判決東京地方裁判所 平成13年7月5日判決
ファロー四徴症とは、①右心室から肺への血流が妨げられている②本来は左心室とだけつながる大動脈が、心室中隔にまたがるように右心室と左心室の両方につながっている③右心室を作っている心筋の肥厚④右心室と左心室を仕切る筋肉に大きな孔が開いている4つの特徴を持った先天性疾患のことです。
ファロー四徴症の原因は不明で、外科治療をしなければ、1年生存率は75%、3年生存率は60%、10年生存率は30%といわれています。
ファロー四微症の基本的治療は心臓外科手術です。手術は体格やチアノーゼの程度により、1回の手術か、複数回の手術かに分かれます。手術を受けた方の予後は良好ですが、合併症が認められることがあるため、術後長期間にわたって外来での定期的な観察が必要となります。
以下では、ファロー四微症の小児が死亡したことについて、医師が手術の際に適切な対応措置を怠った過失が認められて約4400万円の賠償を命じた事件を紹介します。
小児Aは、出生直後に先天性の心臓疾患であるファロー四微症があると告げられたため、被告病院においてファロー四微症に対する手術を受けることになりました。
手術当日、被告病院の医師が小児Aに対して麻酔下における酸素投与を目的として、気管内チューブを挿入したところ、小児Aの動脈血酸素飽和度および心拍数が低下しました。
医師は、一旦気管内チューブを抜去してフェイスマスクで人工換気をするなどしました。それによって、小児Aの動脈血酸素飽和度および心拍数は改善しました。
その後、改めて医師が小児Aに気管内チューブを挿入しました。すると、動脈管が閉鎖して再び小児Aの動脈血酸素飽和度および心拍数が低下したことにより低酸素症に陥りました。
体外心マッサージなどが施行されましたが、小児Aは回復することなく死亡しました。
原告らは、手術中に医師の過失があったことにより小児Aが死亡したなどと主張して、被告病院に対して損害賠償を請求しました。
裁判所は、2回目に行われた気管内チューブの挿入直後に動脈管が閉鎖して、動脈血酸素飽和度および心拍数が低下したことにより低酸素症に陥り、心肺が停止して死亡するに至ったことを認めました。
その上で、動脈管は生後3ヶ月ころまでに閉じてしまうと言われていることから、手術による刺激またはストレスにより小児Aの動脈管が完全閉鎖されることを予見して、動脈管閉鎖を防ぐためにパルクス点滴静注を行い、手術中における動脈管閉鎖などの危険に備えて体外式心肺補助装置を用いることが出来る準備をして手術に臨むべきであったと指摘しました。
そして、術前にパルクス点滴静注を行うこと、もしくは体外式心肺補助装置を準備していれば小児Aの死亡は回避できたと判断しました。
結果裁判所は、動脈管閉鎖に対する適切な対応を怠った過失があることを認めて、被告病院に対して約4400万円の賠償を命じました。
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