遺症が残った場合の後遺障害等級認定や、使用者に対する損害賠償請求は、法的知識が必要になる場面も多くあります。

そのため、感電による労働災害に遭ってしまった場合は、一度弁護士法人ALGへの相談をご検討ください。
感電災害の被害に遭われた方が、適正な補償をしっかりと受けられるように、弁護士が全力でサポートいたします。

弁護士

監修 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格 : 弁護士 (東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2023年1月4日時点)、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、バンコクの12拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

プロフィールを見る

労働災害(労災)ご相談専門ダイヤル

まずは労働災害(労災)専門のスタッフがお話をお伺いさせていただきます。

0120-705-017

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メールご予約受付

初回相談無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。 ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※電話やメール等で弁護士が無料法律相談に対応することは出来ませんのでご承知下さいませ。