判決前橋地方裁判所 平成26年12月26日判決
壊死性リンパ節炎とは、原因不明の良性のリンパ節炎で、10~30代の若年女性に多く発症する病気です。
主な症状は、高熱、リンパ節の腫れ、皮膚の発疹などで、発熱は数週間以上続くことがあります。
血液検査や頚部エコー検査などによって診断が行われますが、診断に迷う場合は、穿刺吸引細胞診(病変部に細い針を刺して、細胞を顕微鏡で観察する検査)や、リンパ節生検(皮膚を切開して腫れているリンパ節の一部または全体を切り取って、顕微鏡で観察する検査)が必要になる場合もあります。
確立された治療法はなく、対症療法が主な治療となります。無治療でも1ヶ月から1年弱の経過で自然軽快するといわれていますが、再発する可能性もあるため、症状が改善した後も慎重な経過観察が必要となります。
以下では、リンパ節生検を実施するにあたり、手術中の手技の過失が認められて約2800万円の賠償を命じた事件を紹介します。
女性Aは、腰痛および左下腿部の痛みを訴えてB病院を受診し検査を受けた結果、下肢静脈エコーにて血栓性静脈炎を疑われたため、精査加療目的で被告C病院に紹介入院しました。
被告C病院において、女性Aに頚部のリンパ節の腫大が認められたため、リンパ節生検が行われることとなり、リンパ節の摘出手術が行われたところ、壊死性リンパ節炎と診断されました。
術後、女性Aは左腕をあげることが困難となったため、被告C病院を受診したところ、左頚部の副神経の損傷が疑われました。女性Aは他院で検査を受け、左副神経麻痺との診断を受けました。その後、副神経の縫合手術を受け、リハビリが行われましたが、女性Aは左腕に可動域制限などの後遺症が残存しました。
原告らは、リンパ節摘出手術の際に副神経を損傷しないよう慎重に操作を行う注意義務を怠ったとして、被告C病院に対して損害賠償を請求しました。
裁判所は、女性Aの副神経の損傷は被告C病院の医師が行ったリンパ節摘出手術によるものであると認めました。
その上で、リンパ節生検(リンパ節摘出手術)は外科医の基礎的手技で構成されている手術で、上級医の指導の下、二年目の研修医でも実施することができるものであることからすると、被告C病院の医師は副神経を損傷しないよう慎重に操作を行う義務を負っていると指摘しました。
そして、本件手術の内容や難易度、副神経の損傷という結果を考慮すると、手術中の手技に過失があったといわざるを得ないため、被告C病院の医師らは副神経を損傷しないよう慎重に手術を行う注意義務を怠ったと判断しました。
結果、裁判所はリンパ節生検を行う際の注意義務を怠った過失を認めて約2800万円の賠償を命じました。
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