
コラム
更新日: 2024年10月16日
タイのサービス産業
監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長サービス産業とは、消耗品等を生産するのではなく、他の業種や人々に対してサービスを提供する経済分野のことで、例えば銀行業、理美容業、運輸業等が含まれます。
先進国の経済では、サービス産業は社会的な重要性を増していく傾向にあります。
例えば、イギリスでは1945年以降、市民の生活水準が高くなったため、消費者はより多くのサービスを求めるようになりました。その結果、サービス産業は各国でより多くの人々の雇用の源となっています。
タイのサービス産業が経済に占める割合は過去20年間、約50%前後で安定しています。
そのほとんどは低スキルの労働者による生産性の低い産業で、輸出に占める割合は低く、主に基礎的なサービス業が中心です。
タイのサービス業は、ASEANの他の国々や、先進国を含むASEAN以外の国々のような、持続的成長を見せていません。
目次
タイでのサービス産業の展開
サービス産業は、IEAT内のサービ業を支援するためにスペースを割り当てる工業団地というユニークな特徴を持つ革新的な開発体と考えられています。
サービス産業用の不動産への投資家や、サービス事業者の産業用不動産は、特に税金やコンシェルジュサービスの面で、製造業者と同様の恩恵を受けることができます。
その結果、投資価値、事業力、競争力が向上し、サービス産業が持続的に成長し、地域や世界で競争できるようになります。
工業団地で運営可能なサービス業
- 工業製品または工業製品で製造される物品による購入販売業
- 輸送業(ロジスティックス)およびサプライチェーン(倉庫、荷扱所、流通センターなど)
- 展示会場、コンベンションセンター運営業
- 修理、メンテナンスおよびエンジニアリングサービス業
- 工業に関連する研究開発業
- テレコミュニケーションサービス、コンピューターサービス、情報提供サービス、マルチメディアサービスおよび娯楽的エンターテイメントサービスのメディア関連業
- 健康および衛生関連サービス業(病院、保健所、健康センター、スポーツセンター、健康回復静養管理センター等)
- 教育サービス業(教育機関、研修センター等)
- その他の関係サービス
サービス業事業者が受けられる恩恵
一般工業区(General Industrial Zone)で受けられる恩恵
非税的恩恵
- 工業地域で、土地を所有することができる。
- 工業地域での就労目的のために、外国人の技術者および専門家を引き入れることができる。
- 外国の技術者および専門家の配偶者、扶養家族を引き入れることができる。
- 外貨の送金を行うことができる。
フリーゾーン(Free Zone)で受けられる恩恵
- 非税制面での恩恵
- 税制面での恩恵
生産に使用される機械、設備、機材、原料などにかかる輸出税、輸入関税、付加価値税(VAT)、物品税について、免税を含む税恩典を受けることができる
機械や原料にかかる税の免除または還付を受けることができる
フリーゾーンへ輸入品の持ち込みを円滑に進めることができる
サービス産業がタイに進出する際に直面する課題
集団思考
タイでは、個人のニーズよりもグループのニーズが優先されることが多くあります。もちろん、これは他の国とはまったく異なる考え方なので、やはり文化的な認識を持つことが重要です。
タイ社会では家族が極めて重要な役割を果たし、家族間や地域社会とのつながりが密接であることも少なくありません。
ビジネスを成功させるためには、このような考え方を理解し、事業を展開する地域の人々とのつながりを持つ必要があります。
間接的なコミュニケーション
タイ人のコミュニケーションは、非常にあいまいで回りくどいことがよくあります。
会話の中には、しばしば言葉にならない裏のメッセージが存在し、その事実に気づかなければ見逃してしまう可能性があります。
この種のコミュニケーションは、ビジネス交渉でよく使われるため、タイに進出する企業は常に意識しておく必要があります。
取引や契約を締結する前に、会話の中の言葉にならない部分を拾い上げ、全容を把握することが不可欠です。
官僚主義的な手続き
タイで事業を始めるには約1ヶ月かかり、4つのステップを踏む必要があります。
まず会社名を登録し、適切な額の資金を銀行に預け、法人印をもらい、最後に法人登記しなければなりません。
これはストレスが溜まるステップではありますが、避けることができない以上、むしろ、比較的わかりやすいと考えるべきものでもあります。
言語
英語は特にビジネス社会で広く話されていますが、時々問題にぶつかることがあります。
常に礼儀を忘れず、もし相手の言葉がわからなければ、繰り返して言ってもらいましょう。タイの人々はとても寛大で、できるだけ不快にならないような体験をしてもらうように心がけています。
課題を乗り越える
タイへの事業進出にはいくつかの課題があることは間違いありませんが、それを克服するのは比較的簡単です。
微笑みの国タイで事業を幸先よく始められない理由はありません。文化面で配慮すること、行間を読むこと、忍耐強く礼儀正しくあることを忘れないでください。あとはすべてうまくいくでしょう。
タイにおけるサービス業に対する外資投資規制
1999年外国人事業法第8条は、以下のとおり規定しています。
第8条(末尾リストと規制内容)
第6条、第7条、第10条、第12条の規定下に、
- 第1表の規定に基づく特別事由により外国人の営業を許可しない事業を外国人が営むことを禁じる。
- 第2表の規定に基づく国家安全保障に係る事業、文化、伝統習慣、地場工芸に影響を及ぼす事業、天然資源または環境に影響を及ぼす事業を外国人が営むことを禁じる。ただし内閣の承認下に大臣から許可を得た場合はその限りではない。
- 第3表の規定に基づくタイ人が外国人との競争に準備ができていない事業を外国人が営むことを禁じる。ただし委員会の承認下に局長から許可を得た場合はその限りではない。
上記から、外国人の定義が「登記資本金」を基準としており、外国人が出資する他の法人の資本金は考慮されていないことに留意する必要があります。
また、資本の出所や法人を監督する権限も考慮されていないため、「所有」の実態を反映していません。
したがって、外国人投資家は、49%の直接保有とタイ法人の別レイヤーを通じた間接保有の方法を用いるなどすることにより、法人を経営する権限を持つことができます。
外国人投資家がタイで事業を行うことは可能です。例えば、「製造業」は、外国人事業法末尾のリストにない事業であるため、営業許可は不要であり、外国人持株比率の要件もありません。
一方、「サービス業」は、第3表の(21)における「省令で定めるサービス業を除くその他のサービス業」であり、外国人が行うことが禁止されています。
「省令で定めるサービス業」は、証券取引法に基づく有価証券等業務、デリバティブ取引法に基づくデリバティブ業務、資本市場取引の信託に関する法律に基づく受託者業務になります。
省令により規制を免除される業種
2017年の「外国人が許可取得を不要とするサービス業の指定」に関する省令(Ministerial Regulation Prescribing Service Businesses which do not require a foreign business license (No. 3) May 26, 2017)の第1条は以下のとおり規定しています。
第1条: 2016年の「外国人が許可取得を不要とするサービス業の指定」に関する省令(Ministerial Regulation Prescribing Service Businesses Which Do Not Require a Foreign Business License (No. 2) B.E. 2559 (2016))により改正された、2013年の「外国人が許可取得を不要とするサービス業の指定」に関する省令(Ministerial Regulation Prescribing Service Businesses Which Do Not Require a Foreign Business License B.E. 2556 (2013))の(4)は廃止され、以下のとおり改正されるものとする。
金融機関事業、金融機関事業の運営に附帯し、または必要な事業、および金融機関に関する法律に基づく金融機関の金融グループに属する会社の事業:
- 商業銀行業務
- 銀行の駐在員事務所によるサービス業務
- イスラム法(シャリア)に基づく金融サービス
- 金融機関代理業
- 顧客の指示による引出し条件付きの預金及び預託
- 個人的買い戻しの請負
- 顧客の輸出保険および信用保険の申請受付、及び保険会社からの保険料またはサービス料の徴収代行業務
- 金融機関、金融グループ会社、タイ中央銀行、政府機関に金融サービスを提供する業務
- 不動産の賃貸
- 貸付債権の譲渡の購入または受諾
- キャッシュ・マネジメント・サービス
- 顧客の事業に関する書類作成
- 債務支払代理業および申請受諾代理業
- ハイヤーパーチェス業とリース業
タイにおけるサービス業に対するその他規制
外食産業
外食産業は、特定の目標を達成するために計画・協力する複数のシステムから構成される法人と定義されます。つまり、「屋外で消費する準備ができている食品と飲料を提供するサービス」ということです。
営業ライセンス
飲食店や食品流通店を開業したい事業者は、私有地で販売、調理、加工、食品の保存を行う許可を得なければなりません。これらの許可には以下の2種類が規定されています。
- 店舗面積が200平方メートル以上場合で、市場内や公共の場所での物品販売を行わない場合、食品提供施設および食品保管施設の設置許可(飲食店設置ライセンス)を得なければならない。
- 店舗面積が200平方メートルを超えない場合で、市場内や公共の場所での物品販売を行わない場合、食品提供施設および食品保管施設の設置の届出と登録(飲食店設置の届出と登録)を申請しなければならない。
外食業および食品流通業の営業免許申請フォーム
外食業または食品流通業者は、開業許可を以下の形で申請することができます。
- 事業主が外食業または食品流通業を営むための免許を申請する場合、まず商業登記(commercial registration)を行う必要があります。登記の目的は、業種を特定することであり、商業登記証明書の写しは、外食業または食品流通業の許可を申請する際の添付書類となります。
- 事業主が、飲食店または食品流通業の許可を法人として申請する場合には、法人格申請を行います。法人格証明書には、外食業または食品流通業を事業目的としている旨を記載されていなければなりません。
レストランや飲食店で酒類、ビール、ワインなどのアルコール飲料を販売する場合、事業者は酒類販売業免許を追加申請する必要があります。
飲食店営業または食品販売の許可の申請は、管轄地方当局の要件に沿った許可証の書類を添付し、地方公務員または担当官に飲食店設立の許可を申請しなければなりません。
- 所在地がバンコクの場合、店舗の所在地の区役所に申請する。
- その他地域の場合、店舗の所在地の行政機関に許可証を申請する。
新店舗開業に関する規制
飲食店の敷地面積が200平方メートル以上300平方メートル以下の場合、飲食店設置ライセンス取得にかかる手数料は2,800バーツ、10平方メートルを超える場合、1平方メートル増える毎に1バーツずつ追加され最高4,800バーツとなります。
飲食店の敷地面積が200平方メートル未満の場合、飲食店設置の届出と登録にかかる手数料は、10平方メートル未満では200バーツ、10平方メートルを超える場合、10平方メートル毎に10バーツ追加され、最高1,500バーツとなります。
飲食店設置ライセンスまたは飲食店設置の届出の有効期間は、発行日から1年間となります。
スタッフの質
食事を提供する店員の質はどのようなものが妥当でしょうか。食品流通業の店舗責任者になるための最低要件として最も一般的なものは、高校卒業であることです。
高卒ではない応募者を雇う事業主もいますが、試用期間の間に応募者のスキルと、指示どおりに働くことができるかどうかを見極めています。
理髪業
美容が好きな人なら、綺麗な髪、美しい髪を整えなければなりませんから、理髪業も人気商売の一つです。
理髪業を行うには、法人設立手続きと法人登記の他に「身体に害を及ぼす可能性のある事業に係る許可」が必要ですその他、複雑な関連条件があります。
さらに詳しく説明すると以下のようになります
営業許可
理美容業の登録で最も詳細に定められているのは「身体に害を及ぼす可能性のある事業に係る許可」です。店内にハサミやカミソリなど鋭利なものや、電池、薬品、カール、ストレートヘアを行うものなど、危険を及ぼすおそれのある物品が多くあります。
そのため、美容室を開業した後は、理美容請負業の許可申請をして、理美容請負業としての場所の設置または使用の許可を受けなければなりません。
営業許可の申請または更新を行う場合に必要な書類は以下のとおりです。
- 身分証明書のコピー1通
- 住居証明書のコピー1通
- 発行後6か月未満の医師の証明書
所在地がバンコクの場合、店舗の所在地の区役所に申請に、その他地域の場合、店舗の所在地の行政機関に許可証を申請します。申請手数料は500バーツです。
有効期間は発行日から1年であるため、毎年更新する必要があります。
教育関連のサービス業(学習塾など)
このタイプの教育施設は、教育制度の枠外にある私設の教育施設とみなされます。教育省のカリキュラムに従って教育を行う教育機関とは、教育の形態、実施方法、成果の測定・評価方法などが異なります。
学習塾は、個別科目としての特定の知識を高めるために設立されますが、教育省の基本的な教育カリキュラムを遵守することが求められ、学習塾の設立のための認可が必要です。
営業ライセンス
学習塾の設立認可を受ける際に必要となる事項は以下のとおりです。
- 名称: 私設の教育施設は、タイ語の「学校」を示す言葉と外国語表記を使用しなければなりません。外国語表記の場合、タイ語の読み方、アクセント、またはタイ語の名称と同じ意味を持ち、学校名の前または後に学校を意味する訳語を附す必要があります。
- 校章: 校章2つの円が重なった形でなければなりません。外側の円の直径は4.5センチ、内側の円の直径は3.5センチである必要があり、その中に校章を記します。円の上には、教育施設名をフルネームで書き、円の下には当該教育施設がある地区名と県名を書きます。
- 私設の教育施設では、以下の形で授業運営がなされなければなりません。
- 教師またはインストラクターが指導する場合、生徒は1クラス45名を超えないこと。
- 教材を使用した授業では、1クラスあたりの生徒数が45名を超えないようにし、教室の秩序を維持し、教材の使用を管理する責任者を少なくとも1人配置する。
- 90人以上の生徒がいる場合、教師またはインストラクターと教材の両方による総合的な指導と学習体制を整え、教室の秩序を維持し、教材の使用を管理する責任者を少なくとも1人配置する。
- 校務に係る人員に関しては、免許権者(所有者)が管理者として、各教科の教員・講師等、学習塾の運営に必要な資質・知識・能力、その他の人員を考慮した上で定めること。
教師・インストラクターの資質
教師およびインストラクターは、学士号を有していることが必須となり、かつ以下の条件が付されています。
- 年齢が18歳以上であること
- 規定に沿った知識を有していること
- 品行方正で、善良な風俗に欠けるところがないこと
- 無能力者または準無能力者でないこと
- 任命日までの2年以内、犯罪による除隊したことがないこと
- 公序良俗に反しないと判断される犯罪を除き、禁固刑の確定判決を受けたことがないこと
- 公序良俗に反しないと判断される犯罪、過失による犯罪、または軽微な犯罪で、任命日までの2年以内に無罪判決を受けたことがないこと
- 国の安全、治安を脅かすカルト宗教の信者、または立憲民主主義に反する者ではないこと
- 省令で定める禁止疾病の患者でないこと
タイにおける外国企業による土地取得
土地法は、外国人および外国企業がタイ国内での土地所有を禁じています。同法97条は以下のとおり規定しています。
第97条
以下の法人は外国人と同様の土地における権利を有する。
- 外国人が登録資本金の49%超の株式を保有する、または外国人株主が全株主の過半数を占める株式会社または公開株式会社。
本章に資するため、いずれかの株式会社が既存株主に発行する株式は、外国人が既存株主であるものとみなす。
また、第96条の2は以下のとおり規定しています。
第96条の2
第86条第1段に基づく条約に依拠した外国人の土地取得の規定は、省令で定めた4000万バーツ以上の投資金を持ち込み、大臣の許可を得て1ライ以下の居住地として土地を取得した外国人には適用しない。
第1段に基づく外国人の土地取得は省令で定めた原則、方法、要件に従う。その省令では少なくとも以下の重要内容がなければならない。
- 国の経済及び社会に資する外国人投資事業の種類、または投資奨励委員会が投資奨励法に基づき投資奨励を申請できる事業として投資奨励委員会が布告した事業の種類
- 3年以上の投資期間
- 外国人の取得を許可するバンコク都、パタヤ市、市街地エリア、または都市計画法に基づき住宅区域に定められたエリア
また、第97条により、外国企業は外国人と同様の権利が付与されています。
なお、外国人事業法4条は「外国人」を以下のとおり定義しています。
- タイ国籍を有しない自然人
- タイで登記されていない法人
- タイで登記された法人であって
- 上記1または2の者が当該法人の持ち分または資本の50%以上を保有または出資している法人、または、
- マネージングパートナーまたはマネージャーが上記1の有限パートナーシップ(Limited Partnership)もしくは普通登録パートナーシップ(Registered Ordinary Partnership)
- タイで登記された法人であって、持分の50%以上を上記1、2または3の者が保有する法人
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