総胆管結石と診断された患者に対しての外科的手術において、医師が術中に手技を誤った過失が認められた事件

判決那覇地方裁判所 平成23年6月21日判決

総胆管結石とは、胆のうと十二指腸をつなぐ管である総胆管に結石ができる疾患です。総胆管結石は症状が全くない場合もありますが、食後30分から2時間に右上腹部の痛み、吐き気、嘔吐などが起こります。結石が胆管を塞いで感染を起こすと、急性胆管炎となり発熱や悪寒が現れます。

また、胆管の出口に結石がはまり込むと急性膵炎を発症することがあります。急性胆管炎や急性膵炎を発症すると、全身に菌がまわり敗血症を引き起こし命に関わるおそれがあるので、緊急治療が必要となります。

総胆管結石の診断には、腹部超音波検査、腹部CT検査、胆道造影X線検査を行い、結石が確認できた場合は内視鏡的治療や外科的手術などの方法で結石を取り除きます。

以下では、総胆管結石と診断された患者に対して、外科的手術を行った際の手技に過失のあったことが認められて約2300万円の賠償を命じた事件を紹介します。

事案の概要

男性Aは、上腹部痛、背部痛などにより被告病院の内科を受診し超音波検査を受けた結果、総胆管内に結石があることを疑われたため入院することになりました。

医師は、胆膵内視鏡によって結石を確認したうえで、内視鏡的乳頭バルーン拡張術を施行して採石を試みましたが、除去することは出来ませんでした。

翌日、男性Aは膵炎であると診断されたため、保存的治療が施行されました。

その後、男性Aは被告病院の外科に転科することになったため外科の医師が担当することになりました。医師は男性Aに対して、経胆のう管法にて採石を試みたものの、結石を総胆管下部に押し込んでしまい採石できませんでした。

そのため、開腹して胆のうを摘出したうえで総胆管を切開して採石を試みましたが、やはり成功せず結石はさらに総胆管下部へ入り込んでしまいました。

結果、医師は採石を断念してT字型のチューブを留置して手術を終了しました。

後日男性Aは、重症急性膵炎の合併症である膵仮性のう胞が認められ、不眠、不安などの症状が続いたことから、うつ病の疑いがあると診断されました。

男性Aは、結石除去手術の手技に過失があったなどして、被告病院に対して損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

裁判所は、被告病院の外科で行われた経胆のう管法によって総胆管内の結石を除去することが出来ず、むしろ総胆管下部に押し込んでしまったために、最終的に結石の除去に成功しなかったものと指摘しました。

また、経胆のう管法は、総胆管結石手術における第一選択とする病院も存在する一般的な手法であり、総胆管を切開する方法まで行って結石を除去できないのは稀であると指摘し、手術を施行した外科の医師自身も過去の症例から同様の結果に陥ったことは一度もなく、不成功の原因について合理的な説明も一切なかったことから、結石を除去できない程度に押し込んでしまったことについて、やむを得ない結果であるとは想定し難いと判断しました。

結果、被告病院外科の医師において、手術中の手技の過失があったことを認めて被告病院に対して約2300万円の賠償を命じました。

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