個人再生で財産は残せる?弁済額への影響や財産隠しのリスクなど

個人再生で財産は残せる?弁済額への影響や財産隠しのリスクなど

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監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長 弁護士

個人再生では、基本的に財産を残したまま借金を大幅に減額できます。

ただし、高額な財産を所有している場合は個人再生後の弁済額に影響することがあるため、最低限支払うべき弁済額を決めるための財産調査が行われます。

万が一財産隠しをしてしまうと、個人再生が失敗に終わるリスクもあるので、財産を守りつつ借金をしっかりと減らすためにも、本記事で個人再生で財産を残せる可能性や弁済額への影響、財産隠しのリスクについてしっかりと確認していきましょう。

個人再生は財産を残せる可能性がある

個人再生は、自己破産のように財産を処分する必要がないので、財産を残したまま借金を大幅に減額できる可能性があります。

個人再生とは?

そもそも個人再生とは、裁判所を介して借金の返済が困難であることを認めてもらい、住宅などの財産を残したまま借金を元金ごと大幅に減額してもらって、残りを3~5年で分割返済していく手続きです。

個人再生の場合、現金・預貯金・ローンが完済している住宅や車など担保権のない財産はそのまま残せますし、住宅ローンを返済中でも住んでいる家を残せる可能性もあります。

ただし、所有する財産が高額だと、その分弁済額も大きくなって個人再生で減額できる幅は小さくなってしまうため、財産を多く所有していたり高額な財産を所有していたりする場合は、個人再生をするべきか慎重に判断する必要があります。

個人再生の手続きについて詳しくお知りになりたい方は、以下ページもご参考ください。

さらに詳しく個人再生とは|メリット・デメリットや手続きの流れ、費用など

ローン返済中の財産はどうなる?

返済中のローンも個人再生手続きの対象となるため、「ローン返済中の財産は絶対手放さなければならないのか」と、不安に思われる方も多いでしょう。

ローンを返済中でも、抵当権や所有権保留などの担保権が設定されていない財産は基本的に手元に残すことができます。

一方で、抵当権が設定された不動産や所有権留保が設定された車は、個人再生手続きによって「ローンの返済が見込めない」と判断され、債権者が担保権を行使することで不動産や車が回収されてしまいます。

ただし、住宅ローンについては、一定の条件を満たすことで例外的に個人再生手続きをしてもローン返済はそのままで持ち家を手放さずに済みます。

住宅ローンの場合

個人再生では、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することで例外的に整理の対象から住宅ローンを外すことができます。

住宅ローン特則を利用するための条件を満たしていれば、住宅ローンの返済を従前通り継続することにより、マイホームを手放さずに済むうえ、ほかの借金を大幅に減額することができます。

住宅ローン特則の利用要件

  1. 住宅ローンとしての借り入れであること
  2. 個人再生を行う本人が所有する住宅であること
  3. 個人再生を行う本人の居住用の建物であること
  4. 住宅ローン以外の債権の抵当権が設定されていないこと
  5. 滞納による代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続開始の申立てをしていること

利用できないケースもあるため、詳細は専門家に相談するのが安心です。

財産が担保されている場合

財産が担保されている場合は、個人再生をすることでその財産を失う可能性があります。

たとえば、居住用以外の不動産に抵当権が設定されている場合や、車に所有権留保が設定されている場合、ローンを払い終えるまでは銀行・ディーラー・ローン会社などの債権者がその財産に担保権を有しています。

この状態で個人再生手続きをすると、「契約通りにローンの返済ができない」と判断されて、債権者によって担保権が行使されて財産が回収されてしまいます。

なお、ローンの完済までは車の所有権をディーラーが持つ場合などでは、交渉次第では手元に残せる可能性もあります。

ローン返済中の不動産や車を手放さずに個人再生したいとお考えの方は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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財産が高額だと減額後の弁済額が高くなる?

個人再生を行う本人名義の財産が高額だと、手放す必要はなくても、減額してもらった後の弁済額が高額になることがあります。

個人再生では清算価値保障の原則というルールがあり、手続き後に返済しなくてはいけない金額=最低弁済額は、自己破産を選択した場合に手放すことになる財産以上の金額でなければなりません。

そこで、次のいずれかの基準で算出される金額を比較して、最も大きな金額を個人再生後の最低弁済額と定めます。

  1. 法律が定める最低弁済額
  2. 清算価値保障基準
  3. 可処分所得の2年分(給与所得者等再生の場合のみ)

高額な財産は清算価値として計上されます。

そのため、清算価値保障基準で算出した金額が、法律が定める最低弁済額を上回っていると、個人再生をしても借金が思ったほど減らない可能性があるので注意が必要です。

それぞれの基準について、もう少し詳しくみていきましょう。

①法律が定める最低弁済額

個人再生において、手続き後に最低限支払わなければならない弁済額は民事再生法によって、借金の総額に応じて次のように定められています。

最低弁済額(民事再生法 第231条第2項第3号、第4号)
借金の総額(住宅ローンを除く) 最低返済額
100万円未満 借金全額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超1500万円未満 借金額の5分の1
1500万円以上3000万円以下 300万円
3000万円超5000万円以下 借金額の10分の1

②清算価値保障基準

清算価値とは、個人再生の申立て時点で債務者が保有している財産を処分した場合に得られる金額のことです。

実際に財産を処分する必要はありませんが、自己破産をした場合よりも債権者が一方的に不利益を被らないように清算価値保障基準が設けられています。

そのため、清算価値を算出するにあたっては、自己破産の手続き後も手元に残すことができる自由財産は除外することが多いです。

清算価値に計上しない自由財産

  • 99万円以下の現金
  • 20万円以下の財産(預貯金、車、生命保険の解約返戻金など)
  • 差押禁止財産(生活に欠かせない家財道具、年金や生活保護の受給権など)

たとえば、借金の総額が300万円で、保有している財産が200万円だったとします。

この場合、法律が定める最低弁済額は100万円ですが、清算価値保障基準の200万円の方が高額なので、再生計画案で定める最低弁済額は「200万円以上」でなければなりません。

③可処分所得の2年分(給与所得者等再生の場合のみ)

可処分所得とは、収入総額から税金や最低限の生活費などを差し引いた金額のことです。

個人再生には小規模個人再生給与所得者等再生という2種類の手続きがあり、給与所得者等再生を選択した場合、「可処分所得の2年分」も基準に加わります。

たとえば、借金総額が300万円で、保有財産が150万円、可処分所得が100万円だったとします。

この場合、法律が定める最低弁済額100万円<清算価値150万円<可処分所得2年分200万円なので、再生計画案で定める最低弁済額は「200万円以上」でなければなりません。

個人再生の財産調査はどのように行われる?

個人再生では所有している財産が手続き後の弁済額に影響することがあるので、個人再生を申し立てると裁判所によって財産調査が次のような流れで行われます。

  1. 財産目録の提出
  2. 裁判所による財産調査

財産目録の提出

個人再生を申し立てるにあたって、申立書や債権者一覧表とあわせて“財産目録”を裁判所へ提出する必要があります。

財産目録には、個人再生を申し立てる本人名義の所有財産すべてを、種類ごとにまとめて記載します。

財産目録に記載する財産

  • 現金や預貯金の金額
  • 有価証券
  • 退職金の有無、見込額
  • 貸付金・売掛金・過払い金
  • 加入している保険の解約返戻金の有無、金額
  • 不動産
  • 自動車・バイク
  • 過去5年間で購入した財産のうち、売価が20万円以上のもの
  • 過去2年間で受領・処分した財産
  • 相続財産 など

裁判所による財産調査

提出した財産目録をもとに、裁判所または個人再生委員が財産調査を行います。

調査が進められるなかで、必要があれば追加で資料の提出が求められることもあります。

財産調査では、「申告内容に虚偽がないか」、「財産の評価が妥当か」、「不審なお金の動きはないか」が厳しくチェックされるので、少しでも弁済額を抑えたいと考えて“財産隠し”をしていると、この段階で発覚することがほとんどです。

財産隠しが発覚すると個人再生が失敗するリスクもあるので注意しましょう。

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個人再生で財産隠しをした場合のリスク

個人再生で財産隠しをすると、債権者が不利益を被り、手続きの公正さも損なわれるため、個人再生が認められないばかりか、最悪の場合“詐欺再生罪”に問われるリスクもあります。

次のような行為は財産隠しにあたるため、絶対しないようにしましょう。

個人再生手続きにおいて財産隠しに該当する行為の一例

  • 財産目録に虚偽の記載をする
  • 財産目録に記載していない財産の存在を隠す
  • 預貯金口座や財産を他人名義に変更する
  • 財産の一部を家族や知人に預ける
  • 財産の評価額を少なめに申告する
  • 高額な財産を手続き直前に売却する
  • 意図的に破損させるなど、所有する財産の価値を不当に下げる など

個人再生手続きの廃止

財産目録に記載漏れがある場合や、評価額の過少申告がある場合、個人再生手続きが廃止される可能性があります。

民事再生法 第237条第2項

小規模個人再生において、再生債務者が財産目録に記載すべき財産を記載せず、又は不正の記載をした場合には、裁判所は、届出再生債権者若しくは個人再生委員の申立てにより又は職権で、再生手続廃止の決定をすることができる。

民事再生法 第244条

第221条第3項から第5項まで、第222条から第229条まで、第232条から第235条まで及び第237条第2項の規定は、給与所得者等再生について準用する。

個人再生の申立てが受理されて再生手続開始が決定した後でも、記載漏れや過少申告があった場合は裁判所の判断によって手続廃止、つまり手続きが途中で打ち切られてしまいます。

個人再生手続きが廃止されると、当然ですが借金は減額してもらうことができません。

再生計画の不認可

財産隠しによって誤った財産目録に基づいた再生計画が作成された場合に、最低限支払うべき弁済額が本来の金額よりも少なくなってしまうと債権者が不利益を被るため、裁判所によって再生計画は不認可となります。

民事再生法 第174条第2項第4号

第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。

第1号 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。

第2号 再生計画が遂行される見込みがないとき。

第3号 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。

第4号 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

再生計画が不認可となった場合、借金が減額されることのないまま個人再生手続きが失敗に終わってしまいます。

再生計画の取り消し

財産隠しが発覚しないまま再生計画が認可された後でも、本来支払うべき弁済額よりも少ない金額であることが発覚した場合は、再生計画が取り消される可能性があります。

民事再生法 第236条

小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が、再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回ることが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。

民事再生法 第242条

給与所得者等再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回り、又は再生計画が前条第2項第7号に該当することが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。

再生計画が取り消されると、減額された借金は元通りの金額に戻るばかりか、債権者から一括請求される可能性があります。

個人再生についてご不明な点は弁護士にご相談ください

個人再生では、担保権のない財産はそのまま手元に残せるかわりに、高額な財産がある場合は弁済額が高額になって思うように借金が減らない可能性があります。

個人再生を検討していて、「財産を守りつつ借金をしっかりと減らしたい」とお考えの方は、一度弁護士法人ALGまでご相談ください。

借金や財産の状況を伺ったうえで、守りたい財産を残せるのか、清算価値はいくらになりそうか、具体的なアドバイスをいたします。

弁護士に相談することで今後の見通しが立てやすくなりますので、不安や疑問に感じていることがあれば、お気軽にご相談ください。

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