所有する種類株式によって異なりますが、原則株主は経営における議題に対して、議決権を行使することができます。
しかし株主は、議題に対して自身の意見が少数派であった場合、多数決によって、意に反する経営方針が採用される可能性があります。
このような場合における少数株主の選択肢は、会社の方針を受け入れるか、または、株主を辞めて経営から離れるかの2つに限られます。
後者のケースでは、株主は一定の要件を満たすことで、会社へ株式の買取を請求し買い取らせ、株主を辞めることができます。本稿では、少数株主の買取請求の要件と注意点について解説していきます。
少数株主の買取請求とは?
少数株主による買取請求の主なケースと要件
少数株主が買取請求権を行使する主なケースは、以下の通りです。それぞれの要件についても確認しておきましょう。
- 反対株主による買取請求
- 単元未満株式の買取請求
- 譲渡制限株式の買取請求
①反対株主による買取請求
会社が経営に関する重要な決定を行う際、その方針に反対する少数株主には、株式買取請求権という権利が認められています。これは、少数派の株主が、自分の意見が通らない場合でも、不利益を被らないようにするための制度です。
この権利が認められるのは、以下のような会社の重要な議題に反対した場合です。
これらの議題がある場合、会社は原則として、組織再編などの効力が発生する20日前までに、株主へ買取請求権があることを通知または公告する義務があります。株主総会の案内にその内容を含めることも可能です。
反対株主が、実際に買取請求を行う場合は、株主総会の前に、会社へ反対通知を送る必要があります。そして、反対株主は、株主総会で反対票を投じることで、請求権を行使できます。
ただし、議決権を持たない株主の場合は、反対通知だけで請求権を行使でき、総会での投票は不要です。
反対株主の買取請求についての詳細は、以下のページをご確認下さい。
②単元未満株式の買取請求
通常株式は、定款で定めた「1単元(一般的に100株)」を単位として取引され、この単位ごとに議決権を有することになります。
1単元に満たない「単元未満株」は、配当金はあっても議決権をもたないため、市場での売却が困難になりやすく、証券会社によっては取扱拒否や高額な手数料が生じる場合もあります。
このような単元未満株主の投資資本の回収機会を確保するため、会社法192条には、会社に株式の買い取りを求める単元未満株式の買取請求権が定められています。
買取請求権を行使する主な要件は、以下のとおりです。
- 単元未満株式を保有する正当な株主(株主名簿に記載・記録があること)であること
- 会社に対し、対象の株式数(種類株式であれば種類と数)を明示して請求すること
単元未満株の買取請求に関する詳細は、以下のページよりご確認ください。
③譲渡制限株式の買取請求
譲渡制限株式の買取請求とは、会社に譲渡を不承認とされた譲渡制限株主が、会社または会社が指定した指定買取人に対して、自身の保有株式を買い取るよう請求できる権利です。
法律上、譲渡制限株式は、会社の承認がなければ売却することができません(会社法136条)。そのため、会社が譲渡制限株式の売却を不承認とした場合、株主には投下資本を回収できなくなるリスクが生じます。
そのため、会社法では、譲渡不承認となった株主を保護するために、株式買取請求権を定めています。譲渡制限株式における買取請求権は、株主が会社へ譲渡承認請求を行い、会社が不承認を決定した場合に、権利を行使できるようになります。
なお、会社が不承認を予定していたとしても、法定の通知期限を徒過してしまった場合には、会社に「みなし承認」が成立するため、買取請求権は発生しません(会社法145条)。
期限管理を含め専門性が高い手続きであるため、トラブルを防ぐためにも弁護士へ相談しながら進めることをおすすめします。
譲渡制限株式の買取請求に関する詳細は、以下のページをご覧ください。
少数株主が株式買取請求権を行使できないケース
株主からの買取請求に対し、会社は正当な理由なく、請求を拒否することはできません。
しかし、株主側に手続き不備や期限徒過などがあった場合には、請求を拒否、もしくは無効と主張することができます。具体的に、株主の買取請求が無効となる主なケースは、以下のとおりです。
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権利行使期限の徒過
承継型組織再編または株式交付の効力発生日の20日前から前日までの間(反対株主の場合)、新設型組織再編の通知・公告の日から20日以内(反対株主の場合)、あるいは譲渡不承認から20日以内(譲渡制限株式の場合)などの、法定期間後に行われた買取請求 - 手続き要件の欠如
組織再編時の事前反対通知や総会での反対の投票の未実施、株主名簿への不記載など、前提条件を満たしていない請求 - 形式的な不備
対象となる株式の種類や数量の明示不足など、請求自体の有効性を欠くケース
買取請求の適法性の見極めは容易ではありません。その後の対応に不備があれば、会社の不利益にも繋がるおそれがあります。株式買取請求があった場合は、早期に弁護士へご相談ください。
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少数株主の買取請求における「公正な価格」の決定方法
| 時価 | 市場価格を基準とする評価方法 |
|---|---|
| DCF法 | 将来的なキャッシュフローを予測し、ある一定の割引率で現在価値に割り引いて企業価値を算出する方法 |
| 純資産価額 | 企業の資産から負債を控除した純資産額を基準とする評価方法 |
| 類似会社比準 | 類似する上場企業の株価や企業価値と比較して評価する方法 |
| 配当還元 | 将来期待される配当額を基準として評価する方法 |
| 収益法 | 企業の期待される将来的な収益力を基に評価する方法 |
買取請求の手続きは会社法に定められていますが、買取価格の算定方法について法律の定めはありません。
つまり、会社と株主は、原則当事者間で協議して価格を決定することとなります。
上場株式であれば、市場価格に基づいて価格決定をすることができますが、非上場株式には市場価格が存在しません。
そこで、非上場株式の算出は、企業の業態や状況などから、適切と考えられる算出方法を選択し、表にまとめた評価方法のいずれかを用いることが一般的です。
非上場株式の算出方法の選択には決まりがないため、お互いの主張が食い違うこともあります。
価格の妥当性や根拠等については、様々な要素を加味して検討する必要があるため、弁護士に相談することをおすすめします。
株式買取価格決定申立について
非上場株式の評価方法には一律の決まりがないため、原則当事者間が協議により、買取価格を決定します。もっとも、協議が難航する場合は、当事者が裁判所へ価格決定申立てを行うことで、客観的な価格の決定を委ねることも可能です。
なお、買取価格決定申立の期限は、以下の通りに設定されています。
- 組織再編等の場合
効力発生日から30日間の協議期間満了日後、30日以内 - 全部取得条項付種類株式の取得、株式等売渡請求の場合
取得日の20日前から取得日前日までの間 - 譲渡制限株式の場合
買い取りに係る通知があった日から20日以内
上記の期限を過ぎると申し立てが認められないため、協議の決裂や長期化が予想される場合は、早期に申立の準備を進める必要があります。具体的な手続き等については、早めに弁護士へ相談しましょう。
交渉による少数株式の任意売却
少数株主による株式の処分方法は、法定の買取請求だけではありません。少数株主は、当事者間の交渉による任意売却で株式を処分することも可能です。
任意売却は、他の株主や会社(自己株式の取得)、あるいは外部の第三者が買い手となります。当事者が条件面で合意できれば、買取請求に伴う法定手続きや裁判対応が不要になるため、時間・労力・コストを大幅に削減できるといったメリットがあります。
もっとも、任意売却の場合、当事者間が自由に取引価格を設定できますが、非上場株式の適正評価は難しいため、交渉力の差によって不当な取引価格となるおそれもあります。
任意売却には専門知識や交渉力が重要となるため、交渉の初期段階から、株式実務に精通した弁護士へ相談することをおすすめします。
少数株主の買取請求に関するよくある質問
少数株主の買取請求のメリットは何ですか?
買取請求の最大のメリットは、売却が難しい非上場株式などを、会社に公正な価格で売却して現金化できる点です。
株主は、市場がなく買い手を見つけにくい株式であっても、法律上の要件を満たせば会社に買い取ってもらうことで、投下資本を回収できます。
経営方針から会社と対立する株主にとっては、株式を手放すことで、経営への関与から完全に離脱できる点も、メリットといえるでしょう。
会社側にとっても、買い取りにより、協力的な株主に株式を集約できれば、経営を安定できるといった利点があります。
少数株主の買取請求ではどのような税金がかかりますか?
少数株主が、買取請求によって株式を売却した場合、原則として、受領した対価のうち、資本金等の額を超える部分は「みなし配当」として配当所得、残りは「株式等に係る譲渡所得税」が課税されます。
譲渡所得部分には、一律20.315%の申告分離課税が適用されます。売却価格からその株式の取得費や諸経費を差し引いた譲渡利益が課税対象です。
会社側は、みなし配当が生じる場合には支払時の源泉徴収義務を負いますが、特定の組織再編やスクイーズアウト手続きに伴う買取請求など、買い取りの手続きによっては税務上の取扱いが異なる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
少数株主の買取請求に関しては弁護士法人ALGにご相談ください
反対株主や単元未満株主の株式買取請求権、さらには譲渡制限株式における株式買取請求権は、いずれも株主の権利保護のための制度です。しかし、権利行使における要件はそれぞれ異なり、手続きにも差異があります。
正しく権利を行使するためには、手続きの流れを熟知しておく必要があります。
弁護士法人ALGでは、会社法に精通した弁護士が多数在籍しており、日々、様々な業界案件に取り組んでいます。
豊富な経験を持つ弁護士が、株式買取請求権の要件確認から価格交渉まで幅広く対応しています。ご不明点やご不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
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- 監修 :
- 弁護士法人 ALG&Associates執行役員弁護士 家永 勲
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- 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)
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