譲渡制限株式における株主総会の決議についてわかりやすく解説

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

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譲渡制限株式とは、株式を第三者に譲渡する際に、会社の承認が必要となる株式をいいます(会社法第2条第17号)。会社は、譲渡制限株式により、会社にとって望ましくない人物が株主となり、経営や支配権に影響を及ぼすことを防止できます。

もっとも、株式譲渡を承認するか否かは、会社の意思決定機関である株主総会、または取締役会の決議を経て決定されるところ、当該手続きには会社法に厳格なルールがあり、適切な対応を怠ると、予期せぬトラブルに繋がりかねません。

本稿では、譲渡制限株式に関する株主総会決議の重要性や、実際の承認手続きの流れについて分かりやすく解説していきます。

譲渡制限株式における株主総会の決議とは?

株主総会の決議とは、株主が集まり、企業経営に関わる意思決定を行う場です。株主総会の決議は、その議案の重要性に応じて3つの種類に分類されます。最も一般的な決議である「普通決議」は出席株主の議決権の過半数の賛成で可決されます(会社法第309条第1項)。

定款変更など、より重要な議案で用いられる「特別決議」は、出席株主の議決権数の3分の2以上の賛成が必要です(会社法第309条第2項)。

さらに、株式の全てを譲渡制限とする定款変更など、極めて重大な事項には、会社法でさらに厳しい要件が定められた「特殊決議」が必要となります(会社法第309条第3項)。

特殊決議では、例えば議決権を行使できる株主の半数以上かつ当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が原則として必要とされているものなどがあります。

取締役会との違い

株主総会と取締役会は、構成員と役割が根本的に異なります。株主総会は会社の所有者である「株主」で構成され、会社の基本方針を決める最高意思決定機関です。一方、取締役会は株主から経営を委任された「取締役」で構成され、具体的な業務執行を決定します。

また、株主総会には、事案によって3種類の決議がありますが、取締役会は法令に定められた決議事項について、過半数出席かつ出席取締役の過半数賛成で決議されます。

譲渡制限株式の譲渡承認は、定款に特段の定めがない限り、取締役会設置会社では、原則として取締役会が行い(会社法第139条第1項本文)、取締役会の設置がない会社では、株主総会で譲渡承認について決議することになります(会社法第136条、139条第1項本文)。

譲渡制限株式において株主総会の決議が必要となる主なケース

株主総会の決議が必要となる場面は、会社の支配権や株主構成に大きな影響を及ぼす事案などが該当します。譲渡制限株式においては以下のようなケースが挙げられます。

  • 譲渡制限株式を設定・変更・廃止する場合
  • 譲渡承認請求があった場合
  • 譲渡承認せず会社または指定買取人が買い取る場合
  • 相続人に対する売渡請求をする場合

譲渡制限株式を設定・変更・廃止する場合

譲渡制限株式に関する規定を会社の定款に設定、変更、または廃止する際には、必ず定款の変更が必要となります。この定款変更は、会社の資本戦略に関わる重要事項であるため、株主総会における特別決議もしくは特殊決議を経なければなりません。

特別決議の要件は、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、かつ、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。対して、1種類の株式のみを発行する会社が譲渡制限を設ける場合には、特別決議ではなく、特殊決議が必要となります。

株主総会の特殊決議は、議決権を行使できる株主の頭数の半数以上および議決権の3分の2以上の賛成が必要とされるため、注意しましょう。

これらの決議を経て初めて、譲渡制限の効力が生じたり、既存の制限が変更・撤廃されたりします。手続きに不備があれば、法的効力が及ばない可能性がありますので、手続きに迷う場合は専門家へ相談することをおすすめします。

譲渡制限株式の発行については、以下のページで解説しています。

さらに詳しく譲渡制限株式の発行|手続きや定款の規定などわかりやすく解説

譲渡承認請求があった場合

譲渡制限株式を第三者に譲渡するには、定款の定めに従い、会社の承認が必須となります。会社が承認機関を株主総会と定款で定めた場合、株主から譲渡承認請求があると、会社は臨時株主総会を招集し、承認の可否を決議します。

この決議は、原則として普通決議で行われ、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成が必要です。

ここで特に注意すべきは、議決権の行使です。譲渡承認の対象となる株式の譲渡人および譲受人は、決議の公正を害するおそれがあるため、議決権を行使できません(会社法第140条第3項)。

もし、譲渡承認請求者が議決権を行使し、著しく不当な決議がなされた場合には、株主総会決議の取消しが可能となり、トラブルになりかねません(会社法第831条第1項第3号)。

譲渡承認せず会社または指定買取人が買い取る場合

会社が譲渡承認請求を不承認とした場合、譲渡を希望していた株主は、会社または指定買取人に対して買取請求をすることができます(会社法第140条)。

譲渡承認請求に関する決議については、承認機関が株主総会であれば、譲渡不承認の決定は普通決議(出席株主の議決権の過半数の賛成)で行われますが、取締役会設置会社では承認機関は取締役会であるため、株主総会での決議は不要となります。

また、不承認時の買取請求によって、会社が買い取る、もしくは会社が指定買取人を決定する場合には、株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が、取締役会設置会社の場合には取締役会の決議が、必要となります。

買取請求の決定を株主総会で行う場合は、普通決議ではなく特別決議を要するため注意しましょう。

譲渡制限株式の買取請求についての詳細は、以下のページからご確認ください。

さらに詳しく譲渡制限株式の買取請求とは?企業の対応や流れ・注意点など

相続人に対する売渡請求をする場合

株主が死亡し、その相続人等が譲渡制限株式を承継した際、会社としては株主構成の安定に不安が生じるかもしれません。

相続等による株式の承継に会社の承認は不要ですが、会社は定款の定めに従い、その相続人等に対し株式の売渡しを請求できる場合があります(会社法第174条)。

この売渡請求を行うには、相続等があったことを知った日から1年以内と期間が限定されているため、注意しましょう(会社法第176条第1項但書)。

売渡請求の手続きとしては、売渡請求をする株式の数、および売渡しを請求する株主(相続人等)を特定し、株主総会の特別決議において決定する必要があります(会社法第175条第1項)。

特別決議の要件は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

なお、この決議において売渡請求の対象となる相続人は、原則として議決権を行使することはできません(会社法第175条第2項)。

相続人に対する売渡請求の詳細については、以下のページで解説しています。

さらに詳しく相続人に対する株式の売渡請求の流れや注意点・事前対策について

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譲渡制限株式を株主総会の決議で譲渡承認する流れ

譲渡制限株式の譲渡を株主総会で承認する場合、その手続きは会社法に定められているため、遵守することが大切です。株主総会で譲渡を承認するまでの一般的な手続きの流れは以下の通りです。

  1. 譲渡承認請求
  2. 株主総会の承認決議
  3. 譲渡承認通知
  4. 株式譲渡契約の締結
  5. 株主名簿の書き換え・証明書の交付

①譲渡承認請求

譲渡制限株式を譲渡するには、会社の承認が必要となります。そのため、まずは会社に対し、譲渡承認請求を行うことになります。

会社に対する譲渡承認請求は、譲渡制限株式を売却したい株主(譲渡人)、またはその株式を買い受けたい第三者(譲受人)のいずれからも行うことができます(会社法第136条、137条)。

請求するには、譲渡する株式の種類、数、そして譲受人の氏名や名称などを明確にし、会社へ書面で通知します(会社法第138条)。

②株主総会の承認決議

譲渡承認請求を受けた会社が、定款で承認機関を株主総会と定めている場合、臨時の株主総会を招集して承認の可否を決定しなければなりません。

株主総会を招集する際は、開催日の原則2週間前までに株主に対し、招集通知を発する必要があります(非公開会社は1週間前までで可能)(会社法第299条第1項)。通知には、譲渡承認請求があった事実や議案の内容を記載しておきましょう。

譲渡承認に関する決議は、通常、普通決議で行われます。具体的には、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって「承認する」か「承認しない」かを決定します。

③譲渡承認通知

株主総会で譲渡の可否について決議がなされた後、会社は速やかにその結果を書面で請求者(譲渡人または譲受人)に通知する必要があります。この譲渡承認通知は、会社が譲渡制限株式の譲渡を認める(または認めない)という意思表示を正式に行うものです。

この通知には、会社法で期限が定められており、会社は株主から譲渡承認請求があった日から2週間以内に、通知を行わなければならないとされています。

もし、会社が、譲渡承認請求から2週間以内に通知しなかった場合には、会社は譲渡を承認したものとみなされます(みなし承認)(会社法第139条第2項、145条第1号)。

④株式譲渡契約の締結

会社から正式に譲渡承認決定が通知されれば、譲渡人(元の株主)と譲受人(新しい株主)の間で、具体的な株式譲渡契約を締結することができます。この契約は、会社による承認手続きとは別個の、当事者間の売買契約です。

契約書には、株式譲渡の合意、譲渡する株式の数、譲渡価格、代金の支払方法、そして引渡し時期などの重要事項を記載します。また、会社が株券発行会社である場合は、契約に基づき、譲渡人は譲受人に対して株券を交付する必要があります。

株券不発行会社が多いため、実務上は契約書の締結と名義書換請求が中心となりますが、発行会社の場合は株券の交付も譲渡の要件となりますので注意しましょう。

⑤株主名簿の書き換え・証明書の交付

株式譲渡契約の締結後、譲受人が会社に対して株主としての権利を主張できるようにするためには、株主名簿の書き換え(名義書換)が必要です。

株主名簿の名義書換は、会社からの譲渡承認によって自動的に行われるわけではありません。名義書換手続きは、原則として譲渡人(元の株主)と譲受人(新しい株主)が共同で、会社に対して請求を行います(会社法第133条)。

請求を受けた会社は、その内容を確認し、株主名簿から譲渡人の氏名等を抹消し、譲受人の氏名、住所、株式数などを記録します。書き換えが完了した後、会社は新しい株主に対し、株主名簿記載事項証明書を交付します。

この手続きをもって、譲受人は会社に対し法的な株主としての地位を獲得することができます。

譲渡制限株式の手続きに関しては弁護士法人ALGにご相談ください

譲渡制限株式に関する手続きは、会社の根幹に関わる重要な事項であり、会社法や定款の規定に基づき厳格に行う必要があります。

譲渡制限株式の設定や変更、株主からの譲渡承認請求と不承認時の買取り、相続人からの売渡請求などは、複雑な法的手続きを要する代表例といえます。

これらの手続きに不備があれば、後々の株主間のトラブルや訴訟に発展するリスクがあるため、慎重に執り行わなければなりません。

弁護士法人ALGでは、企業法務に専門性をもつ弁護士が、譲渡制限株式の設定から譲渡承認、不承認時の対応など、貴社の状況に合わせた最適な法的サポートを提案いたします。

譲渡制限株式を活用し、安定した企業経営に役立てるためにも、手続きに不安があれば是非私どもへご相談ください。

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弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

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