種類株式とは?譲渡制限株式など全9種類の一覧や発行手続きなど

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

担当弁護士の写真

株式による資金調達と会社の支配権の形は、会社によって様々です。

そのような多様なニーズに対応するため、会社法においては、株式の種類も1つではなく、特別な定めを設けた株式を発行することで、株主の権利に幅をもたせることを可能としています。

株式の種類によって権利内容を変えられることは非常に有益である一方、正しく理解できていなければうまく活かすことができず、トラブルになるおそれもあります。

本稿では、種類株式の目的や、主な種類株式のそれぞれの特徴について解説していきます。会社の株式活用についてご興味があれば、ぜひご参考ください。

種類株式とは?

会社法においては、会社が発行できる株式を、1つの種類に限定しておらず、定款に定めることによって、権利内容の異なる複数の種類の株式を発行することが認められています。

このような2以上の種類の異なる株式を種類株式といい、異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社を種類株式発行会社といいます。

種類株式には、譲渡制限株式や議決権制限株式、配当優先株式など様々なものがあります。

種類株式の目的

種類株式を発行する目的は、種類株式の種類によって様々です。

様々な株主のニーズにフィットする、バラエティに富む種類株式を用意する方法によって、自社株式の魅力を向上できれば、より多くの資金を集めることが期待できます。

例えば、経営に強い関心はないものの、剰余金の配当は多く欲しいという投資家には、無議決権・配当優先株式を発行するのもよいでしょう。

株価が低下することに強い不安を抱いている投資家であれば、取得請求権付株式を発行することで、株式を売却したくても売却できないというリスクを軽減でき、投資のハードルを下げることが期待できます。

また、種類株式の発行目的は資金集めだけではありません。株式には議決権があるため、経営に対する影響力を維持するには、株式の分散を防ぐことが課題となります。

株式の分散を抑える目的を実現するためには、会社からの承認がなければ譲渡ができない譲渡制限株式を活用することが有効な手段の一つです。

このように、会社の事情に応じた性質の種類株式を発行することで、以上のような様々な目的に活用することができます。

普通株式と種類株式の違い

定款に権利内容を定める2以上の種類株式を発行する場合には、標準となる株式が存在し、実務上、この株式のことを普通株式といいます。

普通株式と種類株式は、その株式を持つ株主の権利内容に違いがあります。種類株式では、定款に定めた多様な権利内容があります。

対して、普通株式は、種類株式にあるような、優先的な権利などはありません。

種類株式の一覧

会社法に定められた種類株式は9種類あります(同法108条1項)。それぞれ単体で活用することも、複数の権利を組み合わせても活用することができます。

具体的な株式の種類は以下の通りです。

  1. 譲渡制限株式
  2. 剰余金の配当に関して異なる定めの付された株式
  3. 残余財産の分配について異なる定めの付された株式
  4. 議決権制限株式
  5. 取得請求権付株式
  6. 取得条項付株式
  7. 全部取得条項付株式
  8. 拒否権付株式
  9. 役員選任解任権付株式

以降で、各種類株式の内容について解説していきます。

なお、以上に列挙された事項以外の事項について、種類を定めることはできないとされています。

譲渡制限株式

通常、株式は自由に売買できるとされています(会社法127条)。

しかし、譲渡制限株式の場合は、譲渡する場合には会社の承認が必要となります。

株式の移転に会社の目を通すことで、株式の分散や、経営上好ましくない人物に株式が渡ることを防ぐことができるため、主に、中小企業で多く活用される種類株式です。

なお、株式の売買が不自由である代わりに、株主には、譲渡不承認時に会社等に対して株式買取請求を行う権利が認められています。

譲渡制限株式について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

さらに詳しく譲渡制限株式とは?目的やメリット・デメリット、譲渡の流れなど

配当優先株式

配当優先株式とは、普通株式に比べて、その会社の剰余金の配当の分配を優先して受けられる権利を定めた種類株式です。

高い配当を受けられる分、議決権を行使できないなど、その他の種類株式と組み合わせて使われる例が多いです。

この株式を発行するためには、定款に配当財産の種類や、配当優先株式をもつ株主に交付する配当財産の価額決定法や条件を定めます。

配当優先株式の目的は、株主の投資リスクを軽減し、資金調達ルートを確保することにあります。

株主は、投資会社の経営状況によって投資リスクを負いますが、配当優先株式であれば、もし経営が悪化しても一定程度の配当が確保できる可能性があるため、株主にとっては比較的リスクの低い投資といえるでしょう。

残余財産優先株式

会社が解散する際に、債権債務を整理したあとに残る資産を残余財産といいます。

残余財産優先株式は、会社解散時の残余財産を普通株式の株主より優先して受け取る権利をもつ株式をいいます。

普通株式のみの会社では、残余財産は株主ごとに等分に配分されます。しかし、残余財産優先株式のある会社の場合には、優先株式をもつ株主が優先的な配分を受けられるようになります。

残余財産優先株式の目的は、主として株主の投資リスクを抑えることにあります。

残余財産優先株式の株主であれば、もし、会社が解散したとしても残余財産がある場合には優先して確保できるので、投資の回収がゼロになるリスクを軽減できます。

株主にとって投資リスクを抑えた種類株式を発行できれば、会社の資金調達をスムーズに行うことが期待できます。

議決権制限株式

議決権制限株式とは、株主総会における議決権行使に一定の制限を設ける、もしくは議決権を一切行使できない種類株式です。特に議決権をまったく有しない株式を無議決権株式といいます。

議決権制限株式を発行する場合は、議決権を行使できる事項や権利行使の条件などを定款に定めます。

議決権制限株式を発行する主な目的は、経営への関与に興味をもたない株主からの資金調達を実現することにあります。

ただし、公開会社の場合は、議決権制限株式の発行数に上限があるので注意しなければなりません。

具体的には、議決権制限株式の数が、発行済み株式総数の2分の1を超える場合には、2分の1以下にする措置をとらなければならないとされています。

取得請求権付株式

取得請求権付株式とは、株主が会社に対して株式の取得を請求できる権利を付与した株式です。

取得請求権付株式を発行する場合は、請求できる期間や算定方法、株式と引き換えに交付する財産の種類などを定款に定めます。

この株式を会社が買い取る場合、株式の対価として、金銭で支払う、もしくは普通株式の交付を行う例が多いです。

取得請求権付株式の目的は、投資家である株主の資金回収手段の確保です。

株主は、会社に対して取得請求をすることで、自身の支出した資金を回収することができるため、投資のハードルをある程度軽減する効果が期待でき、投資家にとって魅力的な投資先になり得ます。

取得条項付株式

取得条項付株式とは、特定の条件が発生したときに、会社がその株式を持つ株主から株式を取得できる特別な株式のことです。

発行時には、どのような条件で取得するのか、対価として何を渡すのか(現金や他の株式など)を会社の定款に定めておきます。

この仕組みにより、たとえば未上場企業が資金調達のために発行した株式を、上場時に普通株式へスムーズに切り替えるといった活用が可能になります。

全部取得条項付株式

全部取得条項付株式は、株主総会の特別決議によって、会社がその株式全てを取得できる種類株式です。

この株式を発行する場合には、取得対価の価額決定方法や株主総会の決議をすることができるか否かについての条件などを定款に定めます。

全部取得条項付株式は、当初、債務超過の会社が既存株主の持株をゼロにするために導入されました。

しかし、現在の実務上は、M&Aにおいて、公開買い付け後の少数株主のキャッシュアウトとして用いられることが多いと考えられます。

拒否権付株式

拒否権付株式とは、株主総会または取締役会のほかに、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とする旨の定めのある株式をいいます。

この株式を発行した場合、株主総会または取締役会の決議に加え、この種類株式を有する種類株主の株主総会決議が必要となり、この種類株式の株主に該当事項について拒否権を与えたのと同じ結果になるため、黄金株といわれることもあります。

どのような決議事項について拒否権を行使できるのかをあらかじめ定めておくこともできます。

拒否権付株式は、ベンチャー企業に対する投資等で支配的な議決権を保有できない株主への一定の権利付与として用いられることが多いとされています。

拒否権付株式は中小企業において活用されることが多いですが、会社法上、上場会社が拒否権付株式を発行することは禁止されていません。

ただし、拒否権付株式は一般株主の権利を害する可能性が高いため、証券取引所の上場規則で制限がかけられています。

役員選任解任権付株式

役員選任解任権付株式とは、特定の株主だけが会社の役員(取締役や監査役)を選んだり解任したりできる特別な株式です。

通常は株主全体の総会で役員を決めますが、この株式を持つ株主だけで開かれる「種類株主総会」で役員を決定します。

この仕組みは、出資比率に関係なく、特定の株主が経営に関与し続けたい場合などに使われます。

たとえば、創業者がこの株式を持っていれば、後継者が会社の方針に反したときに役員を交代させることができます。

ただし、公開会社では発行できない点に注意が必要です。

お問い合わせ

非上場株、譲渡制限株、株式相続のお悩みはお気軽にご相談ください。

0120-123-456
  • 24時間予約受付
  • 年中無休
  • 通話無料
  • ※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
  • ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

種類株式の発行について

種類株式を新たに発行する場合、会社は発行する種類株式の種類と発行可能とする種類株式総数を定款に定め、登記手続きを行わなければなりません。

定款の変更は、株主総会の特別決議によって行います。

ただし、株式の種類の追加等によって、ある種類株式の株主に損害を及ぼす可能性があるのであれば、その種類株主総会の特別決議も必要となります。

そのほか、新たに種類株式を発行するのではなく、すでに発行している株式の一部について内容を変更し、種類株式とする方法もあります。

この場合には、株主総会の特別決議のほか、変更に応じる個々の株主との合意、株主全員の同意、種類株主総会の特別決議などが必要となる場合もあります。

種類株式のメリット・デメリット

種類株式は、会社の資金調達や経営権の安定を目的として活用される例が多いと考えられます。

しかし、普通株式だけを発行する企業もあります。この場合には、株主の権利平等が保たれ、非常に分かりやすいともいえるでしょう。

では、種類株式を活用するメリットとデメリットにはどのような点が挙げられるでしょうか。

メリット

会社側の最も大きなメリットは、資金調達がしやすくなる点でしょう。

株主のニーズに応じた種類株式を発行することで、より多くの資金を集めることが期待できます。

また、経営介入を防ぐために、議決権制限株式などの種類株式を活用すれば、資金を調達しながら経営の安定性を保つことも期待できます。

株主にとってのメリットは、自身の投資目的を株式の権利内容に反映させられる点にあるでしょう。普通株式では、個々の株主のニーズに沿うことはできませんので、大きな魅力といえます。

デメリット

会社側のデメリットの一つとして、コスト問題が挙げられます。臨時に開催される種類株主総会のコストや、さらに種類株式ごとの管理なども大きな負担となり得ます。

株主側のデメリットとしては、種類株式の複雑な権利内容を正しく把握しなければならない点にあります。

すべての権利に秀でた株式というものはありませんので、自身が所有する株式にどのような注意が必要なのかよく理解する必要があります。

種類株式の売買や取り扱いに関しては弁護士法人ALGにご相談ください

種類株式の活用は、会社の経営権の安定や、資金調達の促進など大きなメリットがあります。

会社法に定められた種類株式は9種類ですが、それぞれの権利内容を組み合わせることも可能ですので、より効果的な種類株式を発行することもできるでしょう。

しかし、種類株式は非常に複雑です。権利内容の設計や発行、運用に至るまで、専門的な知識がなければトラブルをまねくおそれもあります。

また、会社の内情に照らして適切な種類株式を選ぶことも容易とはいえません。

種類株式の発行や取扱いについては、弁護士へ依頼することをおすすめします。

弁護士法人ALGでは企業法務に特化した部署を設置しており、高い専門性をもつ弁護士が多数在籍しています。

まずは、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

非上場株、譲渡制限株、株式相続のお悩みはお気軽にご相談ください。

0120-123-456
  • 24時間予約受付
  • 年中無休
  • 通話無料
  • ※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
  • ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
担当弁護士の写真
監修 :
弁護士法人 ALG&Associates執行役員弁護士 家永 勲
保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。 東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。