新生児が原因不明の骨折をしたことについて、母親の証言の信用性が高いと評価され、新生児が母親の監視下にいたことを否定して、医療従事者の監視義務違反が認められた事件

判決東京地方裁判所 平成15年1月27日判決

出産時の分娩に際して骨折することは稀にありますが、本件では、出産後に母親と新生児が別室で入院していたところ、原因が分からない状況で、新生児が骨折してしまった事案です。

病院などの医療機関には、分娩後も新生児が怪我をしないように監視する「監視義務」があります。

本件では、骨折発見後、適切な治療が行われ、新生児に大きな障害が残ることなく回復した事案となりますが、新生児の左大腿骨の骨折について、医療従事者の監視義務違反を認めて、裁判所は被告らに約223万円の賠償を命じました。

事案の概要

母親Aは、帝王切開により長女Dを出産した経験があり、その経験から次の出産では出産後に十分な休養をとって体力を回復させようと考えていたため、第二子を出産する病院について、新生児と別室で過ごせることを事前に確認していました。

そのため、母親Aが第二子である子供Bを帝王切開で出産した後で、基本的に別室で過ごしました。授乳するときには、看護師が自室や授乳室に子供Bを連れてきて、授乳後には母親Aが自分で新生児室に戻していました。

1月11日の早朝、子供Bは発熱し、脈拍数も増加する等の異常が生じました。その後、子供Bが左大腿骨を骨折していることが判明し、発熱などの異常は骨折が原因だと考えられました。骨折したのは1月10日の昼から1月11日の早朝までの間だと考えられましたが、骨折の原因は判明しませんでした。

母親Aと子供B、父親Cは、被告病院が新生児の監視義務を行ったために骨折事故が発生したとして、被告病院を開設する医療法人社団に対して損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

裁判所は、新生児が退院するまでの間、被告病院の医療従事者には新生児に骨折などが発生しないように監視する義務があるとしました。ただし、新生児が母親の監視下にある場合には、被告病院の医療従事者には監視義務はないとしました。

被告病院の医師は、母親Aと子供Bが1月6日以降は同じ部屋にいたと証言しました。しかし、その証拠はなく、一方で母親Aが子供Bと別室で過ごした経緯などについての供述は信用性が高いとしました。

そして、母親Aは子供Bに1月10日の4回と1月11日の1回の授乳を行っているものの、それを母親Aの部屋で行った証拠はないため、子供Bが骨折時に母親Aの監視下にあったとは認められないとしました。

以上のことから、被告病院の不法行為や被告の使用者責任を認めて、約223万円の賠償を命じました。

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