双子の妊娠で、第1子の経腟分娩に成功した後で第2子の分娩が進まず、結果として脳性麻痺になった事案で、医師の帝王切開を行わなかった過失や帝王切開の準備を怠った過失を否定して賠償を認めなかった事件

判決東京地方裁判所 平成14年12月25日判決

多胎妊娠とは、子宮内に複数の胎児がいる状態であり、胎児が2人であれば双胎妊娠といいます。つまり、双子を妊娠したということです。

多胎妊娠は、母体への負担が重く、貧血などを引き起こすことがあります。また、出産のときには難産になるリスクが多胎妊娠でないケースと比べて高いため、帝王切開を行う確率が上がります。ただし、経腟分娩を行っても問題のないケースも少なくありません。

双胎妊娠で経腟分娩をする場合には、1人目の出産よりも2人目の出産でトラブルが発生するリスクが高まります。これは、1人目を産んだことによってスペースができるため、逆子になる等のトラブルが生じやすくなるためです。

以下では、双胎妊娠で第1子と第2子を経腟分娩したところ第2子が脳性麻痺になってしまったことについて、第2子を娩出するときに、医師が帝王切開を行うべき義務があったかについて争われた事案で、原告の請求が棄却された事件を紹介します。

事案の概要

女性Aは、超音波検査で双胎妊娠していることが判明し、被告病院を受診しました。分娩予定日は10月30日とされていましたが、10月8日に、陣痛が起こらずに羊水が流出する「前期破水」が発生して入院しました。

第1子の出産では頭よりも手が先進する等の問題がありましたが、翌日の午後4時1分に娩出しました。第1子は低出生体重児でしたが、大きな問題はありませんでした。

その後、第2子の出産が進まなかったため医師は帝王切開の検討を行いましたが、第1子は経腟分娩に成功したこと等から、第2子も経腟分娩を行う方針を立てました。

午後5時頃に人工破膜を行うと、臍帯脱出が発生しました。その後、鉗子分娩などによって午後5時12分に第2子を娩出しましたが、重度の脳性麻痺により寝たきりの状態になってしまいました。

原告らは、第2子は帝王切開により出産するべきであった等と主張して、被告病院を設置する学校法人と被告病院の医師に対して損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

裁判所は、原告らが帝王切開を行うべきであったと主張した時点である午後4時4分と25分、40分のうち、4分や25分の時点では、胎児が危険な状態であったとは判断できなかったとしました。

また、午後4時40分においては、胎児が低酸素状態であったと評価できるものの、第1子を経腟分娩した経緯から第2子も経腟分娩できる見込みがあったとしました。加えて、帝王切開は開腹手術でありリスクをともなうため安易に行うべきではないという見解もあること等から、午後4時40分に帝王切開を行うべきとするのは医療水準を超えた義務を課すものであり相当でないとしました。

さらに、原告らは、被告医師がいつでも帝王切開を実施できるように準備しておく「ダブルセットアップ」を行っていなかったことを過失として主張しましたが、ダブルセットアップをしても帝王切開を実施するまでに30分以上を要することや、臍帯脱出が発生したのは不測の事態であったこと等から、被告医師にダブルセットアップを行う義務はなかったとしました。

以上のことから、裁判所は被告医師の過失を否定して、原告らの請求を棄却しました。

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