製造販売会社の異なる医療器具を接続したところ換気不全が発生して患者が死亡したことについて、各器具の構造上の特徴等を理解して事前に点検などをしなかったことについて医師の過失が認められた事件

判決東京地方裁判所 平成15年3月20日判決

病院等の医療機関では、治療のために様々な医療器具を使っています。様々な種類の医療器具を用いることによって高度な治療が可能となりますが、使い方によっては不具合が生じるおそれがあり、場合によっては患者の命の危険が生じてしまうため、製造販売会社だけでなく医療従事者も構造上の特徴等を把握しておくことが求められます。

以下では、製造販売会社の異なる医療器具を接続したところ換気不全が発生し、その影響で子供が死亡したことについて医師の過失が認められて、およそ5063万円の賠償を命じられた事件を紹介します。

事案の概要

子供Aは出生時の体重が約1600グラムであり、呼吸障害により被告病院に入院しました。翌年の3月13日、子供Aは気管切開術を受け、切開部に被告B社が輸入販売している気管切開チューブが装着されました。そこに、被告病院の医師は被告C社が製造販売しているジャクソンリース回路を接続して人工呼吸を行おうとしました。しかし、被告B社の気管切開チューブと被告C社のジャクソンリース回路を接続しようとすると閉塞してしまう構造になっていたため、子供Aは換気不全によって気胸を発症し、これを原因とする全身の低酸素症などに陥った結果、3月24日に消化管出血や脳出血等の多臓器不全により死亡しました。

原告らは、ジャクソンリース回路の欠陥と気管切開チューブの欠陥、被告病院の医療従事者等の過失が競合して事故が発生したなどとして、被告らに損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

裁判所は、被告C社のジャクソンリース回路と被告B社の気管切開チューブには指示・警告上の欠陥があったため製造物責任を負うとしました。

その上で、これらの器具を使用する医師は、少なくとも各器具の構造上の特徴や機能、使用上の注意等を理解して、安全に機能するかを事前に点検するべき注意義務を負うと指摘しました。

また、それぞれの器具の特徴を理解して認識していれば事故が発生することを予見可能であり、接続時の安全性を確認しておくことも可能であったと認定しています。

よって、被告病院の医師には用いた器具が安全に機能するかを事前に確認する注意義務に違反した過失が認められるとしました。

以上のことから、裁判所は被告らの損害賠償責任を認めておよそ5063万円の請求を認容しました。

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