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個人情報を海外に送付する場合の保護基準、商務省による主たる法律改正の準備、正月におけるプレゼント又は粗品を配布、進呈又は贈与した場合の税務負担

最新法律アップデート

官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
1 財務省 所得税及び付加価値税に関する歳入局長通達(第808号)
主題:公共慈善団体又は機関、診療所及び教育機関について
内容:財団第855番の廃止
2024/2/2
(官報掲載)
2021/1/1
2 財務相 所得税及び付加価値税に関する歳入局長通達(第809号)
主題:公共慈善団体又は機関、診療所及び教育機関について
内容:少年関連財団を第1023号として追加
2024/2/2
(官報掲載)
1.2024年度の課税所得に対して適用
2.2024年1月以降における事業者の課税標準の金額に対して適用
3 財務省 所得税及び付加価値税に関する歳入局長通達(第810号)
主題:公共慈善団体又は機関、診療所及び教育機関について
内容:国王陛下のご支援による
2024/2/2 2023/11/21から2032/12/31までの課税所得を対象として適用
4 財務省 歳入局長通達(第293号)
主題:技術及びイノベーション研究開発者名簿について
2024/2/2
5 財務省 歳入局命令第トー・ポー356/2567号
主題:歳入法典第3条の7に定める税務監査人資格の試験、登録、許可証の発行、講習、更新及び許可証の再発行について
2024/2/13 2024/2/13
6 財務省 歳入局長通達(第3号)
主題:税務監査人の講習に関する基準、手続き及び条件について
2024/2/13 2024/2/13
7 財務省 歳入局命令第トー・ポー357/2567号
主題:歳入法典に基づく租税の申告及び納付場所について
2024/2/13 2024/2/28から2024/2/29までの個人所得税の申告及び納税の受付に対して適用
8 財務省 歳入局命令第トー・ポー358/2567号
主題:歳入法典に基づく租税の申告及び納付場所について
2024/2/13 2024/2/28から2024/2/29までの個人所得税の申告及び納税の受付に対して適用
9 財務省 歳入局命令第トー・ポー359/2567号
主題:歳入法典に基づく租税の申告及び納付場所について
2024/2/16 2024/2/28から2024/2/29までの個人所得税の申告及び納税の受付に対して適用
10 BOI 投資委員会通達第ポー1/2567号
主題:タイ国入国許可申請及び外国人専門家の就労許可申請の選定サービスを提供する法人の基準、手続き及び条件について
2024/1/26

※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、労働福祉保護委員会、商務省、国防省、農業・協同組合省、運輸省、天然資源・環境省、エネルギー省、工業省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。

トピックス・ニュース

1.個人情報を海外に送付する場合の保護基準

個人情報保護委員会は、2023年12月12日付で個人情報を海外に送付する場合の保護に関する基準を定める個人情報保護委員会通達を発布しました。

個人情報を海外に送付する場合の条件については、個人情報保護法第28条によれば、個人情報の受取先国又は国際組織が、以下のやり取りを除き、個人情報保護委員会が定める規則に準拠した十分な個人情報保護水準を有し、個人情報保護委員会が定めた個人情報保護の海外送付の規則を遵守すれば、当該受取国や国際組織へ個人情報を送付することができます。

(1)法律遵守のため。

(2)個人情報所有者が、個人情報の送付先国に十分な個人情報保護基準がないことを承知しており、且つ当該個人情報を送付することに同意している場合。

(3)個人情報の所有者が当事者である契約において、その契約履行のために必要な場合、又は契約締結前に個人情報所有者の要求に応じるために必要な場合。

(4)個人情報所有者の利益のために、個人情報管理者と個人又は法人間の契約に履行することを目的としている場合。

(5)個人情報所有者の生命、身体又は健康保護を目的としており、且つその時に個人情報所有者に同意能力がない場合。

(6)公共の利益を保護するために必要である場合。

しかしながら、個人情報の受取先国が十分な個人情報保護水準を有しない場合、上記の(1)~(6)のやり取り以外では、個人情報を海外に送付できないことになりますが、個人情報保護法第29条で、国内における個人情報管理者又は処理者が、共同で事業を行うために海外のグループ企業内における個人情報管理者又は処理者に個人情報を送付する場合に限り、そのための個人情報保護方針が個人情報保護委員会により確認・認可されていれば、個人情報保護法第28条の規定にかかわらず、個人情報を海外のグループ企業に送付することができるものとされています。

本通達は、上記個人情報保護法第29条に定める、個人情報を海外のグループ企業に送付する場合に、個人情報保護委員会により確認・認可されるべき個人情報保護方針に関する基準について、規定したものです。

本通達によれば、当該個人情報保護方針は、拘束的企業準則(Binding Corporate Rules : BCR)とされ、個人情報保護員会による確認・認可を受けるためには、以下の内容を有していなければならないと規定されました。

(1)当該方針が、グループ企業内における法人又は自然人、さらに個人情報管理者、個人情報の受取人などに対して、法的に効力を有し、適用できること。さらに個人情報保護法に準拠しており、グループ企業内における従業員又は個人情報の送付/受取に関係する者に対して拘束する効力を有している。

(2)当該方針における規定に、海外に送付される個人情報の保護、個人情報の所有者の権利に関して記載されていること。

(3)個人情報保護対策及び安全管理対策が、個人情報保護法の定める最低の基準を満たしていること。

2.商務省による主たる法律改正の準備

商務省は、変化の激しい現在の状況に応じた近代化及び民間事業の便宜を図るために、同省の管轄する法律を改正する準備をしています。改正の対象となる法律は、以下の通りです。

  1. 著作権法
  2. 地理的表示保護法
  3. タイ国海貨業者協会法
  4. 貨物輸出入法

そのほかにも、商務省は商務省通達、管轄局の通達、省令を含む31通の付属法の改正も視野に入れております。大まかな内容は、民間事業及び国民の便宜供与、手続きの軽減、透明性及びグッド・ガバナンスの強化を前提とした内容となっております。また、他の法律は、次期又は6~18ヶ月以内に順次改正予定です。

3.正月におけるプレゼント又は粗品を配布、進呈又は贈与した場合の税務負担

年末年始に伴い、企業は忘年会や取引先への挨拶などで、プレゼントや贈り物などを進呈する機会が増える時期です。そこで、賞品やプレゼントに関する会社の税負担の例を以下に挙げていきたいと思います。

忘年会のくじ引き当選者用の賞品の調達に係る費用
2016年5月2日付歳入局ルーリング第0706/3552号

忘年会の際のくじ引きの賞品購入による仕入税額は、事業主の事業に直接関連する費用に係る仕入税額に該当するので、企業は歳入法典第82/3条に基づき、当該仕入税額を売上税額から控除することができる。また、本件は歳入法典第77/1条(8)に定める資産の売却、処分に該当するため、会社はくじ引きの賞品として従業員に配布するために、購入した商品の7%の税率による付加価値税を納付する義務を有する。

しかし、当該贈り物が通常のビジネス慣習に基づいたものであり、且つ価格が正当な金額を超えないものである場合は、歳入法典第79条(4)及び歳入局長通達第40号第2項(6)の規定により、当該贈り物の価格を、付加価値税計算に算入することを要しない。つまり、付加価値税の納付は免除される。

2.くじ引き当選した従業員に対する賞品の配布は、歳入法典第40条(1)に定める雇用に起因して得る所得に該当するので、賞品を取得した従業員は当該賞品に係る金額を個人所得税の計算に算入し、会社は歳入法典第50条(1)に定める源泉徴収を行う義務を有する。歳入法典第42条(10)に定める儀式又は確立した慣行に基づく贈与による所得には該当しない。

3.タックス・インボイスの控えは、会社の歳入法典第87/3条に基づく売上税額レポートへの記帳のために保管しなければならない。当該タックス・インボイスの控えは、印刷、カーボン用紙又はコピーによるものでも構わない。会社は歳入法典第87条、第87/3条第2項及び歳入局長通達第89号第7項の規定により、売上税額レポート作成における裏付証拠とする権利を有する。

会社の福利厚生規程に基づく忘年会及び従業員海外旅行の実施
2005年11月9日付歳入局ルーリング第ゴーコー0706/9276号

雇用者が会社の福利厚生に基づいて毎年忘年会及び従業員の海外旅行を実施することは、歳入法典第40条(1)に定める雇用に起因するその他の便益に該当するが、忘年会は、同法第42条(10)に定める確立した慣行に基づき取得した所得に該当し、所得税の計算上、これの算入を要しない。

年1回の従業員の海外旅行は、従業員は当該旅行に係る金額を所得税計算に算入し、会社はこれの支給の都度、歳入法典第50条(1)に基づく源泉徴収を行わなければならない。
(2002年11月8日付歳入局ルーリング第ゴーコー0706(ゴー・モー14)/131号)

会社が従業員に対して福利厚生として支給した経費は、専ら利益の追求又は事業のための費用に該当し、個人的又は贈与によるものではないので、歳入法典第65条の3(3)及び(13)の規定によって禁ぜられずに法人所得税の計算上、損金算入が認められる。

会社のカレンダーの配布
2003年8月29日付歳入局ルーリング第0706(ゴー・モー01)/266号

会社が正月に顧客に対してカレンダーを進呈することは、歳入法典第77/1条(8)に基づく物品販売に該当するが、儀式又は確立した慣行に起因したものであり、当該カレンダーの価格が正当なものである場合には、会社は当該カレンダーの価格を歳入法典第79条(4)及び歳入局長通達第40号第2項(6)に規定する付加価値税計算に算入することを要さず、且つ同法第82/5条(3)によって禁ぜられずに仕入税額を控除することができる。

記念品の進呈
2002年7月29日付歳入局ルーリング第0811/ゴー949号

会社が中国正月又は正月のような重要な行事の際に顧客に対して中国正月のお供え用のみかん、カレンダー又はノートを記念品として進呈した場合、歳入法典第77/1条(8)に定める物品販売となるので、会社は源泉徴収義務を負わない。

顧客に贈呈するために贈り物の詰合わせを購入した場合
1996年12月25日付歳入局ルーリング第0801/ポー6945号

1.会社がソンクラーン、新年、新商品の発売などの機会に、贈り物の詰合わせを顧客に贈呈し、且つ当該贈り物には会社の住所及び商標が表示されている名刺が貼りつけられている場合、当該贈呈が会社のビジネス上の慣習によるものであり、且つ価格が正当なものである場合には、当該贈り物の詰合わせの価格を、歳入法典第79条(4)及び付加価値税に関する歳入局長通達第40号第2項(6)によって付加価値税計算に算入することを要しない。

2.当該贈り物の詰合わせの購入による仕入税額は、歳入法典第82/5条(4)及び付加価値税に関する歳入局長通達第17号第5項の規定により、売上税額から控除してはならない。

重要判例・ルーリング

1.小売、ホテル及びジュエリー販売業における従業員の持ち物検査方針(特別高等裁判所判例第2742/2563号)

被告は、卸売り、ホテル、宝石販売事業に従事しており、従業員が職場を出入りする都度に(従業員の)持ち物検査を実施する方針を通達した。(当該通達には)、持ち物検査の目的及び方針に違反した際の罰則が規定されていた。原告は支店長助手であり、職場の出入りの都度、従業員の持ち物検査を行う義務を有している。しかし原告はこれを怠ったことにより、原告の配下に属する従業員が、店舗から2回に渡り合計15,000バーツの金銭を横領して持出してしまうこととなってしまった。よって(原告は、)当該方針に準拠せず、且つ被告の就業規則違反を犯したこととなるので、被告は解雇補償金、事前通告に代わる賃金を支給せずに解雇することが可能であり、且つ不当解雇とはならない。

2.労働者の職業選択権を制限する旨の契約(特別高等判所判例第2458/2565号)

原告は不動産の売買及び賃貸借希望者と契約当事者の仲介業を営んでいる。被告はかつて不動産コンサルタントを職務内容とする、原告の従業員として勤務していた。当時の雇用契約書では、「被雇用者は退職日から3年間、雇用者と競業する他の事業を自ら営んだり、そのような事業を行う事業場に就職してはならない。」という規定がされている。被告は退職後、3年以内に同一の事業を営む事業者に転職した。裁判所の判示によれば、当該契約は雇用者のビジネス上の利益を守るため、原告被告間での職業選択権を制限する旨の契約は有効であるが、競業禁止期間を3年とするのは、被告に対して過大な負担をもたらす恐れがあり、労働者保護法第14/1条及び不当な契約に関する法律第5条の定めるところにより、被告の退職日から1年間のみ有効とすべきものとした。

3.夜勤手当、住居又は家賃手当は、賃金に該当するか?(特別高等裁判所判例第171/2562号及び労働裁判所判例第859/2565号)

夜勤手当を取得する権限を有する従業員は、夜勤シフトにて勤務しなければならない。当該従業員が夜勤シフトで勤務しない場合は当該手当を取得することはできない。このような夜間勤務は、勤務日における通常労働時間内の勤務に該当する。たとえ原告が当該手当の支払い基準及び条件を福利厚生として通達していたとしても、夜勤手当は金額が固定されているので、通常労働時間における賃金の支払いに該当する。よって、仏歴2533(1990)年社会保障法に定める賃金であるものと見做される。

他方、家賃手当は、原告がタイ国内に居住地を有しない外国人であることから、第1被告は原告に対して家賃を福利厚生として支給していた。当該金銭は、例え毎月支給しており、原告に対して住居を賃借している証拠の提示を求めていないとしても、当該家賃手当は住居支援における福利厚生にあるものと見做される。よって、雇用契約に基づく労働の対価とはならないので、賃金には該当しない。

4.雇用期間が明確に定められている雇用契約(特別高等裁判所判例第360/2561号)

原則的には、労働者保護法第118条第3項及び第4項の規定により明確な開始日及び終了日が記載されている有期雇用契約は、労働者保護法第118条第2項に定める解雇とはならないので、雇用者は解雇補償金の支給を要しない。しかし本件では、被告は開始及び終了日を定めて原告と雇用契約を締結しているが、当該契約において当事者の他方に対して雇用期間が満了する前に契約の終了を申し出る権利を与えることを合意しているものであるため、当該合意事項は雇用期間が不明確となる結果を当然にもたらすものである。何故ならば契約当事者は期間満了前に解約を申し出ることができるからである。よって当該雇用契約は、雇用期間が明確に定められていないものとなるため、被告は解雇時には原告に対して解雇補償金を支給しなければならない。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
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