監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
赤ちゃんが呼吸をしていないことに気づいたら、焦ってしまうことでしょう。しかし、健康な赤ちゃんであっても一時的に呼吸が止まることがあるので、病気ではないかと心配しすぎる必要はありません。
ただし、妊娠37週未満で生まれた赤ちゃん等では、無呼吸発作を起こしてしまうことがあるので見極める必要があります。この記事では、赤ちゃんの無呼吸発作の原因や症状、対処法等について解説します。
目次 [表示]
赤ちゃんの無呼吸発作とは、新生児が呼吸を停止してしまうことです。新生児の呼吸停止の多くは「周期性呼吸」という、1分程度の規則的な呼吸の後で少しだけ呼吸を止めるものです。
周期性呼吸は新生児によく見られる正常な現象であり、発作としては扱われません。しかし、20秒以上呼吸が止まる場合には、無呼吸発作だと判断されます。
妊娠37週未満で生まれた赤ちゃんが、20秒以上も呼吸を停止してしまうことを「未熟児無呼吸発作」といいます。早産児によく見られ、4人に1人程度で発生するとされています。
生まれるまでに母親のお腹の中にいた期間が短ければ短いほど、発生頻度が高くなる傾向があります。おおむね妊娠34週程度を経過すれば、あまり発生しなくなります。
未熟児無呼吸発作の主な原因として、脳の発達が不十分であることが挙げられます。
早産児の場合には、脳の呼吸を司る部分が発達しきっていないケースがあるため、発作を起こすことがあると考えられています。これが原因であれば、脳の発達が進むと発作は減っていきます。
また、赤ちゃんの気道が細いことや、首が曲がっていること等、物理的な閉塞が原因である場合もあります。さらに、感染症や低血糖等の影響を受けると、無呼吸発作の回数が増えるケースもあります。
未熟児無呼吸発作では、主に次のような症状が出ます。
また、呼吸停止が20秒未満であっても、除脈やチアノーゼがあれば無呼吸発作とされます。
早産であったことだけが原因となる無呼吸発作は、成長が進むことによって起こりにくくなっていきます。赤ちゃんが母親のお腹の中にいたままであると仮定したときに、妊娠37週に相当する程度まで育てば、発作があまり起こらなくなることが多いです。
妊娠37週以降に生まれた正期産の新生児であっても、無呼吸発作を起こしてしまうことがあります。症状は基本的に早産児と同じですが、無呼吸発作の原因として様々なことが考えられるため、赤ちゃんに異常がないかを確認しなければなりません。
正産期における無呼吸発作の原因として、主に以下のようなものが挙げられます。
発作の原因として考えられることを一つ一つ検討して、赤ちゃんに異常がある場合には処置を行う必要があります。
赤ちゃんの無呼吸発作が起こったときには、赤ちゃんに触れて軽く刺激します。重症でなければ、それだけでも呼吸が改善するケースが多いです。刺激するときには、主に赤ちゃんの足の裏などを、軽く撫でる等の方法で行います。
赤ちゃんの無呼吸発作を病院で治療する場合には、刺激剤としてカフェインを投与します。カフェインは、少量であれば有害性が少なく、口から接種させることも可能です。
発作が重症であれば、赤ちゃんを入院させて人工呼吸器を装着する等の対応も行われることがあります。
赤ちゃんの無呼吸発作が起こっても、よほど重症でなければ後遺症が残るリスクは低いです。
もちろん死亡するリスクも低いですが、1回の呼吸停止が長時間に及ぶ場合や、発作の原因が未熟児であること以外である場合等では重症化に注意しなければなりません。
発作が重症だと、脳への酸素供給が滞り、乳幼児突然死症候群につながってしまうおそれがあります。特に、生まれてから数ヶ月しか経っていないケース等では注意しましょう。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸の回数が減ったり、呼吸が止まったりする病気です。
成人の場合、よく知られている原因として肥満が挙げられますが、特別に太っているわけでもない2歳以下の乳幼児であっても、同様の現象が発生することがあります。
乳幼児の睡眠時無呼吸症候群の原因として、次の2つの型が挙げられます。
乳幼児の睡眠時無呼吸症候群の症状として、以下のようなものが挙げられます。
【事件番号 昭62(ワ)529号、松山地方裁判所 平成7年1月18日判決】
本件は、帝王切開により妊娠32週6日で生まれた赤ちゃんが、出生の翌日に呼吸が止まって亡くなった事案です。
裁判所は、赤ちゃんが妊娠32週6日の早産児であり、出生体重は2320グラムであったことからハイリスク新生児に該当しハイリスク新生児には一般的に無呼吸発作が見られ、そのまま放置すれば死亡するリスクがあるとした上で、本件の赤ちゃんは無呼吸発作とこれに続く心不全によって死亡したと認めました。
また、赤ちゃんが何らかの先天性疾患により亡くなったことは、それを疑うに足りる証拠がないため認めませんでした。
さらに、当時の地域の状況から転送義務違反は認めなかったものの、ハイリスクな新生児に対する十分な看護体制をとらずに観察・管理を続けた過失や、被告医院の看護師が十分な観察・管理を怠った過失を認定しました。
そして、逸失利益1700万円や慰謝料1200万円等、合計3190万円の請求を認容しました。

医療過誤のご相談受付
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
※精神科、歯科、美容外科のご相談は受け付けておりません。 ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。