いじめは、小・中学生だけでなく、高校生の間でも深刻な問題となっています。
高校生になると人間関係がより複雑になります。クラスや部活、恋愛など様々な場面でいじめが発生する可能性があり、放置すると命や人生に影響する可能性もあるため、早期解決が重要です。
この記事では、高校生のいじめの現状や、保護者ができる対応などについて解説していきます。
目次
文部科学省が発表した令和6年度の小・中・高等学校・特別支援学校を対象にしたデータによると、高校生のいじめ認知件数は年々増加しており、令和4年度は1万5568件であったのに対し、令和5年度は1万7611件に増加しています。
高校生のいじめの態様状況
高校生のいじめは、小・中学生と比べてネットやSNSでのいじめが多いのが特徴です。ネット上でのいじめは、保護者や学校が気付きにくく、被害が拡大してしまうおそれがあります。
いじめのうち、深刻なものをいじめ重大事態といいます。
いじめ重大事態とは?
いじめ重大事態とは、いじめ被害を受けた児童・生徒の生命や心身、財産などに重大な被害が生じた疑いがあると認められる事態や、一定の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認める事態のことを指します。
いじめ防止対策推進法では、学校や学校設置者はいじめ重大事態の発生が疑われる場合に、速やかに調査組織を設けて事実確認を行うことを義務付けています。
また、文部科学省の調査データによれば、高等学校のいじめ重大事態の発生件数は、令和5年(2023年)で259件ですが、平成25年(2013年)では、わずか24件でした。
この10年間でいじめ重大事態の発生件数が約10倍に増えていることが分かります。
文部科学省の調査によると、高校生の不登校者数は令和5年度で6万8770人となり、そのうち600人がいじめを原因としています(定時制高校を含む)。
不登校の生徒全体の人数からみると0.9%と、少なく感じるかもしれませんが、高校でもいじめが存在し、不登校を余儀なくされている生徒がいると把握するには十分な数字でしょう。
いじめ被害による不登校については、以下のページで詳しく解説しています。
さらに詳しくいじめで不登校になったときの対応は?加害者や学校への法的措置など厚生労働省の調査では、令和5年度の高校生の自殺者数は347人となっており、小学生や中学生と比べて多い傾向にあります。令和5年度は自殺者数のうちいじめが原因の事例は0人でしたが、令和4年度は354人の自殺者数のうち、5人がいじめを理由に自殺に至っています。
小・中学生と比べて高校生の自殺者数が多くなる背景として、高校生のスマートフォン普及率が高く、情報を得やすいことが考えられます。
また、同年代の子供の行動にも影響を受けやすいことも原因のひとつでしょう。
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まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。 ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
「高校生」といっても未成年であり、いじめ被害に遭った場合は、保護者の方のサポートが必要不可欠です。以下の5つの対処法を参考に、子供が安心できる環境を整えましょう。
「よく怪我をする」「食欲が低下している」などいじめの疑いや異変に気づいたら、まずは子供の話をよく聞いてください。高校生は多感で保護者の方と話したがらない場合も多いかもしれませんが、味方になってくれる大人がそばにいることは子供にとって大切なことです。
いじめの状況や事実確認をして、どうしたいのか、子供の意思を尊重することが大切です。
「学校に行きたくない」と言っているのであれば、無理に学校にいかせることは避け、自宅で安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。
また、子供がいじめられていると知ったとき、学校に怒りや悲しみをぶつけてしまいがちですが、感情に任せて高校に連絡しても問題は解決しません。まずは冷静に、子供のケアを優先してください。
いじめ問題の解決のためには、客観的に見ていじめがあったとわかる証拠が重要です。証拠は、学校側にいじめの相談をする際だけでなく、加害者側との交渉や、損害賠償請求などにも役立ちます。
証拠の具体例
ただし、いじめの証拠は集めるのが難しい場合もありますので、以下のポイントに沿って子供から話を聞きましょう。
いじめの事実関係が整理出来たら、証拠をふまえて学校に相談しましょう。このとき、いじめの調査を求めるだけでなく、再発防止策についても相談することが大切です。
学校への相談では、いじめ問題の解決に向けてどのような対応を希望するのか、意見をはっきりと伝えましょう。加害者等も同じ学校であることが考えられますので、加害者等やその保護者との話し合いの場を設けたり、学校側から加害者等に指導したり、さまざまな対応が考えられます。
ただし、相談したからと言って学校側が適切に対処してくれるとは限りません。学校の対応が不十分だと感じる場合には教育委員会や弁護士などの第三者機関への相談を検討すると良いでしょう。
いじめの被害を受けた場合、加害者側および学校側に民事訴訟(損害賠償請求)や刑事告訴などの法的責任を追及できます。
環境を変えることで、子供が安心して学ぶ機会を確保できる場合があります。子供が望んでいるのであれば、転校することもひとつの選択です。
また、通学がつらい場合は、通信制高校への転校やオンライン授業の活用も検討しましょう。
通信制高校やオンライン授業は、自分のペースで学べる仕組みが整っており、子供の精神的負担を軽減することができるでしょう。
ただし、転校や環境を変えることは、少なからずデメリットもあります。子供がどのような不安を抱えているのか、転校によって不安が解消されるのか、親子で話し合ってみましょう。
いじめの対処法については、以下のページで詳しく解説しています。
学校側や加害者側の対応が十分でないときは、第三者の力を借りることも検討しましょう。
主な相談先は以下のとおりです。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
子供がいじめについて話したがらなかったり、学校側がいじめ問題に対応してくれない場合には、おひとりで悩まず、以下の相談窓口を活用しましょう。
高校生のいじめの中には、犯罪に該当する悪質なものもあります。刑事罰の対象となる場合もありますので、まず警察に相談しましょう。
犯罪行為に該当する可能性のあるいじめの具体例
上記のような犯罪行為に該当するいじめを受けた場合、刑事告訴することで加害者等に刑事責任を追及できる可能性があります。
いじめ問題への対応に不安があったり、高校に相談しても対応してもらえない場合には、弁護士に相談する方法があります。
弁護士への相談には以下のようなメリットが挙げられます。
いじめを弁護士に依頼するメリットについては、以下のページでも詳しく解説しています。
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高校の決まりやいじめの程度によっては、学校が停学や退学勧告などの処分を行うこともあります。
学校側の生徒に対する処分の種類は、主に以下のとおりです。
公立高校と私立高校の処分の違い
公立高校では教育委員会が関与し、私立高校では学校法人が対応するところが大きな違いです。
どちらの場合も、いじめの事実が確認されれば、加害者等への処分(停学、退学など)や、被害者へのケア、再発防止策などが講じられます。
県立高校に通う高校2年生の女子生徒が、元交際相手の男子生徒とその妹からSNS(旧Twitter)で誹謗中傷によるいじめを受け自殺に至ったとして、被害者の両親が加害者等に対し損害賠償を請求しました。
争点裁判所は、以下の点から被告らに連携して慰謝料50万円の支払いを命じました。
【平成30年(ワ)第388号 令和3年7月14日 さいたま地方裁判所 判決】
高校生は、スマートフォンの普及などから、小・中学生とはいじめの態様が異なります。また、多感な時期だからこそ保護者の方にいじめられていることを言い出せず、いじめが拡大してしまうケースもあるでしょう。
いじめ問題への対処は、子供や保護者の方だけで取り組むものではありません。
早期解決のためにも、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。学校問題やいじめ問題に詳しい弁護士が、加害者側や学校側との交渉や法的措置のサポートなどに関して、ご相談者様のお気持ちを最優先にして取り組んでいきます。
大切なお子様の未来が明るいものとなるよう尽力いたしますので、まずは一度お話をお聞かせください。
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監修 : 弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates執行役員
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:41560)
愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士82名、スタッフ171名(司法書士1名を含む)を擁し(※2021年6月末現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。
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