交通事故後の高次脳機能障害|具体的な症状や後遺障害認定について

交通事故後の高次脳機能障害|具体的な症状や後遺障害認定について

交通事故で脳になんらかの損傷を受けて高次脳機能障害となると、社会生活に支障をきたすおそれがあります。具体的には、物忘れが激しくなる、見慣れたものが認識できなくなる、集中力がなくなる、などの症状が現れます。

高次脳機能障害は、身体の怪我は良くなっているにもかかわらず、見た目では分からない脳の機能に障害が生じるというところが難点です。

この記事では「高次脳機能障害」に着目し、症状や後遺障害等級認定について詳しく解説していきます。

高次脳機能障害により併合4級が認定された事案で、約1800万円を増額できた事例
  • 症状:硬膜下血腫、硬膜外血腫、脳挫傷
  • 後遺障害等級:併合4級

弁護士依頼前

5700万円

弁護士介入

弁護士依頼後

7500万円

1800万円の増加

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは

交通事故による高次脳機能障害とは、事故の衝撃で脳の一部を損傷したことにより、思考・記憶・行為・言語・注意など脳の機能の一部に障害が残ってしまった状態をいいます。

高次脳機能障害と診断された場合は、その程度に応じた専門的なリハビリを受けることが望ましいでしょう。リハビリを受けることで改善が見られたり、症状の進行を遅らせたりすることが可能といわれています。

また、医師から高次脳機能障害と診断され、症状固定した場合は、後遺障害等級認定申請の手続きをしましょう。

高次脳機能障害が残ると、日常生活や就労が困難になったり、身の回りの世話をする家族の負担が大きくなるため、被害者には適切な補償がなされるべきです。そのためには、後遺障害等級認定を受けることがとても重要です。

交通事故による高次脳機能障害の7つの症状

高次脳機能障害の主な症状は以下の7つです。

  • 記憶障害
  • 注意障害
  • 遂行機能障害
  • 社会的行動障害
  • 言語障害
  • 行動障害
  • 失認症

症状の程度はさまざまであり、外見上は普通に日常生活を送れているように見えることもあります。 では具体的にどのような症状があるのか、以降でそれぞれについて詳しく見ていきます。

記憶障害

「記憶障害」とは、見聞きしたことが覚えられなかったり、覚えていたことが思い出せなくなったりします。 記憶障害の症状例に以下のようなものがあります。

  • 物忘れが激しくなる、何度も同じことを聞く、新しい仕事を覚えられない
  • 日時や場所が分からなくなる
  • 約束を忘れてしまう
  • 情報の入手元が分からなくなる
  • 妄想や嘘が多くなる

記憶障害になると、日常生活の中で「いつ、どんなことをしたかわからない」といった症状が出てきます。

注意障害

「注意障害」とは、長時間一つのことに集中できなくなったり、気が散りやすくなったりします。また、注意を向ける対象の切り替えがうまくいかないことがあります。 注意障害の症状例は以下のようなものがあります。

  • 落ち着きがなくなる
  • 集中力がなくなる
  • ミスが多くなる
  • マルチタスクをこなせない
  • 他人にちょっかいを出す
  • 疲れやすくなる

遂行機能障害

「遂行機能障害」とは、目標の達成まで「どうしたら達成できるか」といった計画ができなかったり、計画に沿って効果的に行動したりすることが難しくなる障害です。 遂行機能障害の症状例は以下のようなものがあります。

  • 物事の段取りを組もうとしても、考えがまとまらない
  • 他人からの指示がないと作業できない
  • 物事の優先順位をつけられない

社会的行動障害

「社会的行動障害」とは、感情のコントロールが難しい、状況に応じた行動がとれないなどの理由から、対人関係に支障をきたす症状です。 社会的行動障害の症状例は以下のようなものがあります。

  • 怒りっぽくなった
  • 暴力的になった
  • ずうずうしくなった
  • お金の使い方が荒くなった
  • 依存症になった
  • 空気が読めないなど、対人関係がうまくいかなくなった
  • 意識が低下した
  • 抑うつっぽくなった

言語障害(失語)

「言語障害」とは、言語によって考える力や、発生や発音に差しつかえが生じる障害です。 言語障害には「失語症」があり、会話のキャッチボールが成立しないことをいいます。 言語障害の症状例は以下のようなものがあります。

  • 言葉が出てこない
  • 意図した言葉と別の言葉を発してしまう
  • 他人の言ったことを復唱できない
  • 新しい言葉を作り出す
  • 言っていることが支離滅裂になる
  • 聞き取った言葉を理解できない
  • 文字を読んでも意味が分からない
  • 読んだ文字を声に出せない
  • 書きたい単語、文字とは違う単語、文字を書いてしまう

行動障害 (失行症)

「行動障害」とは、日常の何気ない動作や、以前は当たり前のようにできていた動作ができなくなる障害です。 行動障害の症状例は以下のようなものがあります。

  • 服の脱ぎ着が難しくなる
  • 歯磨きができない
  • 指示通りに動けない

失認症

「失認症」とは、ものごとを認識したり、理解したりすることができなくなる障害です。 失認症の症状例は以下のようなものがあります。

  • 知人の顔を見てもだれかわからない
  • 見慣れたものが認識できない
  • 歩きなれた道で迷う
  • 特定の音を聞いてもそれが何か分からない
  • よく知っているはずの物体を触っても、それが何か分からない

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高次脳機能障害の後遺障害等級認定の申請

高次脳機能障害が残り、症状固定と診断された場合は、後遺障害等級認定申請の手続きをしましょう。

後遺障害とは

交通事故を原因とする後遺症のなかでも、自賠責保険が定める後遺障害等級のいずれかに該当すると判断されたものを差します。

後遺障害等級認定とは

交通事故により残存した後遺症が、自賠責保険が定める等級に認定されることをいいます。後遺障害等級認定を受けるためには後遺障害等級認定申請の手続きをしなければなりません。もっとも、申請したからといって必ずしも等級認定されるわけではありません。

後遺障害の申請方法は以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。

認定後に請求できる賠償金

後遺障害等級が認定され、等級がつくと、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。 後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益については以下の表で詳しく解説します。

後遺障害慰謝料 交通事故で後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償
後遺障害逸失利益 交通事故が原因で得られなくなった将来分にわたる減収の補償

なお、治療費、通院費用、入通院慰謝料は後遺障害の認定がされなくても請求できます。 交通事故でもらえる賠償金の詳細は以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。

慰謝料相場と認定基準

高次脳機能障害で認定される等級の認定基準と後遺障害慰謝料の相場を以下の表でまとめます。

【後遺障害慰謝料】
等級 認定基準 自賠責基準 弁護士基準
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 1600万円 2800万円
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 1203万円 2370万円
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 861万円 1990万円
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 618万円 1400万円
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 419万円 1000万円
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 249万円 690万円
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの 94万円 290万円
14級9号 局部に神経症状を残すもの 32万円 110万円

後遺障害12級13号または14級9号は、就労が制限されるほどの症状がみられない場合に認定される可能性があります。
これらの違いは以下のとおりです。

12級13号

CTやMRI、レントゲンといった検査で他覚的所見が認められ、医学的・客観的に後遺症を証明できる

14級9号

画像検査で他覚的所見が認められなくても、しびれ、痛みなどの自覚症状が一貫して継続していて、後遺症の存在が説明できる

【入通院慰謝料】
入院3ヶ月、通院6ヶ月、実通院日数40日の場合の入通院慰謝料の金額です。

自賠責基準 弁護士基準
入院3ヶ月+通院6ヶ月 73万1000円 211万円

慰謝料の算定基準の詳細は以下になります。

  • 慰謝料算定基準には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの基準がある。
  • 金額の大きさは自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準となり、上記の表からも弁護士基準が最も高額になる。

弁護士基準は弁護士が介入したときに使える基準です。そのため、交通事故に遭われた方は弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故の慰謝料については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。

高次脳機能障害が後遺障害等級認定されるためのポイント

高次脳機能障害が認定されるポイント

高次脳機能障害が認定されるポイントを以下にまとめます。

  • 脳損傷が確認できること
    脳損傷の存在はCTやMRI画像検査により脳が傷ついているということを証明します
  • 事故後に、意識障害が継続していた
  • 認知障害、行動障害、人格変化の症状があること
  • 事故後に、意識障害が継続していた

    高次脳機能障害は意識障害が生じるほどの頭部外傷を負った場合に発症すると考えられています。基本的には以下の程度の意識障害があったことが必要とされています。

    • 半昏睡~昏睡で「眼を開いたり、応答したりしない状況」が6時間以上続いた
    • 健忘または軽度の意識障害が1週間以上継続した

    こうした症状がある場合は、「後遺障害診断書」にはっきりと記載してもらいましょう。
  • 認知障害、行動障害、人格変化の症状があること
    後遺障害診断書を提出する際には、併せて「日常生活状況報告書」の提出が求められます。受傷前と受傷後でどのような変化があったか、問題行動の頻度がどの程度あるかなどを家族や近親者が記載します。

後遺障害診断書や日常生活状況報告書の内容等から、下記のような環境下における行動が、事故の前後でどのように変化したかを比較し、認知障害や人格の変性があるか否かで、後遺障害の程度が判断されます。

  • 本人の日常生活状況
  • 仕事・学校での状況
  • 地域での活動状況
  • 交友関係などの社会生活の状況

高次脳機能障害の等級認定は記載内容のわずかな違いで、現実の症状に比べて軽い等級が認定されてしまうこともあるので、できる限り弁護士にご相談ください。

後遺障害診断書の正しい書き方や基礎知識については以下で詳しく解説しています。ご参考ください。

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料金について、こちらもご確認ください。
  • ※諸経費20,000円( 税込22,000円 )がかかります。
  • ※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
  • ※事案によっては対応できないこともあります。
  • ※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。
  • ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

高次脳機能障害が後遺障害等級認定されない場合の対処法

後遺障害等級認定申請は、申請すれば誰もが等級認定されるものではありません。非該当であったり、望む等級より低い場合もあります。そのような場合には、以下の対処法があります。

  1. 異議申立て
  2. 紛争処理機構への申請
  3. 裁判を起こす

しかし、これらの方法をとっても、必ず希望する等級が認定されるとは限りません。

認定率を高めるためには、これらの方法プラス弁護士への相談が大切でしょう。弁護士であれば、申請に必要な資料に不備・不足がないか精査することができます。

また、医学的な観点から新たに証拠となる書類やCT、MRIの画像検査のアドバイスをすることができ、より認定率を高めることが期待できます。

後遺障害が非該当となった場合の対処法については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。

【弁護士法人ALGの解決事例】交通事故による高次脳機能障害として7級4号が認定された事例

事案の概要

依頼者が自転車で信号機のない交差点を直進中に、一時停止規制のある交差道路から右折しようとした加害者の自動車が依頼者に衝突したため重傷を負い、意識不明のまま救急搬送されました。
その後、手続き方法等に不安を感じ、当事務所にご依頼いただきました。

担当弁護士の活動

担当弁護士は、まず現状を確認するとともに、加害者側保険会社や依頼者・家族から資料を取り付け、後遺障害等級の認定に不足している書類はないか精査しました。

このような弁護士活動のもと、高次脳機能障害の後遺障害等級認定に関して過不足なく資料をそろえることができ、無事に後遺障害等級7級4号が認定されました。その後の示談交渉では、依頼者が高齢で無職であったことから、等級に見合った慰謝料獲得の交渉を重点的に行うことになりました。

結果

最終的に、当方の請求額満額で示談に至ることができました。

交通事故による高次脳機能障害で適正な賠償金を受け取りたいとお悩みの方は、弁護士法人ALGへご相談ください

交通事故により高次脳機能障害を負ってしまうと、本人だけでなく生活を共にする家族の日常生活も変化し、大きな影響を与えてしまいます。

そのため、後遺障害等級認定申請により、適切な後遺障害等級が認定されること、適切な損害賠償金を受け取ることはとても重要です。

高次脳機能障害で後遺障害等級認定申請をお考えの場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。交通事故に詳しい弁護士であれば、申請書類の精査や、必要な検査のアドバイスをすることができます。

私たちは、交通事故チームと医療チームが協力し、後遺障害等級認定申請にも力を入れております。
無料相談も行っておりますので、まずは一度ご相談ください。

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弁護士法人ALG 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。