急性胃腸炎との確定診断を受けていた小児が絞扼性イレウスにより死亡したことについて、医師がイレウスに関する必要な検査を怠った過失が認められた事件

判決横浜地方裁判所 平成21年10月14日判決

絞扼性イレウスとは、何らかの原因で腸が締め付けられるとともに、血流障害が起こり、腸管がねじれて壊死する重篤な疾患です。

症状は、腸管が圧迫されることで血液障害を来し、急激で持続する強い痛みが特徴といわれています。また、便秘、嘔吐、腹部膨満などが見られます。

絞扼性イレウスが疑われた場合は、胸部CT検査、腹部エコーなどの検査を行い、診断が確定すれば緊急手術が行われます。絞扼性イレウスは、死につながるリスクがあるため早期診断と迅速な手術が重要となります。

以下では、医師が絞扼性イレウスに関する必要な検査を怠った過失が認められて約6200万円の賠償を命じた事件を紹介します。

事案の概要

小児Aは、自宅においてみぞおちの痛みを訴え、数回嘔吐したため救急車で被告病院に搬送されました。

医師は、小児Aの症状、腹部超音波検査の結果などを総合して、急性胃腸炎であると診断しました。そして、小児Aの状態から入院させるのが相当であると判断して、即日入院することが決まりました。

小児Aは、入院後も間欠的に強い腹痛が見られ、嘔吐を繰り返し、腹部の張りなどが見られましたが、医師は急性胃腸炎の合併症、続発症を発症した可能性を考えて、鑑別するための検査を指示しました。

翌日の午前1時過ぎころ、小児Aは血の混ざった吐物を嘔吐しましたが、医師は小児Aを診察しませんでした。

午前2時40分ころ、看護師は小児Aの呼吸が停止しているのに気づき、心臓マッサージ、酸素吸入を行いました。医師も駆け付け、気管内挿管、心肺蘇生処置を施行しましたが、同日午前4時50分に小児Aは死亡しました。

病理解剖が行われた結果、小児Aの死因は絞扼性イレウスと診断されました。

原告らは、医師に必要な検査を怠った過失があるなどとして、被告病院に対して損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

裁判所は、小児Aを急性胃腸炎と診断した後、点滴を継続的に行っていたのにもかかわらず容態は一向に改善せず、胸部の張りと、臍上部の圧痛がみられ、排便がないことは、イレウスを疑わせる所見ということができると認定しました。

その上で、被告病院の医師は小児Aに対して、急性胃腸炎であることの確定診断を見直して、腹部レントゲン、CT検査、腹部超音波検査を実施すべき注意義務があったと判断しました。

そして、診断を見直すことなく検査を施行しなかった被告病院の医師には、注意義務を怠った過失があると判断しました。また、小児Aに対して検査を施行し、適切な治療を行っていれば救命できた可能性は高いため、医師の注意義務違反と小児Aの死亡との間に因果関係があることを認めました。

結果裁判所は、必要な検査を怠った過失を認め、被告病院に対して約6200万円の賠償を命じました。

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