債務整理と時効援用はどちらを選ぶべき?条件やメリットデメリットなど
借金には時効があるため、時効援用の手続きを行うことで、借金の返済義務が消滅する可能性もあります。
ただし、時効援用にはデメリットや失敗するリスクもあるため注意しなければなりません。
ケースによっては、時効援用ではなく債務整理によって借金問題を解決する方が適している場合もあるので、それぞれの手続きについて知っておくことが大切です。
本記事では、債務整理と時効援用のどちらを選ぶべきか迷われている方に向けて、時効援用に必要な条件や、時効援用を行うメリット・デメリットを解説していきます。
目次
債務整理と時効援用はどちらを選ぶべき?
債務整理と時効援用のどちらを選ぶべきかは個々の状況によって異なります。
まずは、債務整理と時効援用の違いを確認しましょう。
- 債務整理とは?
債務整理とは、債権者との交渉や裁判所への申立てによって借金を減額・免除してもらう手続きです。
任意整理・個人再生・自己破産といった種類があり、ブラックリストに載るほか、手続きの種類によっては財産の処分が必要になるなどのリスクがあります。 - 時効援用とは?
時効援用とは、消滅時効の成立を主張して借金の返済義務を消滅させる手続きです。
比較的簡単な手続きで借金を帳消しにできる一方、時効が成立しているかどうかの判断が難しく、失敗すると借金が増えるリスクがあります。
以上をふまえると、消滅時効が成立していれば「時効援用」、時効の成立が不確かな場合や債権者からの督促や裁判のリスクがある場合は「債務整理」を検討するのが一般的です。
時効援用に必要な条件
時効援用で借金の返済義務を消滅させるためには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 最後の取引から5年または10年が経過している
- 時効が更新されていない
- 時効援用の主張をする
時効援用が失敗してしまわないように、それぞれの条件について詳しくみていきましょう。
最後の取引から5年または10年が経過している
借金の時効が成立するには、最後の取引から5年または10年が経過している必要があります。どちらの期間が適用されるかは、借入の内容や時期によって異なります。
借金の消滅時効が成立するまでの具体的な時効期間は、次のうち、いずれか早い方が適用されます。
- 債権者が権利を行使することができるときから10年間
- 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間
借金の返済義務は、最後の返済期日または最後の返済日から5年以上が経過していれば消滅時効が成立している可能性があります。
ご自身の借入日・返済期日・最終返済日などを正確に把握して、時効が成立しているかどうか慎重に見極めましょう。
時効が更新されていない
時効援用を行うにあたって、時効期間が経過していることに加えて、時効が更新されていないことも条件に含まれます。
時効の更新とは? 時効の更新とは、進行していた時効期間のカウントがリセットされて、新たにゼロから時効期間のカウントが開始されることです。
債権者が裁判を起こして確定判決が出た場合、時効期間は裁判終了後から10年間に更新されます。
また、債務の承認(借金の一部を返済したり、返済する約束をしたりするなど)によっても時効が更新されて時効期間が振り出しに戻ってしまい、時効援用の手続きを行うことができなくなるので注意しましょう。
時効の更新事由 借金の消滅時効は、次のような行為があるとリセットされます。
- 裁判を起こされて確定判決が出た(裁判上の請求)
- 借金の一部を支払ったり、返済の意思を示す(債務の承認)
- 強制執行が行われた
なお、裁判が確定せずに終了したり、内容証明郵便などで催告を受けたりした場合は、時効の進行が一時的に停止して時効成立が先延ばしになる点にも注意が必要です(時効の完成猶予)。
時効援用の主張をする
借金の時効を成立させるためには、時効援用の主張をする必要があります。
時効期間が経過していても、自動的に消滅時効が成立するわけではありません。
債権者に対して、「時効を援用して借金は支払いません」という意思表示をして、債権者が意思表示を受け取ることで時効が成立し、ようやく借金の返済義務が消滅します。
債務整理後に返済できなくなった場合でも時効援用はできる?
債務整理後に返済できなくなってそのまま放置した場合でも、5年以上が経過していれば時効援用できる可能性はあります。
任意整理の場合 任意整理では、和解書に「2回以上返済を怠ると期限の利益を喪失する」といった取り決めが記載されていることがほとんどで、2ヶ月以上滞納すると債権者から一括請求を受けます。 一括請求後、5年経過していれば時効援用できる可能性があります。
個人再生の場合 個人再生では、再生計画に期限の利益喪失に関する規定が盛り込まれていないことがほとんどなので、再生計画に基づく各支払期日から5年経過していれば時効援用できる可能性があります。
いずれも時効が成立するタイミングの見極めが難しく、「放置して5年経過したから」とすぐに時効援用の手続きを行うのはリスクが大きいため、弁護士に相談することをおすすめします。
時効援用を行うメリットとデメリット
メリット
時効援用が認められると、借金の返済義務がなくなるなど次のようなメリットがあります。
- 借金の返済義務がなくなる
消滅時効が成立して時効援用の手続きを行うと、その借金の返済義務がなくなります。
借金がなくなれば、債務整理する必要もありません。 - 督促が止まる
時効援用の手続きによって借金の返済義務がなくなれば債権者からの督促も止まるので、心の平穏を取り戻せます。 - 手続きが簡単で費用の負担も少ない
時効援用の手続きは、債務整理と比べて手続きが比較的簡単で、裁判所を介さずに済むので費用も少なく済みます。 - ブラックリストの登録が削除される
借金の返済を滞納するとブラックリストに登録されますが、この情報が時効援用の手続きによって削除される場合があります。
※信用情報機関によっては削除までに時間がかかることもあります。 - 財産を失わずに済む
時効援用の手続きを行っても、自宅や車などの財産が回収・処分されることはありません。 - 保証人に迷惑をかけずに済む
保証人自身が時効援用の意思表示をすると、保証人の返済義務も消滅します。
デメリット
時効援用には注意すべきデメリットが多くあります。
- 時効成立の判断が難しく、失敗する可能性がある
時効成立の判断が難しい理由として、起算日を間違えていたり、時効の進行が停止・リセットされる可能性があることが挙げられます。
「最後の取引から5年経過しているから」と安易に時効援用を行うと失敗する可能性があるので注意しましょう。 - 時効援用に失敗すると、借金が増える場合がある
時効援用に失敗すると、滞納していた間の利息や遅延損害金が加算されて、結果的に借金が増えることがあります。 - ブラックリストの登録期間が伸びる場合がある
時効援用が認められてもすぐにブラックリストの登録が削除されるとは限らず、信用情報機関によっては手続き後5年ほど事故情報が残る場合があります。 - 時効援用した金融機関は今後利用できなくなる
時効援用によって信用情報機関のブラックリストからは削除されても、金融機関の社内では履歴が残ることがあり、今後の利用が制限される可能性があります。
このように、借金の時効援用は判断が難しく、失敗すると借金が増えるリスクがあることから、時効援用で借金をなくすか、債務整理で借金を減額・免除してもらうかは、慎重に判断する必要があります。
時効援用の手続きをする流れ
時効期間が経過し、消滅時効が成立していることが確認できたら、次のような流れで時効援用の手続きを行います。
- 時効援用通知書を作成する
- 債権者に時効援用通知書を送付する
- 時効の成立
①時効援用通知書を作成する
時効援用の意思表示をするため、時効援用通知書を作成します。
時効援用通知書に決まった書式はありませんが、最低限記載すべき項目は次のとおりです。
- 日付
時効を援用する日=時効援用通知書を送付する日付を記載します。
必ず、消滅時効経過後の日付で作成しましょう。 - 債権者(相手方)の情報
債権者の住所や氏名を記載します。
契約書や請求書に記載されている内容を参考にしましょう。 - 差出人(自分)の情報
ご自身の住所・氏名・生年月日を記載します。
旧姓や旧住所がある場合は、一緒に記載しておきましょう。
電話番号は、相手に知られていない場合、記載しない方が安全です。 - 債権を特定する情報
契約番号・会員番号・契約日・借入額などを記載します。 - 消滅時効を主張すること
時効の起算日と、その起算日から時効期間が経過していることと「消滅時効を主張します」と明確に記載します。 - 時効を援用すること
消滅時効を主張するだけでなく、「時効を援用します」「今後は一切の請求を行わないようお願いいたします」と明確に記載します。 - 登録されている事故情報の削除依頼
必須項目ではありませんが、「本書面受領後、速やかに信用情報機関に対して登録された事故情報の削除・訂正をお願いします」などと記載しておくとよいでしょう。 - 署名または押印
法律上は必須ではありませんが、本人の意思表示であることの証拠力が高まるため、認印の押印がある方が安全です。
②債権者に時効援用通知書を送付する
作成した時効援用通知書は、配達証明付きの内容証明郵便で債権者に送付します。
内容証明郵便で送付することで、「いつ・だれが・どのような内容を送付したか」が郵便局に記録され、時効援用通知書を送付したことが公的に証明されるため安心です。
なお、内容証明郵便は郵便局の窓口からの発送のほかに、オンラインで手続きができる「e内容証明」も利用可能なので、ご自身に合った方法を利用するとよいでしょう。
③時効の成立
配達証明付きの内容証明郵便を送付すると、郵便局から差出人に郵便物等配達証明書というはがきが届くので、これをもって債権者に時効援用通知書が到達した事実と日付が確認できます。
その後、2週間~1ヶ月ほど待って、債権者から時効援用について異議の主張がなされなければ時効が成立し、手続きが終了します。
お問合せ
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
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※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
時効援用は自分でできる?弁護士に依頼するメリット
時効援用の手続きは債務者ご自身で行うことも可能です。
ですが、時効が成立しているかどうかの判断が難しく、内容証明郵便で時効援用通知書を作成するのは容易なことではないため、借金問題や債務整理に詳しい弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
時効援用を弁護士に相談・依頼するメリットは、次のとおりです。
- 時効が成立しているか確認してもらうことができる
- スムーズに手続きを進めることができる
- 時効援用が難しい場合は対処法を提案してもらえる
時効が成立しているか確認してもらうことができる
借金問題や法律の知識を有する弁護士であれば、借金の消滅時効が成立しているかどうかを判断することができます。
借金の時効の判断は難しく、時効期間が足りていなかったり、時効の進行が停止・リセットされていたりして、「最後の取引から5年経過した」と思っていても、>実際は時効がまだ成立していなかったというケースは少なくありません。
時効が成立していなかった場合、返済義務が残るので債権者から取り立てや督促が再開されるばかりか、場合によっては滞納している間の利息や遅延損害金を請求されて借金がかえって増えてしまうおそれがあります。
失敗しないためにも、時効援用の手続きを行う前に、時効が成立しているかを弁護士に確認してもらうことが大切です。
スムーズに手続きを進めることができる
時効援用の手続きや、債権者の対応を弁護士に任せることができるので、スムーズに手続きを進めることができます。
ご自身で時効援用の手続きを行うとしても、時効成立についてどう判断すればよいか、時効援用通知書を内容証明郵便で作成するにはどうすればよいか、手続きに戸惑うことも多いでしょう。 とくに注意が必要なのは、債権者とのやりとりです。
債権者によっては、時効援用通知書を受け取った後でも、不当な請求をしてくるケースがあり、誤った対応をすると、本来は時効援用が可能であっても、できなくなることがあります。
こうした事態を避けるためにも、より確実に時効援用を行うのであれば弁護士の力を借りる方が安全です。
時効援用が難しい場合は対処法を提案してもらえる
「借金の消滅時効が成立していなかった」、「自分で手続きをして失敗してしまった」など、時効援用が難しい場合は、弁護士に相談・依頼して、次のように状況に応じて適切な対処法を提案・サポートしてもらうことができます。
- 債権者と交渉する
時効援用が難しいと借金の返済義務が残るので、分割払いが可能かなど、支払方法について債権者と交渉してもらえます。 - 債務整理を検討する
借金の返済が難しい場合、任意整理・個人再生・自己破産など、状況に応じて適した債務整理の方法を提案し、手続きをサポートしてもらえます。
借金の時効援用にかかる費用
借金の時効援用にかかる費用は、債務者ご自身で手続きを行う場合は1500~3000円程度、弁護士に依頼した場合は5万~15万円程度かかることが多いです。
自分で時効援用を行う場合 債務者ご自身で時効援用を行う場合の費用は、内容証明郵便の発送料金や信用情報機関への開示手数料など、実費のみです。
- 内容証明郵便の発送料金:1500円前後
- 信用情報機関への開示手数料:500~1800円
※情報開示が必要な信用情報機関により金額が異なります
弁護士に時効援用を依頼する場合 弁護士に時効援用を依頼すると、借金の調査や時効援用通知書の作成・送付、債権者とのやりとりを任せることができて、これらの手続きにかかる弁護士費用は債権者1社あたり5万~15万円程度が必要になります。
借金の時効援用をお考えの方は弁護士にご相談ください
借金の「時効援用」は、正しく行えば返済義務が消滅します。
その一方で、時効成立の判断の難しさや、債権者とのやりとりによって時効が停止・リセットされる可能性があることから、リスクの高い方法でもあります。
借金の返済を滞納している状況で、時効援用すべきか、それとも債務整理すべきか悩んだら、ご自身で判断する前に、まずは弁護士法人ALGまでご相談ください。
安心して借金の問題を解決して生活を再建するために、状況に応じた適切な解決策を一緒に考え、債権者とのやりとりや各種手続きのサポートを任せていただけます。
お問合せ
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※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ 名を擁し()、東京、を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。