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2024年最低賃金引上げ、通関前引渡制度概要、
不良債権に関する重要ルーリング及び判例

最新法律アップデート

官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
1 労働省 賃金委員会通達(第12号)
主題:最低賃金の調整について
2023/12/8 2024/1/1
2 財務省 歳入局命令第トーポー355/2566号
主題:歳入法典に基づく税務申告書及び納税の受付場所
2023/12/15
3 財務省 所得税に関する歳入局長通達(第442号)
主題:タイESGファンドの投資単位への投資に支出した所得を対象とする所得税免除のための基準、手続き及び条件について
2023/12/20 2023/11/21から2032/12/31までの課税所得を対象として適用
4 財務省 財務省令第391号(仏歴2566(2023)年)
主題:easy e-receipt政策のための所得税免除
2023/12/20 2024/1/1から同年2/15までの期間中に物品の購入又は役務の代金として支払った金銭で、5万バーツ以内の金額に対して適用
5 財務省 所得税に関する歳入局長通達(第443号)
主題:物品の購入又は役務の代金として支払った金額を対象とする所得税免除
2023/12/27 2024/1/1
6 財務省 所得税に関する歳入局長通達
主題:電子プラットフォームに対して特別アカウントを設ける旨の規定
2023/12/27 2023/12/28
7 財務省 印紙税に関する歳入局長通達(第68号)
主題:電子文書に対する印紙税の現金納付
2023/12/27 2022/8/19から2025/12/31までに作成された文書に対して適用
8 財務省 印紙税に関する歳入局長通達(第69号)
主題:一定の電子文書に対するインターネットを介した電子文書を対象とする印紙税の現金納税申告書(オーソー9様式)に基づく現金納付の方法
2023/12/27 2022/8/19から2025/12/31までに作成された文書を対象
9 財務省 技術及び革新の研究開発者名簿に関する歳入局長通達(第291号)
主題:研究開発者第749号、第750号、第751号、第752号及び第753号の追加
2023/12/27 研究開発者第749号:2023/9/27
第750号:2023/9/7
第751号:2023/7/22
第752号:2023/10/6
第753号:2023/8/4
10 財務省 歳入局長通達
主題:2023年の末日における平均相場に比例した外貨のタイバーツ換算
2024/1/2 2024/1/2
11 財務省 歳入局長通達(第292号)
主題:技術及び革新の研究開発者名簿
2024/1/8 研究開発者第656号:2023/8/8
第754号:2023/9/8
12 財務省 財務省通達
主題:インターネットによる税務申告及び納税期限の延長について
2024/1/12 2024/1/12
13 財務省 所得税及び付加価値税に関する歳入局長通達(第806号)
主題:公共慈善団体又は機関、診療所及び教育機関名簿における財団第563号の抹消
2023/12/18 2023/7/26
14 財務省 所得税及び付加価値税に関する歳入局長通達(第807号)
主題:公共慈善団体又は機関、診療所及び教育機関名簿における機関第1022号「中央捜査警察財団の」追加
2023/12/21 2023年度の課税所得を対象として適用

※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、労働福祉保護委員会、商務省、国防省、農業・協同組合省、運輸省、天然資源・環境省、エネルギー省、工業省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。

トピックス・ニュース

1.最低賃金の引き上げ

タイ労働省は、2023年12月8日に最低賃金に関する賃金委員会通達を発布し、タイ全国を対象として最低賃金を引き上げる旨、通達しました。同最低賃金の引き上げは、2024年1月1日から適用となります。

地域別の引上げ賃金は、以下の通りとなります。

単位:バーツ

県名 引上げ前 引上げ後 引上げ額
チョンブリ 354 361 7
プーケット 354 370 16
ラヨーン 354 361 7
バンコク 353 363 10
ナコンパトム 353 363 10
ノンタブリ 353 363 10
パトゥムタニ 353 363 10
サムットプラカーン 353 363 10
サムットサコーン 353 363 10
チャチュンサオ 345 350 5
クラビー 340 347 7
コンケーン 340 350 10
チェンマイ 340 350 10
トラ―ト 340 347 7
ナコンラチャシマ 340 352 12
アユタヤ 340 350 10
パンガー 340 345 5
ロッブリ― 340 349 9
ソンクラー 340 345 5
サラブリー 340 350 10
スパンブリー 340 348 8
スラータニー 340 345 5
ノンカーイ 340 348 8
ウボンラーチャタニー 340 345 5
プラチンブリ― 340 350 10
カラシン 338 342 4
チャンタブリ― 338 345 7
ナコンナヨック 338 348 10
ムックダハーン 338 345 7
サコンナコン 338 345 7
サムットソンクラーム 338 351 13
カンチャナブリ― 335 345 10
チャイナ―ト 335 341 6
ナコンパノム 335 345 10
ナコンサワン 335 343 8
ブンカーン 335 342 7
ブリラム 335 345 10
プラチュワップキリカン 335 345 10
パッタルン 335 341 6
ピッサヌローク 335 345 10
ペッチャブリー 335 344 9
ペッチャブン 335 342 7
パヤオ 335 338 3
ヤソートン 335 343 8
ローイエット 335 342 7
ルーイ 335 340 5
サケーオ 335 345 10
スリン 335 344 9
アントーン 335 341 6
ウッタラディット 335 340 5
カムペンペット 332 340 8
チェンライ 332 345 13
ターク 332 345 13
チュムポーン 332 344 12
チャイヤプーム 332 341 9
トラン 332 338 6
ナコンシータマラート 332 342 10
ピチット 332 340 8
プレー 332 338 6

2.輸入通関手続き前における、物品の受取申請

関税局は、2018年5月8日付関税局通達において、輸入者が輸入通関手続きよりも前に物品を持ち出すことを、以下の条件の下で定めております。輸入時に、税関の係官から、関税率や評価額の点で問題を指摘され、期限通りに貨物がタイ国内に搬入できなくなる事態がありますので、そういった問題を回避するための手段として認められているものです。今回は、このうち、一般の貨物の場合について、本通達の内容をかいつまんで解説いたします。

「物品」又は「貨物」を税関から持ち出す場合、輸入者は以下を遵守しなければならない。

1.1.輸入通関手続き前の物品事前持ち出し申請:通関手続き前における物品の事前持ち出し申請書及び関連資料を提出する。但し、当該物品が他の法律において許可又は条件を満たすことが求められている場合は、当該許可又は条件に準拠するものとする。

1.2.担保の提供:輸入者は関税の金額を満たした保証金の差入れ又は銀行保証状を担保として差し入れなければならない。関税局が申請を承認した場合、税関は、関税の額を満たした保証金額を定める。保証金額は、法律によって担保供与ができる関税額の20%による金額を加算する。

1.3.関税局のコンピューターシステムへの輸入申告書データの送信。

1.4.物品の払出:輸入者又は代理人は、払出の際、物品の事前受取申請書及び輸入申告書データを提出するものとする。

1.5.通関手続きの申請:税関から物品を受け取った際、輸入者は当該物品を受け取った日から30日以内に通関手続き申請書を提出しなければならない。輸入者が期限以内又は保証契約違反となる前に当該申請書を提出することができない場合、期限日前又は保証契約に違反となる前に通関手続期限延長申請をしなければならない。延長申請は2回を上限とし、1回につき30日以内の延長が認められる。

1.6.保証契約違反の効力:通関手続延長申請期限が到来したが、輸入者が当該申請書を提出しない場合、法律上、保証契約違反をしたものと見做し、関税局は追加の調査及び関税局のコンピューターシステム上で納付すべき関税の金額を算定後、会計部門に提出し、差し入れていた保証金を差し押さえるものとする。差押えは、未納付額の5%(但し、5万バーツ以内)を保証契約の違約金として、国家の収益として差し押さえるものとする。また、担保として銀行保証状を差し入れていた場合、関税局は当該保証状発行元である銀行に対し関税、加算金及び保証契約違約金を請求するものとする。

重要判例・ルーリング

1.不良債権の償却のために電磁的方法によって督促を行った証拠を有している場合における、法人所得税の取り扱い(歳入局ルーリング第ゴーコー0702/1388号)

銀行及びグループ企業は、債権の督促の方法を書面の郵送に代わって、顧客が届け出た電話番号へSMSを送信、または顧客が通知した電子メールアドレスへ電子メールを送信することによって行うことと決めている。この方法による督促は、仏歴2544(2001)年電子取引法に定める基準及び手続を遵守している場合には法的効力を有する。つまり、銀行及び関連会社は、債務者の各々に対して然るべき督促を行ったが、返済されておらず訴訟手続きを行う場合、その訴訟費用と債権額を照らし合わせて得がないことを立証できる証拠を有していれば、仏歴2534(1991)年省令第186号第3項及び第6項に定める不良債権の償却に使用することができる。

2.関係会社内での債権売却は、正当な理由なく市場価格よりも低廉な価格で売却したこととなるか?(最高裁判所判決要旨第7146-7147/2559号)

原告 A.Realty社
被告 歳入局

事実関係の要旨 A.Land社はA.Realty社の99.9978%株主である。
A.Holding社は、A.Realty社の50.3980%株主である。

本件は、原告が関係会社であるA.Land社に対して、485,275,000バーツの金銭を貸しつけており、その後同じく関係会社であるA.Honding社に対して当該債権を433,234,160.79で売却した事案である。最高裁は、これを正当な理由なく市場価格よりも低廉な価格で債権を売却したとして判示した。

ここで、帳簿価額よりも低廉な金額による債権売却は、すべてのケースにおいて市場価格よりも低廉な価格での売却となるかどうかが論点である。

回答:ケースによる。

最高裁判決第5656/2536号では、債権を15%割引で売却した事案について、売掛金である債権の譲渡であり、且つ債務との資本関係になく、債権の譲渡先が回収できないリスクが伴うことから、正当な理由なく市場価格よりも低廉な価格で債権を売却したこととはならないとしている。

一方、最高裁判決第7146₋7147/2559号では、グループ内での金銭の貸付による債権譲渡であり、債権譲渡先もグループ内であることから回収不能リスクは極めて低いものである。さらに事実関係によれば、債務者側も財政状態が安定しており、期限通りの返済をしているので、回収不能リスクはさらに低いものとみられる。従って、最高裁は本件の債権譲渡を、正当な理由なく市場価格よりも低廉な価格で譲渡したものと判示している。

上記の2つの判例の相違点は以下の様に区分することができる。

最高裁判例第5656/2536号 最高裁判例第7146₋7147/2559号

グループ企業内取引

債権者及び債権譲渡先が資本関係にない

債権譲渡先が回収できないリスクは極めて低い

債権譲渡先が回収できないリスクは高い

裁判所は以下を理由として正当な理由なく市場よりも低廉な価格による譲渡であると判示した

1. グループ企業内取引であること
2. 債務者の財政状態が安定している
3. 期日通りに遅延なく返済している

裁判所は正当な理由をもって市場よりも低廉な価格で譲渡したものであると判示した

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
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