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1.2023年6月法律アップデート
2.トピックス/ニュース:商務省が「カーボンクレジット」を事業担保権にすることを提言
3.最新法令要約
4.重要判例・ルーリング

2023年6月法律アップデート

2023年6月に官報に掲載されたビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
歳入局 仏歴2566(2023)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第763号):不動産投資信託の所持者を対象とした所得税の免除及び不動産投資信託に対する付加価値税(VAT)、特定事業税及び収入印紙の免除について 2023/6/1 2023/6/2
歳入局 仏歴2566(2023)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第764号):政府より得た支援金を対象として、資産管理会社、タイ国イスラム銀行に対する所得税の免除措置 2023/6/1 2023/6/2
歳入局 仏歴2566(2023)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第765号):金融機関から買収した又は譲り受けた不良債権の管理によって得た所得を対象とする所得税の免除について 2023/6/1 2023/6/2
歳入局 仏歴2566(2023)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第766号):電子税額票又は電子領収書の作成システム開発費用として支出した額と相当する所得を対象とする会社又は法人格を有する組合に対する所得税免除措置 2023/6/1 2023/6/2
歳入局 仏歴2566(2023)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第767号):冷凍産業協会における仏歴2563(2020)年1月14日付閣議決定に基づく財務省に対する債務の返済を目的とした土地の譲渡に対する特定事業税の免除措置 2023/6/1 2023/6/2
歳入局 歳入局通達:署名の電子証明を使用した税額票、領収証の作成、送信、又は保管について

※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、商務省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。

トピックス/ニュース:商務省が「カーボンクレジット」を事業担保権にすることを提言

商務省及びタイ国家工業協会、経済財務事務局は、「カーボンクレジット」を、仏歴2558(2025)年事業担保法における事業担保とする提言をしました。将来的に、カーボンクレジットを保有する事業者は、そのカーボンクレジットを譲渡担保として融資又は金融サービスを受けることができるようになるかもしれません。

カーボンクレジットは、減少又は保存できた温室効果ガスの分量に応じて取得できます。タイにおいては、タイ温室効果ガス管理機構(TGO)により、タイ自主削減クレジット制度に基づいて、事業者が減少又は保存した温室効果ガス数量が証明されます。このカーボンクレジットは、市場での取引が可能なので、事業者の資産として取り扱うことができます。この点に注目し、DBDなどは、この度、カーボンクレジットを事業用担保とすることにより、より多くの事業者がカーボンクレジットに興味を抱くものと信じ、今回の提言を行ったものと思われます。

最新法令要約

1.不動産投資信託の所持者を対象とした所得税の免除及び不動産投資信託に対する付加価値税(VAT)、特定事業税及び収入印紙の免除措置(勅令第763号)

歳入局は、勅令第763号を発布しました。その内容によれば2023年6月2日~2024年12月31日の期間中に不動産投資信託を不動産投資トラストに転換したことによって発生した所得を対象として、当該投資単位の保有者に対して所得税を免除するものです。また、当該転換に伴い生じ得る課税標準の額、収益又は文書の作成若しくは譲渡、物権又はその他の権利の確立に伴う付加価値税(VAT)、特定事業税並びに印紙税も免除されます。

2.電子税額票作成のためのシステム導入に対する支出を対象とした法人税の免除措置(勅令第766号)

歳入局は、電子税額票又は受領書の作成、送信、受領又は保管、さらに税金の納付システムを目的とした設備やソフトウエア導入への投資や、これらにおけるサービス料として2023年1月1日~2024年12月31日に支出した額に相当する法人税を免除する旨の勅令(第766号)を発布しました。

次の項目について上記期間中に実際に支出した費用の全額について法人税免税措置が適用されます。

2.1 自己の事業の用途として、電子税額票の作成、送信、受領又は保管を目的とした電子データの作成システム並びにインプットシステム又はコンピューターソフトウェア、電子証明書の保管設備、コンピューター又はその共用設備の導入

2.2 自己の事業の用途として、源泉徴収税、所得税及び付加価値税の送金を目的としたシステム、コンピューターソフトウェア、電子証明書保管設備、コンピューター又はその共用設備の導入

2.3 2.1に基づく電子税額票の作成、送信、受領又は保管を目的として、サービス事業者に支払われた、電子データの作成又は送信サービス、電子証明書のサービス料又は電子データストレージ、についてのサービス料

2.4 2.2に基づく源泉徴収税、所得税及び付加価値税の送金を目的として、サービス事業者に支払われた、当該送金、電子証明書又は電子データストレージ、についてのサービス料

3.新電子税額票又は領収書の作成、送付又は保管における基準、手続き及び条件

歳入局は、新たな電子税額票及び電子領収書の作成、提出及び保管に関する基準、手続き及び条件を定める通達を、電子書類又は文書の手続きに関する省令第384号(2023年)に遵守するために発布しました。これによって、電子税額票又は領収書発行を希望する場合は、身元証明のために、歳入局の電子システムを通じてBO.01申告書を提出して、歳入局から電子税額票発行者として公表されることで電子税額票及び領収書を発行することが可能となります。但し、当該電子税額票及び領収書の発行システムは、歳入局の定める水準を満たしていることが条件となるほか、税額票の内容も歳入法典の定める基準を満たしている必要があります。

そのほかに、発行者は電子税額票データに電子署名を添付してサービス利用者又は物品購入者に送付し、翌月の14日以内に歳入局の電子システム経由で提出しなければなりません。

パスワード、住所の変更や、利用登録の抹消を希望する登録事業者は、歳入局の電子システム経由で登録事項変更申請書(BO.09)の提出のみで手続きが可能です。

重要判例・ルーリング

1.電磁的手段によって締結した契約に対する印紙税納付の要否 最高裁判所判決第427/2565(2022年)

電磁的手段による契約は、電子取引法によって書面と同一の法的効力を有するが、当該電磁的手段による契約は、民商法典に定める契約当事者に限り有効であるにすぎない。当該契約に対する印紙税納付の要否については、歳入法典の印紙税を定める第6章では紙面による文書の作成に対してのみ印紙税を納税するという規定であることから、電子契約は印紙税の課税対象外であるものと解される。なぜなら、税金は法律により明確にその納税が規定されることを要するからである。他方、印紙税に関する歳入局長通達(第58号)では、23種の電子文書を対象として、収入印紙の貼付の代わりにインターネット経由で印紙税を現金納付する旨の規定があるが、当該通達よりも、歳入法典第6章の方が適用順位が上なので、電磁的手段による契約は印紙税の課税対象とはならないものと解される。

2. タイムカードの不正に対する解雇 特別控訴裁判所第4711/2561(2018年)

2名の労働者が各自のタイムカードの勤怠記録を他の従業員にさせたことにより1名が警告書の発行及び6ヶ月間の昇給停止処分である一方、他方の1名は解雇された事案である。このような取り扱いは、労働者に対する差別的な行為であると解される。また解雇についても労働裁判設置及び労働事件第49条に定める不当解雇であるものと解される。なぜならば、他の従業員にタイムカードの勤怠記録をさせる行為は、職務に対する不正又は信用を失う行為とはいえず、重大な就業規則又は雇用者の合法且つ公正な命令の違反とは解されない。

3. 病気休暇の頻度が多い労働者の解雇が不当解雇とはならかった事案 最高裁判所判決第1021/2531(1988年)

労働者が、会社の定める年間の病気休暇日数34日を超えて病気休暇を取得し、当該病気休暇の取得が著しいものであり、且つ毎月であることは、当該労働者の健康状態不良であり、従業員としての職務の遂行が不可能であることが証明されているので、当該労働者は職務能力の低下に至るほどの疾病であるものと見做され、雇用者の正当な理由を持った解雇と解される。従って、当該解雇は、不当解雇とはみなされない。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
川村 励 プロフィールはこちら