判決広島地方裁判所 平成4年12月21日判決
急性腎不全とは、短期間で急激に腎臓の機能が低下する病気です。腎臓の大きな役割は、老廃物や余分なものを尿として体外に排出することです。そのため、急性腎不全になると尿から老廃物を排泄できなくなることによって、体の中に水分がたまり症状が悪化すると心不全を発症することもあります。
治療は、まず腎臓の機能を低下させている原因を取り除く治療が基本となります。腎臓の機能低下が重度の場合は人工透析が必要になります。
腎機能の回復は、持病や合併症の状況によって異なり、末期の腎不全に移行する場合もあるため注意が必要です。
以下では、急性腎不全の患者が死亡したことについて、医師が遺族に対して誤った死因の説明を行った過失が認められて約50万円の賠償を命じた事件を紹介します。
女性Aは、左片麻痺を起こして立ち上がれなくなったため、B病院を受診したところ、脳出血と診断されたため、即日入院して脳内血腫除去の手術を受けることとなりました。
術後、気道閉塞を防ぐために気管切開が行われ、気管カニューレが挿入されました。
その後、女性Aは、急性腎不全を併発したため、人工透析を受けるために被告C病院に転入院しました。2回目の透析の際に、女性Aの血圧が下がってきたため、2時間半で中止されました。しかし、女性Aは吐血するなど全身状態が悪化し、死亡が確認されました。
被告C病院の医師から女性Aの死亡原因についての説明は、消化管からの吐血を気管内に誤飲して窒息死した。というものでした。
原告らは、吐血の誤飲による窒息に関して注意義務を怠ったなどとして、被告C病院に対して損害賠償を請求しました。
しかし、裁判上の鑑定で女性Aの死因は吐血の誤飲による窒息死ではなく、重い脳障害と腎機能障害などの全身状態の悪化により急性の心不全を起こして死亡したものであると報告されました。
鑑定を受けた原告らは、女性Aの死因について誤った説明を行われたことにより、精神的苦痛を負ったなどとして損害賠償を追加しました。
裁判所は、被告C病院の医師の診療上の配慮にかかわらず、女性Aの死亡は免れないものであり延命の可能性もなかったと判断しました。
しかし、女性Aの死因に関して遺族らに誤った説明を行ったことについては、医師が診療した患者が死亡した際、死亡するに至った経緯や原因などについて、遺族に対する適切な説明は医師の遺族に対する法的な義務であると認めました。
その上で、被告C病院の医師は、基本的な医学知識の欠如により誤った死因の説明を行ったことが明らかであるため、医師には説明義務違反があると判断しました。
結果裁判所は、医師が遺族らに対して誤った死因の説明を行った過失を認めて約50万円の賠償を命じました。
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